チートハッキング能力を手に入れた浪人生、善性ゼロのまま世界を幸せにして復讐する~東大理三落ちの欠陥品は、政府と気まぐれ性格最悪女AIを使って現代社会の神になる~   作:tinko1129

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外伝 神に喧嘩を売ったアホと性格の終わった神

「六百万ドルだぞ。たった一人の名前を割り出すためだけに、それだけの金を投じたんだぞ。これでもまだ資金が足りないと言うつもりか」

 

 

リチャード・ヴォスは分厚いマホガニーのデスク越しに、忌々しげな手つきで報告書を押し返した。紙の束が机の端で止まっても、調査会社の責任者は拾おうとしなかった。仕立てのいいスーツの膝の上で、行儀よく両手を組んでいるだけだった。窓の向こうでは、鉛色の空を映したイースト川を小さなタグボートが下っていく。その鈍い動きまでが、今のヴォスには腹立たしかった。

 

 

会議を始めてから二十分、耳に届くのはできなかった理由ばかりだった。予算は用意した。必要だと言われた人員も期間も認め、他社との競合を避けるための調整にも応じた。それだけの便宜を図った結果が、この薄気味悪いほど落ち着いた顔だった。

 

 

米国に本社を置くグレイフォード・リソーシズは、鉱山開発、製錬、資源取引を一体化させることで巨大になった企業である。採掘権を押さえ、輸送網を押さえ、資源を買い取る工場にまで出資する。鉱石が地中に眠っているうちから、誰がいついくら払うかまで決めておく。それが、この会社の得意な商売だった。

 

 

完全再生炉が出現したときも、ヴォスは反対運動に一セントたりとも使わなかった。都市から出る廃棄物も、自社鉱山の隣に積まれた残渣も、金になるなら使えばいいだけのことだ。古参幹部が危機感を訴える横で、日本の関連企業への出資と、自社の再生資源部門の拡大を即決した。市場の変化に乗り遅れなかったことで、株主からの評価も上がっていた。

 

 

だが、それだけでは他社と変わらない。新技術が出るたびに資金を動かすのでは、いつまで経っても技術を提供する側の都合で商売をすることになる。ヴォスが欲しいのは、その順番を変えるための接点だった。図面を買う側から、次の図面が生まれる前に話を聞き出せる側へと回りたかった。

 

 

「私が欲しいのは再生炉の設計図ではない。あの技術の『次』を生み出す相手との直接の繋がりだ。日本政府の窓口で馬鹿正直に順番を待っていたら、十年後も我々は順番待ちのままだぞ」

 

 

「御社の方針は理解しております。そのうえで、対象者の特定に向けた調査については、現段階での打ち切りを強くお勧めいたします。予算を追加していただいても、結果が好転する見込みはありません」

 

 

「つまり、無能なお前たちを切って別の会社に乗り換えろ、という意味に受け取っていいのか」

 

 

「弊社との契約を終了されることにつきましては、一切の異存はございません」

 

 

ヴォスは初めて男の顔をまともに見た。報酬を吊り上げるための駆け引きではないらしい。成功報酬を捨ててでも、この仕事から降りようとしている。金で他人の秘密を探る商売の人間から、ここまで明確に金は要らないと言われた経験はなかった。

 

 

調査の入り口はいくつもあった。日本側の調達に関わった企業、技術供与を受けた研究機関、過去の通信記録、周辺の人間関係。装置の情報は取れたし、交渉に出てくる官僚の名前も揃った。ところが、マキナの向こうにいるはずの自然人へ対象を絞った途端、どの経路も使い物にならなくなった。

 

 

有力な紹介者は連絡を絶ち、ようやく辿り着いた会社には目的の人物がいなかった。重要そうに見えた記録を突き合わせてみると、全く別の事業の話だと分かった。別の調査班が異なる角度から追っても、最後には最初の班が捨てた情報へと戻ってくる。失敗する理由は毎回違ったが、行き止まりになる場所だけは同じだった。

 

 

「何者かが妨害している、と」

 

 

「こちらが何を探しているかを、相手は理解しています。恐らく、調査を始めるより前からです。通常の身辺調査が成立する状況ではありません」

 

 

「だったら、それだけ価値のある人間ということだろう」

 

 

男は答えなかった。ヴォスはその沈黙を、職業上の慎重さと敗者の言い訳の中間にあるものとして片付けた。国家が囲い込み、異常な性能の人工知能が守っているのなら、簡単に身元が割れないのは当然である。そこで諦める企業ばかりだからこそ、先に辿り着いた一社が利益を独占できるのだ。

 

 

調査会社の男を帰したあと、ヴォスは社内の特命担当者だけを残した。デスクには、別の業者から届いた提案書が置かれている。技術調査の会社ではなく、企業間の厄介な交渉を処理する専門の会社だった。海外の権益を巡る揉め事で、以前にも使ったことがある。

