広報担当官がネット上で犬島と藍島の兄と言われすぎて吹っ切れて自己紹介で「犬島と藍島の兄の広報担当官です」と言って犬島と藍島が驚く動画。の小説
海防艦・犬島/藍島
――犬島と藍島の兄の広報担当官です――
否定し続けた男が、ついに吹っ切れた日
※犬島・藍島別世界線/月1回特別広報
呉鎮守府広報担当官。
犬飼藍人。
若い。
身長、約百八十センチ。
整った顔立ち。
黒に近い髪。
犬島と藍島の近くにいることが多い。
二人が疲れていれば休ませる。
寝ていれば起こさない。
困っていれば助ける。
忘れ物に気づく。
昼食を残せば食べる。
仕事の邪魔にならない限り、広報室に二人が入り浸っても何も言わない。
犬島と藍島も、完全に彼を信頼している。
だが。
一つ。
少し変わった決まりのようなものがあった。
名前が公開されても。
犬島。
「担当官さん」
藍島。
「担当官さん」
呼び方。
変わらない。
本人も。
それでいいと言っていた。
ところが。
二人の感情が大きく動いた瞬間だけ。
不思議と。
名字。
出る。
犬島が驚いた時。
«「犬飼さん!?」»
藍島が本気で心配した時。
«「犬飼さん、大丈夫です?」»
二人が強く安心した時。
«「……犬飼さん、良かった」»
普段の、
「担当官さん」
ではない。
考えて呼んでいるわけでもない。
反射。
だった。
犬飼本人も、それには気づいていた。
ただし。
今回。
その呼び方が。
過去最大級の勢いで。
二人同時に飛び出すことになる。
---
一 終わらない「兄」
発端。
ネット。
だった。
犬飼藍人。
実名。
公開。
その結果。
それまで以上に。
兄。
言われる。
«「犬島」»
«「藍島」»
«「犬飼藍人」»
«「名前まで兄」»
«「犬と藍を両方持ってる男」»
«「三兄妹」»
しかも。
名前だけではない。
動画。
犬飼。
仕事。
している。
犬島。
横。
いる。
藍島。
反対。
いる。
犬飼。
歩く。
二人。
ついてくる。
犬飼。
座る。
二人。
隣。
座る。
犬飼。
休憩。
二人。
寝る。
犬飼。
頭。
撫でる。
視聴者。
«「兄。」»
犬飼。
«「俺は犬島と藍島の兄じゃないぞ。」»
さらに。
別の日。
犬島。
食べきれない。
「担当官さん、これ食べます?」
藍島。
「うちのも」
犬飼。
食べる。
視聴者。
«「兄。」»
犬飼。
«「兄じゃない。」»
犬島。
訓練後。
疲れる。
犬飼。
隣。
寝る。
藍島。
反対。
寝る。
犬飼。
起こさない。
視聴者。
«「兄。」»
犬飼。
«「違う。」»
犬島。
袖。
つかむ。
藍島。
犬飼。
帰り。
待つ。
視聴者。
«「兄。」»
犬飼。
«「……違う。」»
だんだん。
否定。
弱く。
なってきていた。
---
二 広報部でも
広報室。
昼。
犬飼。
コメント。
確認。
同僚。
横。
「また兄って言われてる」
犬飼。
「知ってる」
「今回何件?」
「数えてない」
撮影補助。
「『兄』で検索するとかなり出ますよ」
犬飼。
「検索するな」
編集担当。
「犬飼さん」
「何」
「もう諦めたら?」
犬飼。
顔。
上げる。
「何を」
「兄」
「事実じゃないものを認められるか」
撮影補助。
「血縁的には違いますね」
「そうだろ」
「立場的には」
「続けるな」
---
三 犬島と藍島
そこへ。
犬島。
広報室。
入る。
「担当官さん」
犬飼。
「おう」
藍島。
後ろ。
「担当官さん、これ」
犬飼。
「何?」
藍島。
資料。
渡す。
「来月の一般公開の確認です」
犬飼。
受け取る。
「ありがとう」
犬島。
横。
犬飼。
端末。
見る。
兄。
兄。
兄。
犬島。
「また言われとるんです?」
犬飼。
「言われてる」
藍島。
「かなり?」
「かなり」
犬島。
少し。
申し訳なさそう。
「うちらのせいです?」
犬飼。
「別にお前らのせいじゃない」
藍島。
「でも」
犬飼。
「気にするな」
二人。
顔。
見る。
犬飼。
いつものように。
「仕事戻るぞ」
犬島。
藍島。
「はい」
---
四 次の月1広報
翌週。
犬島。
藍島。
月一回特別広報。
撮影。
今回。
題材。
「呉鎮守府広報部のお手伝い」
犬島と藍島が。
チラシ。
折る。
資料。
仕分け。
一般公開用。
袋詰め。
など。
簡単。
作業。
手伝う。
犬飼。
撮影担当。
途中。
自分も。
説明。
する。
比較的。
普通。
企画。
ただ。
動画。
冒頭。
犬島。
「海防艦犬島です」
藍島。
