〔イッセーSIDE〕
さて、オヤジから言われたリアス・グレモリーとの顔合わせ。
本来なら同じ管理者であるもう1人の上級悪魔とも顔合わせらしいが、別件で忙しく今回はリアス・グレモリーとその眷属悪魔達だけとなった。
一応、礼儀という形で手土産に京都に住む異形の知り合いである八坂さんに京都でも有名な和菓子を頼み持ってきた。
因みにひと箱1万はする高級和菓子である。
学生相手に高いと思われるが、相手は学生でありながらも悪魔では立派な貴族であり侯爵階級の家の次期当主だ。
服も休暇の際に何かあっても良いように買っておいた動きやすいビジネススーツ*1を着ている。
一応偽装身分用の名刺もあるから問題ないだろう。
そんでもって、今は駒王学園高等部がある場所に向かっている。
リアス・グレモリーともう1人の管理者が拠点としているのが駒王学園だからだ。
普通に考えて駒王学園という一般人の未成年が学園という学生が沢山いる場所に異形の拠点を構えるのは危機管理的に問題がある。
しかし駒王学園は只の学園ではない。
表向きは超難関な私立学園だが、その裏にあるのは大半の学生が異形か異形界関係の人間が通っている学園である事。*2
学生としているの大半は[異形界]を知っている人間か、異形そのもの、または異形と人間のハーフのみ。
なぜそのような状況になっているか?
それは異形界関係者が一般人が大量にいる学園に通うと、通っている異形界関係者によっては異形に襲撃され、一般人が巻き添えを喰らう事になるからだ。
実際に異形界関係者が紛れて通っていた[陵空高校]*3が[
その教訓から日本神話は異形界に関わる学生全員を一般人が通う学園施設に通わせるのは危険と判断し、既に入学者の大半が異形界関係者であり、小、中、高、大の学園施設が統合された駒王学園に集め一般人へのダメージコントロールを最小限に抑える意味合いでこのような現状になっている。
駒王町自体も住人の大半が異形界関係者であり、あと半年になると、[駒王町]と[駒王学園]は異形界関係者のみが住む異形界特区になる予定だ。
本当は京都に異形関係者を集約する計画だったが、あそこは日本の観光地として有名になりすぎた為に下手に一般人を移動させると色んな方面から悪影響が出る事から、駒王学園以外は普通の町である駒王町が選ばれている。
そういう意味ではリアス・グレモリーとソーナ・シトリーは日本神話においても大変な管理業務を担っているともいえる。
そうこうしているうちに気づけば駒王学園正門が見えて来た。
そして、正門を中心とした半径10mには人よけの結界が施されている。
結界内には腰に西洋剣を帯刀した鋭い目つきの金髪男子生徒と引っ越しした日に関わった塔城小猫が今日来る客人を迎えるような雰囲気で立っていた。
金髪の男子生徒は確かリアス・グレモリーの眷属悪魔の1人である“
彼を含めたリアス・グレモリーともう1人の上級悪魔、双方の眷属悪魔達の事は町に引っ越す前にどんな人物かは調べている。
あの鋭い目つき―――昔の俺を見ているようだな。
まあ、あんな過去があれば今でも復讐心が残り続けるのは仕方がないか。
そして待っている2人は俺の事に気づいたか、視線を向けて警戒してきた。
うん、ちゃんと管理者の部下として動けているのは感心だな。
俺は2人と会話できる距離まで近づき胸ポケットから偽装身分を証明する手帳を取り出し見せる。
「どうも。リアス・グレモリーの眷属悪魔の木場祐斗と塔城小猫。主から話は聞いているが休暇でこの町に住んでいる兵藤一誠だ」
「小猫ちゃん。どう?」
「…問題ありません。本人です」
2人は俺が見せた手帳と悪魔式によるスキャン魔法で俺を来客として認めた。
「ようこそ、兵藤一誠様。ご存じの通りリアス・グレモリー様の眷属悪魔[
「…同じくリアス・グレモリー様の眷属悪魔[
「2人ともよろしくな。そんでもって塔城小猫とは二年ぶりかな?」
「…その節はありがとうございました」
「良いって事よ。そんで肝心の主は拠点である旧校舎に居るのかな?」
「はい。自分と塔城小猫が案内します。着いてきてください」
「…どうぞ」
俺は2人の案内のもと見慣れた学園にはいり、リアス・グレモリーが拠点としている駒王学園ない部にある旧校舎に案内された。
