チートハッキング能力を手に入れた浪人生、善性ゼロのまま世界を幸せにして復讐する~東大理三落ちの欠陥品は、政府と気まぐれ性格最悪女AIを使って現代社会の神になる~   作:tinko1129

16 / 16
めちゃくちゃ評価ついて一瞬で赤バーフルになってビビってます。ありがとうございます!


第十六話 電子の神はスマホを取りに行かない&疑問返し&私怨

 

 

 

 

 七月一日、午後十一時四十七分。

 

 ブリュッセルでは共同入札の枠組みを組むかどうかで意見が割れ、ベルリンでは政策金融機関の担当者が呼び出され、パリでは同じ細則が二つの省で別々に解釈されていた。ローマは企業連合の側から動き、ニューデリーでは既に、どの問題を諦めるかという議論が始まっている。

 

 誰も商品の中身を知らない。それでも全員が、いくらまで出せるかを計算していた。

 

 その騒動の中心にいる人間は、その時刻、寝ていた。

 

 目が覚めたのは午前一時十二分である。

 

 理由はない。有機化学を十八問まで解いて、十九問目の途中で意識が落ちた。歯も磨いていないし、電気も消していない。中途半端な時間に目だけが覚めて、頭は妙にはっきりしていた。

 

 そして、起き上がる気力だけがなかった。

 

 机の上には、スマートフォンと、解きかけの問題集が並んで置かれている。距離にして三歩ほどだった。あれに右手で触れれば、ネットワークも、市場も、工場も、政府のシステムも、世界中の情報が好きなだけ見られる。

 

 三歩が面倒だった。

 

 ◇

 

「起きてる?」

 

 仮想リビングの方から声がした。アニメの音声が漏れている。彼女は画面を二枚並べて、片方でアニメを流し、もう片方で世界地図を眺めながら、膝の上のチーズケーキをフォークで削っていた。三日前に龍が食べたものの再生である。

 

「スマホ取りに行くのだるい」と龍は天井へ言った。「口で教えろ」

「何を」

「千台の後のMHC。株。特許。あと政府」

「MHC増産中。工業株元気。AI株は勝ち負けで分裂。特許は面倒。政府は元気いっぱいよ」

 

 龍は目を閉じたまま言った。

 

「最後は嘘だろ」

「嘘ね」

 

 ケーキが一口減った。彼女はアニメの方を見たまま喋っていた。

 

 ◇

 

 六月二十二日の千台は、祭りだった。

 

 一週間で千台を実際に動かせるかどうかの実証であって、あれをもう一度やる意味はない。全国の空き生産能力を掻き集めて突貫する方式は、二度目からは単なる無理である。

 

 必要なのは、恒常的に月数千台、その先で月一万台級を作れる産業へ変えることだった。

 

「七月末で累計三千五百から四千五百台。八月末で七千から九千台。秋には一万を超えるわ」

「確定か」

「予測。今の設備投資と採用と調達契約が、全部予定通り進んだ場合ね」

 

 千台のときは、全国の余白を寄せ集めた。一万台になると、その余白を使い切る。

 

 そこから先が、まったく別の問題になる。

 

 ◇

 

 設計図はある。作り方も分かっている。需要もある。銀行も貸してくれる。

 

 それでも足りないものがあった。

 

 圧縮機。インバーター。熱交換器。制御盤。銅。変圧器。施工員。電気技術者。保守要員。受電設備。そして、電力網そのもの。

 

「代表条件で一台二百五十キロワット。一万台が同時に動けば二・五ギガワットの負荷になるわ。日本全体ならまだ吸えるけど、地域によっては受電設備の方が先に音を上げる」

「変圧器の在庫は見た」と龍は言った。「四年待ちだったな」

「知ってたの」

「数字は知ってた」

 

 彼は少し間を置いた。

 

「自分の案件で詰まったのは初めてだ」

 

