〔イッセーSIDE〕
―――《まもなく[駒王町]、[駒王町]です。下車するお客様方は荷物のお忘れが無いようよろしくお願いいたします》
乗っている公共交通機関の電車のアナウンスが目的地に間も無く到着するアナウンスを響かせた。
窓からは色々と建物が変わっているが、9年前に人間の兵藤一誠が生きていたことが消えた頃から変わらない雰囲気の街並みが見える。
人間としての兵藤一誠が死に今の俺が[異攻隊]として初めての任務で赴いた場所であり、クレアが今のクレアとなった場所。
まあ、それ以外に関しては大きな事件はこれと言ってない町だ。
まるで俺やクレアが事件を呼び寄せる災いみたいな感じだな。
―――《[駒王町][駒王町]です。私立[駒王学園]へはこの駅が降車駅となります。昨今、学生の忘れ物が多くなっていますのでご注意ください》
電車が止まり扉が開くと同時に車内アナウンスが再び流れた。
俺は電車を降りて、電子マネーパスで改札を通過し駅と商業施設が合わさった建物を出た。
「懐かしい様で…新鮮だな」
駅から出て感じた感想を呟いた。
生まれ故郷である懐かしい町だが、離れていた時期や人間だった俺や家族と親友がいなかったという事実を[神の子を見張る者]によって書き換えられた別の町とも感じられる。
本当ならバスとかでアリアスが用意してくれた自宅に行くべきだが、土地勘を取り戻すのと今の[駒王町]を見て感じる為に徒歩で移動する事にした。
まずは駅周辺は個人店はそのままだが、新しくできたチェーン店や時代に合わせた商業店舗などが出来ていた。
後は、駅周辺のシンボルである噴水がより豪華になっていたり、バリアフリーを意識した施設が増えいたな。
「商店街は―――変わってないな」
そして、駅と住宅街を繋ぐ大きな商店街はこれと言ってつぶれた店はなかった。
ガキの頃に通った駄菓子屋や、両親と一緒によく外食した飲食店やゲームセンターや玩具屋など。
店主や店員もそこまで変わってなく、人間だったころに仲良かった店員さんと目を合わせる事があったが、当然覚えているわけはないので軽く会釈する程度だ。
少し寂しい気もするけど、今の立場上はそれが一番都合がいいしな。
そんでもって住宅街もこれといってそこまで変わっていなかった。
俺が知っている家や表札の並びとか雰囲気とか。
唯一変わっているのは親友の松田と元浜の家には子供がいなかった事になっており、それぞれの妹が1人ずつ生まれている事。
そして―――
「俺ん家があった場所は別の家族が住んでいる……か」
俺と両親が住んでいた家は、家はそのままだったけど別の家族が住んでいた。
母親、父親、息子の3人家族で調べでは[異形世界]*1とは全くかかわりのない家庭だそうだ。
今住んでいる家庭が幸せそうに暮らしているのなら、元住んでいた者として安心だな。
「―――あの日まで…俺と両親を護ってくれてありがとな。今いる家族をよろしくな」
俺はそう元自宅に別れを告げて新しい自宅へと歩みを進めた。
◎
「一人暮らしが住むにはデカすぎないか?」
俺はおふくろからもらっていた自宅の住所の前についてそう呟いた。
大型のアメ車が前後ろそれぞれ3台、計6台余裕で入る車庫に、デザインはシンプルだが明らかに富豪が住むような大きな2階建ての一軒家。
いや、入る前からデカすぎるだろ…。
俺の見間違いだと思って表札を見たけど、ちゃんと[兵藤]と刻印されたおふくろが装備制作に使っている特殊合金の表札がある。
