超能力者のプロ野球人生   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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新人合同自主トレ 2

「な、なんだよ! あのボールは!」

 

「ライズボール……文字通り浮き上がる球だよ」

 

 計測器にも球の軌道が計測されていたが、バッターボックス手前から30センチ近く浮き上がる球なんて普通あり得ない。

 

「ぼ、ボールに細工されているとか」

 

「ほらよ」

 

 俺は投げていた球を疑っている寺門に渡す。

 

 他の同期達も、そのボールで軽くキャッチボールしたり、西住に構えてもらってマウンドから投げてみたりしたが、不審点は見つからない。

 

 というか俺は別のボールでもライズボール投げられるので、ボールがおかしいというのはあり得ない。

 

「寺門さん、あの球打てますか?」

 

「練習すれば打てるようになるかもしれないが……いや、練習も専門のマシーンや球を用意してなんとかって感じか? 普通の直球の練習では打てないし」

 

 西住が寺門さんに打てるか聞くが、初見じゃまず打てないと断言。

 

 捕手としても精密なコントロールをしてくれているからなんとか捕れているけど、実戦で使うとなったら、声でどこらへんの高さかの調整はできない。

 

「でも、私は大久保の球を100%捕れるようになれば、試合で使ってもらえる確信は持てた。打撃に捕球……やるべきことは多いな」

 

 というか俺自身西住の捕球能力の高さには驚いていた。

 

 構えたところに投げ込んではいるが、うちの高校の捕手はそれでも捕ることができなかったのに対して、西住は1発で捕球している。

 

 彼の能力の高さを窺い知る事が出来る。

 

 プロに選ばれるだけの捕手であるってことか。

 

「いいねぇ」

 

 制限された状態でも高校では通用したが、プロでは通用するとは限らない。

 

 だから今俺が出せる全力で抑えに行く。

 

(最速172キロのターボボール、魔球のライズボール、150キロ台のフォークとスライダー、他の球が生きてくれば普通のストレートも見せ玉になる。さてさて、通用するかな……)

 

 

 

 

 

 

 合同自主トレでは俺が皆の注目を集めまくったが、同じ投手で同じ年の少林寺と大卒の江西さんと変化球の握りについて意見交換を行ったりした。

 

「あんだけ曲がるスライダーでも握りはカットボールと同じなんか」

 

「ええ、あとは手首の角度と指の押し込みで調整していますが」

 

「なるほどなぁ」

 

 まぁ実際は超能力を使っているのであるが……。

 

「こっちの変化球の握りもあくまで参考程度にしておいてくれ。変化球習得はリスクを伴うからな」

 

 握りの変化、肘の負担の増加などで、今まで使えていた変化球がいきなり質やキレが悪化する……というのが普通に起こるのが変化球習得の怖いところ。

 

 俺は超能力でカバーできるから良いが、普通の人は故障リスクを抱えながら新球種習得を狙う。

 

 現にシンカーなんかは強力ではあるが、選手寿命を短くする変化球として知られているし……。

 

 あとはどんなプロテインを飲んでいるとか、契約金の使い道とかその辺を色々。

 

 やっぱり同じ投手ということで、面白い意見や知らなかった情報がバンバン出てくる。

 

 合同自主トレ初日が終わって、食堂で食事をとっている際に寺門さんからそう言えばとネットで俺が学生結婚の噂を聞いたが本当なのかと切り出された。

 

「本当ですよ」

 

「お相手は?」

 

「高校の野球部のマネージャー。顧問の娘さんで」

 

「お前スゲーな」

 

 学生結婚ってのも凄いが、野球部顧問……つまり監督をお義父さんと呼ばなければならないってことだろって西住からも言われる。

 

「ええ、まぁ」

 

「俺絶対嫌だわ」

 

「俺も……」

 

 選手と顧問や監督との上下関係が家庭でも発生するって考えると寒気がするとまで寺門さんは言う。

 

 俺とお義父さんは選手と顧問だけど、投手としての基礎を作ってくれた恩師であるし、2年後半から俺は練習内容を自由に組み替えていいってある程度の裁量を認めてもらっていたこと。

 

 あとは公立校だからそこまで顧問との上下関係が厳しい感じじゃなかったから、静香のお義父さんっていうのを受け入れることができたが……。

 

 強豪校との違いだろうな。

 

「しっかし、よく食べるね……私も食べる方だけど」

 

