海防艦・犬島
――宇野港に帰ってきた日――
玉野一般公開・「本人に聞いてみよう」騒動
犬島が。
宇野港へ入港する。
その情報がSNSへ投稿された時。
軍令部。
鎮守府。
そして犬島本人。
少しだけ。
身構えた。
これまで。
犬島の名前がSNSで広がる時。
ろくなことがなかった。
貨物列車を脱線させた。
鹿を線路へ追い込んだ。
山間部の発電所を止めた。
観覧車を七百メートル沖から停止させた。
存在しているだけで事故を起こしている。
そこまで言われたこともある。
だから。
«「海防艦犬島、宇野港へ入港」»
という投稿が。
急速に広がった時。
犬島は。
提督へ聞いた。
「今回は」
「何をしたことになっとるんですか」
提督。
「何もしていない」
犬島。
「ほんまですか」
「ああ」
「一般公開だ」
犬島。
少し間。
「……普通ですね」
「普通だ」
それだけのはずだった。
だが。
思っていた以上に。
人が集まった。
---
一 玉野へ
午前八時十二分。
岡山県玉野市。
宇野港沖。
犬島。
速力。
六ノット。
実艦。
静かに。
入港航路へ。
犬島自身は。
艦橋前方。
白い半袖水兵服。
紺色のプリーツスカート。
深緑色のスカーフ。
右側。
淡い桃色の花を模した髪留め。
琥珀色の目。
岸。
見える。
犬島は。
少しだけ。
表情を緩める。
提督。
「どうした」
犬島。
「玉野です」
「そうだな」
「うちの真ん中を」
少し間。
「造ってくれたところです」
犬島にとって。
玉野は。
特別だった。
自分の原形となった艦。
その中央部。
最も大きな部分。
それを建造した。
玉野造船。
犬島にとって。
岡山県。
そして玉野。
一番。
故郷と感じる土地。
宇野港の岸壁。
すでに。
かなりの人。
犬島。
「……多くないですか」
提督。
「ああ」
「聞いていた数より」
犬島。
「事故でも起きました?」
「起きていない」
「なら」
犬島。
少し困る。
「何でこんなにおります?」
---
二 SNS
その朝。
宇野港周辺。
投稿。
«犬島きた!»
«本当に宇野港にいる»
«玉野に犬島帰ってきた»
«今日一般公開らしい»
«実艦も見られる»
そこまでは。
普通。
続いて。
誰かが。
以前のSNS騒動を思い出した。
«本人いるなら貨物列車の件聞いていいのかな»
それに。
返信。
«鹿の件も聞きたい»
«観覧車止めた件本人に確認しよう»
«停電の電波について聞ける?»
そして。
イベント公式案内。
«海防艦犬島一般公開
艦内公開・装備説明・艦娘本人による質疑応答あり»
ネット。
一気に。
«本人に聞けるの!?»