俺はおふくろ製もといアリス製のスマホを家の囲う見た目は一般的な柵だが、明らかにそこらの軍事施設以上の性能を盛っている柵と門のまえにある電子ロック部分翳すと―――
「開いたな…」
本当にここが俺の家らしい。
俺は若干引きつつ自宅の敷地内に入り、同じようにスマホで電子ロックを解除し家の中に入る。
内装は現代の一般家庭風でありながら、[異攻隊]だけに分かる隠しスイッチや万が一の対侵入者用の迎撃警備装置がそこら中にある。
まあ、この家を囲う柵と門を外壁として、アリス製独自の技術が盛り込まれた転移妨害や攻防一体のエネルギーバリアが張られている。
よほどの異能とか転移や空間に関する術者(主神クラスと戦えるレベル)でなければ侵入は不可能。
さて、再び内装に戻るが部屋は個人が住む用の部屋が7部屋。ダイニングキッチンつきのデカイリビングに、大人が7人入っても大丈夫な浴室と脱衣所兼化粧室。
他にも最新式の洗濯機と乾燥機が並んでいる洗濯室、に一階に3つ、二階に4つのトイレ。
二階の大きめのベランダに加えて、一階の外にある庭も綺麗な芝生が生い茂っており、20フィートコンテナくらいの倉庫もある。
「おふくろ…張り切りすぎだ…」
明らかに一人暮らしには過剰すぎる一軒家―――もはやちょっとした豪邸といってもいい。
部屋が七つあるのも俺を含めた[異攻隊]と[第一次異界大戦]で協力してくれた3人の為に取っておいたと言ったところか。
やりすぎな気がするけど、これも俺の為に張り切って用意してくれてもんだと思ってご厚意に甘えるとするか。
俺の部屋は―――1階の車庫近くにするか。
◎
「さて、飯はどうしようか…」
荷解き(キャリーバック一つ分)を終わらせた後は、今夜の夕食をどこで食べようか商店街を散策していた。
久し振りに両親とよく行っていた定食屋でも行くか。
懐かしの味を堪能しておきたいし。
そう考えて商店街に入った途端。
「テメェ! どこみて歩いてるんダァ?」
「…ぶつかって来たのはそっちです」
ガラの悪い大人に白髪ミディアムヘアーの中学二年くらいの学生服を着て猫のヘアピンをつけた女の子が絡まれていた。
周りはガラの悪い大人の恫喝に注目しつつ、自分達が関わってもどうしようもないと察して静観している。
まあ、何も力も無いのに干渉する方がたちが悪いのは同意だ。
ぶっちゃけ、いい年した大人が中学生くらいの女の子に嗚呼夕から身をするなんて大人げないよな。
でも、相手にしている女の子―――人間じゃなくて悪魔でありこの駒王町の異形関係を管理する上級悪魔の眷属悪魔。
名前は確か―――“塔城小猫”だったっけ?
見てくれじゃわかりにくいが、中学生でちゃんと体を鍛えている事がわかるくらいには体がしっかりしている。
立ち振る舞いからも死を伴う実戦に関しては多少なりやっているみたいだな。
「言い訳は聞いてねぇよ! 人様にぶつかっておいて謝罪もないとはどういうこったぁ! 俺はテメェにぶつかられてお陰で大事なブランドモンの靴に傷がついたじゃねぇか! どう弁償してくれんだぁ?」
「…さっきも言いましたけど、そっちから技とぶつかって来てます。私は何も悪くありません」
「ガキが舐めた言い訳してんじゃねぇよ! こうなったテメェを使ってこの靴の弁償代、100万を耳そろえて体で稼いでもらおうか!」
「…」
うわぁ…清々しいほどの言いがかりっぷり。
あの柄で100万円クラスの靴を買うなんて不可能だし、見たところ精々1~2万ってところか?
そもそも女の子に因縁付けて金を巻き上げるっていつの時代のヤクザだ?