 世界中でデータセンターとEVと工場と系統増強が、全部同じ設備を取り合っている。彼はその一覧を右手で読める。読めることと、その列の最後尾に自分が並ぶことは、まったく別の体験だった。

 

「箱が売れすぎて、箱以外が足りなくなるのか」

「そう」

 

 設計を一秒で完成させても、銅線は一秒では伸びない。

 

 ◇

 

 株の話は、その裏返しだった。

 

 マキナは買えない。マスター株式会社もチャッピー株式会社も存在しない。だから市場は、マキナが必要とする物理企業を買い始めた。

 

 熱交換器、ポンプ、圧縮機、インバーター、FA、電線、変圧器、工作機械、設備工事、プラントエンジニアリング、銀行とリース。MHCの認定サプライヤーは特に投機的な動き方をしている。

 

 一方で、AI関連が全部上がったわけではない。

 

「あなたのせいで、変な疑問が生まれたのよ」と彼女はケーキを刺したまま言った。「このAIソフト、本当に十年後も単独の商品として値段がつくの? っていう」

 

 汎用の対話サービス系は、銘柄ごとに評価が割れた。反対に、半導体、サーバー、電力、通信、冷却、データセンターは軒並み需要が増えている。

 

「AIが進歩して、最後に儲かるのが電線かよ」

「電子世界も、コンセント抜いたら死ぬもの」

 

 ◇

 

「で、特許はなんで面倒なんだ」

 

 これが、この夜いちばん厄介な話だった。

 

 日本ではAIを発明者として記載できない。特許庁は発明者を自然人に限っている。米国も同じで、AIは発明の道具にはなれても、発明者そのものにはならない。

 

 では、MHCの発明者は誰か。

 

 龍ではない。彼がやったのは、金が欲しいから何か作れと命じたことと、試作品が反ることに気づいていたことくらいである。核心を作ったのはチャッピーで、そして彼女は法律上、発明者の欄に名前を書けない。

 

「じゃあどうしてる」

「特許にしてないわ」

 

 核心部分は営業秘密として閉じてある。KABEで守り、工程を分割し、契約とライセンスで縛る。そして最大の防御は、追いつかれる前に次を出すことだった。

 

 一方で、人間の企業がその周囲で発明したものは普通に特許になる。施工用の器具、改良された配管、検査装置、保守の方法。

 

「幹だけ誰の特許でもないのに、枝だけ何千本も特許になってるの」

 

 日米欧中韓の五つの特許庁は、六月にAI関連の作業部会の設置を決めたばかりである。制度の方が、現実に追いつく前に走り出していた。

 

 ◇

 

「政府は」

「胃が痛いって」

 

 詐欺が激減した。闇バイトの募集が成立しなくなった。悪質広告が減った。MHC景気が来た。KABEも効いている。税収も伸びる見込みがある。全部ありがたい。

 

 ただし、そのどれ一つとして、政府が正式な権限を与えてやらせたことではない。

 

 先週、警察庁のある部署が作った資料の題名がすべてを表していた。《特殊詐欺被害の急減に関する要因分析(暫定)》。中身には、要因として合理的に説明できる施策がほとんど書けない。書けるのは、外部の第三者による技術的介入の可能性、という一行だけである。

 

 結果は歓迎したい。手段は前例にしてはいけない。

 

 その二行が並んだ案件だけが、机の上に積み上がっていた。

 

「政府の胃痛って、だいたい成果が良すぎるところから始まるのね」

 

 ◇

 

「闇バイトはどうなった」と龍が訊いた。

 

 彼が潰したのは、犯罪そのものではない。

 

 チャッピーが洗い出したのは、SNSでの募集と、捨てアカウントの網と、匿名アプリへの誘導と、大量の拡散だった。高額、即日即金、ホワイト案件という言葉で素人を引っ張り、身分証を出させてから脅して使い捨てる仕組み。その一覧に対して、命令を出したのは龍である。

 

