内1隻は犬島。残りの3隻はランダム(今まで犬島のチャット内で未登場の艦娘)犬島含む3隻が過失無し。1隻が何らかの理由で過失有りの小説
海防艦・犬島
――四隻が重なった朝――
第一港内・出港順序違反連鎖衝突事故
事故の後。
調査委員会は。
かなり単純な結論を出した。
機関故障ではない。
舵故障でもない。
天候でも。
潮流でもない。
見張り不足が四隻にあったわけでもない。
本来の手順を。
そのまま守っていれば。
起きなかった。
たった一つ。
出港順序を。
一隻が自分の判断で変えた。
それだけだった。
それだけで。
海防艦。
駆逐艦。
軽巡洋艦。
重巡洋艦。
四隻が。
同じ港内で衝突した。
---
一 参加艦
午前七時二十分。
第一軍港。
同日出港予定。
四隻。
海防艦・犬島
沿岸護衛訓練。
駆逐艦・秋月
対空警戒訓練。
軽巡洋艦・能代
艦隊運動訓練。
重巡洋艦・妙高
砲術訓練。
四隻は。
同時刻帯に。
同じ港口を使用する予定だった。
第一軍港の出口。
狭い。
二隻並走。
不可。
大型艦のすれ違い。
原則禁止。
そのため。
港内管制が。
一隻ずつ。
順番に出す。
予定順。
一番。
犬島。
二番。
秋月。
三番。
妙高。
四番。
能代。
間隔。
各艦。
最低三分。
単純な手順だった。
---
二 犬島出港
午前七時三十二分。
港内管制。
『犬島、出港を許可』
犬島。
「犬島、了解です」
係留索。
解除。
両舷機関。
前進微速。
犬島は。
第一岸壁を離れる。
港内速力。
六ノット以下。
指定。
犬島。
五・五ノット。
右。
確認。
左。
確認。
後ろ。
確認。
「前を見て」
「横を見て」
「後ろも見る」
いつもの確認。
問題なし。
港口へ。
ゆっくり向かう。
その後方。
秋月。
まだ岸壁。
妙高。
待機位置。
能代。
第四岸壁。
全て。
正常。
この時点では。
事故になる要素は。
ほとんどなかった。
---
三 秋月
午前七時三十五分。
港内管制。
『秋月、出港許可』
秋月。
「了解しました」
犬島との間隔。
十分。
秋月。
前進微速。
指定航路へ。
犬島の後方。
約四百メートル。
秋月は。
犬島の実艦を見ながら。
「犬島さん、予定どおりですね」
犬島。
『はい』
「今日は河口へ行かないんですよね」
犬島。
少し間。
『行きません』
秋月。
「よかったです」
犬島。
『何でみんなそこ確認するんですか』
通信。
少し和む。
妙高も。
岸壁で聞いていた。
能代も。
聞いていた。
---
四 本来なら妙高
午前七時三十八分。
次。
妙高。
港内管制。
『妙高、出港準備』
妙高。
「妙高、了解」
係留索を。
外す準備。
主機。
待機回転。
その時。
能代。
第四岸壁。
機関状態確認中。
能代は。
少し焦っていた。
艦隊訓練。
集合時刻。
予定より。
かなり余裕が少なくなっている。
原因。
出港前点検。
冷却系の確認。
異常ではなかった。
ただ。
点検項目を。
一つ。
再確認したため。
十五分ほど。
遅れた。
能代自身。
「間に合う」
とは思っていた。
だが。
妙高が先。
自分はその後。
三分。
さらに港口通過。
これでは。
集合地点到着が。
ぎりぎり。
能代は。
考えた。
妙高は。
まだ岸壁。
自分は。
すでに係留索を外せる状態。
港内管制へ。
順番変更を頼めばいい。
本来なら。
そうする。
ところが。
その時。
能代の無線には。
別の通信が入った。
訓練部隊。
『能代、予定位置への到着見込みを報告』
能代。
「予定どおり到着します!」
返事をした。
してしまった。
---
五 能代の判断
能代は。
港内管制へ。
連絡を入れる。
