海防艦 犬島   作:重装甲空母信濃

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軍令部は犬島の事故を世間に逐一報告することを諦めたため犬島にSNSアカウントを運用させるようにした。投稿することは事故があった場合の詳細と時々犬島が良いなと思ったことのみ。


犬島公式SNSアカウント

海防艦・犬島

 

――犬島、SNSを始める――

 

軍令部公式認証アカウント「海防艦 犬島」

 

軍令部が。

 

諦めた。

 

犬島を。

 

ではない。

 

犬島の事故を。

 

一件。

 

一件。

 

そのたび。

 

世間へ説明することを。

 

諦めた。

 

理由。

 

単純。

 

多い。

 

しかも。

 

犬島の過失がない事故が。

 

妙に多い。

 

貨物船。

 

河口。

 

鋼索。

 

通信設備。

 

港湾設備。

 

味方航空機。

 

友軍艦艇。

 

その他。

 

そのたび。

 

軍令部広報部。

 

速報。

 

調査中間報告。

 

最終報告。

 

記者説明。

 

誤情報訂正。

 

SNS上の妙な噂。

 

否定。

 

さらに。

 

犬島と関係すらない事故に。

 

犬島の名前が出る。

 

貨物列車。

 

鹿。

 

停電。

 

観覧車。

 

ついに。

 

軍令部総長が。

 

言った。

 

「もう」

 

少し間。

 

「本人に書かせた方が早くないか」

 

会議室。

 

誰も。

 

すぐには反対しなかった。

 

---

 

一 新しい方針

 

軍令部。

 

広報会議。

 

提案。

 

海防艦犬島本人による公式SNSアカウント開設。

 

目的。

 

第一。

 

犬島関連事故発生時。

 

本人から。

 

事実関係の速報。

 

第二。

 

正式調査結果。

 

簡潔に掲載。

 

第三。

 

犬島と無関係な事故について。

 

必要な場合のみ。

 

「関係ありません」

 

と。

 

本人から明示。

 

第四。

 

平常時。

 

犬島本人が。

 

良いと思ったもの。

 

時々投稿可。

 

ただし。

 

軍令部総長。

 

最後の項目。

 

見る。

 

「良いと思ったもの?」

 

広報官。

 

「事故だけ投稿すると」

 

「犬島のアカウントが事故一覧になります」

 

総長。

 

「……確かに」

 

「本人の日常も少し入れた方が」

 

「事故を起こす艦という誤解を」

 

「減らせるかと」

 

総長。

 

考える。

 

「本人に任せろ」

 

---

 

二 犬島へ説明

 

第一岸壁。

 

犬島。

 

提督。

 

犬島は。

 

新しい端末を見る。

 

「……これ」

 

「はい」

 

「うちが使うんですか」

 

「ああ」

 

「軍令部公式」

 

「そうだ」

 

犬島。

 

画面。

 

見る。

 

アカウント名。

 

«海防艦 犬島【軍令部公式】»

 

犬島。

 

「公式って」

 

「かなり重くないですか」

 

提督。

 

「軍令部が毎回事故説明する方が重い」

 

犬島。

 

「……それは」

 

少し考える。

 

「すみません」

 

「犬島が謝る話ではない」

 

「そうでした」

 

提督。

 

「投稿内容は」

 

犬島。

 

資料。

 

読む。

 

«・犬島が関係する事故の事実

・調査結果

・誤情報への必要最低限の訂正

・犬島本人が良いと思ったもの»

 

犬島。

 

最後。

 

見る。

 

「良いと思ったもの」

 

「好きなものでもいい」

 

「白桃とか?」

 

「いい」

 

「工具とか?」

 

「いい」

 

「海とか?」

 

「いい」

 

犬島。

 

少し。

 

嬉しそう。

 

「それなら」

 

「できます」

 

---

 

三 最初の投稿

 

アカウント開設。

 

午後六時。

 

最初の投稿。

 

犬島。

 

かなり悩む。

 

十分。

 

二十分。

 

三十分。

 

提督。

 

「まだか」

 

「最初なので」

 

「何を書く」

 

犬島。

 