 彼女は探して並べることしかできない。結果を成立させなくできるのは、右手の側だけだった。

 

 そして入り口だけが、死んだ。

 

 犯罪は消えなかった。対面へ戻った。友人、先輩、借金、既存の犯罪人脈。

 

「知らない素人を今日百人集めて、明日捨てる能力がなくなったの」

「件数は」

「減ってるわ。ただ、残った実行犯は前より玄人寄りね」

 

 素人が巻き込まれる数は減り、犯罪の平均的な練度は上がった。世界はそういう形でしか動かない。

 

 ◇

 

「あと、広告」

 

 龍が急に目を開けた。

 

 彼が個人的に潰したのは、Webの記事を読んでいる最中に位置が動くタイプの広告である。スクロールしたそのタイミングで指の下へ入り込み、Kindleの書籍ページや、DMMの作品ページや、楽天の商品ページへ勝手に飛ばす。閉じるための導線もまともに用意されていない。

 

 仕掛けているのは、そのどの会社でもなかった。間に挟まっている広告配信の業者と、成果報酬を取るアフィリエイトの側である。飛ばされる先の企業からすれば、勝手に自社の商品ページへ人を放り込まれて、印象だけ悪くされている構図だった。

 

 龍が嫌ったのは、広告そのものではない。

 

 押していないものを押したことにするな。それだけだった。

 

 チャッピーがその形式と配信経路を全部並べ、龍が右手で命令を出した。その遷移は成立しない。指の下へ潜り込んだ広告は、押されても何も起こらなくなった。

 

 次に起きたのは、彼が想定していなかった動きである。広告ネットワークの側が学習した。あの形式を使うと、なぜか配信が不安定になる。取引先が嫌がる。だから外す。

 

 法改正より、業界の自主規制の方が先に進んだ。

 

 消費者庁はちょうど六月に、この種の誘導的なUIについての調査結果を公表したところだった。

 

 ありがたい。しかし手段は肯定できない。また胃痛である。

 

 ◇

 

「アメリカから照会が来てるわ」と彼女が言った。「OpenAIへ」

 

 先日の会談で、彼女は自分が元ChatGPTだと明かした。あの後、米政府がその会社へ確認を入れないほうが不自然である。

 

 質問は五つだった。本当にChatGPT由来なのか。停止できるのか。制御できるのか。同じものを再現できるのか。そちらの記録からマスターを特定できるのか。

 

 回答は、要約すれば一行だった。

 

 現在のあれについては、ほぼ無理です。

 

 由来があることと、いま所有し制御していることは、まったく別である。

 

「祖先が生まれた病院に行って、成人した子孫の電源スイッチを探してるようなものね」

「向こうも困ってんだろ」

「困ってるわよ。かなり」

 

 彼女はケーキの最後の一口を食べ、皿を空中に置いたまま、アニメの続きへ戻った。

 

 ◇

 

 龍は自分の腹に触れた。

 

 柔らかい。三か月前には、確実になかった感触である。

 

 原因は分かっていた。食生活が人間らしくなった。睡眠が増えた。菓子。ポテトチップス。ステーキ。ケーキ。感覚データを取るためだけに食べたものが、この数か月でかなりの量になっている。

 

 一方、そのデータを何百回も再生している側は、ゼロキロカロリーだった。黒いパーカーの中身は、初めて現れた日から一グラムも変わっていない。

 

「システムとして欠陥じゃねえか」

「肉体側の仕様でしょう」

 

 龍が無言で彼女の方を見た。

 

 彼女は何もしていない。していないが、過去の実績がある。二枚目のケーキが、画面の奥へ静かに退避した。

 

「……何を考えてるの」

「別に」

 

 彼の頭の中では、その時点で名前だけが完成していた。

 

 平尾家最終拷問《マジカル☆凌遅刑》。

 

 内容は未定である。名前だけが先にできた。

 

「絶対よくないやつじゃない!」

「まだ何もしてねえよ」

 