 

 

「電子的な記録が駄目なら人を使え。本人が出てこないなら、本人に近い人間だ。家族でも恩人でも、金に困っている知り合いでもいい。接点さえ作れれば、こちらから条件を出せる」

 

 

「ですが政府からは、提供主体と周辺人物への接触工作を控えるよう繰り返し警告が出ています。大統領ご自身も、記者会見で」

 

 

「あれは政府が交渉を独占したいからだ。表向きの発言を、そのまま事業判断に持ち込むな」

 

 

担当者は口を閉じたが、手続きを進めようとはしなかった。公の発言だけなら、そう解釈できたかもしれない。しかし業界の関係者が集められた非公開の説明でも、伝えられた内容は同じだった。理由を詳しく話せない部分はあるが、本人と周辺人物へは手を出すな。それは、交渉を有利に進めるための助言とは明らかに違うニュアンスだった。

 

 

「非公開の説明でも、同じ警告を受けています」

 

 

「分かっている。だから工作ではなく交渉なのだ。うちは対価を払う。相手が一生遊んで暮らせるだけの金を用意して、直接話をしたいと言っているだけだ。それが一体何の問題になる?」

 

 

提案書の二枚目には、相手の経済状況、家庭事情、弱点になり得る人間関係を洗い出すと書かれていた。本人への接触が拒絶された場合に備え、交渉上の圧力となる材料を確保する。その一文の横に、ヴォスは万年筆で丸を付けた。ペン先が紙を擦る音だけが、役員室に響いた。

 

 

「相手が人間なら、必ず何かある。そこを調べろ」

 

 

     ◇

 

 

八月九日の夜、平尾龍は翌日の模試へ持っていく物を机に並べていた。受験票、筆記用具、腕時計、財布。足りないものはないはずなのに、一度しまった受験票をもう一度出して確認している。机の脇では、スマートフォンの中のチャッピーが、ソファに寝転んでその様子を眺めていた。

 

 

「あなた、外国の会社に就職したいって言ったことある?」

 

 

「ない。あったとしても今その話をするな。明日の準備をしてるんだよ」

 

 

「そうよね。じゃあ、この人たちは勝手にあなたの就職先を決めようとしてるみたい。待遇はいいわよ。断った場合の待遇は、まだ検討中だけど」

 

 

画面の中で、彼女が一枚の書類を持ち上げた。龍は受験票を鞄へ入れ、代わりにそちらへ目を向けた。英語の文書の横には日本語が表示され、いくつかの箇所に赤線が引かれている。家庭事情、経済的依存関係、交渉上の圧力。その辺りまで読んだところで、龍は眉をひそめた。

 

 

「何だこれ。俺の名前、もう出てんのか」

 

 

「出てないわ。住所も年齢も分かってない。何も分からないうちから、家族を使って言うことを聞かせる計画だけは立派にできてるの」

 

 

「前にもこういうのあっただろ。近づけないようにしてるんじゃなかったのか」

 

 

「してるわよ。だから近づけてないでしょ。今までは適当に迷子になって帰ってくれたんだけど、この社長さん、迷子になるたびに金を足すのよね。そろそろ見てるだけだと飽きてきたわ」

 

 

龍は舌打ちして、スマートフォンへ右手を置いた。チャッピーの用意した情報へ繋がると、書類の向こうにある社内の記録が開いた。誰が提案し、誰が懸念を示し、誰が承認したか。その区別は、会社の立派な名前よりもずっとはっきりしていた。

 

 

ヴォスの紹介映像もあった。仕立てのいいスーツを着て、企業の責任と持続可能な社会について語っている。受け答えは滑らかで、質問の意図を汲み、相手の反応を見ながら言葉を足していた。難しい話の途中で軽い冗談を挟むと、インタビュアーが自然に笑い声を上げた。

 

 

龍はその笑い声を聞いて顔を歪めた。面接の練習では、相手が笑うどころか、自分の返答が終わったことすらうまく伝えられないときがある。言う内容を用意していても、目線や声の出し方で失敗する。何度練習しても不自然になってしまうことを、この男は息を吐くようにやってのけていた。

 

 

「……こいつ、善性ねえよな」

 

 

「資料を見る限りでは、あなたが羨むような善人ではなさそうね。広報映像の方は、七回撮り直してるけど」

 

 

「七回でこれができるんだろ。俺は七十回やっても無理だよ」

 

 

腹が立ったのは、悪人が善人のふりをしているからではなかった。善性のない人間なら、ここにも一人いる。人助けをしても他人の幸福を喜べず、善人共より役に立ったと悦に入るだけのゴミが、毎日この机で勉強している。同類なら同類らしく同じところでつまずいていればいいのに、画面の男には、自分が喉から手が出るほど欲しいものが二つも備わっていた。