「海防艦藍島です」
犬飼。
カメラ。
後ろ。
「今日は二人に広報部の簡単な仕事を手伝ってもらいます」
犬島。
「担当官さん」
「何」
「今日は担当官さんも最初に自己紹介したらどうです?」
犬飼。
「俺?」
藍島。
「名前も公開されましたし」
犬飼。
「必要?」
犬島。
「うちら毎回しとります」
犬飼。
少し。
考える。
「まあ、そうだな」
カメラ。
三脚。
置く。
犬飼。
画面。
入る。
犬島。
右。
藍島。
左。
三人。
並ぶ。
撮影補助。
「では担当官もお願いします」
犬飼。
「はい」
普通。
なら。
«「呉鎮守府広報部、犬飼藍人です」»
で。
終わる。
はず。
だった。
---
五 吹っ切れる
犬飼。
カメラ。
見る。
一瞬。
何か。
考える。
昨日。
コメント。
思い出す。
兄。
兄。
兄。
名前まで兄。
完全に兄。
兄じゃないらしい。
自称広報担当官。
実質兄。
犬島。
藍島。
横。
何も知らない。
犬飼。
ふっ。
と。
息。
吐く。
そして。
妙に。
落ち着いた声。
«「犬島と藍島の兄の広報担当官、犬飼藍人です。よろしくお願いします」»
沈黙。
約二秒。
犬島。
動かない。
藍島。
動かない。
撮影補助。
カメラの後ろ。
完全停止。
犬飼。
何事も。
なかったような顔。
犬島。
ゆっくり。
犬飼。
見る。
藍島も。
同じ。
そして。
二人。
ほぼ。
同時。
«「犬飼さん!?」»
犬飼。
すぐ。
横。
見る。
「お前ら今、名前で呼んだな」
犬島。
「そこじゃないです!」
藍島。
「今、何て言いました!?」
犬飼。
平然。
「自己紹介」
犬島。
「違います!」
藍島。
「最初!」
犬飼。
少し。
考えるふり。
「犬島と藍島の兄の広報担当官?」
二人。
«「そこです!」»
撮影補助。
限界。
«「っ……ははははっ!」»
カメラ。
少し。
揺れる。
---
六 犬島、本気で驚く
犬島。
犬飼。
前。
回り込む。
「担当官さん」
「何」
「ずっと否定しとったでしょう」
「してたな」
「昨日まで」
「してた」
「一昨日も」
「してたな」
藍島。
「『俺は犬島と藍島の兄じゃないぞ』って」
犬飼。
「言った」
犬島。
「じゃあ何で急に!」
犬飼。
少し。
肩。
すくめる。
«「もう面倒になった」»
犬島。
「面倒!?」
藍島。
「吹っ切れたんです?」
「たぶん」
撮影補助。
また。
笑う。
---
七 本気なのか
藍島。
少し。
近づく。
「ほんまに兄ってことでええんです?」
犬飼。
「いや」
即答。
「血縁的には違う」
犬島。
「ほら!」
犬飼。
「でも」
二人。
見る。
「どうせ何言っても兄って言われるだろ」
撮影補助。
「はい」
犬飼。
「お前に聞いてない」
犬島。
「じゃあ」
少し。
戸惑う。
「うちらの兄って呼ばれるのは嫌じゃなくなったんです?」
犬飼。
そこだけ。
少し。
真面目。
なる。
「嫌だったことはないよ」
犬島。
止まる。
藍島。
止まる。
犬飼。
「事実じゃないから訂正してただけ」
「でも」
二人。
見る。
「お前らと兄妹みたいだって言われること自体は、別に嫌じゃない」
犬島。
目。
少し。
見開く。
藍島。
同じ。
犬飼。
「だからもう広報上は好きに言わせとけばいいかなって」
犬島。
小さく。
«「……犬飼さん」»
犬飼。
気づく。
「また名前になった」
犬島。
「あ」
藍島。
少し。
笑う。
「感情動くと出るんですよ」
犬飼。
「知ってる」
---
八 藍島まで
藍島。
犬飼。
見る。
「じゃあ」
「何」
「うちらが担当官さんのところによく行くのも」
「うん」
「隣で寝るのも」
「うん」
「一緒に帰るの待っとるのも」
「うん」
「嫌じゃない?」
犬飼。
「何回聞くんだよ」
少し。
笑う。
«「嫌ならとっくに追い返してる」»
藍島。
表情。
一気。
緩む。
«「犬飼さん、良かった」»
犬飼。
また。
「ほら、また名前」
藍島。
「あ」
犬島。
横。
笑う。
---
九 撮影補助の判断
撮影補助。
一部始終。
撮る。
犬飼。
気づく。
「これ使う?」
撮影補助。
「使います」
犬飼。
「即答だな」
「月1広報ですよ」
犬島。
「これ全国に出るんです?」
撮影補助。
「はい」
犬島。
「担当官さん、本当にええんです?」
犬飼。
少し。
考える。
もう。
吹っ切れている。
「いい」
藍島。
「ほんまに?」
「いいって」
犬島。
「後悔しません?」
犬飼。