「能代です」
「妙高さんより先に出てもよいですか?」
港内管制。
すぐには答えない。
複数通信。
犬島。
秋月。
曳船。
補給艇。
処理中。
本来の手順。
返答があるまで待機。
明確。
だが。
能代は。
妙高を見る。
妙高。
まだ岸壁。
港内航路。
前。
空いているように見えた。
犬島。
かなり前方。
秋月。
その後。
自分が出ても。
間隔はある。
能代は。
「大丈夫」
と判断した。
返答。
まだない。
それでも。
「能代、出ます」
係留索。
解除。
前進微速。
第四岸壁から。
離れた。
これが。
事故原因になった。
---
六 妙高も出る
ほぼ同時。
港内管制。
『妙高、出港を許可』
妙高。
「了解」
妙高は。
予定どおり。
岸壁を離れる。
その時。
妙高の左前方。
建物の陰。
第四岸壁側。
能代が出ている。
妙高から。
最初は見えない。
能代からも。
妙高の艦首付近。
倉庫。
岸壁クレーン。
一部死角。
港内管制官。
画面。
二つの艦影。
同時に動いている。
「待て」
すぐ無線。
『能代、停止!』
『妙高、停止!』
妙高。
即座。
「両舷停止」
能代も。
「停止!」
だが。
二隻とも。
すでに動いている。
---
七 交差
妙高。
大きい。
能代。
妙高より小さい。
しかし。
どちらも。
急には止まらない。
妙高の艦首。
港内中央航路へ。
能代。
その前を。
斜めに横切る形。
距離。
二百メートル。
百五十。
妙高。
「能代、右へ!」
能代。
「右は岸壁です!」
妙高。
「こちらが後進する!」
妙高。
機関。
後進。
能代。
前進を一度入れて。
妙高の前方を抜けようとした。
これは。
二つ目の判断ミス。
停止命令後。
本来。
そのまま停止を続けるべきだった。
だが。
能代は。
「抜けた方が早い」
と思った。
能代の速度。
再び上がる。
妙高。
後進。
それでも。
間に合わない。
---
八 第一衝突
午前七時四十分十三秒。
能代。
右舷後部。
妙高。
艦首左側。
接触。
衝撃。
「っ!」
能代。
船尾。
左へ押される。
妙高。
艦首。
右へ振れる。
大破するような。
高速衝突ではない。
港内。
低速。
だが。
問題は。
二隻の進路。
衝突で。
能代は。
中央航路へ。
横向きに近い姿勢で押し出される。
その先。
秋月。
---
九 秋月の回避
秋月。
前方。
犬島。
後方。
異常な汽笛。
振り返る。
能代。
横向き。
妙高。
その後方。
秋月。
「え?」
港内管制。
『秋月、前進!』
秋月。
即座。
「了解!」
機関。
前進強速。
ただし。
港内。
犬島が前方。
犬島との距離。
約三百メートル。
犬島も。
通信を聞いている。
犬島。
「秋月さん、来ますか」
秋月。
『はい!』
犬島。
すぐ判断。
「犬島も前進します!」
港口。
狭い。
犬島。
速力上昇。
秋月も。
追う。
後ろから。
能代。
止まりきれない。
---
十 犬島は港口へ
犬島。
港口まで。
約二百メートル。
前方。
外海。
安全。
問題。
港外から。
小型補給艇。
入港予定。
犬島。
無線。
「補給艇さん!」
「港口へ入らんでください!」
補給艇。
『了解、外で待つ!』
犬島。
さらに加速。
秋月との距離を。
保つため。
港口へ。
犬島。
「秋月さん」
『はい』
「うちにぶつからんように」
秋月。
『分かってます!』
犬島。
「能代さんは」
秋月。
一度。
後ろを見る。
能代。
まだ制御回復中。
妙高。
さらに後。
「来てます!」
---
十一 能代が秋月へ
能代。
第一衝突で。
船尾を押された。
舵。
使用可能。
機関。
正常。
だが。
姿勢。