入力。

 

確認。

 

投稿。

 

«海防艦の犬島です。

 

軍令部から、事故があった時の説明を自分でするように言われました。

 

事故がない日は、たまに良かったものを載せます。

 

よろしくお願いします。»

 

投稿。

 

一分。

 

反応。

 

増える。

 

五分。

 

さらに。

 

犬島。

 

端末を見る。

 

「多いです」

 

提督。

 

「一般公開の影響もある」

 

返信。

 

«「本人アカウント!?」»

 

«「事故説明を本人にやらせる軍令部」»

 

«「事故がない日も投稿して」»

 

«「鹿の件もここで聞ける?」»

 

犬島。

 

最後を見る。

 

「鹿は」

 

「もうええです」

 

---

 

四 アカウント運用規則

 

犬島自身。

 

妙に真面目。

 

簡単な。

 

自分用ルール。

 

作る。

 

犬島SNS投稿規則

 

一。

 

事故発生直後。

 

分かっていることだけ。

 

二。

 

分からないこと。

 

勝手に予想しない。

 

三。

 

誰が悪いか。

 

調査前に決めない。

 

四。

 

自分に過失がある場合。

 

隠さない。

 

五。

 

自分に過失がない場合も。

 

必要以上に相手を責めない。

 

六。

 

正式調査が出たら。

 

訂正。

 

追記。

 

七。

 

関係ない事故は。

 

基本。

 

無視。

 

八。

 

あまりにも意味不明な時だけ。

 

「関係ありません」

 

九。

 

白桃は。

 

載せてもいい。

 

提督。

 

最後を見る。

 

「九だけ種類が違う」

 

犬島。

 

「大事です」

 

---

 

五 初めての事故投稿

 

開設。

 

十一日後。

 

犬島。

 

沿岸航行。

 

小型港湾作業船。

 

係留索。

 

切断。

 

漂流。

 

犬島の左舷。

 

軽く接触。

 

損傷。

 

塗装。

 

擦過。

 

人的被害。

 

なし。

 

犬島。

 

帰投。

 

第一岸壁。

 

最初に。

 

端末。

 

開く。

 

提督。

 

「先に修理報告じゃないのか」

 

犬島。

 

「それもします」

 

投稿。

 

«今日14時17分ごろ、港外で漂流した作業船が左舷に接触しました。

 

犬島は指定航路を航行していました。

 

けが人はいません。

 

うちは左舷の塗装が少し削れました。

 

作業船側も大きな損傷はありません。

 

原因は今から調べます。誰が悪いかはまだ分かりません。»

 

ネット。

 

«「情報早い」»

 

«「本人が一番落ち着いてる」»

 

«「最後の一文大事」»

 

«「塗装少しでよかった」»

 

そして。

 

一人。

 

«「また犬島」»

 

犬島。

 

見る。

 

少し。

 

止まる。

 

だが。

 

以前とは違う。

 

返信しない。

 

そのまま。

 

端末を閉じる。

 

「調査出たら書きます」

 

---

 

六 調査結果

 

翌日。

 

原因。

 

作業船係留索。

 

内部腐食。

 

外観点検では。

 

発見困難。

 

犬島。

 

過失なし。

 

作業船側。

 

適切な点検。

 

実施済。

 

重大過失なし。

 

偶発事故。

 

犬島。

 

投稿。

 

«昨日の作業船接触について調査結果が出ました。

 

係留索の内部腐食による破断でした。

 

犬島側の過失はありません。

 

作業船側も規定の点検をしていました。

 

誰かがわざと起こした事故ではありません。

 

塗装は今日直りました。»

 

最後。

 

写真。

 

修理済みの左舷。

 

ネット。

 

かなり。

 

好評。

 

«「最後に直った写真あるのいいな」»

 

«「事故だけじゃなく修理までセットなの犬島らしい」»

 

«「相手責めないのもいい」»

 

---

 

七 初めての「良かったもの」

 

さらに。

 

三日後。

 

事故。

 

なし。

 

投稿。

 

一枚。

 

瀬戸内海。

 

夕暮れ。

 

橙色。

 

