海防艦 犬島   作:重装甲空母信濃

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犬島公式SNSに1回目から5回目のまでの河口進入事故の詳細を投稿して、その反応の話

明らかに起きていない事故がありますがそのままにしています。


犬島河口進入事故1回目から5回目

海防艦・犬島

 

――河口へ行きたくて行っとるんじゃありません――

 

犬島公式SNS「河口進入事故 第1回~第5回まとめ」

 

犬島公式SNSには、事故報告以外にも時々、夕焼けや白桃、直した工具の写真が投稿される。

 

それでも、犬島の名前と妙に強く結びついてしまった言葉が一つあった。

 

河口。

 

犬島が普通に護衛任務を終えた投稿にも、

 

«「今日は河口行かなかった?」»

 

と返信が付く。

 

宇野港の写真にも、

 

«「ここは河口じゃないから安心」»

 

と書かれる。

 

犬島本人も最初のうちは毎回、

 

«行きたくて行っとるんじゃありません。»

 

と返していた。

 

しかし第五回目の河口進入事故まで起きたところで、とうとう本人が諦めた。

 

ある日の午後七時。

 

犬島公式SNSに、珍しく長い投稿が出た。

 

---

 

一 投稿の始まり

 

«河口進入事故について

 

何回も「また河口」と言われるので、第1回から第5回までまとめます。

 

先に書きますが、5回とも犬島が河口へ遊びに行った事故ではありません。

 

それぞれ原因が違います。

 

長いです。»

 

投稿直後。

 

最初の反応。

 

«「本人がついにまとめ始めた」»

 

«「『長いです』でちょっと笑った」»

 

«「河口事故だけでまとめ投稿作れる海防艦」»

 

«「5回もある時点でだいぶおかしい」»

 

犬島は返信を見て、少し不満そうに提督へ言った。

 

「まだ中身読んでないのに笑われとります」

 

「五回という数字が強い」

 

「うちもそう思います」

 

そして犬島は続きを投稿した。

 

---

 

二 第1回

 

久瀬川河口・推進器および操舵機能喪失事故

 

«第1回

 

久瀬川河口です。

 

これが最初でした。»

 

当時の犬島は沿岸警戒任務から帰投中だった。

 

天候は穏やかで、河口沖の正規航路を約十一ノットで航行していた。

 

事故のきっかけは船尾だった。

 

右舷推進系統に強い異常振動が発生した直後、右舷側の軸系と推進器周辺が大きく損傷。同時に操舵系にも異常が発生し、犬島は十分な推力と舵効きを失った。

 

さらに潮流が河口方向へ流れていた。

 

犬島は左舷機関だけで姿勢を維持しようとしたものの、船体は徐々に久瀬川河口へ向けて流され始めた。

 

河口内には漁船。

 

さらに上流には小型桟橋。

 

犬島は衝突を避けるため両錨を使用。

 

一本目。

 

把駐。

 

しかし船体の勢いを止めきれない。

 

二本目。

 

投下。

 

二本の錨鎖へ大きな荷重がかかり、犬島は河口へ入ったところでようやく減速した。

 

最終停止位置。

 

河口から約三百数十メートル内側。

 

漁船への接触なし。

 

桟橋への接触なし。

 

人的被害なし。

 

ただし、両錨と錨鎖の一部は強い荷重を受け、後に交換された。

 

犬島公式SNS。

 

«第1回は、右舷推進系統と操舵に問題が出て、潮に押されました。

 

河口の中へ入った後、両方の錨を使って止まりました。

 

漁船や桟橋には当たっていません。

 

犬島側の操艦過失はなしという調査結果です。

 

この時はまだ「河口事故が続く」とは思ってませんでした。»

 

反応。

 

«「そりゃ普通は一回で終わると思う」»

 

«「両錨で止めたのか」»

 

«「第1回の時点では普通の機械事故なんだな」»

 

«「『この時はまだ』が不穏すぎる」»

 

犬島。

 

その返信だけ引用。

 

«うちもそう思います。»

 

---

 

三 第2回

 

久瀬川河口・漂流土運船回避および左舷主機遠隔制御異常事故

 

第二回。

 

ジャーヴィスの魚雷事故から修理復帰した後だった。

 

犬島は小型輸送船二隻の護衛を終え、単艦帰投中。

 

久瀬川河口沖を十二ノットで航行していた。

 

