「やっぱり法人化した方がいいですよね……」
「はい、ちょっと個人事業主でやれる収益形態になってないので……」
ヤクエナの幹部や俺個人の税理を任せている渡井さんから流石に法人化してくれって忠告を受けて、法人化するのに際して色々書類の勉強をしていた。
と言っても、静香が大学である程度知識はつけてくれたらしく、法人化した場合俺への負担は最小限になるように努力してくれる。
法人化を進める動きは前々から出ていたが、俺が中6日で自由に動けるようになったことで大々的に動けるようになったのである。
これによってプロ野球、不動産、株、馬なんかの収入源を纏めて運用できるようになったのである。
と言うか、うちの家(マンション)の1階に展開しているレストランとか居酒屋とかも俺のグループに巻き込むことで、経理を一括化した。
経営している友人達も俺が場所だけでなく機材投資とかもしてくれたおかげで独立できたからと喜んで受け入れてくれた。
馬が収入源っていうのは、節税の為に始めたのであるが、俺が走る馬を優先的に買ったので、一部の馬は既に購入金額よりも高い賞金を稼ぎ始めていた。
中央競馬だと一番低いグレードのレースである未勝利戦でも500万以上入ってきて、1勝クラスや2勝クラスも勝つ馬が出てきていたし、重賞に入着すればそれだけで未勝利戦の賞金くらいの賞金を獲得することもできる。
(まぁ、流石に黒字にはならないだろうけど)
ちなみに賞金の80%から税金が引かれた金額が手元に戻ってくる金で、10%が調教師、5%が騎手、5%が厩務員って感じになる。
例えだけど、日本で一番高額レースである有馬記念の1着賞金が1着5億なので、もし勝てれば馬主に4億入ってくることになる。
あと、この賞金の枠組みとは別に、レースに勝てば生産牧場にも生産牧場賞と繁殖牝馬賞という繁殖牝馬の持ち主に支払われる賞金があり、それぞれ勝つと30万から100万近く入ってくる。
ラムタラファームでは俺が全頭3000万で買ったので、12頭で約3億6000万……税金で多少引かれるが、大金が転がり込んできたし、ラムタラファームの馬も4頭が勝ち上がっているので、300万近く特別賞で貰えている。
借金の返済で大部分が消えたらしいが、支払い遅延していた従業員の給料とボーナス含めて払うことができたらしい。
あとは俺が融資して牧場の規模を拡張してもらったり、牧草の張り直しや幼駒(幼い馬)の育成環境を整えてもらったり……。
それこそ10億近く融資をした。
法人化したことでそこら辺の融資とかもやりやすくなったのが良かった。
で、チームメイトは馬主……は面倒くさいから一口馬主と言う馬主よりは条件が緩くて責任も殆ど持たない……委託して馬主気分が味わえるっていう競馬クラブに入る面子が増えたので、俺が法人化したことだし、俺と仲間で法人馬主(共同出資で賞金は山分け)と言うのを行うことにした。
チームメイトも本業の野球で忙しいし、オフシーズンに観戦できれば……あわよくば稼げればと思ったらしい。
というか俺と同じマンションに住んでいる奴らは株の委託投資を請け負って、俺と信頼できるトレーダーで年俸の8割くらい稼げているので、結構お金に余裕がある。
寺門さんとかは球団から3億近く貰っているが、俺が副業で良さそうなの……不動産投資とか株で1億8000万近く配当で入ってくる様になっていたので、ウハウハしていた。
「3年3億の契約が終わればFA権でもう少し条件つり上げてもいいけど、大久保が居なくなったあとのヤクエナを支えていかねぇとな」
「頼みますよ、寺門さん。その代わり年俸以上に儲けられる様にしておくので」
「任せろ」
そんな会話をするのだった。
馬といえば、今年はセレクトセールっていう大きな馬のセールに出席することができた。
出席したのだけど、既に17頭も馬を抱えているし、1頭で約1000万の維持費がかかるので、17頭になると1億7000万も年間で支払っていることになる。
なのでこれ以上購入する予定はなかったんだけど、セールで1頭の牡馬が滅茶苦茶喋っているのに気がついた。