海面。

 

犬島の前甲板。

 

写真。

 

文章。

 

«今日の帰りです。

 

海がきれいでした。»

 

それだけ。

 

事故投稿より。

 

反応。

 

多い。

 

犬島。

 

「何でですか」

 

提督。

 

「綺麗だからだろう」

 

「事故の説明より?」

 

「普通はそうだ」

 

犬島。

 

少し。

 

考える。

 

「……良いことですね」

 

---

 

八 白桃

 

夏。

 

玉野。

 

白桃。

 

差し入れ。

 

犬島。

 

写真。

 

桃。

 

一個。

 

投稿。

 

«玉野でもらいました。

 

甘くておいしかったです。

 

ありがとうございます。»

 

返信。

 

大量。

 

«「犬島と白桃」»

 

«「岡山感がすごい」»

 

«「事故じゃない投稿助かる」»

 

«「今日は平和」»

 

犬島。

 

「今日は平和って」

 

「毎日だいたい平和です」

 

提督。

 

「ネットでは事故の時だけ知る人が多かったからな」

 

犬島。

 

少し。

 

黙る。

 

そして。

 

「じゃあ」

 

「平和な日も」

 

「時々載せた方がええですね」

 

---

 

九 壊れた工具

 

工廠。

 

古い。

 

モンキーレンチ。

 

調整機構。

 

固着。

 

犬島。

 

分解。

 

清掃。

 

注油。

 

修理。

 

写真。

 

一枚目。

 

壊れた状態。

 

二枚目。

 

修理後。

 

投稿。

 

«工員さんの工具が動かなくなっていたので直しました。

 

また使えます。

 

壊れたら、また直しゃあええです。»

 

この投稿。

 

大きく。

 

拡散。

 

犬島。

 

戸惑う。

 

「工具ですよ」

 

提督。

 

「文章がよかったんじゃないか」

 

犬島。

 

「普通のことです」

 

だが。

 

その言葉。

 

犬島を知る人には。

 

かなり。

 

犬島らしかった。

 

---

 

十 貨物列車

 

ある日。

 

山陽本線。

 

貨物列車。

 

機関車故障。

 

長時間停車。

 

SNS。

 

誰か。

 

冗談で。

 

«「犬島?」»

 

犬島。

 

公式アカウント。

 

何も言わない。

 

一時間後。

 

また。

 

«「犬島公式、沈黙」»

 

さらに。

 

«「まさか」»

 

犬島。

 

端末を見る。

 

提督。

 

「反応するか」

 

犬島。

 

「しません」

 

「なぜ」

 

「うち」

 

少し間。

 

「今、第一岸壁です」

 

「はい」

 

「貨物列車」

 

「見てもいません」

 

「はい」

 

「なら」

 

端末。

 

閉じる。

 

「関係ないです」

 

その後。

 

鉄道会社。

 

機関車故障と発表。

 

ネット。

 

«「犬島公式、完全スルーで正解だった」»

 

---

 

十一 鹿

 

今度。

 

鹿。

 

道路へ。

 

進入。

 

交通渋滞。

 

誰か。

 

犬島へ。

 

直接。

 

メンション。

 

«「犬島さん、鹿です」»

 

犬島。

 

三分後。

 

珍しく。

 

返信。

 

«追ってません。»

 

ネット。

 

爆発的に。

 

広がる。

 

犬島。

 

「……一言だけなのに」

 

提督。

 

「一番分かりやすい」

 

犬島。

 

「もう鹿の件」

 

「これで終わりにしたいです」

 

だが。

 

この。

 

「追ってません。」

 

犬島アカウント。

 

最も有名な投稿の。

 

一つになる。

 

---

 

十二 軍令部の想定外

 

軍令部。

 

定例広報会議。

 

広報官。

 

報告。

 

「犬島公式アカウント」

 

「フォロワー数」

 

総長。

 

「事故情報目的か」

 

「当初は」

 

「はい」

 

「現在は」

 

広報官。

 

資料。

 

見る。

 

「平常時投稿の方が」

 

「反応が多いです」

 

総長。

 

「何を載せている」

 

