海防艦 犬島   作:重装甲空母信濃

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広報担当官が通常広報中に大破した犬島と藍島が帰港してくる話


呉鎮守府広報3

呉鎮守府公式広報

 

――撮影中に、大破した二隻が帰ってきた日――

 

通常広報動画がそのまま帰港記録になった話

 

※犬島・藍島別世界線

 

「今日は犬島と藍島の月1広報ではありません」

 

呉鎮守府第三岸壁。

 

広報担当官は、いつものカメラを構えながら淡々と説明していた。

 

「今回は通常の広報です。呉鎮守府で普段どのように艦艇の入出港準備や補給作業が行われているかを紹介します」

 

撮影補助員が横から聞く。

 

「犬島と藍島は?」

 

「二隻とも外です」

 

「任務?」

 

「単独の沿岸航行確認。夕方帰投予定」

 

担当官は少し笑う。

 

「なので今日は二人の広報じゃありません」

 

撮影補助。

 

「最近それ言うと危ないですよ」

 

担当官。

 

「何が」

 

「何か起きます」

 

「起きない」

 

「言い切ります?」

 

担当官。

 

「通常広報だぞ」

 

その時。

 

まだ。

 

彼は知らなかった。

 

約八十海里離れた海上で。

 

犬島と藍島が。

 

二隻とも。

 

大きく損傷していたことを。

 

---

 

一 普通の撮影

 

午前十一時四十分。

 

撮影内容。

 

補給車。

 

係留索。

 

岸壁作業。

 

曳船待機位置。

 

入港誘導。

 

広報としては非常にまともだった。

 

担当官。

 

「入港時には、艦側だけでなく岸壁側も事前に受け入れ準備を行います」

 

係留担当。

 

「大型艦の場合は配置人数も増えます」

 

「海防艦クラスでは?」

 

「通常ならこの人数で十分ですね」

 

担当官。

 

「なるほど」

 

何も。

 

おかしくない。

 

犬島。

 

いない。

 

藍島。

 

いない。

 

広報担当官。

 

少し。

 

安心。

 

---

 

二 通信室から呼び出し

 

午前十一時五十七分。

 

構内放送。

 

『広報部、広報担当官。港務部へ至急』

 

担当官。

 

止まる。

 

「俺?」

 

撮影補助。

 

「呼ばれてますね」

 

「撮影中なんだけど」

 

『至急』

 

担当官。

 

「……行くぞ」

 

カメラ。

 

回したまま。

 

港務部。

 

入る。

 

中。

 

空気。

 

違う。

 

通信員。

 

海図。

 

見る。

 

提督。

 

すでに。

 

いる。

 

担当官。

 

「何がありました?」

 

提督。

 

振り向く。

 

「犬島と藍島」

 

担当官。

 

顔。

 

変わる。

 

「事故?」

 

「二隻とも大破」

 

担当官。

 

数秒。

 

黙る。

 

「……二隻とも?」

 

提督。

 

「うん」

 

「沈没の危険は?」

 

「今のところない」

 

担当官。

 

少し。

 

息。

 

戻る。

 

「帰って来られる?」

 

「自力航行は可能。ただし速度は四ノット以下。外洋側から曳船二隻を出した」

 

担当官。

 

「原因は?」

 

「まだ確定してない」

 

「接触?」

 

「二隻同士ではない」

 

担当官。

 

カメラ。

 

見る。

 

「撮影止めます?」

 

提督。

 

少し。

 

考える。

 

「いや」

 

「え?」

 

「帰港まで記録してくれ」

 

担当官。

 

「広報として?」

 

提督。

 

「記録として」

 

少し。

 

間。

 

「公開するかは後で決める」

 

担当官。

 

頷く。

 

「分かりました」

 

---

 

三 何が起きたのか

 

午後零時十六分。

 

第一報。

 

犬島。

 

無線。

 

音声。

 

少し。

 

乱れる。

 

『呉、犬島です』

 

担当官。

 

港務部。

 

横。

 

聞く。

 

『犬島、聞こえる』

 

提督。

 

応答。

 

『状況報告』

 

犬島。

 

『犬島、艦首から中央部に大きい損傷。右舷外板の一部変形。前部十二糎砲、使用不能。右機関、出力制限。浸水は止めとります』

 

提督。

 

『藍島は?』

 

藍島。

 

別回線。

 

『藍島です。左舷中央部、艦尾側に大きい損傷があります。右軸停止。左軸だけで航行中。浸水は制御できています』

 

担当官。

 

