海防艦・犬島/藍島
――もう完全に懐いとるじゃないですか――
広報担当官の周囲からほとんど離れない姉妹の動画が公開された日
※メインストーリーとは別世界線
きっかけは、呉鎮守府広報部に蓄積されていた大量の未使用映像だった。
犬島と藍島の月1広報。
通常広報。
一般公開準備。
工廠撮影。
食堂。
岸壁。
庁舎。
そのどれにも、妙に共通する場面があった。
広報担当官がいる。
そして。
その近くに。
犬島。
いる。
藍島。
いる。
しかも一度や二度ではない。
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一 編集担当が気づいた
編集室。
撮影補助。
過去映像。
整理。
一つ目。
広報担当官。
屋外ベンチ。
資料。
読んでいる。
右側。
犬島。
座る。
左側。
藍島。
座る。
数分後。
二人とも。
寝る。
担当官。
資料を読みながら。
犬島の頭。
時々。
撫でる。
藍島。
少し。
寄りかかる。
担当官。
何も言わない。
次。
工廠。
担当官。
撮影位置。
探して歩く。
その後ろ。
犬島。
藍島。
ついてくる。
担当官。
止まる。
二人も。
止まる。
担当官。
右へ。
二人も。
右へ。
左。
二人も。
左。
編集担当。
「……」
次。
広報室前。
担当官。
同僚。
話す。
犬島。
担当官の後ろ。
ゆっくり。
通過。
十秒後。
また。
通過。
そのあと。
藍島。
反対方向。
通過。
さらに。
犬島。
また。
戻ってくる。
編集担当。
「何してんだこの二人」
次。
岸壁。
担当官。
カメラ。
調整。
犬島。
隣。
しゃがむ。
藍島。
反対。
しゃがむ。
担当官。
「何でいるの?」
犬島。
「別に」
藍島。
「見とるだけです」
担当官。
「近い」
二人。
動かない。
編集担当。
数秒。
黙る。
そして。
撮影補助。
呼ぶ。
「これ」
「何?」
「一本にしたら面白くない?」
撮影補助。
見る。
十秒。
「……犬島藍島、担当官に懐きすぎでは?」
「だよな」
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二 企画名
正式企画。
「犬島と藍島は広報担当官の近くにどれくらいいるのか」
担当官。
企画書。
読む。
「却下」
編集担当。
「何でです?」
「俺の仕事紹介じゃない」
「犬島藍島の日常です」
「俺が中心じゃん」
「結果的に」
担当官。
「結果的に、じゃない」
撮影補助。
「でも全部自然映像ですよ」
「仕込みなし?」
「なしです」
担当官。
犬島。
藍島。
映像。
見る。
自分。
どこか。
行く。
二人。
ついてくる。
止まる。
二人。
近く。
座る。
担当官。
少し。
黙る。
「……こいつらこんなに近くにいた?」
編集担当。
「本人が一番気づいてない」
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三 動画冒頭
公開タイトル。
【公式】犬島と藍島、広報担当官の近くにいすぎる説
冒頭。
字幕。
『以下、すべて通常業務中の自然映像です』
担当官。
広報室。
歩く。
犬島。
後ろ。
藍島。
後ろ。
三人。
縦。
一列。
コメント。
«「開始3秒で兄妹」»
«「カルガモみたいになってる」»
«「担当官の後ろに二隻ついてくるのかわいい」»
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四 寝る
次。
屋外。
担当官。
椅子。
座る。
犬島。
右。
藍島。
左。
二人。
何も言わず。
座る。
担当官。
「疲れた?」
犬島。
「ちょっと」
藍島。
「うちも」
担当官。
「休憩室行けば?」
犬島。
「ここでええです」
藍島。
「はい」
三分後。
犬島。
寝る。
藍島。
寝る。
担当官。
一人。
資料。
読む。
そのまま。
片手。
犬島。
頭。
軽く。
撫でる。
もう片方。
藍島。
頭。
整える。
コメント。
爆発。
«「完全に懐いてる」»
«「ここ安全地帯認定されてる」»
«「二人とも寝るまで早すぎる」»
«「担当官も慣れすぎ」»
«「『また寝たか』みたいな顔してる」»
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五 担当官の周囲を歩き続ける
別の日。
広報担当官。
工廠前。
撮影地点。
確認。
右。
歩く。
犬島。
ついてくる。
藍島。
ついてくる。
担当官。
立ち止まる。
二人。
立ち止まる。
担当官。
「お前ら、何でついてくるの?」
犬島。
「暇なので」
藍島。
「担当官さん何しとるんかなと思って」
担当官。
