Life1:用務員イッセー
〔イッセーSIDE〕
駒王町に引っ越してから早2年経過した。
街では特に変わったことはなく、大きな事件も顕現するだけで周囲が滅びそうなヤバい存在が来訪したという事も無い。
あ、でも去年と一昨年はこの町に史上最強の男性悪魔であり現四大魔王の1人であるルシファーと[闘征覇神軍]と戦う為に共闘した史上最強の女性悪魔である知り合いが妹であるリアス・グレモリーと彼女の親友の授業参観に来ていたっけ。
なんか、噂によればインパクトがものすごくある兄と姉って言われていたな。
ルシファーの方はあまり関わったことないけど、知り合いの方は割とダメな方のシスコンだから想像しやすいな。
ていうか、アイツは妹の授業参観の為に俺ん家泊りに来たうえにいつでも泊まれるように空き部屋の1つを自室にして帰ったんだよな。
まあ、別に良いけど授業参観の帰りに真っ白になって「イッセーくん…私…ソーたんに嫌われちゃったぁぁぁぁぁ!!!!」って号泣したあげくやけ酒に付き合わされた。
因みに話を聞く限り知り合いが100%悪い。
なにせ妹の授業参観に魔法少女のコスプレして、[ソーたんLOVE]とデコった推し活団扇をもって見ていたらしい。
はっきり言おう、よほどのシスコンでもない限り嫌いになる。
なんなら絶縁も視野に入るくらいだ。
因みにルシファーとは知り合いは知り合いらしく、ルシファーの方はスーツ姿だったが、同じような推し活団扇を持って行ったお陰でリアス・グレモリーの学園生活に黒歴史が刻まれた。
そしてルシファーと同伴していた嫁にビンタの嵐を喰らって冥界に強制連行されたらしい。
なんというか、この世界って良い強者ほど割と変人が多いんだよな。
オヤジやおふくろ、クレアも結構変なところもあるし、俺に関しては表に出てないだけで性癖はマニアックに片足っ突っ込んでいるしな。
そんな思い出を振り替えつつ、俺は現在のバイト?先である駒王学園の用務員として雑草を刈っている。
なんで駒王学園の用務員になったかというと、こういう仕事は残業がない―――のではなく出来ない。
私立の学園だが働く時間に関してはちゃんと8時間かつ午前午後に30分の休憩と昼休憩に1時間が設定されている。
学園から出される業務内容に関しては1日でやる仕事というよりかは、この期間にやってほしい仕事をやると言った感じだ。
今やっている雑草刈りや、期間限定で使う施設の清掃や整備。
今日中にやってほしい仕事に関しては電球の交換とか誰でも出来る仕事だな。
そんな感じで休暇で行うバイトとしては最適でありつつ、駒王町の異形関係を管理しているリアス・グレモリーともう一人の上級悪魔、双方の眷属悪魔全員がこの学園の学生という立場で居る。
授業中に2人を狙った奴らが居ても、変な奴が入れば俺が先に処理して何も起きなかったと言った感じで対処できる。
それに―――
「あ、用務員さん。こんにちわ」
「こんちわーす。いつも学園を綺麗にしてくれてありがとうございます!」
こうやって普通の仕事をやって平和を感じられるのは良いことだ。
少しは自分のやって来たことが形になっているのを実感できるからな。
まあ―――俺もああやって楽しく学生生活を送れた人生があったのだろうか?って時々寂しくなるけどな。
今の道を進んでいる以上、俺に普通の生活も人並みの幸せも受け取る資格はない。
だからこそ平和に生きる全員にありふれた日常を過ごして欲しいもんだな。
◎
日は変わって土曜日の15時。
駒王学園の用務員は基本的に土日祝日は完全な休日となっている。
仕事がある日は体育祭や文化祭で大人が準備しなきゃいけない場所をやるくらいか。
「平和だな」
駒王町にある繁華街で
土曜日なのか、家族連れや学生たち、カップル達で楽しそうな雰囲気を感じる。
