海防艦 犬島   作:重装甲空母信濃

66 / 94
今回は広報担当官はおらず犬島と藍島だけで出撃している様子を紹介する動画。
船団護衛等ではなく航行しながら犬島と藍島が話している様子のみ。
危険なこともない…はず……


犬島藍島広報7

海防艦・犬島/藍島

 

――今日は二隻で走るだけです――

 

広報担当官不在の「航行しながら雑談するだけ」の広報動画

 

※メインストーリーとは別世界線

 

今回の広報動画には、広報担当官がいない。

 

提督もいない。

 

秋月も時雨も妙高も能代もいない。

 

撮影班もいない。

 

いるのは。

 

犬島。

 

藍島。

 

そして二隻の実艦だけ。

 

企画そのものも極めて単純だった。

 

「海防艦犬島と藍島が、二隻で普通に航行しながら話す」

 

それだけ。

 

目的海域まで往復。

 

戦闘訓練なし。

 

船団護衛なし。

 

対潜訓練なし。

 

射撃なし。

 

高速性能試験なし。

 

天候。

 

晴れ。

 

風。

 

北東三メートル。

 

波高。

 

〇・四メートル。

 

視程。

 

十五海里以上。

 

海上交通。

 

少ない。

 

出港前の安全確認。

 

異常なし。

 

犬島。

 

「今日はほんまに何もないですね」

 

藍島。

 

「ありますよ」

 

「何が?」

 

「撮影」

 

犬島。

 

少し考える。

 

「それだけですね」

 

---

 

一 どうやって撮るのか

 

広報担当官がいない以上、撮影方法も簡単だった。

 

犬島実艦。

 

艦橋前。

 

固定カメラ。

 

一台。

 

艦橋内。

 

一台。

 

藍島実艦。

 

同じ。

 

さらに。

 

互いを撮影するため、艦橋側面にも小型カメラ。

 

それぞれ一台。

 

全て。

 

固定。

 

録画開始後は、二人が自艦を操艦しながら普通に会話する。

 

広報部から与えられた指示は三つだけ。

 

一、安全運航を最優先すること。

 

二、撮影のために不自然な操艦をしないこと。

 

三、無理に面白いことをしないこと。

 

犬島。

 

三つ目。

 

読んで。

 

「最後の必要です?」

 

藍島。

 

「たぶん広報担当官さんが入れました」

 

「うちら、面白いことしようとしたことないですけど」

 

「はい」

 

二人。

 

顔。

 

見合わせる。

 

犬島。

 

「普通に行きましょう」

 

藍島。

 

「普通に行きましょう」

 

---

 

二 出港

 

午前九時十二分。

 

犬島。

 

第一岸壁。

 

離岸。

 

藍島。

 

第二岸壁。

 

離岸。

 

二隻。

 

港外。

 

向かう。

 

犬島。

 

先行。

 

藍島。

 

約四百メートル後方。

 

港外。

 

出る。

 

その後。

 

藍島。

 

犬島右舷側。

 

並ぶ。

 

間隔。

 

約三百五十メートル。

 

速度。

 

十二ノット。

 

犬島。

 

艦橋から。

 

右。

 

見る。

 

藍島。

 

いる。

 

藍島。

 

左。

 

見る。

 

犬島。

 

いる。

 

犬島。

 

無線。

 

『聞こえます?』

 

藍島。

 

『聞こえます』

 

『カメラ動いとります?』

 

『たぶん』

 

犬島。

 

『たぶん嫌ですね』

 

藍島。

 

『録画ランプついてます』

 

『じゃあ大丈夫です』

 

動画。

 

開始。

 

まだ。

 

二分。

 

---

 

三 最初の会話

 

犬島。

 

『何話します?』

 

藍島。

 

『それ、撮影始まる前に決めるものじゃないです?』

 

『広報担当官さんが「普通に話せ」って』

 

『普通の時って何話してます?』

 

犬島。

 

少し。

 

考える。

 

『天気』

 

藍島。

 

空。

 

見る。

 

『晴れですね』

 

犬島。

 

『はい』

 

沈黙。

 

約八秒。

 

藍島。

 

『終わりましたね』

 

犬島。

 

『天気の話だけだと』

 

藍島。

 

笑う。

 

犬島も。

 

少し。

 

笑う。

 

公開後。

 

この八秒。

 

妙に。

 

人気になる。

 

---

 

四 速度

 

藍島。

 

『今何ノットです?』

 

犬島。

 

『十二』

 

『うちも十二です』

 

『並んどるので当たり前です』

 

藍島。

 

少し。

 

間。

 