そこへ、小型曳船が曳航していた空の土運船が漂流。

 

原因は曳航索内部の疲労破断。

 

土運船は犬島の進路へ流された。

 

犬島は左へ避けようとした。

 

しかし左後方には民間貨物船。

 

そのため右。

 

つまり久瀬川河口方向へ回避。

 

この判断自体は適切だった。

 

ところが回避中。

 

左舷主機の遠隔制御リレー接点が一時的に固着。

 

艦橋から停止指令を出しても、左舷機関が「前進微速」の状態から変わらなくなった。

 

さらに上げ潮。

 

犬島は河口側へ押し込まれる。

 

最終的には遠隔回路を切離し、機側停止。

 

その間に約四百八十メートル上流へ進入。

 

両錨を投下。

 

軟泥のため少し走錨し、最後は艦首が柔らかい泥へ軽く接地して停止した。

 

犬島公式SNS。

 

«第2回も久瀬川です。

 

曳航索が切れて流れてきた土運船を避けた結果、河口側へ進みました。

 

その途中で左舷主機の遠隔制御にも不具合が出ました。

 

第1回とは原因が違います。

 

約480m上流まで入りました。

 

最後は錨と軟らかい泥で止まりました。

 

けが人、民間船の損傷、河川施設の損傷はありません。

 

犬島側の過失なしです。»

 

そして。

 

最後。

 

«前と理由が違います。»

 

反応。

 

«「そこ強調するんだ」»

 

«「本人にとって重要なんだろうな」»

 

«「同じ川に違う原因で2回入る確率どうなってるの」»

 

«「久瀬川に好かれてない?」»

 

犬島。

 

«好かれんでええです。»

 

この返信。

 

かなり広がった。

 

---

 

四 第3回

 

貨物船東栄丸接触・久瀬川鉄橋接近事故

 

第三回は、それまでとは規模が違った。

 

犬島は正規航路を約十三ノットで航行。

 

航路逸脱なし。

 

そこへ久瀬川から出航してきた準中型貨物船。

 

東栄丸。

 

全長約八十七メートル。

 

総トン数約二千四百トン。

 

積荷は鋼材と機械類。

 

東栄丸は河口を出た後、通常なら右へ変針する予定だった。

 

ところが操舵油圧が失われ、非常操舵切替弁も正常位置へ入らない。

 

舵がほぼ中央位置で動かなくなった。

 

東栄丸は意図せず航路から外れ、犬島へ接近。

 

犬島は右へ避けた。

 

しかし浅瀬と航路標識があり、大きく回避できない。

 

午後四時十六分三十八秒。

 

東栄丸の左舷船首付近が犬島の左舷中央部へ接触。

 

東栄丸はすでに後進を命じていたが、慣性が残っていた。

 

そのまま犬島を横から押し続ける。

 

そして。

 

三度目。

 

犬島は久瀬川河口へ入った。

 

ただし今回は、犬島は単に押されていただけではなかった。

 

もし東栄丸と離れれば、操舵不能の貨物船がそのまま鉄道橋へ向かう可能性が高かった。

 

犬島は接触状態を維持し、自分の機関と舵を使って東栄丸の進行方向をわずかに変えた。

 

いわば、自分の実艦全体を東栄丸の巨大な補助舵として使った。

 

上流。

 

久瀬川鉄橋。

 

その鉄橋へ。

 

定刻運行中の四両普通列車。

 

乗客二百八十三人。

 

犬島と東栄丸。

 

両錨投下。

 

全力後進。

 

鉄道側。

 

非常停止信号。

 

列車。

 

非常ブレーキ。

 

結果。

 

犬島艦首。

 

橋脚まで約十七メートル。

 

東栄丸。

 

最寄り橋脚まで約二十四メートル。

 

普通列車。

 

橋手前約四十メートル。

 

全て停止。

 

死者。

 

なし。

 

重傷者。

 

なし。

 

鉄道橋。

 

無傷。

 

犬島公式SNS。

 

この事故だけ。

 

少し長かった。

 

«第3回も久瀬川です。

 

この時は犬島が正規航路を航行中、舵が故障した貨物船「東栄丸」が左舷中央部に接触しました。

 

東栄丸さんは故意にぶつけたものではなく、舵が動かなくなっていました。

 

接触後、そのまま押されて久瀬川河口へ入りました。

 