無意識。

 

机。

 

握る。

 

提督。

 

『原因は分かるか』

 

犬島。

 

『沖合で海面が急に盛り上がりました。そのあと海中から大量の木材と岩のようなものが出てきました』

 

藍島。

 

『海底斜面の崩落かもしれません。うちら、最初の波で大きく持ち上げられて、そのあと落とされました』

 

犬島。

 

『浮遊物も複数当たっています』

 

提督。

 

『二隻同士の接触は?』

 

『ありません』

 

『ありません』

 

二人。

 

同時。

 

担当官。

 

小さく。

 

「そこは即答するんだな……」

 

提督。

 

少し。

 

笑う余裕。

 

戻る。

 

「二人らしい」

 

---

 

四 事故原因の概要

 

後の調査で判明。

 

事故発生。

 

午前十時五十二分。

 

呉南東方約七十九海里。

 

海底。

 

急傾斜部。

 

長さ。

 

約一・八キロ。

 

幅。

 

約〇・六キロ。

 

海底堆積物。

 

大規模。

 

崩落。

 

原因。

 

数日前から続いていた微小地震と、深部ガス圧による地層弱化。

 

崩落そのもの。

 

海面。

 

局地的。

 

異常な長周期波。

 

発生。

 

犬島と藍島。

 

その外縁部。

 

巻き込まれる。

 

第一波。

 

犬島。

 

艦首。

 

大きく。

 

持ち上がる。

 

次。

 

中央部。

 

落ち込む。

 

縦方向。

 

強い。

 

曲げ。

 

藍島。

 

逆。

 

艦尾側。

 

強く。

 

押し上げられる。

 

さらに。

 

海底斜面から剥離した。

 

流木。

 

古い沈木。

 

岩片。

 

人工廃材。

 

海面。

 

大量。

 

浮上。

 

二隻。

 

回避。

 

努力。

 

した。

 

しかし。

 

波高。

 

短時間。

 

最大。

 

約五・八メートル。

 

しかも。

 

進行方向。

 

不規則。

 

完全回避。

 

不可能。

 

二隻とも。

 

過失。

 

なし。

 

---

 

五 犬島の損傷

 

犬島。

 

大破。

 

艦首。

 

右舷側。

 

外板。

 

約十九メートル。

 

広範囲。

 

凹損。

 

第一主砲。

 

基部。

 

変形。

 

射撃不能。

 

前部甲板。

 

局部。

 

最大。

 

三十六センチ。

 

沈下。

 

右舷前部。

 

フレーム。

 

七本。

 

交換必要。

 

右推進軸。

 

軸芯。

 

約十二ミリ。

 

ずれ。

 

右機関。

 

回転数。

 

制限。

 

中央部。

 

通風設備。

 

三系統。

 

停止。

 

小規模浸水。

 

四区画。

 

封鎖。

 

艦橋。

 

主要構造。

 

無事。

 

犬島本人。

 

強い痛み。

 

ある。

 

でも。

 

意識。

 

明瞭。

 

---

 

六 藍島の損傷

 

藍島。

 

大破。

 

左舷中央部。

 

外板。

 

約二十二メートル。

 

擦過。

 

圧壊。

 

艦尾甲板。

 

最大。

 

四十一センチ。

 

上方変形。

 

右推進軸。

 

大きく。

 

芯。

 

ずれる。

 

右軸。

 

停止。

 

左軸のみ。

 

使用。

 

中央十二糎砲。

 

旋回不能。

 

機関室配管支持。

 

十六か所。

 

破断。

 

艦尾側。

 

浸水。

 

三区画。

 

排水継続。

 

後部マスト。

 

上端。

 

わずかに。

 

傾く。

 

空中線。

 

一本。

 

切断。

 

藍島本人。

 

歩行可能。

 

ただし。

 

かなり。

 

疲れている。

 

---

 

七 帰港連絡

 

午後二時三十八分。

 

曳船。

 

二隻。

 

合流。

 

犬島。

 

藍島。

 

どちらも。

 

沈んでいない。

 

速度。

 

四ノット。

 

犬島。

 

左。

 

藍島。

 

右。

 

並ぶ。

 

少し。

 

離れて。

 

帰る。

 

犬島。

 

無線。

 

『藍島さん』

 

『はい』

 

『大丈夫です?』

 

『犬島さんこそ』

 

『うちは浮いとります』

 

『うちもです』

 

少し。

 

沈黙。

 

犬島。

 

『一緒に帰れますね』

 

藍島。

 