『前の性能試験では、うちの方が〇・三ノット速かったですよね』

 

犬島。

 

『今その話します?』

 

『思い出したので』

 

『今日は競争しません』

 

『してません』

 

犬島。

 

『ほんまです?』

 

藍島。

 

『はい』

 

三十秒後。

 

藍島。

 

ほんの少し。

 

前。

 

出る。

 

犬島。

 

見る。

 

『藍島さん』

 

『はい』

 

『前出とります』

 

『潮です』

 

犬島。

 

『ほんまです?』

 

『たぶん』

 

犬島。

 

速度計。

 

見る。

 

藍島。

 

速度計。

 

見る。

 

犬島。

 

『十二・〇です』

 

藍島。

 

『十二・一です』

 

犬島。

 

『〇・一上げとるじゃないですか』

 

藍島。

 

『誤差です』

 

犬島。

 

『戻してください』

 

『はい』

 

藍島。

 

十二・〇。

 

戻す。

 

二隻。

 

また。

 

並ぶ。

 

---

 

五 海の色

 

しばらく。

 

何も。

 

起きない。

 

これが本来。

 

正しい。

 

犬島。

 

海面。

 

見る。

 

『今日は海、きれいですね』

 

藍島。

 

『はい』

 

『瀬戸内の色と違いますね』

 

『少し濃いです』

 

犬島。

 

『玉野の近くはもうちょっと柔らかい色です』

 

藍島。

 

『犬島さん、玉野好きですね』

 

『はい』

 

即答。

 

藍島。

 

少し笑う。

 

『うちも好きです』

 

犬島。

 

少し。

 

表情。

 

明るくなる。

 

『そうですか』

 

『「おかえり」って言ってもらえましたから』

 

犬島。

 

『はい』

 

少し。

 

間。

 

『あれは良かったです』

 

藍島。

 

『犬島さん、あの時かなり嬉しそうでした』

 

『藍島さんもです』

 

『うちは初めてでしたから』

 

犬島。

 

『うちも、藍島さんに言ってもらえたのが初めてでした』

 

藍島。

 

静か。

 

『また行きたいですね』

 

犬島。

 

『はい』

 

この場面。

 

後に。

 

動画コメントで、

 

«「普通の雑談なのに一番好き」»

 

と評価される。

 

---

 

六 食べ物

 

藍島。

 

『犬島さん』

 

『はい』

 

『帰ったら何食べます?』

 

犬島。

 

『昼です?』

 

『はい』

 

『まだ決めてません』

 

『白桃?』

 

犬島。

 

『昼ご飯に白桃だけはないです』

 

藍島。

 

『でも好きでしょう』

 

『好きですけど』

 

『白桃ゼリー』

 

犬島。

 

少し。

 

疑う。

 

『また譲り合いになるので嫌です』

 

藍島。

 

『今回は二個あるか確認します』

 

犬島。

 

『それなら』

 

少し。

 

考える。

 

『食べます』

 

藍島。

 

『うちも』

 

犬島。

 

『二個なら普通に食べられます』

 

藍島。

 

『はい』

 

二人。

 

妙に。

 

安心。

 

---

 

七 前方確認

 

犬島。

 

急に。

 

声。

 

変わる。

 

『藍島さん、前方十一時方向』

 

藍島。

 

『見えます』

 

海面。

 

小さな。

 

黒い影。

 

二隻。

 

進路。

 

変えない。

 

犬島。

 

双眼鏡。

 

見る。

 

藍島。

 

同じ。

 

数秒。

 

犬島。

 

『漂流物?』

 

藍島。

 

『違うと思います』

 

近づく。

 

黒い。

 

頭。

 

出る。

 

そして。

 

潜る。

 

犬島。

 

『……スナメリ?』

 

藍島。

 

『たぶん』

 

別。

 

一頭。

 

出る。

 

二頭。

 

三頭。

 

犬島。

 

『おる』

 

藍島。

 

『いますね』

 

犬島。

 

少し。

 

嬉しそう。

 

『カメラ映っとります?』

 

藍島。

 

『横のカメラなら』

 

犬島。

 

『それなら良かったです』

 

危険。

 

なし。

 

むしろ。

 

広報動画。

 

映像。

 

良い。

 

---

 

八 危険なこともない

 

犬島。

 

『今日はほんまに平和ですね』

 

藍島。

 

『そうですね』

 

犬島。

 

『事故ない』

 

『はい』

 

『ワイヤー切れない』

 

『海底からガスも出ない』

 

『空中線も絡まない』

 

『河口にも入りません』

 

犬島。

 

『最後のはうちの話です』

 