上流に鉄道橋と普通列車があったため、途中で無理に東栄丸さんと離れず、一緒に減速しました。

 

犬島は橋脚の約17m手前で停止しました。

 

列車も橋の約40m手前で停止しています。

 

乗客・乗務員、東栄丸乗員に死亡者はいません。

 

調査では犬島側に過失なし、東栄丸乗員にも故意や重大な操船上の過失はないという結果でした。

 

あの時は河口へ入りたかったわけではありませんが、東栄丸さんが橋へ行かんかったので、うちがおって良かったとは思います。»

 

SNS。

 

しばらく。

 

この投稿だけ。

 

雰囲気が違った。

 

«「これは本当に犬島いてよかった事故」»

 

«「17mって近すぎる」»

 

«「283人乗った列車だったのか」»

 

«「『無理に離れない』って判断すごいな」»

 

«「河口ネタにしてたけど第3回はかなり重大だったんだな」»

 

その中。

 

一件。

 

«「でも3回とも久瀬川なの面白すぎる」»

 

犬島。

 

«そこはうちも困っとります。»

 

---

 

五 第4回

 

古浦川河口・台風吹送流による避泊中進入事故

 

第四回。

 

初めて。

 

久瀬川ではなかった。

 

場所。

 

古浦川河口。

 

犬島としては。

 

そこをかなり重要視した。

 

«第4回は久瀬川ではありません。»

 

投稿直後。

 

«「そこから入るの?」»

 

«「本人にとって重要なんだよ」»

 

事故当日。

 

台風接近。

 

犬島は輸送船団護衛後、古浦湾内の指定避泊地点へ退避していた。

 

航行して河口へ向かっていたわけではない。

 

犬島は機関を停止せず、必要に応じて微速を使用できる状態。

 

錨泊。

 

二本錨。

 

当初。

 

正常。

 

ところが台風最接近時。

 

風向が予想より約四十度変化。

 

さらに河口周辺で吹送流と増水による流出流が複雑に重なった。

 

犬島の錨は一時的に把駐力を失う。

 

走錨。

 

警報。

 

犬島は即座に機関始動状態から前進力を上げる。

 

だが。

 

波。

 

風。

 

流れ。

 

三方向。

 

船体は横滑りするように移動。

 

通常の港外方向ではなく、古浦川河口の広い水面へ押し込まれた。

 

犬島はその時点で無理に外海側へ戻すより、河口内の広い部分へ艦首を向けた方が他船との衝突を避けられると判断。

 

結果。

 

河口へ約六百二十メートル進入。

 

増水していたため座礁はなし。

 

周辺船舶との接触もなし。

 

風が弱まった時間帯にタグ二隻の支援で外へ戻った。

 

犬島公式SNS。

 

«第4回は古浦川です。久瀬川ではありません。

 

台風避泊中に二本の錨が走って、風と流れに押されました。

 

河口外へ無理に戻ると避泊中の船へ近づくため、広い河口内へ向けました。

 

約620m入りました。

 

接触、座礁、人的被害はありません。

 

避泊位置と錨泊方法は指定どおりで、犬島側の過失なしでした。

 

台風の時は海だけじゃなく河口も流れが強いです。»

 

反応。

 

«「第4回で河口の種類が増えた」»

 

«「河口コンプリートしようとしてない?」»

 

«「してないって本人が最初から言ってるだろ」»

 

«「620m入って何にも当たってないのはむしろ上手い」»

 

«「『久瀬川ではありません』の主張が強い」»

 

犬島。

 

«違う川なので書きました。»

 

返信。

 

«「そこじゃない」»

 

---

 

六 第5回

 

東汐川河口・係留索内部腐食破断による無人漂流事故

 

第五回は。

 

犬島自身が。

 

かなり納得していなかった。

 

理由。

 

そもそも出航していなかったから。

 

東汐港。

 

犬島は補給のため一時係留。

 

機関。

 

待機。

 

正規係留位置。

 

岸壁。

 

正常。

 

犬島自身は実艦の艦橋で書類整理をしていた。

 

沖。

 

穏やか。

 

風。

 

弱い。

 

事故が起きそうな天候でもない。

 

午後一時二十八分。

 

後部係留索。

 

一本。

 

破断。

 

続いて。

 

横方向荷重が残りの索へ偏る。

 