休暇が始まって2年だけど、こういった周りが平和な雰囲気は未だに慣れないな。
立場的に狙われる時期もあったし[第一次異世界大戦]の時は一般人や異形勢力に情報が漏れないように神経とがらせていたからな。
だからこそ―――
俺の数メートル前に居るのは、私服を着た駒王学園高等部2年の男子生徒と私服を着た堕天使の女。
このカップルに気づいたのは12時くらいで、俺が昼飯を食べ終えた頃に見かけたのがきっかけだ。
別に人間と異形が付き合っているのが異常って言いたいわけじゃ無い。
なんで、この町―――異形管理者が悪魔であり敵対関係にある堕天使が人間と白昼堂々とデートできるかって事だ。
周囲に悪魔の使い魔や監視している眷属悪魔も居ない。
しかも、男子生徒はデートを楽しんでいる様子だが、女堕天使は男子生徒の見えないところでそいつを軽蔑したような目でみている。
しかも、殺気まで向けていると猶更だ。
言っておくが、日本神話勢力圏内における異形の他勢力の活動には日本神話の許可がいる。
この町の異形管理をやっている悪魔も、悪魔が生業とする願いを対価に人から得るというものもちゃんと許可を得て行っている。
堕天使―――[神の子を見張る者]に関しての活動に宿した[神器]を扱い切れないか、扱い切れても所持者自体がそれを悪用する危険性から殺すと言った活動もある。
他の勢力圏内では暗黙の了解で許可されていて必要悪として認められている。
だが日本神話勢力圏内において、その活動自体はアリスが制作した神器関係の技術で日本神話勢力の者たちで殺さずに神器を対象から取り出し封印する技術が確立。
そういった事から堕天使の活動は日本神話勢力圏内において出来ない。
ていうか、悪辣な殺し方をする堕天使ばかりで怨念が積もって数年前に世界が滅びかけた。
だからこそ男子生徒とデートする振りをしているであろう女堕天使がこの町にいること自体が異常だ。
リアス・グレモリーに報告を―――っと言いたいところだが、彼女やもう1人の上級悪魔が感知していない、
そういった事も考慮して、偽装立場的に介入しても問題ない俺が尾行して万が一に備えた方が良い。
ま、相手は中級クラスの堕天使だから相手をする分には問題ない。
しかも俺の尾行に気づいていない時点で割と素人なところもあるしな。
「次はここ行こうぜ!」
「うん!」
俺は本気でデートを楽しむ男性生徒と、それを痣割るかのように演技する女堕天使の後を尾行しつづけた。
◎
尾行を続けて3時間。
場所は町はずれにある公園。
俺は念には念を入れて[透過]の能力を応用した技の1つである[ステルス・ペネレイト]を使って男性生徒の背後にいる。
雰囲気はまさに女堕天使からの告白って感じな雰囲気だが―――
「死んで………くれないかな?」
女堕天使の表情が、女子学生の顔から怪しげなお姉さん風の表情に変化。
それと同時に服装が露出が多いいボンテージ風の戦闘服に変わり、背中から2対4枚の堕天使の羽根を生やして男子学生を見下ろす様に空に飛んだ。
「は…? え…どういうことなんだ…夕麻ちゃん…?」
「残念だけどお前は死ななくちゃいけなくなったの。生まれながらに死なないと危険な存在ってやつよ」
「何を言っているのか分からない…んだけど…」
「それもそうね。お前みたいな下等種族が知る事すら烏滸がましいことだもの。でも、一つだけ冥途の土産に教えてあげる―――最高のつまらなくて反吐が出そうなデートだったわ」
女堕天使は右手に光の槍を生成、そして男子生徒の胸中央に向かって投擲した。
ただ普通の生活をしてきた男子生徒では人間の何倍もの身体機能や一般知識を遥かに超えたエネルギーを操る堕天使の攻撃を喰らえばひとたまりもない。
だから俺は―――投擲された光の槍から男子生徒を守るように背後から人差し指で止めた。
「私の槍が止められただと!? まさかこの人間の神器が覚醒したのか!?」