「仕事」
犬島。
「知っとります」
担当官。
再び。
歩く。
二人。
また。
ついてくる。
担当官。
振り返る。
二人。
止まる。
「……」
犬島。
「何です?」
担当官。
「いや」
藍島。
「行かんのです?」
担当官。
「行くけど」
また。
歩く。
また。
二人。
ついてくる。
コメント。
«「完全に懐いてる犬」»
«「犬島だけじゃなく藍島も」»
«「担当官が動くと二人も動く」»
«「名前通り犬島とか言うなよ」»
«「藍島まで同じなのが強い」»
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六 広報室前を往復
別映像。
担当官。
廊下。
同僚。
打ち合わせ。
犬島。
右から。
通る。
「お疲れさまです」
担当官。
「お疲れ」
十秒後。
藍島。
左から。
「お疲れさまです」
担当官。
「おう」
さらに。
二十秒後。
犬島。
また。
右から。
担当官。
「犬島」
「はい」
「さっき通ったよな?」
「はい」
「何してる?」
犬島。
少し。
考える。
「歩いとります」
担当官。
「それは見れば分かる」
さらに。
藍島。
後ろ。
現れる。
担当官。
「藍島も何してる?」
藍島。
「犬島さん探してました」
犬島。
「ここです」
藍島。
「いました」
そのまま。
二人。
担当官。
横。
立つ。
同僚。
吹き出す。
コメント。
«「結局担当官のところに集まる」»
«「集合地点扱い」»
«「犬島を探す藍島→担当官のところへ行く、信頼度高すぎ」»
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七 担当官の反応
動画。
初回確認。
担当官。
腕。
組む。
「……」
編集担当。
「どうです?」
「懐いてるな」
「認めた」
担当官。
「いや、これは」
映像。
犬島。
隣。
寝る。
藍島。
反対。
寝る。
「否定できない」
撮影補助。
「兄ですね」
担当官。
即答。
«「俺は犬島と藍島の兄じゃないぞ」»
編集担当。
「でも懐かれてはいる?」
担当官。
少し。
間。
「……まあ」
「はい」
「それは、たぶん」
かなり。
珍しく。
認める。
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八 犬島本人
公開後。
犬島。
動画。
見る。
開始。
自分。
担当官。
後ろ。
歩く。
犬島。
「……」
藍島。
隣。
「結構ついていってますね」
犬島。
「藍島さんもでしょう」
次。
寝る。
犬島。
「これ撮られとったんですね」
藍島。
「気づいてませんでした」
犬島。
「うちも」
担当官。
頭。
撫でる。
犬島。
少し。
止まる。
「……これ」
藍島。
「はい」
犬島。
「普通に寝とりますね」
藍島。
「かなり」
犬島。
少し。
恥ずかしい。
でも。
嫌。
ではない。
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九 藍島本人
動画。
工廠。
担当官。
後ろ。
二人。
歩く。
藍島。
笑う。
「ほんまにずっとついていっとる」
犬島。
「何でです?」
藍島。
「犬島さんが行くから」
犬島。
「藍島さんも行っとるでしょう」
「犬島さんがおるので」
犬島。
「担当官さん関係ないじゃないですか」
藍島。
少し。
考える。
「でも担当官さんのところ行けば、犬島さんもおること多いです」
犬島。
「……」
妙に。
納得。
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十 犬島公式SNS
«今日公開された動画を見ると、うちと藍島さんがかなり広報担当官さんの近くにおりました。
自分ではそこまでついて回っとるつもりはありませんでした。
でも映像を見ると、かなりおりました。
疲れとる時に近くで寝ることはあります。
落ち着くので。
兄ではありません。»
反応。
«「落ち着くので、が全部」»
«「最後の否定もう無理」»
«「本人が懐いてるの認めてる」»
犬島。
«懐いとるというか、信頼しとるだけです。»
一般。
«「それを懐いてると言う」»
犬島。
返信。
なし。
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十一 藍島公式SNS
«動画を見るまで、うちらが担当官さんの周りをこんなに歩いとるとは思ってませんでした。
担当官さんの近くは、話しかけても邪魔じゃない時が分かりやすいです。
休憩しとる時は隣におっても何も言われません。
寝ても起こされません。
頭も撫でてくれます。
なので居心地はいいです。»