藍島。

 

『うちも一回近づきました』

 

犬島。

 

『事故になってません』

 

『はい』

 

犬島。

 

『なので今日は』

 

少し。

 

笑う。

 

『危険なこともないです』

 

藍島。

 

『……はず』

 

犬島。

 

すぐ。

 

『「はず」いらんです』

 

藍島。

 

『念のため』

 

犬島。

 

『言わん方がええです』

 

この会話。

 

公開後。

 

コメント。

 

大量。

 

«「フラグやめろ」»

 

«「藍島やめて」»

 

«「犬島の危機察知能力がSNS方面に働いてる」»

 

---

 

九 五分後

 

何も。

 

起きない。

 

十ノット。

 

いや。

 

十二ノット。

 

そのまま。

 

二隻。

 

航行。

 

犬島。

 

少し。

 

安心。

 

『ほら』

 

藍島。

 

『何がです?』

 

『何も起きません』

 

藍島。

 

『まだ動画半分くらいですよ』

 

犬島。

 

『そういうこと言わんでください』

 

---

 

十 突然の音

 

そして。

 

午前十時二十八分。

 

犬島。

 

艦橋。

 

「……?」

 

藍島。

 

同時。

 

『今、音しませんでした?』

 

犬島。

 

『しました』

 

ぽん。

 

小さい。

 

乾いた。

 

音。

 

危険。

 

感じる音ではない。

 

犬島。

 

周囲。

 

確認。

 

機関。

 

正常。

 

舵。

 

正常。

 

船体。

 

正常。

 

藍島。

 

同じ。

 

犬島。

 

『どこです?』

 

藍島。

 

『うちじゃないです』

 

もう一回。

 

ぽん。

 

犬島。

 

『……上?』

 

二人。

 

空。

 

見る。

 

---

 

十一 正体

 

犬島。

 

前部甲板。

 

見る。

 

白い。

 

小さい。

 

もの。

 

一つ。

 

落ちている。

 

犬島。

 

『何か落ちました』

 

藍島。

 

『鳥?』

 

犬島。

 

少し。

 

見る。

 

『違います』

 

近く。

 

固定カメラ。

 

映像。

 

犬島。

 

確認。

 

それ。

 

白い。

 

包装。

 

小袋。

 

軽い。

 

風。

 

飛ばされ。

 

海上。

 

漂流。

 

していた。

 

お菓子。

 

個包装。

 

袋。

 

中。

 

空。

 

犬島。

 

『……菓子袋です』

 

藍島。

 

『それが音したんです?』

 

犬島。

 

『たぶん、マストに当たって甲板落ちました』

 

藍島。

 

沈黙。

 

数秒。

 

そして。

 

笑う。

 

『犬島さん』

 

『はい』

 

『今日の危険』

 

『危険じゃありません』

 

藍島。

 

『お菓子の袋』

 

犬島。

 

『危険じゃないです』

 

『はい』

 

犬島。

 

かなり。

 

安心。

 

『ほんまに危険じゃなくて良かったです』

 

---

 

十二 今度は藍島

 

その約三分後。

 

藍島。

 

『犬島さん』

 

『はい』

 

『うちにも来ました』

 

犬島。

 

『何が』

 

藍島。

 

前部甲板。

 

見る。

 

同じような。

 

軽い。

 

袋。

 

一つ。

 

張り付いている。

 

犬島。

 

『同じやつ?』

 

藍島。

 

『たぶん』

 

犬島。

 

『どこから飛んできたんです?』

 

藍島。

 

『分かりません』

 

犬島。

 

『海上清掃の対象ですね』

 

藍島。

 

『帰ったら捨てます』

 

犬島。

 

『はい』

 

犬島。

 

少し。

 

間。

 

『姉妹で同じゴミ拾いましたね』

 

藍島。

 

『お揃いです』

 

犬島。

 

『それは別に嬉しくないです』

 

藍島。

 

笑う。

 

---

 

十三 無線の同期

 

午後。

 

帰路。

 

犬島。

 

『眠くないです?』

 

藍島。

 

『大丈夫です』

 

犬島。

 

『うちも』

 

同時。

 

二人。

 

あくび。

 

する。

 

沈黙。

 

藍島。

 

『今』

 

犬島。

 

『はい』

 

『同時でした?』

 

『たぶん』

 

藍島。

 

笑う。

 

犬島。

 

『カメラに入ってます?』

 

藍島。

 

『多分』

 

犬島。

 

『使われそうですね』

 

『広報担当官さんいないですけど』

 

犬島。

 

『編集する人はおります』

 

二人。

 