『頼む……売れ残って馬刺しになるのは嫌だ! 血統的には地味だけど頑張って走るから……頼む声が届いている奴が居れば買ってくれ!』
そりゃ人間だけが超能力使えるってわけじゃないよな。
馬で念話ができる奴がなんか売られていた。
「2000万から~」
「はい!」
「81番2000万〜」
勢いで手を挙げてから血統を確認する。
血統で有名な感じだとシンボリルドルフが母系の父親に数代遡ると居て、他にはキングヘイローとマンハッタンカフェっていう何処かで聞いたことがありそうな馬が血に入っていた。
直近の父親はエピファネイアって馬らしい。
「うーん、どうなんだこれ?」
血統について練習の合間に調べたりしたが、悪くはないけど良くもない……エピファネイアって種牡馬はホームランは出やすいけど、活躍できる期間が短いエピタイマーって呼ばれる爆弾を持っていたりして、最近は産駒が値下がりしていた。
「他いませんか〜81番2000万で落札です」
『良かった〜売れた〜』
馬の方も一息ついていた。
とりあえず購入手続きとか色々終わらせた後にその馬と接触を試みるのだった。
「大久保選手……本物だ! サインいただいても?」
「構いませんよ」
セールが終わった後日、牧場の方に赴いて、購入した馬に会いに行った。
「いや、脚がひん曲がっていて、みすぼらしい馬体をしていたので、去年のセールでは売れ残ってしまって……大久保さんが買い取っていただき感謝します」
「いや、私としても車台さん(車台ファーム)と伝手ができてよかったです」
なんて従業員の方と喋っていると、馬房からひょっこり購入した馬が顔を出した。
『売れ残りで悪かったですね。聞こえてるよ!』
「ちょっとこの馬と喋ってて良いですか? 名前も決めたいですし」
「あ、どうぞ」
従業員の方が離れたのを見計らってから馬に喋りかける。
「よぉ、お前の声聞こえてるよ。馬刺しになりたくないって願ってたもんな」
『あ、聞こえてるの? 聞こえてたら右手を上げてほしいんだけど』
俺が右手を上げると、嬉しそうに馬の方から喋りかけてきた。
『良かった……僕の声が聞こえる人が出てきて! えっと名前何だけど、僕野良猫みたいだからノラって牧場の人から言われていて』
「うーん、ちゃんとした名前を付けてやるよ。希望はあるか?」
『前世の名前は小久保一樹って言って、陸上選手をしてました。気がついたら死んでいて……』
「俺は大久保利通。プロ野球選手をしてる」
『プロ野球選手! どこの球団ですか!』
「ヤクエナキャッツだけど」
『おお! 僕の好きな球団だ! 5年前に死んだんで、高中監督が迷走していた時期以降知らないんですけど』
「ああ、俺はそこでピッチャーしていて、高中監督最終年に40勝した」
『よ、40勝!? 滅茶苦茶酷使されてないですか!?』
「ヤクエナ投手壊しちゃって高卒新人の俺が投げさせられるハメになったんだよ……というか俺超能力者だから、お前と意思疎通ができるんだけど」
『なるほど! で、ヤクエナはどんな感じですか?』
「2年前に日本一になったぞ。去年は3位、今年はセ・リーグ独走して、交流戦も優勝した」
『おお!』
「ちょっと触るが良いか?」
『あ、はい』
俺はサイキックエネルギーを馬に注入する。
『あ、なんか身体が軽くなったかも?』
「超能力の力を開花させた。意識すればたぶん色々な超能力が使えるようになるぞ。それこそ速く走ったり、壊れない頑丈な身体が作れたり……ただそれもトレーニングで少しずつ鍛えるしかないが……まぁ1年か2年である程度形になるから」
『そうなんですか……正直、周りの馬に置いていかれるほど能力的には駄馬でして……』
「じゃぁ頑張って鍛えるしかないわな。頑張って活躍すれば将来若いお姉さんにチヤホヤされる生活送らせて上げるから」
『本当?』
「そうだな……大きいレースを5つ勝ったら引退後に特注の馬房を用意するし、繁殖とかも自由にやらせてあげるよ」
『言ったね! 僕頑張るからね!』
「もっと勝ったら食事とかも豪華にするから、頑張ってくれ」
『よ~し、僕頑張るからね!』
若干馬の肉体に引っ張られて思考が幼くなっているっぽいが、超能力が使える馬だから……俺はこの馬にメシアエスパーと名付けるのだった。