«これは行く»
«「鹿追いましたか?」を本人に聞ける»
«犬島本人によるファクトチェック会»
«宇野港、今日すごそう»
犬島は。
それを。
入港後に見た。
しばらく。
端末を見る。
提督。
「どうだ」
犬島。
「一般公開より」
「質問会が目的になっとりません?」
「半分くらいは」
犬島。
「……まあ」
少し考える。
「ええですけど」
---
三 着岸
午前八時三十九分。
宇野港。
指定岸壁。
犬島。
右舷着け。
タグ。
使用せず。
微速。
操舵。
正常。
岸壁。
接近。
前部係留索。
後部。
スプリング。
順次。
固定。
機関停止。
犬島。
着岸完了。
何も起きない。
岸壁。
観客。
拍手。
犬島。
少し驚く。
「何で拍手ですか」
工員。
「うまく着いたからじゃない?」
犬島。
「普通に着いただけです」
工員。
「最近のお前」
少し間。
「普通が一番喜ばれるんだよ」
犬島。
「……それは」
少し笑う。
「分かります」
---
四 一般公開開始
午前九時三十分。
受付開始。
来場者。
予想。
約二千人。
実際。
午前中だけで。
三千人近く。
家族。
鉄道好き。
艦船好き。
地元住民。
学生。
年配者。
犬島をSNSで知った人。
そして。
「本当に事故ばかりなのか本人に聞きたい」
という。
少し変わった目的の人。
犬島実艦。
公開区域。
前甲板。
第一主砲付近。
艦橋下部。
中央甲板。
中央十二糎砲周辺。
後部甲板。
機関区画。
安全上。
一部のみ。
犬島自身。
午前十時から。
岸壁特設テント。
質疑応答。
最初の質問。
小学生。
「犬島ちゃんは」
犬島。
「はい」
「ほんとに鹿を追いかけたんですか」
会場。
一瞬。
静か。
そして。
少し笑い。
犬島。
真顔。
「追いかけてません」
「鹿」
「近くで見たことが一回あるくらいです」
小学生。
「じゃあ鹿が勝手に線路に行ったの?」
犬島。
「はい」
少し考える。
「たぶん」
会場。
笑い。
---
五 貨物列車
次。
高校生。
「貨物列車を脱線させたって投稿」
「見ました?」
犬島。
「見ました」
「どう思いました?」
犬島。
少し考える。
「最初」
「どうやってですか」
「って思いました」
会場。
笑い。
高校生。
「貨物列車って詳しいですか?」
犬島。
「詳しくないです」
「知ってることは?」
犬島。
指を一本。
「長いです」
二本。
「荷物を運びます」
三本。
「機関車がおります」
少し間。
「このくらいです」
観客。
笑う。
別の人。
「コンテナは?」
犬島。
「四角いです」
今度は。
もっと笑う。
犬島。
少し頬を膨らませる。
「ほんまに」
「そんなに知らんのです」
---
六 第三次久瀬川
年配の男性。
少し真面目な質問。
「犬島さんが鉄道に興味を持ったのは」
「久瀬川の事故がきっかけですか」
犬島。
表情。
少し落ち着く。
「はい」
「あの時」
「橋に普通列車がおりました」
「人がいっぱい乗っとって」
少し間。
「止まってくれて」
「ほんまによかったと思いました」
男性。
「貨物列車とは」
犬島。
「別です」
即答。
会場。
笑い。
犬島。
「そこ」
「大事です」
「うちが見たのは」
「乗客を乗せた四両の普通列車です」
「貨物じゃありません」
「後から少し鉄道を見るようになりましたけど」
「人を運ぶ列車の方です」
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七 観覧車
次。
若い女性。
「観覧車の件なんですけど」
犬島。
「はい」
「あれ、本当に七百メートル沖にいたんですか?」
「おりました」
「止まる瞬間も見た?」
「見ました」
「何かしました?」
犬島。
「見ました」
「それだけ?」
「それだけです」
女性。
笑う。
「後でその観覧車乗ったんですよね」
犬島。
「はい」
「止まりました?」
「止まりませんでした」
会場。
拍手。
犬島。
「何で拍手ですか」