外観は古い西洋風の建築物。
旧さを感じる者廃墟さはなく、ちゃんと手入れされた建物だと分かる。
内部も人気は無いが全体的にきれいである。
一階の建物奥に割と厳重な封印探されている気配があるが、悪魔と日本神話双方から封印指定を喰らっているリアス・グレモリーの眷属である[
そして俺は2人の案内に従うように2階に行き、オカルト研究部と表記された部屋の前に到着した。
「部長。兵藤一誠様をお連れしました」
木場祐斗がノックした後にそういうと―――
「入って頂戴」
扉の奥から2年前に会ったリアス・グレモリーの声が聞こえ、それを聞いた木場祐斗は扉を開けて俺を先に入るように促す。
俺は部屋に入る、
部屋の内部はオカルト研究部と書かれた札が似合うかのように部屋中に悪魔式の魔方陣が床や天井に刻まれており、明かりに関しては蝋燭が明かりのシャンデリアとなっている。
家具なども西洋の貴族を彷彿とさせており、いかにも悪魔の拠点って感じだな。
「こちらにどうぞ」
すると同じく2年前に会った姫島朱乃に部屋の上座に案内される。
「どうも」
返事をしながら座ると、部屋にあるいかにも責任者が座りそうなデスクからリアス・グレモリーが立ち上がり、俺の向かい側にある下座に座った。
「はじめまして…ではないですが、改めて自己紹介を―――駒王町の異形関係を管理している1人のリアス・グレモリーです。本日は私の拠点に来た頂きありがとうございます」
「改めて自分も自己紹介を―――日本神話特務員の兵藤一誠です。2年前ぶりですかね?」
「いえいえ。私の方こそあの件は貴方に助けられました。それと敬語は大丈夫です。兵藤さんの方が立場上は上ですので」
「そうか。あ、これをどうぞ」
俺は八坂さんに取り寄せてもらった京都の高級和菓子の土産をリアス・グレモリーに渡す。
「これは…京都でもめったに手に入らない老舗の和菓子…!? ありがとうございます」
リアス・グレモリーは判り易く目を輝かせた。
情報の通り、かなりの日本好きだな。
「一応、住んでいる町の管理者をしてもらっているのでこれくらいは当然だからな。もう一つはソーナ・シトリー殿にも」
「ありがとうございます。私から彼女に渡しておきますわ」
ちなみにソーナ・シトリーに渡すのはリアス・グレモリーと同じ意味と同時に知り合いが迷惑をかけたのでその詫びという意味もある。
「お茶です」
姫島朱乃から紅茶がだされた。
俺は出された紅茶を飲む。
「美味いな」
「ありがとうございますわ」
姫島朱乃は笑顔でそう返してリアス・グレモリーの後ろに下がり、木場祐斗と塔城小猫も同じように下がる。
そしてリアス・グレモリーが話し始めた。
「さて、改めて町の異形管理者として礼とお詫びを―――この度は学園の生徒を護っていただきありがとうございます。そして私どもの不手際で一般の学生を危険にさらして申し訳ございません」
リアス・グレモリーと眷属達が深々と頭を下げる。
実際、俺が介入した機能の案件は管理者としては問題になる事ではある。
しかし、相手は悪魔と冷戦状態の堕天使でありオヤジから聞いた報告じゃ駒王町に堕天使が来るなんてことは公的な情報に乗ってない。
勿論、お忍びで来ているという状況でもない。
つまり完全な侵入者であり、いわゆる不法入国者でもある。
普通に他勢力の不法入国は出来ない様にそれなりの警戒はしているが、過去に他勢力の入国を許しすぎた影響で未だに抜け道が存在しているのが現状だ。
そういった抜け道は表の部隊が潰しているが、それでも潰し切れないのが現状だ。
「そこは仕方がない。過去に他勢力が出入りし放題が影響して未だに抜け道が残っている現状は少しずつ改善していっているだけだからな。それに一時的な日本神話所属とはいえアンタは悪魔。下手に堕天使と事を構える事が出来ないのは此方でも把握している。だからこそこの件で責任を追及するつもりはないよ」
「寛大な処置。ありがとうございます」
「そうか。まあ、俺の立場上はぶっちゃけるとアンタの所の魔王と対等に話せる立場―――ある意味じゃ日本神話の主神と代弁者になるってのは聞いているか」
