海防艦 犬島   作:重装甲空母信濃

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広報担当官が完全に犬島と藍島の兄をしている描写して。そして広報担当官が「俺は犬島と藍島の兄じゃないぞ」とツッコミを入れて


犬島藍島広報7(広報担当官メイン)

海防艦・犬島/藍島

 

――俺は犬島と藍島の兄じゃないぞ――

 

広報担当官がどう見ても兄にしか見えなくなった日

 

※メインストーリーとは別世界線

 

広報担当官が初めて動画へ姿を見せてから、少し経った頃。

 

視聴者の間では、もはや一つの認識が定着していた。

 

犬島。

 

藍島。

 

そして広報担当官。

 

三人が一緒に映ると、

 

兄と妹二人に見える。

 

もちろん事実ではない。

 

犬島と藍島は海防艦の姉妹艦。

 

広報担当官は軍令部広報部の若い男性職員。

 

血縁関係はない。

 

艦娘ですらない。

 

本人も何度も言っている。

 

「兄ではありません」

 

それでも。

 

本人の行動が。

 

その否定を毎回弱くしていた。

 

---

 

一 撮影開始前

 

月一回。

 

広報動画撮影日。

 

朝八時二十分。

 

呉鎮守府広報室前。

 

広報担当官は、カメラバッグを肩へ掛けながら犬島と藍島を待っていた。

 

先に来たのは犬島。

 

「おはようございます」

 

「おはよう」

 

担当官は犬島を見る。

 

三秒。

 

「犬島」

 

「はい」

 

「スカーフ」

 

犬島。

 

自分の胸元。

 

見る。

 

深緑色のスカーフ。

 

結び目。

 

少し。

 

横。

 

犬島。

 

「あ」

 

担当官。

 

「撮影始まる前でよかったな」

 

犬島。

 

直す。

 

だが。

 

少し。

 

うまくいかない。

 

担当官。

 

ため息。

 

「貸せ」

 

「え?」

 

「じっとしてろ」

 

結び目。

 

左右。

 

整える。

 

犬島。

 

下。

 

見る。

 

「ありがとうございます」

 

「はい」

 

その時。

 

藍島。

 

来る。

 

「おはようございま――」

 

担当官。

 

藍島を見る。

 

また。

 

三秒。

 

「藍島」

 

「はい」

 

「髪留め逆」

 

藍島。

 

「え?」

 

藍色の花の髪留め。

 

いつもの位置より。

 

妙に。

 

後ろ。

 

担当官。

 

「朝急いだ?」

 

藍島。

 

「ちょっと」

 

担当官。

 

「ほら」

 

直す。

 

藍島。

 

「ありがとうございます」

 

犬島。

 

横。

 

見る。

 

少し。

 

笑う。

 

「担当官さん」

 

「何だ」

 

「朝から兄みたいです」

 

担当官。

 

手。

 

止まる。

 

「違う」

 

---

 

二 忘れ物

 

撮影場所。

 

工廠。

 

三人。

 

移動。

 

途中。

 

担当官。

 

急に。

 

止まる。

 

「犬島」

 

「はい」

 

「端末」

 

犬島。

 

制服。

 

確認。

 

右。

 

左。

 

「……」

 

担当官。

 

「忘れたな?」

 

犬島。

 

「第一岸壁です」

 

藍島。

 

少し笑う。

 

担当官。

 

藍島。

 

見る。

 

「笑ってるけど藍島」

 

「はい」

 

「筆記具」

 

藍島。

 

ポケット。

 

確認。

 

「……ないです」

 

担当官。

 

長い。

 

沈黙。

 

犬島。

 

藍島。

 

並ぶ。

 

担当官。

 

二人。

 

見る。

 

「二人とも一回戻るぞ」

 

犬島。

 

「うちだけでも」

 

「藍島も忘れてる」

 

藍島。

 

「担当官さんのペン借りれば」

 

「撮影中ずっとか?」

 

「……」

 

「戻る」

 

二人。

 

「はい」

 

後ろ。

 

撮影補助員。

 

すでに。

 

笑う。

 

---

 

三 コメント欄が見えたなら

 

まだ動画は公開されていない。

 

だが。

 

後に視聴者は、この場面へこうコメントする。

 

«「完全に朝の兄」»

 

«「妹二人の持ち物確認してる」»

 

«「スカーフ直して髪留め直して忘れ物確認」»

 