女性。
「実証実験みたいだから」
犬島。
「遊びに行っただけです」
---
八 停電
今度。
大学生くらいの男性。
「発電所を電波で止めたって話」
犬島。
すでに。
少し嫌そうな顔。
「ありましたね」
「実際」
「犬島さんの電探で発電所止められます?」
犬島。
「止められません」
「百キロくらい先でも?」
「距離の問題じゃありません」
会場。
笑い。
犬島。
「うち」
「発電所の仕組み」
「ほとんど知りません」
「太陽光パネルに日が当たって」
「電気ができる」
「くらいです」
別の人。
「電動ドリル直してたんですよね」
犬島。
ぴく。
「何でそこまで知っとるんですか」
会場。
大笑い。
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九 本人に聞くと早い
午前十一時。
質疑応答。
予定。
四十分。
実際。
一時間半。
質問。
ほとんど。
事故。
SNS。
ただし。
犬島を責める雰囲気。
ほぼない。
むしろ。
「本人に直接聞くとどれだけ意味不明な話だったか分かる」
という。
妙な人気。
SNS。
リアルタイム。
«犬島本人「貨物列車は長い」»
«犬島本人「鹿は追ってません」»
«犬島本人「観覧車は見ただけ」»
«犬島本人「発電所は止められません」»
«犬島本人「コンテナは四角い」»
最後のもの。
なぜか。
一番拡散。
犬島。
昼休み。
それを見る。
「何で」
「これが一番伸びとるんですか」
提督。
「分かりやすいからでは」
犬島。
「うち」
「もっとちゃんとしたことも言いました」
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十 玉野の人
午後。
質疑応答。
少し変わる。
地元。
玉野市民。
年配女性。
「犬島ちゃん」
「はい」
「玉野に帰ってきた気分は?」
犬島。
今度は。
少しだけ。
照れた。
「帰ってきた感じします」
「やっぱり?」
「はい」
犬島。
実艦を見る。
「艦の中央部を」
「玉野で造ってもらっとるので」
「うちにとって」
「岡山は」
少し間。
「一番、故郷って感じがします」
観客。
今度は。
笑わない。
静かに。
聞く。
犬島。
「宇野港も」
「前から来たかったです」
年配女性。
「おかえり」
犬島。
少し驚く。
そして。
笑う。
「ただいまです」
会場。
拍手。
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十一 事故じゃない質問
子供。
「好きな食べ物は?」
「白桃です」
即答。
別の子供。
「工具直すの好き?」
「好きです」
「何で?」
犬島。
「壊れたままじゃ」
「使えんので」
「直ったら」
「また使えます」
別の人。
「船も同じ?」
犬島。
「はい」
「壊れたら」
少し笑う。
「また直しゃあええです」
地元の人たち。
その言葉。
よく覚えた。
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十二 実艦の人気
犬島本人。
質問会。
かなり人気。
しかし。
実艦も。
人気。
子供。
「これが犬島?」
案内員。
「そうです」
「犬島ちゃんとこの船って同じなの?」
案内員。
説明。
犬島は。
艦娘。
そして。
目の前の実艦を。
直接制御している。
人間の乗員。
乗っていない。
主機。
二基。
二軸。
一枚舵。
前部。
第一主砲。
中央。
中央十二糎砲。
さらに。
艦の中央部。
玉野建造。
来場者。
外板。
甲板。
艦橋。
かなり熱心に見る。
SNS。
«犬島本人もかわいいけど実艦もかなり面白い»
«78.9mって近くで見ると結構でかい»
«乗員いないって不思議»
«玉野で造った中央部を本人が故郷って思ってるの良い»
---
十三 事故の痕
一般公開。
展示。
事故説明。
ただし。
煽る展示ではない。
小さな。
パネル。
第三次久瀬川河口進入事故。