少し。

 

嫌な予感。

 

---

 

十四 帰投前

 

呉。

 

見える。

 

犬島。

 

『帰ってきましたね』

 

藍島。

 

『はい』

 

犬島。

 

『今日は事故なし』

 

藍島。

 

『なしです』

 

犬島。

 

『接触なし』

 

『なし』

 

『故障なし』

 

『なし』

 

『空中線も』

 

『正常』

 

犬島。

 

少し。

 

満足。

 

『完璧です』

 

藍島。

 

『ゴミは拾いました』

 

犬島。

 

『それは事故じゃありません』

 

『はい』

 

犬島。

 

『広報担当官さん、これ見たら安心しますね』

 

藍島。

 

『「俺がいない方が何も起きないのか」って言いそうです』

 

犬島。

 

『それはちょっとかわいそうです』

 

---

 

十五 帰港

 

午後二時十九分。

 

犬島。

 

第一岸壁。

 

藍島。

 

第二岸壁。

 

二隻。

 

接岸。

 

問題なし。

 

犬島。

 

固定カメラ。

 

止める。

 

藍島。

 

同じ。

 

撮影終了。

 

犬島。

 

『お疲れさまでした』

 

藍島。

 

『お疲れさまでした』

 

犬島。

 

『今日はほんまに普通でした』

 

藍島。

 

『普通でしたね』

 

少し。

 

間。

 

犬島。

 

『……これ、動画として面白いんです?』

 

藍島。

 

『たぶん大丈夫です』

 

犬島。

 

『たぶん』

 

藍島。

 

『広報担当官さんが編集しとるわけじゃないですけど』

 

犬島。

 

『でも公開前に見ると思います』

 

藍島。

 

『じゃあまた笑いますね』

 

犬島。

 

『何で?』

 

藍島。

 

『あくび』

 

犬島。

 

止まる。

 

『あれ使われます?』

 

藍島。

 

『たぶん』

 

---

 

十六 公開

 

数日後。

 

呉鎮守府公式動画。

 

タイトル。

 

【公式】犬島と藍島、二隻で普通に航行します

 

説明。

 

«海防艦犬島・藍島が、二隻で航行する様子を固定カメラで撮影しました。

 

護衛・訓練・戦闘等は実施していません。

 

二隻が普通に航行しながら会話しているだけの映像です。

 

本航海中、事故・故障・負傷等はありませんでした。»

 

視聴者。

 

冒頭。

 

«「安全宣言ありがたい」»

 

«「犬島動画で『事故なし』が説明欄にあると安心する」»

 

«「今日はほんとに平和回」»

 

---

 

十七 人気場面その一

 

犬島。

 

『何話します?』

 

藍島。

 

『普通の時って何話してます?』

 

犬島。

 

『天気』

 

藍島。

 

『晴れですね』

 

犬島。

 

『はい』

 

八秒。

 

沈黙。

 

コメント。

 

«「会話終了」»

 

«「無理に喋らなくていいのかわいい」»

 

«「ほんとに普通の姉妹」»

 

---

 

十八 人気場面その二

 

藍島。

 

少し。

 

前。

 

出る。

 

犬島。

 

『藍島さん』

 

『はい』

 

『前出とります』

 

『潮です』

 

犬島。

 

『十二・〇です』

 

藍島。

 

『十二・一です』

 

犬島。

 

『〇・一上げとるじゃないですか』

 

コメント。

 

«「妹、やってる」»

 

«「0.1ノットの勝負」»

 

«「性能試験の0.3ノットまだ気にしてる藍島」»

 

---

 

十九 最大の盛り上がり

 

犬島。

 

«『今日は危険なこともないです』»

 

藍島。

 

«『……はず』»

 

犬島。

 

«『「はず」いらんです』»

 

コメント。

 

大量。

 

«「やめろ」»

 

«「危険察知」»

 

«「この姉妹で『はず』は怖い」»

 

そして。

 

五分後。

 

ぽん。

 

犬島。

 

藍島。

 

同時。

 

警戒。

 

視聴者。

 

«「来た!?」»

 

«「何!?」»

 

«「事故!?」»

 

画面。

 

犬島。

 

«『……菓子袋です』»

 

コメント。

 

一気。

 

笑い。

 

«「ゴミw」»

 

«「平和!!!!」»

 

«「本日の重大事故:お菓子の袋」»

 

«「犬島にとって最高に安全なオチ」»

 

---

 

二十 担当官不在なのに

 

動画。

 

終盤。

 

犬島と藍島。

 

同時。

 

あくび。

 

コメント。

 

«「シンクロした」»