『はい』

 

『また二隻とも壊れましたね』

 

犬島。

 

『そこ言わんでください』

 

藍島。

 

少し。

 

笑う。

 

犬島も。

 

少し。

 

笑う。

 

---

 

八 広報担当官

 

呉鎮守府。

 

第三岸壁。

 

広報担当官。

 

いつものカメラ。

 

持っている。

 

でも。

 

今日は。

 

笑わない。

 

撮影補助。

 

「担当官」

 

「何」

 

「大丈夫です?」

 

「何が」

 

「顔」

 

担当官。

 

「普通だ」

 

「普通じゃないです」

 

担当官。

 

少し。

 

黙る。

 

「……二隻とも帰ってくるんだろ」

 

「はい」

 

「なら」

 

カメラ。

 

握り直す。

 

「迎える」

 

---

 

九 所属艦娘が集まる

 

第一岸壁。

 

第二岸壁。

 

受け入れ準備。

 

秋月。

 

時雨。

 

妙高。

 

能代。

 

他。

 

工廠。

 

整備員。

 

提督。

 

みんな。

 

集まる。

 

時雨。

 

海。

 

見る。

 

「遅いね」

 

担当官。

 

「四ノットだから」

 

秋月。

 

「二隻とも自力で?」

 

「犬島は両軸制限付き。藍島は左軸だけ」

 

妙高。

 

静か。

 

「帰ってこられるだけでも」

 

担当官。

 

「はい」

 

誰も。

 

余計なこと。

 

言わない。

 

---

 

十 見えてくる

 

午後四時五十六分。

 

港口。

 

二つ。

 

小さい。

 

艦影。

 

見える。

 

犬島。

 

藍島。

 

普通なら。

 

見慣れた。

 

二隻。

 

でも。

 

今日は。

 

形。

 

違う。

 

犬島。

 

艦首。

 

右舷。

 

大きく。

 

凹んでいる。

 

藍島。

 

艦尾。

 

不自然。

 

持ち上がっている。

 

塗装。

 

剥がれ。

 

外板。

 

変形。

 

マスト。

 

少し。

 

傾く。

 

速度。

 

遅い。

 

担当官。

 

ファインダー。

 

覗く。

 

少し。

 

息。

 

止まる。

 

撮影補助。

 

「……大きいですね」

 

担当官。

 

「ああ」

 

提督。

 

「でも浮いてる」

 

担当官。

 

「はい」

 

---

 

十一 犬島

 

第一岸壁。

 

近づく。

 

犬島。

 

実艦。

 

艦橋。

 

立つ。

 

白い制服。

 

汚れ。

 

少し。

 

髪。

 

乱れている。

 

それでも。

 

立つ。

 

担当官。

 

望遠。

 

犬島。

 

映す。

 

犬島。

 

岸壁。

 

人。

 

見る。

 

提督。

 

秋月。

 

時雨。

 

妙高。

 

能代。

 

広報担当官。

 

犬島。

 

少し。

 

表情。

 

緩む。

 

無線。

 

『呉、犬島です』

 

提督。

 

『おかえり、犬島』

 

犬島。

 

短く。

 

«『ただいまです』»

 

---

 

十二 藍島

 

第二岸壁。

 

藍島。

 

ゆっくり。

 

入る。

 

右軸。

 

停止。

 

左軸。

 

微速。

 

曳船。

 

補助。

 

藍島。

 

艦橋。

 

立つ。

 

担当官。

 

カメラ。

 

向ける。

 

藍島。

 

担当官。

 

気づく。

 

少し。

 

手。

 

振る。

 

担当官。

 

一瞬。

 

カメラ。

 

下げる。

 

手。

 

振り返す。

 

撮影補助。

 

何も。

 

言わない。

 

藍島。

 

無線。

 

『帰りました』

 

担当官。

 

小さく。

 

聞こえない声。

 

「おかえり」

 

---

 

十三 接岸

 

犬島。

 

第一岸壁。

 

係留。

 

藍島。

 

第二岸壁。

 

係留。

 

犬島。

 

実艦から。

 

降りる。

 

藍島。

 

同じ。

 

二人。

 

いつもより。

 

ゆっくり。

 

犬島。

 

歩く。

 

提督。

 

前。

 

「犬島」

 

「はい」

 

「よく帰った」

 

犬島。

 

少し。

 

笑う。

 

「帰る場所なので」

 

提督。

 

「うん」

 

藍島。

 

担当官。

 

前。

 

担当官。

 

「藍島」

 