反応。
«「完全に懐いてる説明」»
«「本人が証拠追加してる」»
«「担当官の隣=安全地帯」»
担当官。
返信。
«説明を増やすな。»
藍島。
«事実です。»
犬島。
«うちもそう思います。»
担当官。
«二人とも。»
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十二 担当官公式コメント
かなり。
注目。
集まる。
広報担当官。
公式。
コメント。
«【広報担当より】
映像を見るまで、二人がここまで頻繁に近くにいるとは私も思っていませんでした。
撮影準備や編集確認中に近くを歩いていることはよくあります。
訓練後などに疲れて寝ている場合もありますが、業務に支障がなければ特に起こしていません。
頭を撫でているのは、起こさない程度に様子を見ているだけです。
私は犬島と藍島の兄ではありません。»
反応。
«「全部兄の説明」»
«「『業務に支障がなければ寝かせてます』が兄」»
«「本人も懐かれてることに気づいてなかったの面白い」»
一番。
人気。
«「担当官が二人を追い払わないから、二人も『ここにいていい』って思ってるんだろうな。」»
担当官。
これ。
読む。
少し。
黙る。
そして。
「いいね」。
押す。
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十三 視聴者の総評
コメント。
大きく。
四種類。
分かれる。
一つ。
とにかくかわいい派。
«「左右で寝てるのかわいい」»
«「二人とも安心しきってる」»
«「担当官の近くに集合する習性」»
二つ。
完全に兄妹派。
«「血縁はない。兄妹ではない。なお見た目と行動。」»
«「兄じゃないと言う男と兄にしか見えない妹二人」»
«「公式が否定するほど兄妹感が増す」»
三つ。
信頼関係が良い派。
«「疲れた時に自然に行ける相手がいるの良い」»
«「担当官も二人を子供扱いせず、でも休ませるところは休ませるのがいい」»
«「普段からちゃんと信頼作ってるの分かる」»
四つ。
撮影補助有能派。
«「毎回撮れ高判断が早すぎる」»
«「犬島藍島担当官の自然映像を一番持ってる人物」»
«「撮影補助視点の総集編ほしい」»
撮影補助。
公式。
«まだあります。»
担当官。
即返信。
«出すな。»
ネット。
さらに。
盛り上がる。
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十四 翌日
広報室。
担当官。
机。
仕事。
犬島。
扉。
覗く。
「担当官さん」
「何」
「入ってええです?」
「仕事の邪魔しないなら」
「はい」
犬島。
入る。
隣。
椅子。
座る。
五分後。
藍島。
来る。
「うちもええです?」
担当官。
「どうぞ」
二人。
静か。
担当官。
仕事。
する。
犬島。
資料。
読む。
藍島。
窓。
見る。
十分後。
犬島。
少し。
眠そう。
担当官。
見る。
「寝るなら休憩室行けよ」
犬島。
「ここでええです」
藍島。
「うちも」
担当官。
「また動画にされるぞ」
犬島。
「今日はカメラないでしょう」
担当官。
周囲。
見る。
撮影補助。
いない。
「今日は大丈夫」
藍島。
「じゃあ寝ます」
担当官。
「宣言して寝るな」
それでも。
数分後。
犬島。
寝る。
藍島。
寝る。
担当官。
二人。
見る。
少し。
笑う。
「……まあ、いいか」
---
終章
広報動画。
最後。
過去映像。
連続。
担当官。
歩く。
犬島。
後ろ。
藍島。
後ろ。
担当官。
座る。
犬島。
隣。
藍島。
隣。
担当官。
仕事。
犬島。
周り。
歩く。
藍島。
周り。
歩く。
担当官。
休憩。
犬島。
寝る。
藍島。
寝る。
担当官。
頭。
撫でる。
字幕。
『撮影期間:約2か月』
次。
『仕込み:0』
そして。
最後。
広報担当官。
映像。
見ながら。
「……俺の周りにいすぎじゃない?」
犬島。
「そうです?」
藍島。
「普通だと思います」
担当官。
「普通?」
犬島。
「はい」
藍島。
「はい」
担当官。
二人。
見る。
二人。
担当官。
見る。
担当官。
少し。
笑う。
「まあ」
「嫌ではないけど」
犬島。
少し。
嬉しそう。
藍島。
同じ。
撮影補助。
後ろ。
「兄ですね」
担当官。
すぐ。
«「俺は犬島と藍島の兄じゃないぞ」»
犬島。
藍島。
同時。
«「はい」»
担当官。
«「その返事、もう絶対信用してないからな」»
二人。
笑う。
視聴者。
最後のコメント。
最上位。
«「兄ではない。ただ二人が一番安心して近くにいられる人。」»
今回は。
担当官。
それを見ても。
否定しなかった。