とにかく悪魔の少女が下手に手を出す前に助け舟を出しますか。
俺は警察に目の前に起きた事を通報し終えてから、ガラの悪い大人の方に近寄り声をかけた。
「おい、そこの人相の悪いおっさん」
「あぁ? 俺のことか!?」
「人相の悪い大人はこの場じゃお前しか居ねぇよ。ていうか、いい年して中学生くらいの子供に因縁付けるとか恥ずかしくないのか?」
「俺はこのガキに100万する靴を傷つけられてるんだよ! 賠償を求めて何が悪いんだあぁん?」
「靴に傷ねぇ…明らかにこの少女が傷をつけるには無理なデカさだけど?」
「あぁん? ナマいってんじゃねぇぞ!」
「いや、靴の傷の形が明らかに刃物で切られたような見た目だろ。人間がどうやって歩いている脚の靴に入れられるんだ?」
「うっせーなクソ野郎! ぶっ飛ばされたいのか!」
うわ、正論言われてキレてるよ。
どうやったらこんな大人になれるか知りたいところだな。
「うるさいのはお前だ。周りを見ろ? 「うわぁ…なにあのガラの悪い人。勝手に因縁付けて女の子に絡んでる・・・最低」って言わんばかりの視線ばかりだ。恥ずかしくないのか?」
「黙れや!!」
そういって殴りかかってくるガラの悪い大人。
俺はその拳をあえて受け止める。
勿論倒れる気はないけど。
「おい、これは暴行罪だ。そして殴られた俺には正当防衛が適応される。言ってる意味が分かるか?」
「ハッ! 素人がナマいってんじゃねぇぞ! これでも俺はとある地元をまとめ上げた暴走族の頭やってたんだよ! テメェみたいにガタイばかりが良くて俺の拳を一発程度耐えたからって負ける訳ねぇんだよ!」
そういって俺に向かって殴る蹴るを繰り替えしてきた。
俺はその全てをノーガードで受け止める。
俺に取って殴られたどころか驚異のない接触程度だ。
「ハァ…ハァ…なんで…倒れるどころか…血が一滴も出ねぇんだよ…ッ!」
「ちょっとした武術の応用だ。攻撃を受ける瞬間だけ動いてお前の攻撃エネルギーを逃がしてダメージを0にしただけだ。所詮暴走族どうして行われる素人程度のストリートバトルを生き残った程度でプロに勝てるとでも?」
流石に「人間辞めた存在だから効かない」ってのはアレなのでもっともらしい嘘で誤魔化す。
「そんな…事…あるのか…よ!」
「世界は広いって事だオッサン。そしてお前は俺を何度も殴った。つまり、正当防衛が出来るんだけど―――覚悟しろよな?」
「なにを言って―――グヘァ!?」
俺は目の前のガラの悪い大人もといオッサンが言い終える前に、奴の顔面を鼻の骨をへし折る程度の加減をして殴る。
「は、はへ? 俺の…俺の鼻が折れたぁぁぁぁ!?」
鼻血を出しながら涙目になるガラの悪いオッサン。
「案だけ殴っておいて無事ってわけにはいかないだろ? でも俺は神様や天使と違って慈悲深いからな―――鼻を折る程度で勘弁してやるよ。それに―――」
「大丈夫ですか!?」
「通報があった現場はここですね!」
通報して警察が来る頃いだ。
「あ、通報者は自分です。警察が来る頃には変な事をされかねないとこのガラの悪いオッサンを止めようとしたんですが何回も殴られまして、正当防衛のために顔面一発入れときました」
「顔面に一発って…相手の鼻の骨折れているじゃないですか!」
「流石にやりすぎなのでは…。もしかしたらあなたが通報にいっていた不審者かもしれません。とりあえずご同行をお願いします」
まあ、自分より相手が重症なら疑われるよな…。
「…あの。警察さん」
すると、絡まれていた少女もとい塔城小猫が警察に話しかけた。
「どうしたんだい? お嬢ちゃん」
「…あの人は私を鼻が折れた大人から助ける為に止めに入ってくれました。何度も殴られたのも目撃していますが、その人はちゃんとした護身術を使っていなしていました。そして流石に反撃しないとまずい感じだったので一発だけ顔面に殴ったかんじです。なのでそこの人は何も悪くないです。あそこに監視カメラがあるでそれが証拠になります」
そう塔城小猫が近くにある商店街用の監視カメラを指さした。
「うーん。とりあえず状況整理の為に関係者全員にご同行するのは変わりないから君も付いてきてもらっていいかな?」
「…はい。助けてくれた人が悪く言われるのは嫌ですから」
なんだか助けようとした彼女になんか助けられたな。
これは助けた借りを早速返されちゃった感じだな。