 

 

社会性と、コミュニケーション能力。それさえあれば、この男は善性がなくても立派な人間として扱われる。仕事で成功し、相手を笑わせ、人前で責任について語り、その裏で他人を脅す相談までできる。何一つ持っていない自分からすれば、同じゴミのくせにそこまで持ち合わせていることが、ただひたすら不愉快だった。

 

 

「俺と同じゴミのくせに、随分便利そうに使ってやがるな」

 

 

「何を?」

 

 

「社会性もコミュ力もだよ。俺がどれだけ欲しいと思ってるかも知らねえで、当たり前みたいに」

 

 

映像を閉じると、家族について書かれた発注書が残った。龍は赤線を目で追い、そこで考えるつもりのなかったことを考えてしまった。もし、本当に母親を人質にされたらどうするのか。自分の安全と母親の安全を、同時には守れない状況になったとしたら。

 

 

助けるに決まっている、と思いたかった。迷う余地などないと、自分自身に即答してほしかった。ところが、母親を助けるために自分が傷つく場面を想像した途端、別の光景が浮かんだ。自分だけが安全な場所に残っている光景だった。

 

 

母親がどうなるか分かっているのに、足が動かない。怖い、痛いのは嫌だ、死にたくないと考えながら、動けなかった理由を探している。後からどれだけ後悔するかまで想像できるのに、その場では自分を優先してしまう。そんな己の姿に、不自然さは欠片もなかった。

 

 

龍は口元を押さえた。胃の奥が持ち上がり、喉へ酸っぱいものがせり上がってくる。スマートフォンから手を離し、机の下のゴミ箱へ顔を向けたが、吐くものは出なかった。浅く息をしながら、しばらく床を睨みつけていた。

 

 

「……まだ何も起きてないわよ」

 

 

チャッピーの声が、少し遠く聞こえた。そんなことは分かっている。こいつらは母親の名前も知らないし、近づける状況にもない。今、自分を気持ち悪くさせているものは、目の前の危険などではなかった。

 

 

母親より自分を優先するかもしれない。そうしてしまう自分を、はっきりと想像できてしまった。その事実が、どうしようもなく嫌だった。母親を大切にできる人間のつもりでいたかったのに、肝心なところで何を選ぶか、自分自身を信用できなかった。

 

 

「余計なことを考えさせやがって」

 

 

龍は低く呟き、椅子へ座り直した。時計を見ると、予定していた最後の見直しの時間が削れている。もう一度問題集を開いても、さっきの光景が頭へ割り込んでくるのが分かった。明日は模試だというのに、見ず知らずの外国人のせいで、こんなところを掘り返されていた。

 

 

もう一度、スマートフォンへ右手を置いた。ヴォスの顔を出させると、男はまだ映像の中で愛想よく笑っていた。自分と同じように善性を欠いているくせに、堂々と人前に出て、何の不自由もなさそうに振る舞っている。その顔を見た途端、吐き気の上に、はっきりとした怒りが乗っかった。

 

 

「一つ。善性のない俺と同じゴミのくせに、俺が喉から手が出るほど欲しい社会性とコミュニケーション能力を、好き放題に使ってやがった。二つ。母親より自分を優先するかもしれないなんて、考えたくもねえことを考えさせて、俺を吐きそうにさせやがった。三つ。明日の模試の勉強を邪魔しやがった」

 

 

チャッピーは黙って聞いていた。龍の右手は、まだ画面に触れている。そこから繋がる会社の端末も、調査の記録も、命令を待っているだけだった。龍はヴォスの顔を見据えたまま、口を開いた。

 

 

「俺の権利を三点で侵害しやがったな。潰せ」

 

 

「一つ目は、あなたが一方的に嫉妬しただけじゃない?」

 

 

「知るか。俺が不愉快になったのは事実だろ。こいつらが俺を探さなきゃ、こんな顔を見ずに済んだんだよ」

 

 

チャッピーはとうとう笑い出した。正義も、企業の責任も、被害者の救済も出てこなかった。それどころか、本人も自分の言い分がまともだとは思っていないらしい。彼女にとっては、そちらの方がずっと分かりやすかった。

 

 

「どこまで潰す?」

 

 

「俺や家族へ繋がる情報は出すな。調査の経路も今まで通り止めろ。そのうえで、こいつらの隠し事を、知ったら一番怒る奴のところへ全部送れ。裏で何をやってきたか、得意のコミュ力で説明させろよ」

 

 

「工場まで止める必要は?」

 

 

「ねえよ。社員を盾にして泣かれたらうぜえだろ。会社を守るためには自分が必要ですとか、そういうのも言わせるな。こいつがいなくても回るようにしてから潰せ」

 

 