前部スプリング。

 

破断。

 

犬島が異常を感じて機関を使うまで。

 

数十秒。

 

しかし。

 

ちょうどその時間。

 

下げ潮。

 

東汐川河口方向。

 

犬島。

 

岸壁から離れる。

 

機関。

 

前進。

 

舵。

 

使用。

 

だが。

 

港内には小型旅客船。

 

犬島はそちらへの接近を避けるため、急激な回頭を行わず。

 

結果。

 

東汐川河口へ。

 

約二百七十メートル。

 

進入。

 

旅客船。

 

無事。

 

岸壁。

 

無事。

 

犬島。

 

無傷。

 

調査。

 

破断した係留索。

 

外観。

 

正常。

 

内部。

 

腐食。

 

芯線。

 

広範囲で強度低下。

 

点検基準。

 

満足。

 

交換時期。

 

まだ先。

 

犬島側では。

 

予見困難。

 

係留索管理側にも。

 

当時基準上の重大な不備。

 

なし。

 

これを受けて。

 

係留索の内部検査基準が。

 

改訂された。

 

犬島公式SNS。

 

«第5回は東汐川です。

 

この時は停泊中でした。

 

係留索の内部が腐食していて、外から分からない状態で切れました。

 

岸壁から離れた後、小型旅客船を避けた結果、河口へ約270m入りました。

 

犬島はその時、出港する予定もありませんでした。

 

停泊していても河口へ入ることがあるとは思いませんでした。

 

犬島側の過失なしです。»

 

SNS。

 

ここ。

 

特に。

 

反応が多かった。

 

«「停泊中なのに河口行くのはもう才能では」»

 

«「本人何もしてないのが一番ひどい」»

 

«「第5回、犬島側から河口へ行く意思ゼロじゃん」»

 

«「係留してても河口から逃げられない犬島」»

 

«「河口の方が犬島を探してる説」»

 

犬島。

 

しばらく。

 

返信しなかった。

 

そして。

 

一件だけ。

 

«探さんでください。»

 

爆発的に拡散された。

 

---

 

七 まとめ表

 

犬島は。

 

最後。

 

自分で表を作った。

 

«河口進入事故まとめ

 

第1回 久瀬川

推進・操舵系異常+潮流

→ 両錨で停止

→ 過失なし

 

第2回 久瀬川

漂流土運船回避+左舷主機遠隔制御異常

→ 約480m進入

→ 過失なし

 

第3回 久瀬川

操舵故障の東栄丸に側面衝突され押される

→ 鉄道橋17m手前で停止

→ 犬島過失なし

 

第4回 古浦川

台風避泊中に走錨

→ 他船を避け河口内へ約620m

→ 過失なし

 

第5回 東汐川

停泊中、係留索内部腐食で破断

→ 旅客船回避で約270m進入

→ 過失なし»

 

そして。

 

その下。

 

«以上です。

 

5回とも原因が違います。

 

犬島が河口を目的地にした事故はありません。

 

今後もできれば増やしたくありません。»

 

投稿。

 

数分。

 

「いいね」。

 

急増。

 

---

 

八 ネット上の総評

 

最も多かった反応。

 

«「本当に全部原因違うんだ」»

 

«「ここまで来ると犬島を責めるより事故原因の種類が豊富」»

 

«「第1回:機械」

 

「第2回:曳航索+遠隔制御」

 

「第3回:貨物船」

 

「第4回:台風」

 

「第5回:係留索」

 

「共通点:犬島と河口」»

 

別。

 

«「5回全部過失なしなの逆にすごい」»

 

さらに。

 

«「犬島が河口へ行ってるんじゃなくて、状況が犬島を河口へ運んでる。」»

 

犬島。

 

それを見る。

 

「……これは」

 

提督。

 

「比較的正確だな」

 

「嫌ですけど」

 

---

 

九 専門家まで反応する

 

水路関係者。

 

投稿。

 

«「犬島の河口事故まとめ、河口付近の潮流・風・浅水影響・操船余地の少なさを学ぶ教材として妙に優秀」»

 

港湾関係者。

 

«「第4・第5回は錨泊と係留設備管理の教材になる」»

 

鉄道関係者。

 

«「第3回だけ突然鉄道橋と普通列車が出てくるの情報量が多い」»

 

犬島。

 

最後の投稿。

 

引用。

 