自分の攻撃が止められた事に驚く女堕天使。
「へ…?」
男子生徒も何が起きているか分からない様子。
俺はすぐさま男子生徒を当て身で気絶させ[ステルス・ペネレイト]をかけて女堕天使から姿を消す。
「人間が消えた!? 気配も全く感じないし移動した形跡もないなんて…ッ」
女堕天使が突然消えた獲物に混乱する中、俺は公園にある公衆トイレの背後に気絶させた男子生徒を運び下す。
そして懐からアリスが制作した日本神話の職員が持っている道具の一種である六角形上のデバイスの[
この装置は堕天使の総督でも実現できなかった生きたまま人間から神器を分離させる装置。
俺が宿していた神器のデータや、神器を抜き取られ放置された被害者の遺体や魂の残滓を糧に数年前に完成、現在では職員全員が使えるように量産されている。
その装置を設置すると、装置が四本の金属製のベルトを展開させ胸を包むように巻き付く。
そして数秒後、機械音と共に男子生徒から神器が分離され使った[神器分離機]に抜き取った神器が封印されている。
[神器分離機]には抜き取った神器の簡易的な情報が記されている。
―――神器名:[
[龍の手]か。
確か発動すると所持者の力を2倍にする状態変化形の神器だったな。
まったく…聖書の神は信仰心も無い人間にこうした異能を配るのだろうか。
望んでも無い過ぎたる力は異形への抑止どころか、堕天使に死刑宣告されるか、暴走して結果的に不幸になる呪いでしかない。
まあ、所詮は信仰欲しさの上位存在。
弱者の気持ちなんざどうでもいい一方的な善意に……って、
そんなことを考えつつ、俺はもう一つのアリス製の道具であるスティック形状デバイスの[
この道具は使った対象の24時間以内の記憶を後遺症と違和感なく記憶を置換できる装置だ。
俺は装置を操作して女堕天使に関する記憶を全て選択。
この時の記憶を超常的な存在に殺された記憶から、悪質なデート詐欺に引っかかって誘拐されかけたが、偶然居合わせた警察がやってきて阻止。
詐欺をした女は逃亡したという記憶に置換する。
これで男子生徒の方は問題ないか。
後は―――問題は女堕天使の方か。
未だに消えた男子生徒を探している女堕天使。
俺に取って脅威どころか敵ですらない奴が、俺の[ステルス・ペネレイト]を見破るのは不可能だ。
俺が今使っている[ステルス・ペネレイト]はかつて俺が宿していた神器に封印された[二天龍]と称された片割れのドラゴンが持っていた能力の1つである[透過]を応用して編み出した技。
元々は術や特殊な防御法、体質を透過させた対象にダメージを与えるだけの能力だったが、俺が神器を所持していた時に力を拡大解釈、
万物を透過させることから自分が発している姿、音、エネルギー、気配、物体を透過させて姿を消す。
一見万能に見えるが、透過する対象が多いい影響で派手な動きをすれば当然[ステルス・ペネレイト]は解除される。
あくまで潜入と隠密特化の技。
まあ、あの女堕天使くらいならこの状態でも、ノータイムで拘束、あるいは殺す事なんて造作もないけど。
俺としては女堕天使を拘束して日本神話で堕天使の仕事をした動機を問いただしたいところだが―――
そう考えていると、女堕天使の近くにグレモリー家の家紋を中心とした紅色の魔方陣が展開された。
「チッ…もう気づいたか…。まあ、これで向こうは私の計画に気づくことはないわね」
焦りから一転して意味深な言葉を残して堕天使式の転移術式でその場から居なくなる女堕天使。
奴の言った事が気になるが、今はこの男子生徒の保護をしないとな。
とりあえずオヤジ経由で色々と裏工作をしてもらおうか。
そうなると、リアス・グレモリーともう1人の上級悪魔に偽装身分だが異形関係者だと教える事になりそうだけど。
そんなことを考えつつ俺は男子生徒を抱えてその場を後にした。