 

«「姉妹艦同期率」»

 

«「広報担当官いたら絶対笑ってた」»

 

«「カメラの後ろから笑い声が聞こえないの逆に新鮮」»

 

«「担当官不在回なのに担当官の幻聴がする」»

 

一番。

 

人気。

 

«「いつもの『ふっ』が聞こえないだけで、担当官がいないって分かる。」»

 

---

 

二十一 犬島公式SNS

 

動画。

 

公開。

 

犬島。

 

投稿。

 

«藍島さんと二隻で航行した時の動画が公開されました。

 

今回は広報担当官さんも撮影班もいません。

 

固定カメラだけです。

 

訓練でも護衛でもなく、普通に航行しながら話しています。

 

事故ありません。

 

途中で空の菓子袋が飛んできましたけど、危険はありませんでした。

 

藍島さんの方にも一枚来ました。

 

二隻とも無事帰りました。»

 

反応。

 

«「犬島公式で『事故ありません』を見ると嬉しい」»

 

«「菓子袋まで報告するの犬島らしい」»

 

犬島。

 

«海上ゴミなので回収しました。»

 

---

 

二十二 藍島公式SNS

 

«犬島さんと二隻で走りました。

 

かなり普通です。

 

犬島さんと天気の話をして、玉野の話をして、白桃の話をして、少しだけ速度の話をしました。

 

競争はしてません。

 

うちが0.1ノットだけ速くなったのは誤差です。

 

事故はありませんでした。»

 

犬島。

 

返信。

 

«0.1ノット上げたのは誤差じゃないです。»

 

藍島。

 

«戻しました。»

 

犬島。

 

«はい。»

 

---

 

二十三 広報担当官の反応

 

本人は。

 

動画に出ない。

 

声も。

 

入っていない。

 

ただし。

 

公開後。

 

呉鎮守府公式SNS。

 

短い。

 

舞台裏。

 

«【広報担当より】

 

「私がいない状態で二隻だけに固定カメラを持たせました。

 

正直、途中で何か起きないか少し心配していました。

 

結果は、事故なし、故障なし、接触なし。

 

一番大きな出来事は海上を飛んできた空の菓子袋でした。

 

非常に良い航海だったと思います。」»

 

反応。

 

«「担当官安心してる」»

 

«「事故なしが最大の成功」»

 

«「でも同時あくびのところ見て笑った?」»

 

担当官。

 

«笑いました。»

 

犬島。

 

«やっぱり。»

 

---

 

終章 何もない一日

 

犬島。

 

左。

 

藍島。

 

右。

 

二隻。

 

一定間隔。

 

十二ノット。

 

晴れ。

 

穏やか。

 

犬島。

 

海。

 

見る。

 

藍島。

 

犬島。

 

見る。

 

犬島。

 

気づく。

 

『何です?』

 

藍島。

 

『別に』

 

『見とったでしょう』

 

『犬島さんもさっきうち見とりました』

 

犬島。

 

『前方確認です』

 

藍島。

 

『うちもです』

 

犬島。

 

『ほんまです?』

 

藍島。

 

『たぶん』

 

犬島。

 

少し。

 

笑う。

 

二隻。

 

そのまま。

 

進む。

 

戦闘。

 

ない。

 

事故。

 

ない。

 

警報。

 

ない。

 

誰かを助ける必要もない。

 

何かが壊れることもない。

 

ただ。

 

姉妹艦。

 

二隻。

 

並んで。

 

走る。

 

話す。

 

帰る。

 

それだけ。

 

動画。

 

最後。

 

犬島。

 

«『今日は何も起きませんでしたね』»

 

藍島。

 

«『はい』»

 

犬島。

 

«『こういう日が一番ええです』»

 

藍島。

 

少し。

 

間。

 

«『うちもです、お姉ちゃん』»

 

犬島。

 

一瞬。

 

止まる。

 

それでも。

 

今回は。

 

すぐ。

 

«『……はい』»

 

二隻。

 

並んだまま。

 

呉へ。

 

帰っていく。

 

字幕。

 

『本航海 事故・故障・接触 0件』

 

その下。

 

少し小さく。

 

『回収した海上ゴミ 2点』

 

そして。

 

最後のコメント欄。

 

最上位。

 

«「本当に何も起きない犬島と藍島を30分見られるだけで、こんなに安心するとは思わなかった。」»

 

犬島。

 

「いいね」。

 

藍島。

 

「いいね」。

 

広報担当官。

 

それを見て。

 

今度は笑わず。

 

ただ一言。

 

«「こういうのでいいんだよ。」»

 

と呟いた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。