「はい」

 

「無理して歩くな」

 

「大丈夫です」

 

担当官。

 

「その大丈夫、今日は信用しない」

 

藍島。

 

少し。

 

笑う。

 

「兄みたいですね」

 

担当官。

 

すぐ。

 

「今日はそれ言う元気あるなら少し安心した」

 

藍島。

 

「兄じゃないぞ、は?」

 

担当官。

 

一秒。

 

止まる。

 

«「俺は犬島と藍島の兄じゃないぞ」»

 

藍島。

 

「はい」

 

担当官。

 

少し。

 

笑う。

 

ようやく。

 

いつもの。

 

空気。

 

戻る。

 

---

 

十四 犬島、担当官を見る

 

犬島。

 

藍島側。

 

来る。

 

「担当官さん」

 

「何」

 

「撮影しとったんです?」

 

「通常広報」

 

犬島。

 

「またうちら映りました?」

 

担当官。

 

「今日は」

 

少し。

 

間。

 

「映すつもりで映した」

 

犬島。

 

「そうですか」

 

「嫌なら公開しない」

 

犬島。

 

少し。

 

考える。

 

自分の。

 

大きく損傷した艦。

 

見る。

 

藍島。

 

見る。

 

そして。

 

「帰ってきたところなら」

 

小さく。

 

「ええです」

 

---

 

十五 公開判断

 

事故。

 

翌日。

 

軍令部。

 

広報会議。

 

提督。

 

担当官。

 

法務。

 

工廠。

 

広報部。

 

映像。

 

確認。

 

担当官。

 

「大破状態を公開する以上、事故原因や損傷状況の説明は必要です」

 

提督。

 

「犬島と藍島本人の意向は?」

 

「二人とも、帰港場面は出していいと」

 

「事故直後の無線は?」

 

「必要最小限」

 

「煽る編集は?」

 

担当官。

 

「しません」

 

提督。

 

「なら」

 

少し。

 

頷く。

 

「帰ってきた記録として出そう」

 

---

 

十六 動画タイトル

 

数日後。

 

呉鎮守府公式。

 

【記録】通常広報撮影中、大破した犬島・藍島が帰投しました

 

説明。

 

«本動画は当初、呉鎮守府の通常業務を紹介する目的で撮影されたものです。

 

撮影中、海防艦犬島・藍島が航行中の海底斜面崩落に伴う異常波および浮遊物群により大破したとの連絡が入りました。

 

両艦に運用上の過失は認められていません。

 

二隻とも自力航行能力を一部保持し、曳船支援のもと呉へ帰投しました。

 

本映像は両艦本人の了承を得て公開しています。»

 

---

 

十七 視聴者の反応

 

序盤。

 

普通。

 

港湾設備。

 

説明。

 

コメント。

 

«「本当に普通の広報だ」»

 

«「この後あの二隻帰ってくるのか……」»

 

港務部。

 

呼び出し。

 

提督。

 

「犬島と藍島、二隻とも大破」

 

コメント。

 

一気。

 

静か。

 

«「え」»

 

«「二隻とも?」»

 

«「事故原因まだ分からないの怖い」»

 

そして。

 

帰港。

 

遠く。

 

大きく傷ついた。

 

二隻。

 

見える。

 

«「帰ってきた」»

 

«「ちゃんと二隻いる」»

 

«「犬島艦首ひどいな」»

 

«「藍島の艦尾も」»

 

犬島。

 

«『ただいまです』»

 

コメント。

 

«「おかえり」»

 

«「おかえり犬島」»

 

«「藍島もおかえり」»

 

---

 

十八 一番多かったコメント

 

最上位。

 

«「大破して帰ってくる映像なのに、最後に『ただいま』『おかえり』で終わるのが呉鎮守府らしい。」»

 

次。

 

«「二隻とも自分の艦をここまで持って帰ってきたのがすごい。」»

 

次。

 

«「広報担当官がいつもの笑い声を一度も出さないのが、どれだけ心配してたか分かる。」»

 

そして。

 

藍島。

 

「兄みたいですね」

 

担当官。

 

«「俺は犬島と藍島の兄じゃないぞ」»

 

コメント。

 

«「ここでいつものやり取り戻って安心した」»

 

«「この一言でようやく帰ってきた感じした」»

 

担当官。

 

後で。

 

これ。

 

見る。

 

少し。

 

笑う。

 

---

 

十九 犬島公式SNS

 

事故。

 

調査結果。

 

出る。

 

犬島。

 

投稿。

 