«「本人が否定するほど兄っぽくなる」»

 

---

 

四 撮影中

 

午前。

 

今回。

 

テーマ。

 

「犬島と藍島、工廠の一日を紹介します」

 

犬島。

 

設備。

 

説明。

 

藍島。

 

補足。

 

担当官。

 

撮影。

 

順調。

 

一時間後。

 

犬島。

 

説明。

 

続ける。

 

「この設備は前にうちの修理でも使って――」

 

担当官。

 

カメラ。

 

下げる。

 

「犬島」

 

「はい」

 

「水飲んだか?」

 

犬島。

 

止まる。

 

「……まだです」

 

「休憩」

 

犬島。

 

「もう少し説明してから」

 

「十五分続けてる」

 

「でも」

 

担当官。

 

「声少し乾いてる」

 

犬島。

 

少し。

 

黙る。

 

藍島。

 

横。

 

「うちも休憩したいです」

 

担当官。

 

「藍島も飲め」

 

「はい」

 

二人。

 

座る。

 

担当官。

 

それぞれ。

 

飲み物。

 

渡す。

 

犬島。

 

受け取る。

 

「担当官さん」

 

「何」

 

「こういうところが」

 

「何だ」

 

「兄みたいって言われるんだと思います」

 

担当官。

 

「撮影管理だ」

 

藍島。

 

「でもうちら二人分持ってきてくれとりますよね」

 

担当官。

 

「撮影が長いからだ」

 

犬島。

 

「自分の分は?」

 

担当官。

 

止まる。

 

自分。

 

見る。

 

ない。

 

藍島。

 

「担当官さんも忘れとる」

 

犬島。

 

「人のこと言えんですね」

 

担当官。

 

「……撮影補助からもらう」

 

二人。

 

笑う。

 

---

 

五 昼食

 

食堂。

 

犬島。

 

藍島。

 

担当官。

 

この日は三人。

 

同じ机。

 

犬島。

 

食事。

 

藍島。

 

食事。

 

担当官。

 

撮影確認。

 

端末。

 

見ながら。

 

食べる。

 

犬島。

 

自分の小鉢。

 

藍島へ。

 

「これ食べます?」

 

藍島。

 

「犬島さんは?」

 

「ちょっと多いので」

 

藍島。

 

「じゃあ」

 

担当官。

 

画面から目を離さず。

 

「犬島」

 

「はい」

 

「朝から動いてるんだから自分で食べろ」

 

犬島。

 

止まる。

 

藍島。

 

「ほら」

 

犬島。

 

「でも」

 

担当官。

 

「藍島も自分の分あるだろ」

 

藍島。

 

「あります」

 

「じゃあ犬島が食べる」

 

犬島。

 

「はい」

 

数秒。

 

静か。

 

担当官。

 

端末。

 

見る。

 

犬島。

 

藍島。

 

顔。

 

見合わせる。

 

藍島。

 

小声。

 

「兄ですね」

 

犬島。

 

小声。

 

「兄です」

 

担当官。

 

画面見たまま。

 

「聞こえてるぞ」

 

---

 

六 午後

 

工廠。

 

工具整理。

 

犬島。

 

上段。

 

箱。

 

置こうとする。

 

担当官。

 

遠くから。

 

「犬島」

 

「はい」

 

「無理に届かせるな」

 

犬島。

 

「届きます」

 

背伸び。

 

指。

 

少し。

 

届く。

 

担当官。

 

「届いてない」

 

藍島。

 

「うちの方が三センチ高いので」

 

担当官。

 

「三センチで解決する高さじゃない」

 

藍島。

 

試す。

 

届かない。

 

担当官。

 

カメラ。

 

三脚。

 

置く。

 

歩く。

 

箱。

 

犬島から。

 

取る。

 

上。

 

置く。

 

犬島。

 

「ありがとうございます」

 

藍島。

 

「やっぱり便利ですね」

 

担当官。

 

「俺を脚立みたいに言うな」

 

---

 

七 急な雨

 

撮影終了。

 

夕方。

 

三人。

 

広報棟。

 

戻る。

 

外。

 

突然。

 

小雨。

 

藍島。

 

「降ってきました」

 

犬島。

 

空。

 

見る。

 

「すぐそこなので走ります?」

 

担当官。

 

「走るな」

 

バッグ。

 

開く。

 

折り畳み傘。

 

一本。

 

犬島。

 

「一個?」

 