斜め。
右舷後方。
妙高との接触で損傷。
能代。
舵。
左。
機関。
後進。
船体を止める。
だが。
妙高から受けた力と。
自身の前進。
港内潮流。
複合。
秋月へ。
追いつく。
秋月。
前進。
だが。
犬島が前にいるため。
急激な増速はできない。
距離。
百メートル。
七十。
五十。
秋月。
「犬島さん!」
犬島。
「見えとります!」
犬島は。
港口を抜ける。
外へ出た瞬間。
右へ回頭。
航路中央を。
秋月へ空ける。
「秋月さん、そのまま!」
---
十二 第二衝突
秋月。
港口。
あと。
約五十メートル。
能代。
後ろ。
ついに。
船首。
秋月。
艦尾。
接触。
ごん。
秋月。
前へ。
押される。
「きゃっ……!」
秋月自身も。
姿勢を崩す。
能代。
「秋月!」
秋月。
「大丈夫です!」
だが。
押された秋月。
急に前進。
犬島。
右へ回頭中。
まだ。
完全に航路から。
外れていない。
秋月の艦首。
犬島の左舷艦尾方向。
犬島が見る。
「……来ますね」
---
十三 犬島の選択
犬島は。
左へ避ければ。
秋月の真正面。
右へ。
さらに回頭。
その方が。
接触角度を浅くできる。
犬島。
右いっぱい。
左舷機。
前進。
右舷機。
後進。
船尾を。
秋月から。
逃がす。
秋月も。
右へ。
だが。
能代に押された直後。
速度。
予想より高い。
犬島。
「もう少し」
秋月。
「犬島さん!」
犬島。
「分かっとります!」
---
十四 第三衝突
午前七時四十一分二秒。
秋月。
艦首右舷側。
犬島。
左舷艦尾。
接触。
低速。
斜め。
犬島の船尾。
横へ押される。
犬島自身。
少しよろける。
「っ……」
秋月。
すぐ。
機関停止。
犬島も。
停止。
しかし。
後ろ。
能代。
さらに。
妙高。
港口付近に。
四隻。
近すぎる。
妙高は。
第一衝突後。
ほぼ停止できていた。
だが。
能代は。
秋月への衝突後。
速度がまだ残る。
秋月。
犬島。
接触状態。
能代。
そこへ。
さらに近づく。
---
十五 第四衝突
能代。
全速後進。
距離。
三十。
二十。
十。
止まらない。
能代の艦首。
秋月。
艦尾側。
もう一度。
軽く接触。
秋月。
前へ。
犬島へ。
犬島。
秋月に押され。
右へ。
そして。
犬島の艦首側。
港口防舷設備。
すれすれ。
犬島。
「右舷機、後進!」
犬島は。
岸壁への接触だけは。
回避。
結果。
四隻。
妙高。
能代。
秋月。
犬島。
一本の港内航路上で。
数十メートルから。
百メートル程度の範囲。
ほとんど。
詰まるように。
停止した。
---
十六 静かになる
数秒。
誰も。
何も言わない。
犬島。
自分の艦尾。
確認。
秋月。
艦首。
確認。
能代。
前後。
確認。
妙高。
艦首。
確認。
港内管制。
沈黙。
最初に。
犬島が言う。
「……全員おりますか」
秋月。
『おります』
妙高。
『こちらも問題ありません』
能代。
少し遅れて。
『……います』
犬島。
「怪我は」
秋月。
『大きいものはありません』
妙高。
『こちらも』
能代。
『ありません』
犬島は。
少しだけ。
息を吐く。
「なら」
「まずはよかったです」
---
十七 損傷
四隻。
低速事故。
沈没。
なし。
火災。
なし。
大規模浸水。
なし。
犬島
左舷艦尾。
外板変形。
手すり。
約六メートル損傷。
爆雷関連装備外周。
軽度変形。
推進軸。
異常なし。
舵。
正常。
修理。
約九日。
秋月
艦首右舷。
軽度圧壊。
艦尾。
能代船首との接触痕。
後部甲板。
局所変形。
推進器。
正常。
修理。
約十二日。
能代
右舷後部。