「夕焼け」

 

「白桃」

 

「工具」

 

「玉野」

 

「港の猫」

 

総長。

 

「猫?」

 

「岸壁にいたそうです」

 

「犬島なのに」

 

「本人も同じことを書いています」

 

総長。

 

少し。

 

笑う。

 

---

 

十三 港の猫

 

実際。

 

投稿。

 

岸壁。

 

猫。

 

犬島から。

 

二メートル。

 

犬島を。

 

見ている。

 

文章。

 

«第一岸壁に猫がおりました。

 

名前は知りません。

 

近づいたら逃げそうなので見てるだけにしました。

 

犬島ですけど猫も好きです。»

 

返信。

 

«「最後の一文いる?」»

 

«「犬島ですけど」»

 

«「鹿は追わないけど猫は見る」»

 

犬島。

 

少し。

 

気に入った。

 

---

 

十四 事故速報の信頼性

 

半年。

 

経つ。

 

犬島関連事故。

 

発生。

 

ネット。

 

以前。

 

誰かが。

 

憶測。

 

先に投稿。

 

今。

 

違う。

 

人々。

 

まず。

 

犬島公式。

 

見る。

 

犬島が。

 

投稿していない。

 

なら。

 

「まだ確認できていない」

 

犬島が。

 

«接触しました。現在確認中です。»

 

と書けば。

 

その範囲だけ。

 

共有。

 

さらに。

 

«犬島側に過失なしという調査結果です。»

 

と出れば。

 

一次情報。

 

そのまま。

 

広がる。

 

軍令部。

 

記者会見。

 

かなり減る。

 

総長。

 

「本当に本人に任せた方が早かったな」

 

広報官。

 

「文章も」

 

「余計なことを書きません」

 

総長。

 

「軍令部より上手いのでは」

 

広報官。

 

返答。

 

少し困る。

 

---

 

十五 ただし誤字

 

犬島。

 

事故速報。

 

急いで投稿。

 

«本日16時03分、港外で小型船と接蝕しました。»

 

投稿。

 

一分後。

 

削除。

 

再投稿。

 

«接触です。

 

字を間違えました。

 

事故状況は変わってません。»

 

ネット。

 

«「訂正そこ?」»

 

«「状況は変わってませんで笑った」»

 

犬島。

 

かなり。

 

恥ずかしい。

 

「もう」

 

「事故より誤字の方が広まっとります」

 

提督。

 

「平和だな」

 

犬島。

 

「そういう平和いらんです」

 

---

 

十六 犬島が書かないこと

 

犬島は。

 

SNSを。

 

よく使うようになっても。

 

投稿しないものも。

 

決めていた。

 

誰かへの。

 

悪口。

 

なし。

 

原因未確定の。

 

推測。

 

なし。

 

事故相手への。

 

攻撃。

 

なし。

 

非公開任務。

 

なし。

 

他の艦娘の。

 

私生活。

 

なし。

 

自分が。

 

嫌だったコメントを。

 

晒すことも。

 

なし。

 

提督。

 

「よく守るな」

 

犬島。

 

「一回出したら」

 

「戻せんものもありますから」

 

少し間。

 

「通信と同じです」

 

「送る前に」

 

「確認します」

 

通信設備故障で。

 

命令を聞けなかった事故。

 

その経験まで。

 

少し。

 

生きていた。

 

---

 

十七 犬島が気に入った景色

 

宇野港。

 

再訪。

 

今度は。

 

一般公開ではない。

 

短時間寄港。

 

夕方。

 

玉野。

 

港。

 

工場。

 

瀬戸内海。

 

写真。

 

投稿。

 

«玉野です。

 

今日は仕事で寄っただけです。

 

ここに来ると帰ってきた感じがします。»

 

反応。

 

たくさん。

 

地元。

 

«「おかえり」»

 

«「また一般公開来て」»

 

«「今度は白桃の時期に」»

 

犬島。

 

一つずつ。

 

読む。

 

全部へ。

 

返信はしない。

 

ただ。

 

小さく。

 

笑う。

 

---

 

十八 事故なし一か月

 

