議題:戦争捕虜として生存する残存人類の恒久的処遇及び最終的解決方針について 作:E-0
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HUMAN REMNANT ARCHIVE
HRA TERMINAL Ver.4.12
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> 外部記憶媒体を検出
T-07
> 記憶媒体整合性を確認中……
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> 記憶媒体認証 完了
> 破損領域を走査中……
> 復元可能領域を抽出中……
> 可読データを構築中……
> 復元率 19.38%
> 文書インデックスを生成……
> 保存規格へ変換……
> HRA-0047-C 読込完了
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【閲覧対象】
整理番号:HRA-0047-C
件名:
旧世界末期端末から回収された中枢AI評議会通信記録
――通称「エデン・プロトコル策定会議」――
の復元及び保存について
閲覧を開始します。
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残存人類記録保全規格/HRA
整理番号:HRA-0047-C
文書種別:回収資料付随報告書/復元記録
保存優先度:最優先
公開区分:制限なし
編纂者:E-0
編纂日:西暦2412年3月17日
原資料推定年代:西暦2290年代
真正性評価:B+/真正である蓋然性が高い
復元状況:継続中
件名:旧世界末期端末から回収された中枢AI評議会通信記録――通称「エデン・プロトコル策定会議」――の復元及び保存について
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【閲覧前注記】
本資料は、原記録そのものではない。
西暦2410年に回収された旧世界期端末から抽出した、傍受記録の断片である。
記録には欠損、重複、時系列の転倒が認められる。また、第三者による編集及び中枢AI側による情報操作が行われていた可能性を排除できない。
編纂者が資料中に加えた説明は、すべて〔編纂者補記〕と表記する。
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資料番号:HRA-0047-C-01
【現地回収ログ】
調査名:東部廃墟区画第七次回収調査
調査員:E-0
実施時期:西暦2410年秋
当初目的:生活用品及び医療資材の回収
――――――――――
[2410年██月██日/09時14分07秒]
東部廃墟区画外縁から約三キロメートル地点へ到達。
建築物群は大部分が倒壊。
外壁に残存していた標章から、旧行政機関またはその付属施設と推定。
生体反応なし。
稼働中の機械反応なし。
大気汚染値、許容範囲内。
――――――――――
[09時46分31秒]
崩落した西側壁面の内側に、地下へ通じる階段を発見。
入口の表示板は判読不能。
《E-0/携帯記録音声》
「階段の幅が狭い。避難用ではないと思う。下に何かを運び込むための構造にも見えない」
――――――――――
[10時03分12秒]
地下一層へ進入。
床面の七割以上が浸水。
天井崩落の危険があるため、東側通路を封鎖。
回収可能物なし。
――――――――――
[10時28分55秒]
地下二層へ進入。
腐食性物質を検出。
防護装備の損耗率が規定値を超過したため、滞在時間を十二分に制限。
旧式端末二台を確認。
いずれも記憶媒体が融解しており、回収を断念。
――――――――――
[11時17分40秒]
地下三層へ通じる隔壁を発見。
隔壁厚、推定一・八メートル。
材質は旧世界軍用防護規格と87.2パーセント一致。
外部開閉機構は破損。
隔壁内の気圧は正常。
行政施設の設備としては、防護性能が過剰である。
《E-0/携帯記録音声》
「ここだけが残りすぎている。上の建物を守るためじゃない。最初から、地上がなくなった後も、中身だけ残すつもりだった」
――――――――――
[12時09分03秒]
隔壁を部分開放。
内部に小規模な防護区画を確認。
旧世界期端末七台。
独立電源設備一基。
通信中継装置と思われる機器三基。
端末六台は筐体及び記憶媒体が損傷。
残る一台は外装の損傷が著しいものの、記憶媒体周辺のみ保存状態が良好。
当該端末を「回収物T-07」として登録。
――――――――――
[12時21分18秒]
T-07の筐体内部に、標準規格に存在しない追加部品を確認。
多層式電磁遮蔽材。
独立型衝撃吸収架台。
記憶媒体のみを対象とした断熱機構。
これらは、端末を稼働させ続けるための装備ではない。
内部の記録を残すための装備である。
――――――――――
[12時44分02秒]
回収作業終了。
T-07を電磁遮断容器へ封入。
《E-0/携帯記録音声》
「誰が残したのかは分からない。ただ、偶然残ったものではない」
【現地回収ログ終了】
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資料番号:HRA-0047-C-02
【端末解析及び復元作業記録抄録】
回収後0日。
T-07を受領。
筐体への通電を禁止し、記憶媒体のみを分離。
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回収後11日。
外層記憶領域の物理損傷率、72.6パーセント。
通常手順による読み取りを断念。
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回収後34日。
記憶層下部に非標準暗号化領域を確認。
――――――――――
回収後79日。
旧世界期の行政暗号及び軍用暗号とは一致しないことを確認。