妙高艦首との接触損傷。
艦首。
秋月艦尾との接触痕。
外板。
広範囲擦過。
修理。
約十八日。
妙高
艦首左舷。
圧壊。
錨鎖孔周辺。
軽度変形。
主構造。
問題なし。
修理。
約十三日。
人的被害。
軽い打撲。
数名相当。
重傷。
なし。
---
十八 事故調査
問題。
誰が。
何を。
していたか。
航跡。
港内管制記録。
機関ログ。
舵角。
無線。
全部残っていた。
犬島
出港許可。
受領。
予定順。
一番。
指定速度。
遵守。
秋月からの接近時。
港口を出て。
航路を空ける回避。
適切。
過失なし。
秋月
出港許可。
受領。
予定順。
二番。
指定間隔。
維持。
後方異常確認後。
管制命令どおり増速。
犬島との接触回避。
実施。
能代に押されたことで。
犬島へ接触。
過失なし。
妙高
出港許可。
受領。
予定順。
三番。
港内管制指示どおり出港。
能代発見後。
即停止。
後進。
衝突回避を実施。
過失なし。
能代
予定順。
四番。
順番変更を要請。
しかし。
港内管制から許可を受ける前に離岸。
さらに。
停止命令後。
妙高前方を抜ける目的で。
一時的に前進を再開。
これが。
第一衝突。
その後の連鎖事故へ。
つながった。
能代に過失あり。
---
十九 原因
調査委員会。
主原因。
«軽巡洋艦能代が、港内管制による出港順序変更の正式許可を得ないまま離岸したこと。»
副次原因。
«妙高との接近時、停止命令を受けた後に前方通過を企図し、再度前進操作を行ったこと。»
重要事項。
機関。
正常。
舵。
正常。
通信。
正常。
視界。
良好。
天候。
穏やか。
港内管制。
正常。
つまり。
本来の手順。
「許可が出るまで待つ」
それだけで。
事故は起きなかった。
---
二十 能代
事故調査後。
能代は。
犬島の修理岸壁へ来た。
犬島は。
左舷艦尾を。
工員に直してもらっている。
能代。
「犬島」
「はい」
「ごめんなさい」
犬島は。
すぐには答えなかった。
今回は。
「誰も悪くない事故」
ではない。
犬島は。
そこを曖昧にしなかった。
「能代さん」
「はい」
「今回は」
「能代さんが待たんかったのが原因だったんですよね」
能代。
「……うん」
犬島。
「なら」
「悪くないとは言いません」
能代が。
少し俯く。
犬島は続ける。
「でも」
「わざとぶつけたわけでもありません」
「はい」
「次」
「同じことをせんかったら」
少し間。
「それでええと思います」
能代。
「怒ってないの?」
犬島は。
少し考える。
「怒っとります」
能代。
「……やっぱり」
犬島。
「少しです」
---
二十一 秋月
秋月も。
犬島へ。
「犬島さん」
「はい」
「すみません」
犬島。
「秋月さんは悪くありません」
秋月。
「でも」
「私が犬島さんに」
犬島。
「能代さんに押されたからです」
秋月。
「それでもぶつかったのは私です」
犬島は。
少し考える。
「じゃあ」
「うちも秋月さんの前におったので」
「半分?」
秋月。
「そういう話ではありません」
犬島。
「ですよね」
二人。
少し笑った。
---
二十二 妙高
妙高は。
一番。
落ち着いていた。
犬島。
秋月。
能代。
全員の修理状況を確認。
最後。
能代へ。
静かに言った。
「能代」
「はい」
「急いでいる時ほど」
「順序を飛ばしてはいけません」
能代。
「……はい」
「三分待てなかった結果」
妙高は。
四隻の修理予定表を見る。
「合計五十二日分の修理が発生しています」
能代。
「数字で言われるときついです」
犬島。
少し離れた場所から。
「分かります」
妙高。
「犬島?」
犬島。