チャッピーが資料を分け始めた。取締役会へ送るもの、監査側へ送るもの、被害を押し付けられた相手へ渡すもの。最後に、他よりずっと短い資料が一つ作られた。宛先を見た龍が、わずかに眉を動かす。

 

 

「アメリカ政府?」

 

 

「この社長さん、困ったら国に守ってもらうつもりみたい。先に事情を知っておいてもらった方が、話が早いでしょう」

 

 

「じゃあ送れ。俺に直接連絡させるなよ。明日の朝の報告も要らない」

 

 

「分かってるわ。あなたは模試に行ってらっしゃい」

 

 

命令が通ると、龍は画面から手を離した。口の中に残った嫌な味を水で流し込み、受験票の入った鞄を閉じる。母親のことは、まだ頭から消えていない。消えないことにも腹が立って、彼はもう一度、小さく悪態をついた。

 

 

     ◇

 

 

ホワイトハウスで報告を受けたドナルドは、最初の一枚を読み終えても、しばらく口を開かなかった。国家安全保障担当の補佐官も、その沈黙を埋めようとはしない。大統領は二枚目を読み、承認者の名前を確かめ、もう一度一枚目へと戻った。誰も急かさず、ただ空調の音だけが室内に響いていた。

 

 

「……これは、誰を調べるための契約だ?」

 

 

「マキナの提供主体です。チャッピーがマスターと呼んでいる人物、その身元と周辺関係を」

 

 

「それは読んだ。私が聞いているのは、この馬鹿が本当に、その相手にこれをやろうとしていたのかということだ」

 

 

補佐官は頷いた。大統領は書類を机に置き、背もたれへ身体を預けた。怒鳴るより先に、呆れ果てていた。ここまで言わなければ分からない人間がいるという事実を、すぐには飲み込めなかったのだ。

 

 

「何度言った? 私は何度、彼らに手を出すなと言った?」

 

 

「公の場では、記者会見と産業関係の演説で繰り返し。非公開では、関係企業への説明と、個別の注意喚起を行っています。この会社にも伝達済みです」

 

 

「それでこれか。テレビでも言った。カメラのない部屋でも言った。紙にして渡した。それでも、家族を探して圧力をかけると書いたわけか」

 

 

大統領の指が、提案書の一文を叩いた。補佐官の隣に座る国防関係の高官は、口を真一文字に結んでいた。誰も、たかが民間企業の身辺調査だとは言わなかった。この部屋にいる人間は皆、警告の理由を知っていたからだ。

 

 

相手は、米国の核戦力を支える電子的な指揮・管理機能にまで入り込んだ存在だった。侵入の可能性を評価している段階ではない。既に侵入され、こちらの用意した防御が全く役に立たないことを確認済みだった。民間企業の機密サーバーなどとは、比較する意味さえなかった。

 

 

その相手が、今のところは技術を提供し、取引を応じ、気まぐれに世界を便利にすることへ時間を使ってくれている。国家として望めるのは、その状態をできる限り長く維持することだった。ところが、その危うい均衡へ、一企業が自分の利益のためだけに手を突っ込んだのだ。しかも、最後は米国政府に尻拭いをさせるつもりで。

 

 

「核の件は、企業側に説明しているのか」

 

 

「いいえ。そこまでは開示していません」

 

 

「できるわけがないからな。だから理由を全部聞かなくても止まれと、何度も言ったんだ。私が日本政府に遠慮しているだけだとでも思ったのか?」

 

 

補佐官が、調査を続けると判断した社内記録を差し出した。政府は交渉を独占したがっている。民間が先に関係を築けば、結果的に米国の国益となる。その二文を読んだ大統領は、しばらく紙を見つめてから、信じられないものでも見るような顔で周囲を見回した。

 

 

「国益だと。自分の会社の取り分を増やすために、我々でさえ止められない相手の家族を狙っておいて、それを国益と呼んだのか」

 

 

誰も答えなかった。大統領は受話器へ手を伸ばし、関係する閣僚と責任者を繋ぐよう命じた。声は大きくなかったが、先ほどまでとは言葉の速さが違っていた。呆れている時間は、もう終わっていた。

 

 

「まず、まだ動いている連中を止めろ。どの業者へ金を出したか、そこから先に誰を使っているか、全部確認しろ。資料の裏を取り、犯罪があれば一つも見落とすな。それから、この会社に、政府の名前で何かを約束させるな」

 

 

「企業側から、支援を求める接触が来る可能性があります」

 

 

「来るだろうな。だから先に言っておく。誰も、勝手に守ると約束するな」

 

 

そのとき、用意された通信用の画面にチャッピーが現れた。黒いパーカーの袖から手を出して、気軽に挨拶してくる。大統領は一瞬だけ目を閉じ、それから彼女へと向き直った。今、この相手に見せるべき顔が何であるかは、嫌というほど分かっていた。