貨物船側。
操舵故障。
犬島。
正規航路。
鉄道橋直前。
停止。
人的被害なし。
別。
浚渫鋼索事故。
海底から浮上。
右舷推進器へ。
巻込み。
犬島側。
過失なし。
通信途絶事故。
送受信設備故障。
命令受信不能。
意図的無視。
否定。
来場者。
読む。
そして。
以前。
「事故を起こしに行っている」
と報じられた話。
知る。
一人の男性。
犬島へ。
「こうして見ると」
「事故の種類」
「全部バラバラなんですね」
犬島。
「はい」
「うちも」
「まとめて起こそうとして起こせる内容じゃありません」
男性。
少し笑う。
「確かに」
---
十四 例の質問
午後二時二十分。
若い男性。
「犬島さん」
「はい」
「事故って」
「自分から起こしに行ってるんですか?」
一瞬。
周囲。
少し緊張。
以前。
犬島を。
閉じこもらせた言葉。
でも。
質問者。
責める顔ではない。
むしろ。
本人から。
はっきり聞きたい。
そんな感じ。
犬島。
少しだけ。
考える。
そして。
答える。
「行ってません」
「護衛に行っとります」
「帰投もしとります」
「普通に航っとります」
「その途中で」
「事故が起きることがあります」
少し間。
「うちも」
「起きん方がええです」
男性。
「ですよね」
犬島。
「はい」
「できれば」
小さく笑う。
「記事にならん日がええです」
---
十五 人気が出る理由
午後三時。
来場者。
さらに増える。
最初。
「事故が多い犬島を見たい」
だった人。
少しずつ。
変わる。
「本人がかなり普通」
「事故の話を聞いても人のせいにしない」
「でも自分に過失がないことはちゃんと言う」
「岡山弁ちょっと出る」
「工具の話になると急に詳しい」
「貨物列車は全然詳しくない」
「白桃好き」
SNS。
新しい投稿。
«犬島、事故ネタより普通に話す方が面白い»
«思ってたよりかなり真面目»
«質問に全部ちゃんと答えてくれる»
«鹿の話振られると少し嫌そうなの面白い»
«宇野港一般公開、犬島本人が強すぎる»
犬島。
休憩中。
読む。
「最後」
「何が強いんですか」
提督。
「人気では」
犬島。
「戦闘の話じゃないんですね」
---
十六 地元の子供
小学生。
女の子。
犬島へ。
「犬島ちゃん」
「はい」
「今日」
「事故起きない?」
犬島。
少し考える。
「起きんと思います」
「ほんと?」
「今のところ」
少し間。
「何もありません」
女の子。
「じゃあよかった」
犬島。
「はい」
その言葉。
犬島には。
妙に。
嬉しかった。
大きな活躍。
なし。
事故。
なし。
誰かを救う。
なし。
ただ。
一般公開。
人が来る。
話す。
帰る。
それだけ。
犬島が。
以前。
望んだ。
「記事にならん日」。
ただし。
今回は。
記事になる。
事故ではなく。
一般公開で。
---
十七 軍令部
軍令部。
午後。
一般公開の状況。
報告。
総長。
「来場者数は」
「午後三時時点で五千二百人」
「多いな」
「犬島本人への質疑応答が」
「かなり人気です」
総長。
「何を聞かれている」
参謀。
資料。
読む。
「鹿」
総長。
「まだ鹿か」
「貨物列車」
「うむ」
「発電所」
総長。
笑う。
「観覧車」
会議室。
少し笑い。
そして。
参謀。
「玉野へ帰ってきた感想」
総長。
少し。
真面目に戻る。
「それは」
「『一番故郷って感じがする』とのことです」
総長。
頷く。
「それでいい」
---
十八 午後四時三十分
一般公開。
終了予定。
午後四時。
ところが。
まだ。
列。
犬島。
「延長します?」
担当者。
「三十分だけ」
犬島。
「分かりました」
提督。
「疲れていないか」
「ちょっと」
「やめてもいい」
犬島。
列を見る。
小さな子供。
家族。
地元の人。
「もう少しやります」
最後。
質問。
中学生。
「犬島さん」
「はい」
「今日」
「一番面白かった質問は?」
犬島。
かなり考える。
「……」
観客。