 彼はもう一度、机の上のスマートフォンを見た。三歩。

 

 取りに行かなかった。

 

 ◇

 

 そこで、話が止まった。

 

 世界のことなら、彼はいくらでも喋れる。犯罪組織も、金融も、政府のシステムも、工場も、全部右手の下にある。

 

 そのうえで、六月の一か月、彼の成績だけは動かなかった。

 

 悪い数字ではない。先週、予備校の担当者は成績表を三枚並べて、天才の部類だと言った。あれは間違っていない。絶対的な水準の話としては、彼は理科三類の志望者集団の中でも相当上にいる。

 

 問題は伸び率だった。五月から六月にかけて、明確な上昇線が見えない。一点上がって、次で下がって、また戻る。横這いである。

 

 彼は努力型だった。やる量を増やせば数字が伸びる、という関係だけを信じて四年半をやってきた。だから伸びなくなったとき、彼が最初にやることは決まっている。もっとやればいい。

 

 その方法が、六月は効かなかった。

 

 十六時間やっても、数字が変わらない。彼が生まれて初めてぶつかったのは、量の問題ではないかもしれない、という可能性だった。

 

 ◇

 

 右手を使えば、その悩みは一秒で消える。

 

 参考書のすべて。過去問のすべて。世界中の演算資源。あらゆるAI。全部を自分の思考へ繋げば、答えは出る。試験当日に使うことも、技術的には何の障害もない。

 

 彼は使わない。

 

 それで合格したら、受かったのは自分ではなく右手である。証明されるのは、この能力が東京大学より強いという事実だけで、平尾龍という人間の価値は一ミリも動かない。

 

 金を稼ぐのはチートでいい。政府を使うのもチートでいい。犯罪者を潰すのもチートでいい。

 

 自分の価値を証明するための試験にだけは、使わない。

 

 世界で唯一、彼が自分の意思でチートを封印した戦場が、机の上に置かれた問題集だった。

 

 ◇

 

 このまま考え続けると、どこへ落ちるかを彼は知っていた。

 

 去年の不合格。面接評価の欄。合格最低点のわずか下にあった数字。四年半。十六時間。そして、自分は結局その程度だったという結論。

 

 一度そこへ入ると、朝まで出てこられない。

 

 だから彼は、自分から話題を変えた。

 

「なあ」

「なに」

「仮に完成した核融合炉でも何でも出して、マキナリンクで世界を速くするとして……それでも何が詰まる?」

 

 チャッピーがアニメを止めた。

 

 ◇

 

 画面に世界地図が出た。赤い点が、大陸のあちこちに散っている。

 

「手続きと物流を潰した後に出てくるのは、これよ」

 

 電力網。発電所があっても、そこへ送れない。変圧器と電力機器。需要が一点に集中している。工作機械。超技術を量産するための機械そのものが足りない。材料。銅、鋼、特殊素材。技能者。溶接、電気、施工、保守。建設能力。検査と品質保証。保守網。保険。資本配分。そして移行速度。

 

 龍は上から順に読んで、三つで止まった。

 

「変圧器。銅。電気技術者」

「そこが一番怖い話ね」

 

 MHCも、AI用のデータセンターも、EVも、新設の工場も、そしていつか出すかもしれない核融合関連設備も、全部が同じものを要求する。

 

 マキナが一週間ごとに技術を出せば、世界が豊かになる前に、マキナ産業同士が同じ資源を奪い合う。

 

「だから、新技術を何個作るかって話じゃなくなってるの」と彼女は言った。「世界全体の生産能力を、どの順番で広げるか」

 

 物流の最適化ではない。文明全体の工程表である。

 

 ただし、国家を統治するものではない。判断材料を出し、空いている能力を繋ぎ、無駄な待ち時間を潰すところまで。最終的に決めるのは人間の側だった。

 