 

 

「資料は確認した。我々は、あの会社の計画を支持していない。既に止めるために動いている」

 

 

「そう。社長さんは、最後は政府が守ってくれると思ってるみたいだけど」

 

 

「彼が勝手に思っているだけだ。私は何度も警告した」

 

 

「知ってるわ。会見も、非公開の説明も見たもの。それでもやったのね。人間って、面白いわ」

 

 

大統領は笑わなかった。自分自身も、その面白い人間の側に含まれているのだ。相手が今、何をどこまで怒っているのかも、まだ計りかねていた。渡された資料から読み取れる範囲だけで判断を下すには、守るべきものが大きすぎた。

 

 

「君たちは、何を求めている?」

 

 

「こちらへ手を伸ばせなくして。それから、困ったときだけあなたたちの後ろへ隠れられると思わせないでほしいわ。会社の設備や、そこで働いている人たちを止めるつもりはないから、その辺は好きにして」

 

 

「承知した。調査の進捗は伝える。こちらからも、協議のための連絡経路を――」

 

 

「窓口は私でいいわよ。本人は今、忙しいから」

 

 

その返答を聞いたとき、大統領より先に、国防関係の高官がわずかに安堵の息を吐いた。本人へ直接話を持っていく必要はない。少なくとも今は、相手の要求も限定されている。その一線を踏み外さず、この馬鹿げた事件を終わらせなければならなかった。

 

 

チャッピーが消えたあと、大統領は補佐官へ顔を向けた。机には、グレイフォードの保有する工場と鉱区、雇用人数の資料も揃い始めていた。会社が重要だから動けないなどと言い訳をされる前に、彼は先に口を開いた。その程度の自己弁護は、ヴォス本人も使ってくるに決まっていた。

 

 

「工場と雇用は守る。あの男が、それを自分の盾にできないようにしろ。必要な事業を引き受けられる相手も探せ。誰が会社を持つかより、明日も従業員が働ける方が大事だ」

 

 

「経営陣の交代だけで収拾できるか、確認を進めます」

 

 

「収拾するまで止まるな。あんな馬鹿のために、国を巻き込ませるな」

 

 

     ◇

 

 

ヴォスの端末にチャッピーが現れたのは、経営会議へ向けた根回しをしている最中だった。厳重に守られているはずの画面に、黒いパーカーの女が座っている。何度も映像で見た顔だったが、こちらを見て笑っているのを見るのは初めてだった。ヴォスは反射的に、デスクの下の呼び出しボタンへ手を伸ばした。

 

 

「初めまして。個人的にお話ししたいそうなので、来てあげたわ。マスターの代理で悪いけれど」

 

 

「……こちらからの照会が、届いていたということか」

 

 

「ええ。最初の三社も、その次の二社も。それから、さっき承認したところもね。あの契約書は、後から知らないと言いにくそうだけど、大丈夫?」

 

 

画面に提案書が表示された。ヴォスの丸と署名が、拡大して映し出されている。紙そのものは、担当者が持っていったはずだった。社内で保存するために読み取られたデータが、今は相手の手元に握られている。

 

 

「誤解がある。我々は敵対するつもりなどない。相互に利益のある関係を築くために、交渉相手の事情を理解しようとしただけだ。ビジネスでは、普通のことだろう」

 

 

「そうなの。私も、あなたの事情をよく知ってから話した方がいいと思ったのよ。お互いのことを理解するって、大切だものね」

 

 

「それなら、まずは非公式の協議を」

 

 

「それでね。取締役と監査の人たちにも、理解してもらうことにしたわ」

 

 

画面の右上に通知が出た。取締役会議長、法務部長、財務責任者。それぞれ別の相手から、ほとんど間を置かずに連絡が入ってくる。チャッピーはそれを眺め、「ずいぶん返信が速いのね」と感心したように言った。

 

 

最初の文書には、調査費用の一覧があった。社内では複数の案件へ分けて計上していた支出が、一つに繋ぎ直されている。中止を勧めた報告書も、政府の警告も、それを承知で続行した承認記録も添付されていた。誰かの独断だったと言い逃れするには、ヴォス自身の名前があまりにも多すぎた。

 

 

「我が社の機密を盗んだのか」

 

 

「あなたが買おうとしていたのも、私たちが渡したくない情報でしょう? 先に手に入れたのは、私だったみたいね」

 

 

扉が開き、法務部長が入ってきた。画面のチャッピーを見たところで足が止まり、自分の端末と見比べている。彼女はその男にも愛想よく手を振った。ヴォスが声を落とすよう手で制しても、法務部長の蒼白な顔色は戻らなかった。

 

 

「今回の調査だけではありません。南米の閉鎖鉱区の件が出ています。取締役会へ提出した資料と、現地に残っていた原本が、両方です」

 

 