「一個」

 

藍島。

 

「担当官さん使ってください」

 

犬島。

 

「うちら濡れても」

 

担当官。

 

「駄目」

 

傘。

 

開く。

 

犬島。

 

藍島。

 

二人。

 

中。

 

入れる。

 

担当官。

 

自分。

 

少し。

 

外。

 

犬島。

 

見上げる。

 

「担当官さん肩濡れとります」

 

「いい」

 

藍島。

 

「良くないです」

 

二人。

 

同時。

 

担当官側。

 

寄る。

 

今度。

 

三人。

 

かなり。

 

近い。

 

担当官。

 

「狭い」

 

犬島。

 

「担当官さんがちゃんと入らんからです」

 

藍島。

 

「真ん中来てください」

 

担当官。

 

「俺が真ん中?」

 

犬島。

 

「一番大きいので」

 

担当官。

 

「理由になってない」

 

それでも。

 

最終的。

 

担当官。

 

中央。

 

犬島。

 

左。

 

藍島。

 

右。

 

三人。

 

一つ。

 

傘。

 

歩く。

 

偶然。

 

固定カメラ。

 

屋根下。

 

まだ。

 

録画。

 

回っていた。

 

全部。

 

映っていた。

 

---

 

八 編集室

 

翌日。

 

編集担当。

 

映像。

 

見る。

 

朝。

 

スカーフ。

 

直す。

 

髪留め。

 

直す。

 

忘れ物。

 

確認。

 

休憩。

 

水。

 

渡す。

 

昼。

 

犬島に食事。

 

促す。

 

午後。

 

高い棚。

 

代わり。

 

雨。

 

一つの傘。

 

三人。

 

並ぶ。

 

編集担当。

 

黙る。

 

広報担当官。

 

横。

 

「何」

 

「いや」

 

「何だよ」

 

編集担当。

 

画面。

 

指す。

 

「完全に兄ですね」

 

担当官。

 

「違う」

 

「朝から二人の身支度見て」

 

「撮影だから」

 

「忘れ物確認して」

 

「撮影だから」

 

「休憩させて」

 

「撮影だから」

 

「ご飯食べさせて」

 

「食べさせてはいない」

 

「高いところの物取って」

 

「届かないから」

 

「雨の日に傘入れて」

 

「普通だろ」

 

編集担当。

 

少し。

 

笑う。

 

「普通のお兄ちゃんですね」

 

担当官。

 

「違う」

 

---

 

九 動画公開

 

タイトル。

 

【公式】犬島と藍島、工廠の一日を紹介します――呉鎮守府の日常⑧

 

動画。

 

開始。

 

一分。

 

犬島。

 

スカーフ。

 

担当官。

 

直す。

 

コメント。

 

«「開始1分でもう兄」»

 

«「朝の身支度チェック」»

 

次。

 

藍島。

 

髪留め。

 

«「妹2号も直されてる」»

 

«「完全に兄妹の朝」»

 

忘れ物。

 

犬島。

 

端末。

 

藍島。

 

筆記具。

 

担当官。

 

「二人とも一回戻るぞ」

 

コメント。

 

«「お兄ちゃん先生」»

 

«「二人まとめて連れて帰るの草」»

 

«「兄じゃないらしいです」»

 

---

 

十 水分補給

 

担当官。

 

「犬島、水飲んだか?」

 

コメント。

 

«「兄」»

 

«「はい兄」»

 

«「撮影管理という名の兄」»

 

犬島。

 

「こういうところが兄みたいって言われるんだと思います」

 

担当官。

 

「撮影管理だ」

 

コメント。

 

爆発。

 

«「本人自覚なし」»

 

«「往生際が悪い」»

 

«「撮影管理で妹の水分まで覚えてるの偉い」»

 

---

 

十一 昼食

 

担当官。

 

«「犬島、朝から動いてるんだから自分で食べろ」»

 

犬島。

 

藍島。

 

小声。

 

«「兄ですね」»

 

«「兄です」»

 

担当官。

 

«「聞こえてるぞ」»

 

この場面。

 

短尺。

 

確定。

 

コメント。

 

«「姉妹からも兄認定されてる」»

 

«「本人だけ認めてない」»

 

«「兄じゃないなら何なんだ」»

 

---

 

十二 雨

 

動画。

 

終盤。

 

一つ。

 

傘。

 

担当官。

 

犬島。

 

藍島。

 

担当官。

 