«先日の事故について調査結果が出ました。

 

犬島と藍島さんが航行していた海域で、海底斜面の大規模崩落が発生しました。

 

その影響で異常な波と大量の浮遊物が発生し、二隻とも大きく損傷しました。

 

犬島・藍島さんとも運用上の過失なしです。

 

二隻同士の接触もありません。

 

犬島は艦首から中央部、藍島さんは中央部から艦尾側の損傷が大きいです。

 

二隻とも呉まで帰りました。

 

岸壁で「おかえり」と言ってもらえました。

 

それが一番良かったです。»

 

反応。

 

«「おかえり」»

 

«「二隻とも戻ってきてくれてよかった」»

 

«「犬島、藍島を気にしながら帰ってたの分かる」»

 

犬島。

 

«一緒に出たので、一緒に帰りたかったです。»

 

---

 

二十 藍島公式SNS

 

«犬島さんと航行中、海底斜面崩落による異常波に巻き込まれました。

 

うちは右軸が使えなくなりましたが、左軸と曳船支援で帰投しました。

 

犬島さんも大きく壊れましたけど、一緒に帰れました。

 

岸壁で担当官さんがおったので少し安心しました。

 

「兄みたいですね」と言ったら、いつも通り「俺は犬島と藍島の兄じゃないぞ」と言われました。

 

いつも通りで良かったです。»

 

担当官。

 

返信。

 

«そこまで事故報告に入れなくていい。»

 

藍島。

 

«大事でした。»

 

犬島。

 

«うちもそう思います。»

 

担当官。

 

«二人とも。»

 

---

 

二十一 修理

 

犬島。

 

修理見込み。

 

三十五日。

 

藍島。

 

四十二日。

 

工廠。

 

隣。

 

ドック。

 

犬島。

 

艦首。

 

大規模。

 

交換。

 

藍島。

 

艦尾側。

 

構造。

 

修正。

 

担当官。

 

撮影。

 

しない。

 

普通に。

 

見に来る。

 

犬島。

 

「担当官さん」

 

「何」

 

「今日はカメラないですね」

 

「今日は広報じゃない」

 

藍島。

 

「じゃあ何です?」

 

担当官。

 

少し。

 

考える。

 

「様子見」

 

犬島。

 

藍島。

 

顔。

 

見合わせる。

 

藍島。

 

「兄ですね」

 

担当官。

 

「言うと思った」

 

犬島。

 

少し。

 

笑う。

 

「元気になった証拠です」

 

担当官。

 

「それならいい」

 

---

 

終章 通常広報だったはずの動画

 

その日の撮影は。

 

本来。

 

係留索。

 

補給。

 

岸壁。

 

曳船。

 

入港手順。

 

普通の。

 

呉鎮守府。

 

紹介。

 

だけのはずだった。

 

犬島。

 

藍島。

 

出ない。

 

月1企画でもない。

 

広報担当官。

 

いつものように。

 

説明。

 

する。

 

そこへ。

 

通信。

 

入る。

 

«「犬島と藍島、二隻とも大破」»

 

そこから。

 

動画。

 

変わる。

 

施設紹介。

 

ではなく。

 

帰ってくる。

 

二隻。

 

迎える。

 

記録。

 

になる。

 

港口。

 

犬島。

 

見える。

 

藍島。

 

見える。

 

壊れている。

 

それでも。

 

浮いている。

 

進んでいる。

 

第一岸壁。

 

第二岸壁。

 

戻る。

 

犬島。

 

«「ただいまです」»

 

提督。

 

«「おかえり」»

 

藍島。

 

«「帰りました」»

 

担当官。

 

«「おかえり」»

 

そして。

 

最後。

 

藍島。

 

«「兄みたいですね」»

 

担当官。

 

少し。

 

疲れた顔。

 

それでも。

 

いつもの調子。

 

«「俺は犬島と藍島の兄じゃないぞ」»

 

犬島。

 

藍島。

 

二人。

 

少し。

 

笑う。

 

その笑顔。

 

見て。

 

担当官も。

 

ようやく。

 

小さく。

 

笑う。

 

事故。

 

大きい。

 

損傷。

 

重い。

 

修理。

 

長い。

 

それでも。

 

二隻。

 

帰ってきた。

 

この動画で。

 

一番。

 

伝わったもの。

 

それは。

 

鎮守府。

 

という場所が。

 

艦を。

 

出す場所。

 

だけではなく。

 

壊れても。

 

戻ってくる。

 

場所。

 

だということだった。

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