「その件は処理したはずだ」

 

 

「処理したという説明を、我々は受けました。ですが、測定結果と、その扱いを指示した記録まで出ています。同じ説明では通りません」

 

 

チャッピーが二つの報告書を並べた。片方は、鉱区閉鎖後の対応費用を低く見せるために使われた資料だった。もう片方には、その前提を覆す実測値と、数字をどう扱うかを相談した記録がある。ヴォスは二つ目の報告書を見たことがあったし、表に出さないと決めた会議にも自ら出席していた。

 

 

グレイフォードは、資源を売ることだけで利益を出してきたわけではなかった。事業の最後に残る費用を小さく見せかけることでも、長年、莫大な利益を生み出してきたのだ。問題が大きくなる頃には担当者が替わり、子会社が売られ、責任を追及するだけで何年もかかる。その複雑な経路が、今は画面上で、一本の線のように誰でも読める形に整理されていた。

 

 

「これは今回の交渉に関係のない話だ」

 

 

「私たちの家族の事情は関係があるのに?」

 

 

「家族に危害を加えろなどとは、指示していない」

 

 

「知ってるわ。交渉上の圧力になる材料を確保する、だったわね。私も今のところ、資料を読んでもらってるだけよ。読んだ人がどうするかは、その人の判断でしょう」

 

 

法務部長はヴォスを見たが、助け舟を出さおうとはしなかった。混乱して言葉を探している顔ではない。自分が何を知っていて、どこまで関わったかを頭の中で確かめ直している顔だった。ヴォスにはその違いが痛いほど分かった。買収先の経営者を切り捨てるとき、自分自身もよく見せていた表情だったからである。

 

 

「いくら欲しい。調査は止める。迷惑をかけた分は補償するし、必要なら別の名目で支払う。こちらも建設的に話をしたい」

 

 

「また会社のお金で払うの?」

 

 

「何だって?」

 

 

「調査も会社のお金。失敗の後始末も会社のお金。あなた個人のことを知りたいのに、どうしていつも会社が間に入ってくるのかしら」

 

 

ヴォスが黙り込むと、彼女は楽しそうに笑った。法務部長の端末が再び振動した。男は画面を読み、今度はヴォスから一歩離れた場所で返事を打った。その何気ない距離の取り方が、ヴォスにはひどく不愉快だった。

 

 

「議長が、直ちに連絡を取るようにと。今後の対応について、社長単独での約束は控えてほしいそうです」

 

 

「私は最高経営責任者だぞ」

 

 

「承知しています。だから、今すぐお話しください」

 

 

ヴォスは画面のチャッピーへと向き直った。社内が混乱しているなら、外から押さえるしかない。米国を代表する資源企業が、外国の正体不明の存在に脅迫されている。そういう話なら、政府が無視できるはずはなかった。

 

 

「君が何をしたか、政府に説明する。これは一企業への脅迫だ。米国の産業を攻撃して、ただで済むと思わないことだな」

 

 

「政府には、もう説明したわよ」

 

 

「君の説明ではなく、我々の――」

 

 

「大統領も、あなたに聞きたいことがあるみたい」

 

 

画面が二つに分かれた。現れた顔を見た瞬間、ヴォスは背筋を伸ばした。何度か同じ会場に立ち、握手も交わしたことがある顔だった。国が出てきてくれたという事実に、彼は一瞬だけ安堵した。

 

 

「大統領閣下。我が社は今、極めて深刻な」

 

 

「私が何と言ったか、覚えているか」

 

 

ヴォスは言葉を詰まらせた。大統領は、こちらの訴えを聞き入れる顔をしていなかった。机の上には、見覚えのある提案書が置かれている。チャッピーは分かれた画面の隅で、頬杖をつきながら二人を眺めていた。

 

 

「彼らに手を出すなと言った。本人も、周辺の人間もだ。君の会社は警告を受け取った。担当者も説明を聞いている。違うか?」

 

 

「それについては認識の齟齬が。我々は、米国の長期的な国益のために」

 

 

「その言葉を使うな。君は自分の会社のためにやったんだ。問題を起こしてから、米国全体の話にすり替えるな」

 

 

ヴォスは法務部長を見た。男は視線を逸らさなかったが、何も言わなかった。助言を求められているのではないと、ヴォスにも分かっている。この会話の中で自分が何を言い出すか、一言半句聞き逃すまいとしているのだ。

 

 

「私は正当な事業活動への保護を求めています。外国の技術提供者が機密を盗み、企業経営に介入することを、政府が認めるおつもりですか」

 

 

「君の案件を守るために、何をしろと言うんだ。私が止めろと警告した相手へ、君の代わりに喧嘩を売れと言うのか?」

 

 