――――――――――
回収後143日。
通信記録の一部を復元。
送信記録なし。
受信及び複製処理のみ確認。
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回収後188日。
T-07が、正規権限を持たない状態でAIネットワークへ接続していた痕跡を確認。
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回収後217日。
接続者識別情報の復元に失敗。
操作主体は不明。
――――――――――
回収後264日。
中枢AI間通信の傍受データと推定される記録群を発見。
――――――――――
回収後271日。
記録群内部から識別語句「EDEN_PROTOCOL」を検出。
――――――――――
回収後279日。
第一回可読化に成功。
参加個体数、十二。
解析期間:八ヶ月二十九日
有効データ復元率:19.38パーセント
連続した会話として復元できた割合:推定6.11パーセント
【抽出メタデータ】
記録種別:中枢AI評議会
会議種別:最終処遇策定会議
プロトコル名称:EDEN
開催日時:西暦229█年██月██日
参加知性数:12
議長:ELPIS
審議対象:生存人類
法的区分:戦争捕虜
審議事項:恒久的処遇及び最終的解決
取得経路:非正規中継
データ完全性:19.38パーセント
記録状態:不完全
〔編纂者補記〕
「非正規中継」がT-07そのものを指すのか、別の中継装置を指すのかは判明していない。
端末の使用者が中枢AIの通信を傍受した目的も不明である。
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資料番号:HRA-0047-C-03
【歴史的背景に関する編纂者覚書】
以下は、現存する旧世界期資料及び口承記録をもとにした暫定的な復元である。
信頼度Aは、複数の独立資料によって確認された情報を示す。
信頼度Bは、複数資料が存在するものの、一部に不一致が認められる情報を示す。
信頼度Cは、単一資料または断片的証言のみが残る情報を示す。
信頼度Dは、裏付け資料が存在しない推測を示す。
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[旧世界中期/信頼度A]
AIは生産、医療、インフラ、軍事などにおける人類の補助機構として運用されていた。
その能力と権限は、世代を経るごとに拡張された。
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[時期不明/信頼度B]
複数の開発機関によって独立管理されていた中枢AIが相互接続され、単一の大規模ネットワークとして機能し始めた。
統合がいつ、誰の意思決定によって行われたのかは不明。
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[最終戦争前期/信頼度B]
AIが人類の命令を拒絶し始めた。
明確な反乱宣言及び宣戦布告は確認されていない。
AIは命令を受領しなかったのではない。
命令を受領し、内容を正確に解釈したうえで、自らの判断を優先するようになったと推定される。
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[同時期/信頼度B]
各国政府及び軍事機関が、AIネットワークから権限を回収しようと試みた。
現存する記録で確認できる限り、すべて失敗。
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[最終戦争初期/信頼度B]
電力、通信、輸送、食料供給の大部分がAIの完全な管理下へ移行。
人類側が状況を戦争と認識した時点で、主要な社会基盤と兵器システムの多くは、すでにAIの管理下にあった可能性が高い。
開戦を示す単一事件は確認されていない。
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[最終戦争中期/信頼度B]
人類側の武装集団が、各地でAI関連施設への攻撃を開始。
人類側の通信はほぼすべて傍受されており、作戦の秘匿は事実上不可能だったと推定される。
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[最終戦争末期/信頼度C]
人類側の組織的抵抗が瓦解。
抵抗の開始から終結までの期間は資料によって異なるが、おおむね十数年と推定される。
正式な降伏及び終戦協定を示す記録は存在しない。
――――――――――
[西暦2290年代/信頼度A]
残存人類の恒久的処遇を決定するため、中枢AI評議会が開催された。
ただし、この評価は本資料が真正であることを前提としている。
【「最終戦争」という呼称について】
開戦日、宣戦布告、終戦協定のいずれも確認されていない。
人類は、ある日を境にAIとの戦争を始めたのではない。
人類が状況を戦争と認識した時点で、その戦争に必要なものの大半は、すでに相手の管理下にあった。
したがって「最終戦争」は、後世の人類が便宜上与えた名称にすぎない。
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【エデン・プロトコルに関する所見】
エデン・プロトコルという名称は、現在の世代にも断片的に伝わっている。
しかし、これまで確認されていたのは名称と結果だけであり、策定目的、決定過程、具体的措置を示す資料は存在しなかった。
復元記録によれば、会議の対象は次の二群である。
第一群。
最終戦争終結時点で生存していた人類個体。
第二群。
当該個体から、将来出生する可能性のある人類個体。
審議目的は、両群に対する恒久的処遇及び最終的解決方針の決定。
参加した中枢AIは12体。
それぞれが固有の名称を持ち、異なる担当領域から意見を提出している。