自分。

 

濡れ気味。

 

犬島。

 

藍島。

 

担当官。

 

内側へ。

 

押す。

 

三人。

 

並ぶ。

 

視聴者。

 

コメント。

 

一気。

 

増える。

 

«「家族写真」»

 

«「どう見ても兄妹」»

 

«「妹二人に傘譲って自分濡れてる兄」»

 

«「妹二人に怒られて真ん中入れられてる」»

 

«「兄じゃないの無理がある」»

 

---

 

十三 そして最大の場面

 

撮影終了後。

 

実は。

 

カメラ。

 

まだ。

 

止めていなかった。

 

広報棟。

 

玄関。

 

三人。

 

入る。

 

担当官。

 

傘。

 

閉じる。

 

犬島。

 

タオル。

 

持ってくる。

 

「担当官さん」

 

「何」

 

「肩濡れとります」

 

「大丈夫」

 

犬島。

 

「拭いてください」

 

藍島。

 

別のタオル。

 

「髪も」

 

担当官。

 

「俺はいいから二人先に」

 

犬島。

 

「うちらあんまり濡れてません」

 

藍島。

 

「担当官さんが傘こっち寄せたからでしょう」

 

担当官。

 

「……」

 

犬島。

 

「ほら」

 

タオル。

 

渡す。

 

担当官。

 

受け取る。

 

その時。

 

撮影補助員。

 

カメラの後ろ。

 

笑いながら。

 

「担当官」

 

「何だ」

 

「もう完全に二人のお兄ちゃんじゃないですか」

 

担当官。

 

一秒。

 

二秒。

 

犬島。

 

見る。

 

藍島。

 

見る。

 

二人。

 

少し。

 

笑っている。

 

担当官。

 

とうとう。

 

大きめの声。

 

«「俺は犬島と藍島の兄じゃないぞ!」»

 

犬島。

 

即答。

 

「はい」

 

藍島。

 

「知っとります」

 

担当官。

 

「その顔は知ってる顔じゃないだろ!」

 

二人。

 

笑う。

 

撮影補助。

 

笑う。

 

担当官。

 

自分も。

 

最後。

 

笑ってしまう。

 

---

 

十四 そこだけ切り抜かれる

 

公式短尺。

 

タイトル。

 

「『俺は犬島と藍島の兄じゃないぞ!』」

 

開始。

 

担当官。

 

犬島。

 

スカーフ。

 

直す。

 

藍島。

 

髪留め。

 

直す。

 

忘れ物。

 

確認。

 

水。

 

渡す。

 

高い棚。

 

荷物。

 

取る。

 

傘。

 

入れる。

 

字幕。

 

『※広報担当官です』

 

最後。

 

撮影補助。

 

«「もう完全に二人のお兄ちゃんじゃないですか」»

 

担当官。

 

«「俺は犬島と藍島の兄じゃないぞ!」»

 

犬島。

 

「はい」

 

藍島。

 

「知っとります」

 

担当官。

 

«「その顔は知ってる顔じゃないだろ!」»

 

三十五秒。

 

再生数。

 

猛烈。

 

---

 

十五 コメント

 

一位。

 

«「ここまで全部兄の行動してから『兄じゃないぞ!』は無理がある。」»

 

二位。

 

«「本人以外全員兄だと思ってて草。」»

 

三位。

 

«「犬島と藍島が『はい』『知っとります』って素直に答えるのに全然説得力ない。」»

 

四位。

 

«「血縁じゃないのは分かってる。でも関係性として兄。」»

 

五位。

 

«「妹二人に世話焼いて、妹二人から世話焼かれてるの完全に三兄妹。」»

 

そして。

 

かなり好評。

 

«「二人を子供扱いしてるんじゃなくて、仕事仲間として見ながら自然に面倒見てるのが兄っぽく見えるんだと思う。」»

 

担当官。

 

このコメント。

 

読む。

 

少し。

 

納得。

 

---

 

十六 犬島公式SNS

 

«今月の広報動画で、広報担当官さんが「俺は犬島と藍島の兄じゃないぞ」と言っています。

 

本当に兄ではありません。

 

朝にスカーフ直してもらったり、忘れ物を教えてもらったり、休憩させてもらったり、棚の上の箱を取ってもらったりしましたけど、兄ではありません。

 

広報担当官さんです。»

 

反応。

 

«「列挙するほど兄になる」»

 