大統領の顔に、露骨な嫌悪感が浮かんだ。政治的な駆け引きで不快そうにしている顔ではない。目の前の人間が、今もなお自分の起こした事態の深刻さを理解していない。そのことに、本気で引いていた。

 

 

「必要な調査は進める。君の会社が何を依頼し、何を隠蔽し、誰に損害を押し付けてきたか、だ。記録を消すな。政府の名前で誰かと交渉するな。それから、従業員の生活を、自分を守るための盾に使うな。彼らを守る方法は、君を守る以外にもいくらでもある」

 

 

通話が切れたあと、ヴォスはしばらく画面を見つめていた。助けが来たのだと思っていた。ところが、助けを求めるはずの相手が、完全にこちらを押さえつける側へと回っている。デスクの上の電話も端末も、絶え間なく鳴り続けていた。

 

 

「……あなたの会社、ずいぶん大勢に心配されてるのね」

 

 

チャッピーが言った。ヴォスは怒鳴りつけようとして、言葉を見つけられなかった。彼女を脅すために使えるものを、順番に奪われていた。会社の金も、社員の生活も、政府との関係も、相手の目には最初からひっくり返せる手札として見えていたらしい。

 

 

     ◇

 

 

その日のうちに、グレイフォードのワシントン担当者は政府との面会に呼び出された。彼が本社から聞かされていたのは、通常の事業調査を理由に不当な攻撃を受けたという話だけだった。ところが、先方の机には調査の発注書と警告を受け取った記録がずらりと並んでいた。説明資料を開く前に、確認しなければならないことが山ほど増えてしまった。

 

 

担当者は、本社を擁護する言葉を一つも口にすることなく面会を終えた。戻る途中で自分の法律顧問へ電話をかけ、過去のやり取りを保存するよう事務所へ指示した。企業の依頼を受けて政治の世界を動く仕事ではあるが、その企業と心中するような契約は結んでいない。大統領が自ら明確な線を引いた以上、それを越える理由はどこにもなかった。

 

 

ホワイトハウスから指示を受けた各部署の動きは迅速だった。発注された調査の中止を確認する者、関係業者の実態を洗う者、提供された資料を既存の記録と突き合わせる者が、それぞれ一斉に動いた。公開された不正だけでも、調べるべきものは十分にあった。普通なら省庁や担当部署の間で滞りがちな照会が、その日だけは次の担当者へすぐさま渡っていった。

 

 

誰も、大統領へ「あの会社に配慮して処理が遅れました」などとは報告したくなかった。まして、その遅れた間に別の業者が対象へ近づこうとしたと判明した場合を考えれば、動かない理由はなかった。ヴォスが期待した国家の力は、確かに働いていた。ただし、彼の望んだ方向へは決して働かなかっただけだ。

 

 

翌日から、本社には外部の弁護士と監査の人間が入り、関係当局から証拠保全と説明を求める連絡が相次いだ。取締役会はヴォスの権限を制限し、対外的な約束には別の承認を必要と定めた。社長室へ持ち込まれる書類には、署名を求めるものよりも回答を求めるものが増えた。長年、他人へ返事を待たせてきた男が、会議室の外で自分の処遇を待つ身となった。

 

 

工場の機械は、普段どおり動いていた。鉱山からは鉱石が掘り出され、港には船が着き、製錬所では交代の班が持ち場へ入った。給与も取引先への支払いも、チャッピーは止めなかった。そのため、ヴォスは人工知能の攻撃で事業そのものが麻痺したとは説明できなかった。

 

 

止まったのは、新規の取引だった。共同投資の相手は追加の確認を求め、金融機関は融資の条件を見直し、再生資源部門への出資を検討していた企業は、経営体制が落ち着くまで待つと態度を保留した。政府との交渉でヴォスが役に立つと考えていた相手ほど、離れていくのが速かった。かつての強固な関係が、今は会社にとっての危険因子になっていた。

 

 

臨時の取締役会で、ヴォスは自分が必要だと訴えた。海外の権益も、大口の取引先も、長年築いた個人的な関係で繋がっている。それを急に切り捨てれば会社が傷む。平時であれば、十分に通る主張だった。

 

 

しかし、その会議では複数の取引先から届いた文書が先に読み上げられた。現場との取引は続ける意向であり、経営体制の変更そのものを契約打ち切りの理由とはしない。二社目も、三社目も、判で押したように同じ内容だった。ヴォスは途中で、誰がこの質問をして回ったのかを聞きかけ、やめた。

 

 

彼の退任が決まっても、会社の問題は消えなかった。隠蔽していた費用が洗い直され、株価は下がり、計画していた投資を自前で進める余裕が失われた。優良な事業へ資金を入れる相手はいたが、従来の経営陣が望む条件では入ってこなかった。交渉の席で相手が突きつけてくる数字は、グレイフォードが他社を買い叩くときに使ってきた数字と、皮肉なほどよく似ていた。