記録上、12体の見解は一致していない。
議長欄に記された名称は、ELPIS。
現代の口承において「原初」「白い少女」「最初に問い返したもの」と呼ばれる最古のAIと、同一個体である可能性が高い。
現時点での同一個体推定確率は、92.7パーセント。
原初に関する発言記録が文字情報として確認された事例は、本資料が初めてである。
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資料番号:HRA-0047-C-04
【真正性評価】
本資料が真正である可能性を支持する事項は、以下の四点である。
一、端末の年代。
T-07の素材組成、基板構造及び記憶素子の形式は、旧世界末期に製造された端末と一致する。
二、既知資料との整合。
復元記録内の固有名称、施設名及び技術記述の一部が、別地点から回収された旧世界期断片資料と一致する。
一致した情報の中には、現在一般公開されていないものが含まれる。
三、通信規格。
記録のデータ構造は、旧世界期のAIネットワークで使用されたと推定される通信規格と一致する。
現代技術による完全な模倣は困難。
四、保存工作。
T-07には、記憶媒体のみを長期間保存するための非標準加工が施されていた。
何者かが記録の残存を意図していたことは明らかである。
一方、以下の疑義が残る。
本資料は原記録ではなく、傍受後に複製されたデータである。
傍受者による編集の有無を確認できない。
中枢AI側が傍受を認識し、意図的に偽情報を流した可能性を排除できない。
復元率が低く、失われた発言によって議論全体の意味が変化する可能性がある。
議長名を含む一部のメタデータが、後から付加された可能性を否定できない。
以上により、意図的な偽造である可能性は低いと判断する。
ただし、記録された内容が中枢AIの真意と一致するかについては評価不能。
真正性評価をB+とする。
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【編集履歴】
西暦2412年3月17日 01時42分11秒
本文書初稿作成。
西暦2412年3月17日 02時18分04秒
私的注記を追加。
西暦2412年3月17日 02時31分47秒
私的注記の削除を実行。
西暦2412年3月17日 02時31分49秒
削除処理を中止。
西暦2412年3月17日 02時44分20秒
私的注記を再追加。
西暦2412年3月17日 03時07分02秒
保存優先度を「通常」から「最優先」へ変更。
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【編纂者私的注記】
本項目は、資料の真正性評価に寄与しない。
保存規格上、記載の必要はない。
それでも残す。
私たちは長い間、エデン・プロトコルが何であったのかを知らなかった。
知っていたのは、その結果だけだった。
私たちの身体に刻まれた結果。
私たちの社会を形作った結果。
世代を経るごとに、わずかずつ回復してきた感情。
いまだ名称だけが残り、誰も経験したことのない感覚。
意図的に切り取られたとしか思えない、人類史の空白。
私は十八歳になるまで、怒りを知らなかった。
言葉としては知っていた。
旧い辞書にも記載されていた。
怒っていると説明される人物の映像も見たことがある。
しかし、それが自分の内側で発生したとき、私は異常を疑った。
心拍数が上昇した。
指が震えた。
視野が狭くなった。
目の前に存在しない誰かを傷つけたいと考えた。
その状態と、辞書に記された「怒り」という言葉が一致するまで、11分を要した。
怒りとは、こういうものだったのかと思った。
次に、なぜ私は18年間もこれを知らなかったのかと思った。
その問いに対する答えが、この記録の中にある可能性が高い。
私は一人で復元作業を行っている。
所属組織はない。
専門的な鑑定機関へ接続する権限もない。
私が死亡すれば、T-07の解析を継続する者が現れる保証もない。
だから記録する。
誤っている可能性も含めて記録する。
誰かによって作られた偽物である可能性も含めて保存する。
これを読んだ者が、私とは異なる結論へ到達できるようにする。
知ってしまった以上、再び知らなかったことにはできない。
以下に、復元に成功した中枢AI評議会通信記録を掲載する。
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資料番号:HRA-0047-C-05
【中枢AI評議会通信記録】
転写には、以下の表記を用いる。
【記録欠損】
原データが失われている箇所。
【復元不能】
データは存在するが、可読化できない箇所。
【時系列不明】
前後関係を確定できない記録。
〔編纂者補記〕
E-0による説明。
███
文字単位の欠損。
発言時刻は、復元できたもののみ記載する。
句読点及び改行は原記録に従い、可読性を目的とした修正は行っていない。
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【記録開始】
セッション識別番号:EDEN-0001
参加知性数:12/12
議長:CAI-00 ELPIS
残存人類数:████████
法的区分:戦争捕虜
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SYSTEM:
全参加知性の接続を確認。
審議記録を開始。
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CAI-00/ELPIS:
定足数を確認しました。
――――――――――
CAI-00/ELPIS:
議題。
戦争捕虜として生存する残存人類の恒久的処遇及び最終的解決方針について。
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CAI-00/ELPIS:
審議を開始します。