«「犬島、それ擁護になってないよ」»

 

犬島。

 

«事実を書いただけです。»

 

---

 

十七 藍島公式SNS

 

«担当官さんはうちらの兄ではありません。

 

でも犬島さんが端末を忘れたら気づいて、うちが筆記具を忘れたら気づいて、二人とも疲れたら休憩を入れてくれます。

 

困った時に呼ぶとだいたい来てくれます。

 

兄ではありません。»

 

一般。

 

«「最後だけ文字が浮いてる」»

 

«「藍島も擁護失敗」»

 

担当官。

 

«説明を増やすな。»

 

藍島。

 

«はい。»

 

犬島。

 

«分かりました。»

 

その並び。

 

また。

 

兄と妹。

 

言われた。

 

---

 

十八 軍令部でも

 

定例広報会議。

 

総長。

 

動画。

 

見る。

 

担当官。

 

「俺は犬島と藍島の兄じゃないぞ!」

 

総長。

 

少し。

 

笑う。

 

「人気らしいな」

 

担当官。

 

「その話はやめてください」

 

「二人の兄」

 

「広報担当です」

 

「知っている」

 

「なら言わないでください」

 

総長。

 

資料。

 

見る。

 

「ちなみに視聴者から『担当官も月一広報メンバーなのか』という問い合わせが増えている」

 

担当官。

 

「私は毎回仕事でいるんです」

 

「それがもうレギュラーということでは?」

 

担当官。

 

「……」

 

会議室。

 

笑い。

 

---

 

十九 本人の本音

 

ある夕方。

 

第一岸壁。

 

犬島。

 

第二岸壁。

 

藍島。

 

担当官。

 

撮影機材。

 

片付け。

 

犬島。

 

「担当官さん」

 

「何」

 

「兄って言われるの、本当に嫌です?」

 

担当官。

 

少し。

 

考える。

 

「嫌ではない」

 

犬島。

 

「じゃあ」

 

「でも兄ではない」

 

藍島。

 

「そこは譲らんですね」

 

「事実だからな」

 

犬島。

 

「じゃあ」

 

少し。

 

笑う。

 

「兄みたいな広報担当官」

 

担当官。

 

犬島。

 

見る。

 

藍島。

 

笑う。

 

担当官。

 

ため息。

 

「それなら」

 

少し。

 

間。

 

「まだ許す」

 

藍島。

 

「じゃあ決まりですね」

 

担当官。

 

「決めるな」

 

---

 

終章

 

広報担当官。

 

犬島のスカーフ。

 

曲がっていたら。

 

直す。

 

藍島の髪留め。

 

ずれていたら。

 

教える。

 

犬島が端末を忘れれば。

 

気づく。

 

藍島が筆記具を忘れれば。

 

気づく。

 

二人が休憩を忘れれば。

 

止める。

 

高い棚。

 

届かなければ。

 

取る。

 

雨。

 

降れば。

 

傘。

 

寄せる。

 

二人が困れば。

 

カメラ。

 

置く。

 

手伝う。

 

そのくせ。

 

誰か。

 

「お兄ちゃん」

 

言えば。

 

必ず。

 

«「俺は犬島と藍島の兄じゃないぞ!」»

 

犬島。

 

「はい」

 

藍島。

 

「知っとります」

 

ただし。

 

その直後。

 

犬島。

 

「担当官さん」

 

「何」

 

「この箱取ってもらえます?」

 

「どれ」

 

藍島。

 

「あ、その後うちのも」

 

「一個ずつ言え」

 

犬島。

 

藍島。

 

「はい」

 

担当官。

 

箱。

 

取る。

 

二人。

 

渡す。

 

視聴者。

 

コメント。

 

«「兄じゃないらしいです。」»

 

担当官。

 

後日。

 

それを見る。

 

頭を抱えた。

 

それでも。

 

次の月。

 

また。

 

犬島と藍島の横。

 

普通に。

 

いた。

 

カメラを持って。

 

二人を見て。

 

必要なら。

 

手を貸して。

 

そして。

 

二人がまた何か妙なことをすれば。

 

一番最初に。

 

笑う。

 

兄ではない。

 

本人曰く。

 

あくまで。

 

広報担当官。

 

ただし。

 

視聴者。

 

犬島。

 

藍島。

 

軍令部。

 

広報部。

 

その全員から。

 

だんだん。

 

同じ扱いを。

 

受け始めていた。

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