「たぶん」
犬島。
「藍島さんみたいな言い方になっとります」
---
十 その後の撮影
企画。
続く。
犬島。
チラシ。
折る。
藍島。
袋。
詰める。
犬飼。
確認。
する。
ただ。
先ほどの衝撃。
二人。
まだ。
引きずる。
犬島。
時々。
犬飼。
見る。
犬飼。
「何」
「いや」
藍島。
反対。
見る。
犬飼。
「藍島も何」
「別に」
犬飼。
「気になるなら言え」
犬島。
「……ほんまに兄って自己紹介したんですよね」
犬飼。
「した」
藍島。
「夢じゃないですよね」
犬飼。
「録画されてる」
撮影補助。
「ばっちり」
犬島。
「……すごい」
犬飼。
「何が」
---
十一 休憩
午後。
三人。
広報室。
外。
ベンチ。
犬飼。
中央。
犬島。
右。
藍島。
左。
いつもの。
位置。
犬島。
少し。
寄る。
藍島。
同じ。
犬飼。
「近い」
犬島。
「いつも通りです」
藍島。
「はい」
犬飼。
「今日は妙に堂々としてない?」
犬島。
「担当官さんが自分で兄って言ったので」
犬飼。
「それ免許証じゃないからな」
藍島。
「兄免許」
犬飼。
「そんなものない」
---
十二 公開日
動画。
タイトル。
【月1広報】犬島と藍島、広報部の仕事を手伝います
サムネイル。
犬島。
藍島。
犬飼。
三人。
並ぶ。
字幕。
『広報担当官、ついに諦める』
公開。
最初。
犬島。
«「海防艦犬島です」»
藍島。
«「海防艦藍島です」»
犬飼。
«「犬島と藍島の兄の広報担当官、犬飼藍人です。よろしくお願いします」»
コメント欄。
一瞬。
止まったように。
見える。
その後。
爆発。
«「!?!?!?!?!」»
«「認めた!!!!」»
«「とうとう言ったwww」»
«「犬飼さんどうした」»
«「兄じゃないぞどこ行った」»
«「完全に吹っ切れてる」»
そして。
犬島。
藍島。
同時。
«「犬飼さん!?」»
コメント。
さらに。
増える。
«「二人が担当官さんじゃなく犬飼さんって呼んだ!」»
«「本気で驚いてる時だけ名前になるの良すぎる」»
«「妹二人が一番動揺してる」»
---
十三 最大の人気場面
犬島。
«「ずっと否定しとったでしょう!」»
犬飼。
«「してたな」»
藍島。
«「じゃあ何で急に!」»
犬飼。
«「もう面倒になった」»
コメント。
«「理由www」»
«「数か月のネット民が勝った」»
«「担当官、ついに折れる」»
しかし。
その後。
犬島。
«「兄って呼ばれるの嫌じゃなくなったんです?」»
犬飼。
«「嫌だったことはないよ。事実じゃないから訂正してただけ」»
コメント。
少し。
空気。
変わる。
«「あ」»
«「そこはちゃんと分けてたんだ」»
«「これ犬島絶対嬉しいだろ」»
さらに。
«「お前らと兄妹みたいだって言われること自体は、別に嫌じゃない」»
犬島。
«「……犬飼さん」»
コメント。
«「名前呼び出た」»
«「これ感情かなり動いた時のやつだ」»
«「犬島嬉しいんだな」»
---
十四 犬島公式SNS
公開。
一時間後。
犬島。
投稿。
«今日の月1広報動画で、担当官さんが突然「犬島と藍島の兄の広報担当官です」と自己紹介しました。
うちも藍島さんも聞いていませんでした。
本当に驚きました。
その時、思わず「犬飼さん」と呼んどります。
普段は担当官さんと呼びます。
名前が分かってからも、呼び慣れとるので担当官さんです。
ただ、すごく驚いた時とか、心配した時とか、安心した時は、なぜか犬飼さんと呼んでしまいます。
担当官さん本人も気づいとるみたいです。
あと、兄ではありません。
でも兄みたいと言われることを嫌じゃないと言ってもらえたのは、ちょっと嬉しかったです。»
反応。
«「最後素直」»
«「犬島が『ちょっと嬉しかった』って言うの珍しい」»
«「犬飼さん呼びは感情メーターなのか」»
犬島。
«たぶんそうです。»
---
十五 藍島公式SNS
«担当官さんが自分から兄と名乗りました。
うちは本当に何も聞いてませんでした。
犬島さんと同時に「犬飼さん!?」って言ってしまいました。
普段は今まで通り担当官さんです。
でもびっくりした時は犬飼さんになります。
安心した時も犬飼さんになることがあります。
理由は分かりません。
担当官さんが「嫌ならとっくに追い返してる」と言ってくれたので、これからも近くにおります。»
担当官。
返信。
«最後は宣言しなくていい。»
藍島。
«嫌です?»