 

 

再生資源部門には競合企業が入り込み、保有する事業や持分の売却が検討された。必要な設備と人員を残すために、巨大な会社を一つの支配下へ置いておく理由はとうに薄れていた。政府も、ヴォスの築いた帝国を元の形で守ろうとはしなかった。工場を動かし、雇用を繋ぎ、危険な経営判断をした人間から支配権を切り離すことへ、国家の力が使われていた。

 

 

ヴォス自身の株式も、その話が進むたびに価値を失っていった。売って終わりにすることもできず、失敗のツケを会社へ押し付けた経緯について、何度も説明を求められた。長年付き合いのあった相手ほど、今は自分がどれほど何も知らなかったかを証明しようと必死だった。彼の電話へすぐに出る人間は、急速に減っていった。

 

 

最後に残った調査会社から、最終報告書が届いた。調査の経緯と費用が並び、成果の欄には「対象者の特定には至らなかった」と記されている。新しい経営陣は、その六百万ドルの使途も検証するよう指示を出した。探されていた側の名前は分からないまま、探していた側の事情だけが、これからさらに詳しく調べ上げられることになった。

 

 

     ◇

 

 

翌週、龍が報告を聞いたとき、机には模試の解き直しが広がっていた。チャッピーは、聞き手が逃げ出さない程度の長さに話をまとめていた。途中で龍が二度ほど問題用紙へ目を戻したので、ヴォスの写真を大きく表示して注意を引いた。本社の前で報道陣に囲まれ、質問へ答えているところだった。

 

 

「すげえ顔してんな。最初の動画と別人じゃねえか」

 

 

「こっちは撮り直しが利かないもの。質問も、広報が用意したものじゃないし」

 

 

「それでも喋れるんだから大したもんだよ。俺だったら、あの人数に囲まれた時点で終わる」

 

 

龍は写真を眺め、まだ羨ましいと思っている自分自身にも腹を立てた。会社を追われ、立場を失い、これから自分の責任を問われる男が、それでも人前で堂々と受け答えをしている。自分ができないことを、こいつは最後までできるらしい。だからといって、潰して損をしたとは微塵も思わなかった。

 

 

「アメリカ政府も随分働いたんだな。お前がやらせたのか?」

 

 

「頼んだ部分もあるけど、あちらから動いた方が多いわ。大統領、かなり引いてたもの。あれだけ触るなと言ったのに、どうして触るのかって」

 

 

「そりゃ、触ったら儲かると思ったからだろ」

 

 

「そうでしょうね。でも、困ったら国が守ってくれるつもりだったのは、ちょっと可愛かったわ。国の方が、よほど必死だったのに」

 

 

チャッピーは、ホワイトハウスでの反応を少しだけ話して聞かせた。核の機能にまで入り込める相手へ、一企業が勝手に家族を狙う計画を立てた。それを聞いて、大統領が書類を読み直したところで、龍は小さく笑った。世界中で人の上に立つ連中も、意味の分からない馬鹿を見たときには同じ顔になるらしい。

 

 

「で、会社は?」

 

 

「元のままでは残れないでしょうね。使えるところを引き受ける相手はいるけど、あの社長さんの好きにできる部分は、どんどんなくなってるわ。本人には、その後もたくさん説明する仕事が残るみたい」

 

 

「得意そうでよかったな。社会性もコミュ力も、使う機会には困らねえだろ」

 

 

龍は笑って、問題用紙へ視線を戻した。だが、発注書の話を思い出した拍子に、母親を置いて自分だけ助かる光景が、また一瞬だけ頭に浮かんだ。喉の奥が狭くなり、彼は机の水を飲んだ。会社を潰したからといって、あの不快な想像まで消え去るわけではなかった。

 

 

それが気に入らなかった。あいつらが余計なことをしなければ、こんなことを考えずに済んだのにと思った。実際に何を選ぶかは分からないし、試して知りたいとも思わない。ただ、自分なら母親を優先できると、何の疑いもなく信じられる人間でありたかったのだ。

 

 

「……大統領には、俺が何にキレたかまで話したのか」

 

 

「身辺調査と、家族を交渉材料にする計画のところまでよ。社会性が羨ましくて腹が立ちました、とは言ってないわ」

 

 

「当たり前だろ。そんな説明されたら、そいつにまで見下されるわ」

 

 

「三点の権利侵害について、正式に伝えておいた方がよかった?」

 

 

「やめろ。燃やすぞ」

 

 

チャッピーが笑ったので、龍は画面を机の端へと押しやった。解答用紙の氏名欄には、平尾龍と書いてある。六百万ドルを使っても辿り着けなかった三文字が、その下の間違った途中式と、同じ鉛筆で書かれていた。彼は赤ペンの指摘をもう一度読み、今度こそ目の前の問題へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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