ある月。

 

犬島。

 

一か月。

 

事故。

 

なし。

 

三十一日。

 

軍令部。

 

誰も。

 

特別に気にしていない。

 

犬島だけ。

 

気づく。

 

月末。

 

投稿。

 

«今月は事故ありませんでした。

 

護衛任務11回、警戒任務6回、訓練4回でした。

 

全部普通に帰りました。

 

こういう月が好きです。»

 

かなり。

 

多くの反応。

 

«「これが一番いい報告」»

 

«「普通に帰る犬島」»

 

«「来月も事故なしで」»

 

犬島。

 

最後。

 

見る。

 

そして。

 

少し。

 

笑う。

 

「これ」

 

「ええですね」

 

---

 

十九 翌日

 

翌月。

 

一日目。

 

午前。

 

犬島。

 

第一岸壁。

 

工員。

 

「犬島!」

 

犬島。

 

びく。

 

「何ですか」

 

「係留索の金具が」

 

犬島。

 

一瞬。

 

身構える。

 

工員。

 

「錆びてたから交換した」

 

犬島。

 

「……それだけ?」

 

「それだけ」

 

犬島。

 

深く。

 

息を吐く。

 

工員。

 

「事故だと思った?」

 

犬島。

 

「ちょっと」

 

工員。

 

「SNSに書く?」

 

犬島。

 

少し考える。

 

「書きません」

 

「何で」

 

「ただの整備です」

 

少し間。

 

犬島。

 

「でも」

 

錆びた金具。

 

新しい金具。

 

写真。

 

撮る。

 

投稿。

 

«係留索の金具を新しくしてもらいました。

 

古い方はかなり錆びてました。

 

事故になる前に見つかってよかったです。»

 

ネット。

 

«「こういうの大事」»

 

«「事故にならなかった報告」»

 

«「犬島、予防も投稿するようになった」»

 

犬島。

 

それを見て。

 

少し。

 

嬉しくなる。

 

---

 

二十 軍令部が本当に諦めたもの

 

軍令部が。

 

諦めたのは。

 

犬島について。

 

説明すること。

 

ではなかった。

 

犬島の代わりに全部説明すること。

 

犬島自身が。

 

知っていること。

 

分からないこと。

 

事故。

 

調査結果。

 

そして。

 

普通の日。

 

それを。

 

自分の言葉で。

 

出す。

 

すると。

 

不思議なことに。

 

事故の回数が。

 

減ったわけではないのに。

 

「事故の犬島」

 

という印象は。

 

少しずつ。

 

薄れていった。

 

代わり。

 

人々が見るもの。

 

夕焼け。

 

白桃。

 

玉野。

 

工具。

 

猫。

 

護衛帰り。

 

そして。

 

たまに。

 

«今日、ぶつかりました。»

 

という。

 

犬島らしい。

 

妙に落ち着いた事故速報。

 

---

 

二十一 ある日の投稿

 

夕方。

 

犬島。

 

任務帰り。

 

第一岸壁。

 

何も起きなかった。

 

犬島は。

 

夕日。

 

写真。

 

撮る。

 

投稿。

 

«今日は事故ありません。

 

帰ってきたら夕焼けがきれいでした。

 

おかえりって言ってもらえたので、良い日でした。»

 

提督。

 

投稿を見る。

 

「最後」

 

犬島。

 

「何ですか」

 

「私のことか」

 

犬島。

 

少し。

 

考える。

 

「名前は書いてません」

 

「そうだな」

 

犬島。

 

少し笑う。

 

「でも」

 

「帰ってくる場所には」

 

「『おかえり』って言う人が必要じゃけぇ」

 

投稿。

 

更新。

 

犬島は。

 

端末を閉じる。

 

今日は。

 

事故報告。

 

なし。

 

それで。

 

よかった。

 

軍令部公式認証。

 

海防艦 犬島。

 

事故が起きた時は。

 

誰より早く。

 

事実を書く。

 

何も起きなかった時は。

 

たまに。

 

自分が。

 

良いと思ったものを書く。

 

そんな。

 

少し変わった。

 

公式アカウントになった。

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