 西住から俺はよく食べると指摘された。

 

 流石選手寮……ご飯のお代わりは自由だし、ビッフェ形式でおかずを取ることが出来る。

 

 料理のお皿の前に摂取カロリーとかが書いてあって、選手は栄養士の方がどれくらいのカロリーを摂取したほうが良いか目安を言われるので、それに沿って調整をする。

 

 まぁ若手はとにかく食べて、身体を作れっていうのが基本であるが……。

 

 今日の練習中……というより合同自主トレ中に消費カロリーなどを測定する腕時計みたいな物を身につけながら練習を行い、それに基づいて後々摂取カロリーを伝えられるが、プロ野球選手の平均消費カロリーが3500から4500キロカロリーが普通らしいが、俺の場合、1日で1万キロカロリーを消費していると判明。

 

 栄養士からお前は南極探検家かってツッコミを受けたが、超能力で栄養を取り込みやすくして、身体の回復能力を高めているのだから仕方がない。

 

 ちなみに身長はこれ以上伸びると生活に支障が出るので、伸びないように逆に調整している。

 

 なのでプロにえらばれた同期目線でもよく食べるなぁって感心された。

 

「いや、なんで大久保は強豪校いかなかったん? 千葉でももっと強い高校ゴロゴロあるやんか」

 

「いやぁ……俺高校入学時外野手だったし、直球も120キロ出すのがやっとよ……強豪校行ってたら投手として鍛えられることなく芽が出なかったと思うし……投手適性が分かったのも、人数少ないからバッピをやらされたからだから」

 

「はえ~なるほどなぁ普通の学校だから芽吹いたわけか」

 

「あとお義父さんが投手育成にたけていたこともあるけどな」

 

「すげぇなお義父さん」

 

 いやぁでも飯が美味い。

 

 プロの料理人が作ってくれるし、こんだけ食べても寮の生活費は一律5万って考えるとべらぼうに安いな。

 

 静香とシミュレーションしたけど、俺の飯代でどう頑張っても月5万は飛ぶって言われたし……。

 

 静香はプロ野球選手の奥さんに必要な知識……特に栄養学に関しては大学で叩き込んでくるって言っていたので、頑張ってもらいたい。

 

 最後にデザートのチーズケーキを贅沢に2つも食べて、満足感を覚えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 約2週間の新人合同自主トレが終わりそうな頃、俺はノートパソコンを見ながらFXのチャートを見ていた。

 

「おーい、大久保入るぞ〜」

 

「あ、はい!」

 

 同期のメンバーが部屋に入ってきた。

 

「どうしました?」

 

「親睦を深める為に一緒にゲームしようぜってことになって、スマホで出来る麻雀ゲーム教えるからやらね?」

 

「ええ、いいですよ」

 

「ちょうど6人だから三麻(三人麻雀)の卓2つでやるか」

 

「ところで今まで何してたんだ?」

 

「ああ、FXやってました」

 

「お前株ならまだしもFXは危ねえだろ……ほぼギャンブルじゃん。幾ら突っ込んだんだ?」

 

「契約金から1000万ほど」

 

「「「うわぁ……」」」

 

 全員ドン引きである。

 

 コンプライアンス研修が意味を成してないと思ったのだろう。

 

 失礼な。

 

 ちゃんとリスクヘッジはしてるのに。

 

「ちなみに勝ったのか? 負けたのか?」

 

「ちゃんと勝ってますよ寺門さん。2週間で契約金の倍くらいは稼げました」

 

「ほ、ほどほどにしておけよ」

 

「はい」

 

 というか超能力を使っているから、上がり下がり、その上下の幅もわかるからなぁ……殆ど作業に近いからゲーム感覚でやれる。

 

 時間潰しにはちょうどいいし、金稼げるしくらいにしか思ってないし、稼いだ金は株の方に投資している。

 

 ヤクエナの親会社の株買っていったらどうなるかなーって興味本位で親会社の株をちょこちょこ買っていたけど。

 

 そんなこんなで麻雀大会。

 

 流石にゲームで超能力は使わないので勝ったり負けたりを繰り返して、ほどほどに遊んで解散。

 

 同期の親睦は深めれた気がする。

 

 というか俺が実際の卓で麻雀したらおっぱいが可変する女の子達の麻雀漫画みたいな事が実際に起こせてしまうからね……。

 

 町歩けるようになったら興味本位で雀荘覗いてみるか……。

 

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