「河口事故で距離を数字で言われた時」
「嫌でした」
秋月。
「今その話ですか?」
犬島。
「ちょっと似とったので」
---
二十三 処分
能代。
故意ではない。
事故後。
隠蔽なし。
虚偽報告なし。
自分の操作。
全部。
認めた。
そのため。
厳重な懲戒ではなく。
- 港内操艦訓練の再履修
- 出港管制手順の再教育
- 一定期間の単独出港制限
- 訓練部隊への事故報告提出
- 四隻合同での再発防止訓練
となった。
能代自身も。
異議なし。
「当然です」
と答えた。
---
二十四 再訓練
一か月後。
同じ第一軍港。
同じ四隻。
犬島。
秋月。
妙高。
能代。
出港順。
今回も。
犬島。
秋月。
妙高。
能代。
港内管制。
『犬島、出港許可』
犬島。
「了解です」
出る。
三分。
『秋月、出港許可』
秋月。
「了解しました」
出る。
三分。
『妙高、出港許可』
妙高。
「了解」
出る。
最後。
能代。
待つ。
一分。
二分。
能代。
無線。
「能代、待機中」
返事。
まだ。
能代は。
動かない。
三分。
港内管制。
『能代、出港を許可』
能代。
少しだけ。
息を吐く。
「能代、了解」
それから。
初めて。
係留索を外した。
---
二十五 犬島の確認
港外。
四隻。
正常航行。
犬島が。
後ろを見る。
秋月。
妙高。
能代。
全員。
いる。
犬島。
「能代さん」
『はい』
「今日は」
少し間。
「ちゃんと待ちましたね」
能代。
『待ったわよ!』
犬島。
「よかったです」
能代。
『子供みたいに言わないで!』
秋月。
『でも大事です』
妙高。
『そうですね』
能代。
『三対一はずるくない?』
犬島は。
少し笑った。
---
二十六 事故報告書の最後
正式事故名。
第一軍港出港順序逸脱による四艦連鎖接触事故。
事故艦。
海防艦・犬島。
駆逐艦・秋月。
軽巡洋艦・能代。
重巡洋艦・妙高。
責任判断。
«犬島――過失なし。»
«秋月――過失なし。»
«妙高――過失なし。»
«能代――出港順序および停止命令に関する手順逸脱を認定。»
そして。
再発防止。
一行。
«出港順序変更を希望する場合、港内管制による明示的な許可を得るまで現位置を保持すること。»
犬島は。
そこを読んで言った。
「最初から書いてあった手順ですよね」
提督。
「ああ」
「新しい規則ではない」
「はい」
犬島は。
少し考える。
「事故が起きたから」
「難しいことを増やすんじゃなくて」
「元からあることを守ればええんですね」
提督は。
頷いた。
犬島も。
報告書を閉じる。
「なら」
「次は起きんと思います」
---
二十七 四隻
その後。
犬島。
秋月。
妙高。
能代。
四隻が。
同じ港を使う機会は。
何度もあった。
能代は。
出港許可が。
一秒でも来なければ。
待つようになった。
ある日。
犬島が。
能代の横を通る。
能代。
「まだ許可来てないの」
犬島。
「はい」
能代。
「だから動かない」
犬島。
「はい」
能代。
「何か言いたそうね」
犬島。
少し考える。
「成長しましたね」
能代。
「犬島!」
秋月が笑う。
妙高も。
少しだけ。
口元を緩める。
事故そのものは。
無かったことにはならない。
能代に。
過失もあった。
でも。
手順を破った理由。
何を間違えたか。
何を守れば起きなかったか。
全部。
四隻とも知っている。
犬島は。
いつものように。
前を見る。
横を見る。
後ろを見る。
そして。
少しだけ。
能代を見る。
「今日は大丈夫ですね」
能代。
「今日はじゃなくて」
少し間。
「これからも大丈夫よ」
犬島は。
静かに頷いた。
「なら」
「それでええです」