◎
「君を疑ってすまなかったね。監視カメラの映像や周りの目撃者、何より被害者である女子中学生の証言で君は何も悪くない事が分かった」
「いえいえ。マッチポンプとかの可能性も考慮すれば自分が疑われる事は間違いないっすよ」
「そう言ってくれると助かるよ。ようやく日本の警察内部が良くなってきたのは良いけどそれでもカバーできないところがあるからね。はい、持っていた所品は全部返すよ」
「ありがとうございます」
あの後、俺と塔城小猫、ガラの悪いおっさんは駒王町にある[駒王警察署]*2に同行。
今回おきた一件について事情聴取されたが、先ほどの会話の内容により自分に咎は無いと言われた。
「しかし元自衛隊*3だとはね。25歳で辞めてしまうとは何があったのかい?」
所持品を返してくれた警察官に聞かれた。
「まあ、反りが合わなかったと言いますか…一人になれる時間が出来ないのが自分には合わなかったので」
「なるほどね。ともかく我々が来るまで被害者を守ってくれてありがとうね」
「いえ。市民としてできる最大限の事をやったまでですから。それでは―――」
俺は警察官に挨拶をして警察署を出た。
既に夜更けであり辺りは街頭や店の光で照らされている。
そして、警察署をでた先には塔城小猫と同じ学生服を着た紅髪を腰まで伸ばした長髪の学生がいた。
彼女の事は既に知っており、塔城小猫の主でありこの町の異形関係を管理する上級悪魔2人のうちの1人だ。
「…あ、大丈夫でしたか?」
「ああ。特にお咎めなしだったから大丈夫だよ。君こそ大丈夫だった」
「…私は被害者でしたので」
「そうか…。ところで隣にいる学生さんは?」
俺はわざとらしく紅髪長髪の女子学生の事を塔城小猫に聞く。
すると、紅髪長髪の女子学生が話しかけてきた。
「どうも。貴方が助けてくれたこの娘―――“塔城小猫”とルームシェアで生活している“リアス・グレモリー”と申します。この度は私のルームシェアメイトであり後輩を助けてくださりありがとうございます」
―――“リアス・グレモリー”。
表向きは海外にいる大富豪である資産家のグレモリー家の長女であり、現在日本に留学し同じ学園に通う彼女を含めた5人と暮らしている学生。
通っている学園はこの[駒王町]にある日本でも偏差値上位の小学学級から大学学級まで幅広い勉学施設である[駒王学園]*4の高等部1年。
それは人間社会での仮の身分。
本当の正体は人間ではなく聖書に記されし人外であり、人間や他種族相手に願いを叶える代わりに対価を得る人外の種族である[異形]の1つである[悪魔]。
その[悪魔]の中でも72家に連なりその全ての家が爵位持ちの純血の上級悪魔が連なる名門の1つである[グレモリー家]の次期当主であり上級悪魔。
いわゆる貴族令嬢であり、若いながら同期であり同じ72家に連なる家の[シトリー家]の次期当主とこの駒王町の異形関係を管理している。
[悪魔]というか基本的に大概の異形はデフォで人間や他の異形を差別したり下に見るが、彼女やもう1人の上級悪魔はそういった事をしない現代にぴったりな理想の管理者と日本神話でも評価が高い。
「どうも。自分は今日から駒王町に越して来た“兵藤一誠”です」
「どうも兵藤一誠さん。この度は私のルームメイトを助けてくださりありがとうございます」
「駄目な大人から学生を護るのはちゃんとした社会人の役目ですから。塔城小猫さんだっけ、俺の無実を証明してくれてありがとう」
「…当たり前のことをしただけです。兵藤一誠さん」
「それでもだ。最近色々と面倒な世の中になっているからね―――それじゃあ、2人とも帰りは気を付けてね」
「はい。改めてありがとうございました」
「…ありがとうございました」
リアス・グレモリーと塔城小猫にそう挨拶を言われ俺は商店街へと戻り今日の夕食探しをした。
しかし、早速の帰郷がまさかのこの町の異形管理者の1人とその眷属と会う事になるなんてな。
まあ、出会いもこの程度なら特に俺が異形関係者っていうのもわからないだろう。
出来れば異形関係者として知り合いにならない方が平和ってもんだ。
ていうか、俺が異形管理者としてか[異攻隊]として関わる=ヤバい事件が起きてるって事だからな。
ちなみに昔通っていた店は臨時休業だったので、商店街にある居酒屋でおつまみを夕食代わりにした。