«うちも第3回は忙しかったです。»

 

---

 

十 軍令部

 

軍令部上層部。

 

犬島の投稿。

 

閲覧。

 

総長。

 

五件。

 

一つずつ。

 

読む。

 

「こうして並べると」

 

参謀。

 

「はい」

 

「本当に全部違うな」

 

「はい」

 

「しかも」

 

「五件とも犬島の過失なしです」

 

総長。

 

少し考える。

 

「本人が一番」

 

「何でこんなに河口へ入るのか分からないだろうな」

 

参謀。

 

「本人も投稿でそう言っています」

 

総長。

 

下。

 

見る。

 

«今後もできれば増やしたくありません。»

 

少し笑う。

 

「これは軍令部も同意する」

 

---

 

十一 犬島本人への質問

 

数日後。

 

犬島公式SNS。

 

質問。

 

«「5回の中で一番嫌だった河口事故は?」»

 

犬島。

 

返信。

 

少し悩む。

 

«第3回です。

 

鉄道橋と列車があったので。

 

自分だけなら、多少ぶつかっても直せます。

 

人が多いところへ行く方が嫌です。»

 

別。

 

«「一番恥ずかしかったのは?」»

 

回答。

 

«第5回です。

 

停泊していたのに河口へ入りました。»

 

ネット。

 

«「そこ恥ずかしがる必要ないだろ」»

 

«「係留索が切れたんだからしょうがない」»

 

犬島。

 

«分かっとりますけど、停泊中です。»

 

---

 

十二 一番多かった質問

 

そして。

 

当然。

 

質問。

 

«「犬島は河口が好きですか?」»

 

犬島。

 

投稿から。

 

十二秒。

 

返信。

 

«好きでも嫌いでもありません。

 

普通の地形です。»

 

さらに。

 

«「久瀬川は?」»

 

犬島。

 

«事故が3回あるので少し警戒します。»

 

«「東汐川は?」»

 

«係留索を確認します。»

 

«「古浦川は?」»

 

«天気を見ます。»

 

«「じゃあ河口自体は?」»

 

犬島。

 

少し時間を置いて。

 

«通る必要がなければ、今はわざわざ近づかんです。»

 

ネット。

 

大笑い。

 

---

 

十三 それから

 

犬島公式SNS。

 

プロフィール。

 

事故情報。

 

夕焼け。

 

白桃。

 

工具。

 

玉野。

 

猫。

 

その中。

 

固定投稿。

 

一時期。

 

この河口事故まとめになった。

 

理由。

 

犬島自身。

 

«毎回説明するのが大変なので。»

 

そして。

 

犬島が何か普通の航海を投稿するたび。

 

以前なら。

 

«「河口は?」»

 

と書かれていた。

 

少しずつ。

 

変わる。

 

«「今日は何事もなくてよかった」»

 

«「無事帰投お疲れさま」»

 

«「河口まとめ読んだら本当に本人のせいじゃなかった」»

 

そんな反応。

 

増える。

 

犬島も。

 

少し。

 

嬉しかった。

 

---

 

十四 最後の追記

 

固定投稿から。

 

一週間後。

 

犬島。

 

追記。

 

«追記です。

 

この投稿をしてから「第6回はいつですか」と聞かれます。

 

予定はありません。

 

事故なので予定を立てません。

 

第5回で終わってほしいです。»

 

ネット。

 

«「ごもっとも」»

 

«「シリーズ物じゃないんだぞ」»

 

«「第6回を期待するな」»

 

«「犬島本人が一番切実」»

 

提督。

 

投稿を見る。

 

「第六回」

 

犬島。

 

「ありません」

 

「まだ起きていないという意味で」

 

犬島。

 

じっと。

 

提督を見る。

 

「ありません」

 

「……分かった」

 

犬島は端末を閉じる。

 

その日。

 

護衛任務。

 

出港。

 

航路。

 

河口なし。

 

事故。

 

なし。

 

帰投。

 

夕方。

 

犬島公式SNS。

 

写真。

 

第一岸壁。

 

夕焼け。

 

«今日は河口へ入りませんでした。

 

普通に帰りました。

 

夕焼けがきれいです。»

 

返信。

 

一番上。

 

«「これが一番いい河口事故シリーズの続き。」»

 

犬島は。

 

それだけには。

 

「いいね」を付けた。

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