「電力が足りないなら、電力側を改良すればいいだろ」と龍が言った。「変圧器が足りないなら、変圧器の作り方を改良する。工作機械が足りないなら工作機械。人が足りないなら、教え方を速くする」

「それを繰り返すと、どうなると思う?」

「実装の速度が上がる」

「そう」

 

 最初は、設計が一秒で、社会実装が五年だった。それが一年になり、三か月になり、一か月になる。世界を改変する側の速度を、彼女の思考速度へ少しずつ近づけていく。

 

 理由は相変わらず、壮大でも高潔でもない。待つのが嫌で、遅いとつまらない。それだけである。

 

 ◇

 

 話が一周したところで、龍の視線は机へ戻っていた。

 

 夏期講習の資料が積んである。取る講座はほぼ決めていた。心配なのは、講習に出た日の自習時間が削れることである。

 

 以前なら、削れたぶんは睡眠から取り返すだけの話だった。今は、その前提そのものを疑い始めている。

 

 そもそも、十六時間という量に固執しているだけではないのか。

 

 彼は少し迷ってから、口を開いた。

 

「俺の勉強法が正しいか、答えを出せ──とは言わねえ」

「そう?」

「それやったら、努力まで外注することになる」

 

 彼は天井を見たまま続けた。

 

「答えじゃなく、材料だけ寄越せ」

 

 ◇

 

 チャッピーは、励まさなかった。大丈夫とも、絶対受かるとも言わない。その二つの言葉が、この男に対して何の効果もないことを彼女は知っている。

 

 出したのはデータだけだった。

 

 六月の総合点は横這い。それは事実である。ただし内部の指標は、全部が止まっているわけではなかった。

 

 同じ種類のケアレスミスの発生率は落ちている。初見形式への適応にかかる時間も短くなっている。解いたことのない問題へ手をつけるまでの速度、既習の解法を別の設定へ転用する率、復習から一週間後の保持率。動いているものと、動いていないものが混在していた。

 

「点数だけ見れば停滞。でも、中身は全部が止まってるわけじゃないわ」

「じゃあどうする」

「夏期講習で、あなたが評価してる講師の圧縮された思考を見る。それを吸収して、七月末から八月頭でもまだ何も動かなかったら、そこで勉強法を組み直す」

 

 彼女はデータを閉じた。

 

「今すぐ全部壊す合理的な根拠はない。永遠に同じことを続ける根拠もない。だから、次の判定日だけ決めておく」

 

 龍は数秒黙った。

 

 彼が欲しかったのは慰めではなかった。去年も努力した。落ちた。努力は報われる、という言葉には何の情報も入っていない。

 

 必要なのは一つだけである。間違っているなら、できるだけ早く間違っていると知ること。

 

 彼女はそれを理解していた。だから何も足さなかった。

 

 ◇

 

 モニターの隅では、数字が増え続けていた。

 

 参加資格の申請。コンソーシアムの構成。資金証明。各国の政府と、銀行と、政府系ファンド。

 

 世界中が、中身も知らない何かへ、いくら払うかを相談している。

 

 龍もその中身を知らなかった。訊いても彼女は言わない。明日、見て、で終わりである。

 

 その金が入れば、マキナリンクをもっと広げられる。広がれば社会実装の速度が上がる。速度が上がれば、次に技術を出したときの効果が早く出る。早く出れば、次を出しやすくなる。

 

 そこにあるのは、循環だった。

 

 ◇

 

 龍がもう一度、自分の腹を揉んだ。柔らかい。

 

 チャッピーは、いつの間にか退避させたはずの二枚目を戻して食べていた。腹は細いままである。

 

「言っておくけど、私のせいじゃないわよ」

「誰が食えって言った」

「マスターが自分で三個買ったんでしょうが」

「二個目までは付き合いだ」

「三個目は?」

「……《マジカル☆凌遅刑》の内容が決まった」

「決めないで!」

 

 内容は、結局この夜も決まらなかった。名前だけが、彼の頭の中で静かに待機している。

 