待つ。
犬島。
「鹿です」
会場。
大笑い。
---
十九 閉場後
午後五時。
一般公開。
終了。
来場者。
約六千四百人。
予想。
大幅超過。
事故。
なし。
救急搬送。
なし。
迷子。
二件。
どちらも。
すぐ保護。
犬島実艦。
損傷。
なし。
係留設備。
正常。
観覧車。
関係なし。
貨物列車。
関係なし。
鹿。
なし。
停電。
なし。
犬島。
岸壁。
ようやく。
座る。
「疲れました」
提督。
「大人気だったな」
犬島。
「何ででしょう」
「事故で名前を知った人も多い」
犬島。
「それ」
「喜んでええんですか」
「今日来た理由は」
提督。
宇野港。
人が帰っていく。
「犬島本人に会いたかったからだろう」
犬島。
少し黙る。
そして。
小さく。
「なら」
「ええです」
---
二十 SNSに残った写真
その日の夜。
SNS。
一枚の写真。
宇野港。
夕方。
犬島の実艦。
その横。
犬島本人。
小さく。
手を振っている。
投稿文。
«事故の犬島じゃなくて、普通に玉野へ帰ってきた犬島を見られてよかった。»
別。
«本人に鹿の話聞いたら「追ってません」って即答された。»
別。
«貨物列車の知識「長い・荷物・機関車」だけだった。»
別。
«玉野を故郷って言ってくれたの嬉しかった。»
別。
«犬島一般公開、事故何もなし。普通に大成功。»
犬島。
最後の投稿。
見る。
「これ」
提督。
「何だ」
「事故何もなし」
「はい」
少し。
嬉しそう。
「そこ」
「ちゃんと書いてくれとります」
---
二十一 宇野港の夜
犬島は。
その日は。
宇野港へ。
一晩停泊。
一般公開終了後。
静かになった港。
岸壁。
街の灯り。
瀬戸内海。
犬島。
前甲板。
一人。
提督。
後から来る。
「今日はどうだった」
犬島。
「楽しかったです」
「鹿の質問も?」
犬島。
「それは」
少し考える。
「まあ」
「今なら笑えます」
「貨物列車は」
「もうちょっと勉強してもええかもしれません」
提督。
「興味が出た?」
犬島。
「少し」
「コンテナが四角いだけじゃ」
「また笑われるので」
提督。
少し笑う。
犬島。
「笑わんでください」
---
二十二 故郷
夜。
犬島。
宇野港。
自分の実艦を見る。
中央部。
玉野で。
造られた。
自分の。
大きな部分。
犬島。
小さく。
「帰ってきました」
提督。
「誰に言った」
「玉野にです」
「返事は」
犬島。
港。
見る。
波。
岸壁。
工場。
街灯。
「たぶん」
少し笑う。
「おかえりって言ってくれとります」
---
二十三 翌朝
翌朝。
午前八時。
犬島。
宇野港。
出港。
岸壁。
昨日ほどではない。
それでも。
見送り。
かなりの人。
犬島。
汽笛。
一回。
手。
振る。
岸。
旗。
手。
スマートフォン。
多く。
犬島。
「また来てもええですかね」
提督。
「歓迎されるだろう」
犬島。
「次は」
少し考える。
「事故の質問」
「減りますか」
提督。
「どうだろうな」
犬島。
「まあ」
少し笑う。
「鹿くらいなら答えます」
実艦。
宇野港を離れる。
その日の。
SNS。
最も広がった投稿。
«海防艦犬島、宇野港一般公開終了。
来場者約6400人。
事故なし。
停電なし。
列車脱線なし。
鹿なし。
観覧車停止なし。
犬島本人はかなり楽しそうだった。»
返信。
«「最後の一行だけでいいだろ。」»
さらに。
«「でも犬島だから全部確認したくなる。」»
犬島。
帰投後。
それを見る。
少し。
呆れる。
でも。
笑う。
「今回は」
「普通に人気になりました」
提督。
「ああ」
犬島は。
少しだけ。
胸を張る。
「それなら」
「ええです」
事故ではなく。
誤報でもなく。
誰かが壊れたわけでもなく。
ただ。
犬島が。
故郷の玉野へ帰ってきた。
人が会いに来た。
話した。
笑った。
そして。
普通に帰った。
犬島にとって。
それは。
事故の記録より。
ずっと残しておきたい一日になった。