「はい。そして休暇中の身であることも把握しています」
「それならよかった。そんでだ―――件の堕天使については何処まで調べがついているんだ?」
「そうですね。取り合ず私の眷属悪魔であり[
「中級クラスともなれば下級クラスをそれくらいは引き連れるが……そんな大人数が侵入とはな」
「ええ。[神の子を見張る者]が日本神話の勢力圏内に遺した転移施設でもその人数を送るのは難しいでしょう。なにより彼女達の存在を確認できるまで日本神話で違法な転移反応はなかったようです」
「なるほど」
彼女達と会う前にオヤジに貰った報告と大体同じだな。
しかし、姫島朱乃に堕天使の伝手か。
どうやら父親とはちゃんと仲良くやれているようだ。
悪魔に転生しているとはいえ堕天使の力を色濃く感じる。
「そうなってくると、レイナーレ達は[神の子を見張る者]から高度な転移装置と偽装装置を持ってきて日本に潜り込んだか。それとも―――」
「日本神話内に彼女達を手引きした内通者がいる―――私もそう考えています」
「若いながらそこまで考えられるとはな。アンタは前者と後者、どっちの可能性が高いと考えているんだ?」
「[神の子を見張る者]の高度な装置に関しては最上級クラス達が警備しており、使用にも幹部の許可が要ります。実力が中級クラスでも立場上は下級と変わらないレイナーレがそういった装置を使うのは不可能。故に―――内通者が居ると考えて良いでしょう」
「だろうな。そしてこの町に来たという事は―――」
「偶然か、またはこの町にある何かに目的があるのか…。数年前から日本神話は外交に関して強固な姿勢と急激な他勢力への規制を強めています。それにソーナと私は上級悪魔であり家の次期当主。それに加えて私は魔王の妹。そういう意味でこの町に居るという事で外部との情報をかなり制限しています。そのことから組織に表立って出来ない隠し事をするにはうってつけなのでしょう」
オヤジ大体同じ見解だな。
唯一違うのはそこにはぐれ悪魔とは違う―――
今の悪魔はそこら辺の警戒が薄いからオヤジや天照も心配している。
ま、しばらくこの町に俺が滞在する以上は彼女達では対処できない脅威が来れば俺が出張るから問題ない。
「そうだな。アンタはこれからどうする?」
「この町の異形界管理者として即捜索しつつ、逮捕と行きたいところですがもう少し裏を取って動く予定です。今回みたいに一般人に被害が出ない様に眷属達には学業を休んでもらい、町の警戒に当たらせます。ソーナも眷属にしたばかりの者以外は同じように動かす動きです」
「そうか。ウチの警戒が甘いせいでアンタ達の学生生活に影響を出してすまなかった」
俺は頭を下げる。
この町の異形界管理者とはいえど、彼女たちはまだ青春を謳歌すべき少年少女。
大人が今までないがしろにしてきたツケで苦労させるのは申し訳ない。
「あ、頭を上げてください! 実質魔王様と同じ立場の方に頭を下げられるのは…!」
「いや、本来であればアンタ達は学生として学び楽しむ身分。なのに大人が先延ばしにしてきたツケで苦労を掛けたんだ。しかも相手は種族的に敵対している堕天使相手。頭を下げるのは道理だ」
「…わかりました。すみません、私も魔王様と同じ立場の方に頭を下げられた経験が無いもので…」
リアス・グレモリーの言葉に顔を上げる。
「そうだな。だが、こうして責任ある立場として、頭は立場が上の時に下げてこそ初めて効果があるからな」
「ですね。私もずっと痛感している所です」
「ともかくだ。町の対処に関して俺は基本的に干渉はしない。だが、アンタ達で対処できない相手が来そうな時は遠慮なく声をかけてくれ―――これが俺の個人で使っている電話番号だ」
俺は偽装身分の名刺を取り出しリアス・グレモリーに差し出す。
「ありがとうございます。私や眷属達、そしてソーナと彼女たちの眷属達で町の治安をしっかりと守っていきますわ」
「よろしく頼む」
こうしてリアス・グレモリーとの偽りの身分での邂逅は平穏に済んだ。
しっかり、悪魔でありつつ純血、それに貴族出身なのにああやって他種族にちゃんと敬意がはらえる悪魔は珍しいな。
今まであって来た貴族出身の悪魔で彼女と同じような接し方をしてくれたのは、