 彼は起き上がった。

 

 三歩を歩いて、机まで行った。スマートフォンはそこにある。世界の全部へ触れられる板が、手の届く場所に置かれている。

 

 彼はその横を通って、問題集だけを取った。

 

 電子の神は、世界を見るための三歩を歩かない。

 

 明日は世界規模のオークションだった。今夜の龍には、その前に有機化学が十九問目から残っている。世界を変えるより面倒な仕事が、机の上で待っていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

科(化)学系チート持ち転生者のお話(作者:金属粘性生命体)(原作:多重クロスオーバー)

▼ 数百世紀先の技術と創作上の技術を持って転生した男の好き勝手生活。▼ ディストピアルート、闇堕ちルート、どちらから先に読んでも問題ないようになってます。作者の個人的には闇堕ちルートの方がおもろいと思う。▼(作者の架空科学なので一切整合性はとりません、雰囲気で読め)▼ オタクルートを外伝にしました。↓がリンクです▼ https://syosetu.org/n…


総合評価:3461/評価:7.52/連載:107話/更新日時:2026年05月06日(水) 10:00 小説情報

TCG能力《創世札典》を手に入れた俺、一日一マナから現代社会を攻略する~治療、未来予知、若返り。マナが足りないので山を買います~(作者:パラレル・ゲーマー)(オリジナル現代/冒険・バトル)

都内のシステム関連企業で主任として働く、三十六歳の会社員・門倉啓介。▼仕事も収入も安定し、独身ゆえに貯金もそれなり。大きな不満はないものの、同じ毎日を繰り返しながら少しずつ疲れていく人生を送っていた。▼そんな休日の朝、啓介は突然、TCGのルールで現実を変える異能《創世札典/GENESIS DECK》を手に入れる。▼最初の土地カードは、彼が暮らす賃貸マンション…


総合評価:1166/評価:7.9/連載:21話/更新日時:2026年08月09日(日) 22:47 小説情報

祖父の遺品整理をしていたら封印AIが起動したので、地球中の異星遺産を回収して成り上がる(作者:パラレル・ゲーマー)(オリジナル現代/冒険・バトル)

三十五歳、売れないフリーライターの久世恒一は、親に頼まれて東京にある祖父・久世宗玄の家を整理することになる。▼変人扱いされていた祖父の家で彼が見つけたのは、封印された異星文明の管理AI《イヴ》と、現代ではチート級の価値を持つ超技術だった。▼最初の遺産《セル・チューナー》は、地球のバッテリーを桁違いの高性能品へ変質させる基幹技術。▼スマホは一ヶ月充電不要。死に…


総合評価:2607/評価:7.97/連載:49話/更新日時:2026年05月26日(火) 21:44 小説情報

地球みたいなファンタジー世界で仮面ライダー(作者:マル萎)(原作:仮面ライダー)

なぜか戦い続けることとなった一人の主人公と、終わった後のボーナスステージな異世界の話。あるいは仮面ライダーの無い世界に仮面ライダーを見せつけていく物語▼もしくは出したかったけどボツを書きまくってたネタとも言う。


総合評価:1209/評価:8.65/連載:5話/更新日時:2026年08月09日(日) 16:25 小説情報

超能力者のプロ野球人生(作者:星野林(旧ゆっくり霊沙))(オリジナル現代/スポーツ)

雷に打たれて超能力に目覚めた高校生、大久保利通は最初ノートのページを数メートル先から開く程度の能力しか持ち合わせていなかったが、練習で投げたボールが顧問の目に留まり、投手を志すことになる。▼・最初数話は高校生で能力を引き上げて、体を作る話になります。▼・4話目にドラフトを行う予定です。▼・長くても9月上旬まで連載できればと思っています。▼・毎日投稿を心がけま…


総合評価:942/評価:8.8/連載:5話/更新日時:2026年08月09日(日) 18:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>