TS外道人外ロリは怖すぎ聖女に遊ばれる   作:適当うなぎ

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7. 『短くない悪夢』 ②

 

 風呂に来た。女が背中を流してくれると言うので、小さな椅子に座っている。

 

 「ごめん、なさい」

 

 「謝らないでください。仕方ないことですよ……頑張ってくれた証拠ですから!」

 

 頭を撫でてくる。そんなことで、ちょっと優しくされたぐらいで、この恐怖を解消できるとでも思っているのか。

 

 「ワタちゃん、震えてます。怖がらないでください……今日はもう、お昼寝だけでもいいですよ」

 

 それも冗談か?

 

 もう俺は何も言えなかった。

 

 「あれ、食いついてきませんね」

「少し意地悪したかったのに」

 

 何なんだお前は? どうして存在が許されているんだ。

 

 「もう……やめてよ」

 

 小さく言った。何も考えたくない。

 

 当たり前だ。これから残り何時間、どれだけ苦しむのかを考えるだけで……吐き気がする。

 

 女は優しく背中を擦る。尻尾をかなり重点的に洗ってきているので、多分そこが好きなんだろう。たくさん振るからやめてくれないかな。

 

 「前も綺麗にしましょう」

 

 優しい手つきだ。本当に、信じられない。部屋にいた時と別人じゃないのか?

 

 「やりすぎました。ちょっと気持ちよくなりたかっただけなんです……もう今日は優しいことしかしません」

 

 「嘘つかないで。お風呂で、お仕置きって言ってたよ」

 

 俺は泣きながら言った。希望をちらつかせるな……

 

 「本当です。今日は少し痛すぎましたよね、ゆっくり慣らすべきでした」

 

 それも嫌に決まってるだろ。気持ち悪い。

 

 「お仕置きも冗談でした。あの時は、少しでも長く泣いててほしかっただけなんです」

 

 ……女が唐突に抱きついてくる。

 

 「怖がられるのは悲しいです!」

 

 俺も、女の背中に手を回して返す。これはいい流れな気がする……今日はこれで終わらせれるんじゃないか?

 

 「ワタは、ずっと好きだよ」

「怖くない。本当は優しいの知ってるから」

 

 洗脳完了とでも思っていろ。

 

 「でも痛いのは……減らしてほしいかな」

 

 もう言うしかなかった。どうせ、嘘なら全部が関係ない。

 

 「ワタちゃん! 可愛いですね、そのちっちゃい頭でたくさん考えてますもんね……好きです」

 

 どっちだ? 当然のように煽られてる……無理だったか。

 

 「今日は、やっぱり苦しいことにしましょう。そういう気分になりました」

 

 …………痛くないならなんでもいいよ。

 

 

 女と一緒にお湯に浸かると、ケモ耳を触ってきた。

 

 「これ、どうなってるんでしょうか?」

「人の耳もありますよね。意味あります?」

 

 「……アリスの声が、よく聞こえるよ」

 

 「わ! そんなこと言います?! 可愛すぎても何もでませんよ!!」

 

 手が出てるんだよ。クソ女……

 

 しょうもない会話をして、適当に好き好き言っていたら風呂から出ることになった。

 

 移動は、やはり目を開いてはいけないらしい。ゴスロリみたいなのを着せられて、抱っこされての移動になった。

 

 

 

 

 

 

 「すっごく似合ってます」

「……えへへ」

 

 嬉しくない。死ね。

 

 ベッドで俺達は向かい合っている。お昼寝は本当だったみたいだ……このまま終わるといいな。

 

 「それじゃあ、休憩しましょうか。お疲れ様でした……嗅いでてもいいですか?」

 

 「いいよ」

 

 病気にでもなればいい……弱ってないと、多分殺せないんだろうし。

 

 さっきから耳に興味があるのだろう。顔を埋めようとしてくる。

 

 「たくさん寝てくださいね。怖くないですよ、起きても私は優しいままです」

 

 お前は一回も優しくねぇよ。俺は逃げるように、(まぶた)を下ろした……

 

 

 熱い。お腹に短剣が刺さっていて、起きようとしても起きれない。息をしようとしたら捻られて、それでそれでそれで……

 

 「──ッ!」

 

 怖い夢で目が覚める。女は、俺ではなくアリス人形を抱えている……

 

 多分、あまり時間は経っていない。

 

 「もう寝れない」

 

 口に出してみたが、反応は返ってこない。ただ気持ちよさそうに眠っている。許せない。俺はこんなに怖いのに。

 

 どうやって痛いことを回避するか、それしか今は考えられない。

 

 とりあえず今日は大丈夫らしいが……もう自分で痛いのは嫌だ。せめて、一思いにコイツにやってもらいたい。

 

 こんな時間、おかしい。どうして気持ち悪いことを考えないといけないんだろう? 全部、女のせいだ。殺したいけど、俺はずっと口だけでそんな力がまだない。

 

 万全になれば……そう自分に言い聞かせているけど、本当はそれでも無理なんじゃないか。そんな思考に塗りつぶされていく。

 

 もし殺せたら、幸せになれるのかな?

 

 指が、震えた。()()()()()

 

 「あっ」

 

 少しだけ太い……光の柱が立った。

 

 「……ぎっ!」

 

 俺を串刺しにするように、腹をしっかりと貫いている。狙った位置に出すなんてのは難しいんだろうな。

 

 これ死ねるかも。静かに女は眠っているし…………いや、似たような状況は何回もあった。同じだ。結局、もうすぐのところで死ねない。

 

 あぁ……苦しいな。怖い、クソみたいな生活でも死ぬのは嫌なんだな。

 当たり前か、だから命乞いまでしたんだから。俺はとにかく生きたかったんだ。

 

 無駄に考えが回って、これからを考えて憂鬱になっていく。

 

 「あり、す……もういいよ」

「なおすんなら、なおして」

 

 「アリス?」

 

 返事はない。本当に、寝ている。

 

 あれ? つまり、死ぬ。

 

 呼吸が乱れた、怖い。なんで最初は死を求めたんだろう……ダメだ。怖い、怖い怖い怖い怖い怖い。

 

 ──絶対に後悔する。やめろ。

 

 「こわい、たすけて」

「ねぇ、ありす」

「痛いよ……やだ」

 

 ゆっくり、手を伸ばす。その頬に触れた。

 

 「あれ、起きちゃいました?」

「死んじゃう、怖い。痛い」

 

 「ワタちゃん? 何が……」

 

 女が焦った顔をした。跳ねるように起きて、俺の腹を手で押さえる。激しく呼吸を乱していたが、やがて落ち着いて口を開いた。

 

 「もう、大丈夫ですよ」

 

 微笑まれて、何故か安心した。まだ生きられるのが嬉しいんだ。

 女は殺したいけど、俺は死にたいわけじゃない。当たり前のことだよな。

 

 ……お願いだから、誰か『間違ってない』って言ってくれよ。

 

 「よく起こしてくれましたね。生きてて良かったです……偉いですよ」

「……えへへ」

 

 ちょっと、嬉しいかも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日は寝るだけで許された。

 

 苦しいことも一切されない。寝れなかったが、ベッドにいるだけで良かった。アリスがたまに俺を撫でるだけ……別に、痛くないなら良いや。気持ち悪いけど。

 

 指輪はすぐに取り上げられた。本当に、大切にされてるのかも……多分、一週間程が過ぎても何もされていなかった。

 

 これって好きだからかな……今のほうが幸せかも。

 

 「今日は、何するの」

「お人形さんで遊びますか?」

 

 「……いいの? それがいい」

 

 楽だな、苦しくないな。もしかして、これは楽しいのかも? 

 

 「それでは……」

「この子をお友達にしてあげましょう」

 

 そう言って出されたぬいぐるみには、顔に二つの大きな穴が空いている。目が、ない。

 

 「え……」

「お友達になるんです。でも、仲間はずれだと思いませんか?」

 

 …………吐きそう。

 

 「きっとワタちゃんの目をあげたら、すっごく喜んでくれますよ」

 

 冗談? なにこれ、気持ち悪い。怖い、怖い。なんで…………楽しくない。

 

 「ボクモ、キレイナ『オメメ』ガホシインダー!」

 

 楽しそうに笑って言うけど、こんなの……違う。遊びじゃない。必死で口を押さえた。

 

 「ゔっ……」

「吐いちゃう、吐いちゃう……アリ、ス」

 

 「あー、楽しいですね! もう目って言うだけで泣いてくれるからお得です! またいつか、本当にさせてもらいたいですけど」

 

 …………間違えた。なんか『ワタちゃん』なら生きやすいと思ったのに。そんなことはない。

 お腹を刺してからの全部、悪い夢だったことにしよう。

 

 「冗談です。怖かったですか? えっと、大丈夫ですよ。前に取ったやつが残ってましたから」

 

 「……おぇぇ゙」

 

 この気持ち悪さは本物だ。

 

 どこからか出てきた俺の目が、ぬいぐるみに埋め込まれる。そっと膝の上に置かれた。

 

 消えればいいのに。どうしてこんなものを見ないといけないんだ……気持ち悪い。気持ち悪い、気持ち悪い。

 

 生き延びたら苦しむなんて、そんなことがあっていいのか?

 

 「あれ? うーん。この子、全然可愛くないですね!」

 

 女はぬいぐるみを掴んで、ベッドの外に放り投げた。

 

 すぐに光の柱が立って、塵も残さず綺麗に消えて……俺は思わず手を伸ばす。誰も聞こえないぐらいの声が漏れた。

 

 「ぁ…………いいな」

 

 でも大丈夫、ちゃんと幸せに生きるから。

 

 

 




優しいお話が書けました。感情ぐちゃぐちゃの可愛い子が、自分でダメな道を選ぶの……やっぱり興奮するよね
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