担当官。
«嫌じゃない。»
藍島。
«じゃあおります。»
犬島。
«うちも。»
担当官。
«はいはい。»
---
十六 犬飼藍人公式コメント
そして。
ついに。
本人。
投稿。
«【広報担当・犬飼藍人】
ネット上であまりにも長期間「犬島と藍島の兄」と言われ続けたため、今回の撮影では一度自分から名乗ってみました。
特に深い意味はありません。
二人には事前に伝えていなかったので、本気で驚かれました。
犬島・藍島とも普段は私を「担当官さん」と呼びます。
ただし、強く驚いた時や心配した時などは「犬飼さん」になります。
私も最近気づきました。
なお、血縁関係はありません。
ただ、
兄みたいと言われることについては、もう訂正しなくてもいいかなと思っています。»
ネット。
騒然。
«「歴史的和解」»
«「とうとう訂正を諦めた」»
«「兄じゃないぞ卒業」»
«「ネット民に屈した男」»
担当官。
追加。
«屈したわけではありません。吹っ切れただけです。»
反応。
«「同じだよ」»
---
十七 最大の変化
この動画以降。
ネット。
呼び方。
少し。
変わる。
以前。
«「兄」»
«「担当官兄」»
«「兄じゃない人」»
以後。
«「犬飼兄」»
担当官。
初めて。
見る。
「……」
撮影補助。
「新しい呼び方ですね」
犬飼。
「俺が名前出したせいだな」
「しかも自分で兄って言ったので」
犬飼。
「一回だけだぞ」
「映像は永久に残ります」
犬飼。
「……そうだった」
---
十八 犬島と藍島、さらに懐く
数日後。
広報室。
犬飼。
仕事。
犬島。
右側。
椅子。
座る。
藍島。
左側。
床。
座る。
犬飼。
「お前ら最近前より近くない?」
犬島。
「そうです?」
藍島。
「普通です」
犬飼。
「昨日もいたよな」
犬島。
「はい」
「一昨日も」
藍島。
「いました」
「その前も」
犬島。
「たぶん」
犬飼。
「毎日じゃん」
犬島。
少し。
笑う。
「嫌じゃないんでしょう?」
犬飼。
自分。
言ったこと。
思い出す。
「……言質取られたな」
藍島。
「はい」
---
十九 ある日の昼寝
犬飼。
屋外。
長椅子。
座る。
犬島。
隣。
藍島。
反対。
犬島。
眠そう。
犬飼。
「寝る?」
「ちょっと」
藍島。
「うちも」
犬飼。
「どうぞ」
二人。
寄りかかる。
数分。
寝る。
犬飼。
犬島。
頭。
撫でる。
藍島。
頭。
撫でる。
撮影補助。
遠く。
カメラ。
構える。
犬飼。
気づく。
「また撮ってる?」
「はい」
犬飼。
昔。
なら。
カット。
言う。
今。
二人。
見る。
「……まあ、いいか」
撮影補助。
「吹っ切れました?」
犬飼。
「その言葉便利になったな」
---
二十 緊急時の呼び方
そして。
ある日。
広報室。
犬飼。
脚立。
使う。
上。
箱。
取る。
少し。
バランス。
崩す。
大事。
ない。
一段。
踏み外しかける。
犬島。
見る。
瞬間。
«「犬飼さん!」»
藍島。
同時。
«「犬飼さん!」»
犬飼。
すぐ。
手すり。
掴む。
「大丈夫」
二人。
一気。
寄る。
犬島。
「大丈夫です?」
藍島。
「どこも打ってない?」
犬飼。
「何ともない」
犬島。
ほっ。
と。
する。
「……良かった」
犬飼。
二人。
見る。
少し。
笑う。
「やっぱり本当に感情動くと犬飼さんになるんだな」
犬島。
「今それ言います?」
藍島。
「心配したんですよ」
犬飼。
「ごめん」
二人。
落ち着く。
犬島。
「担当官さん、次から気をつけてください」
犬飼。
「戻った」
藍島。
「もう大丈夫なので」
犬飼。
妙に。
納得。
する。
---
二十一 視聴者が気づく
後日。
この場面。
通常広報のオフショット。
公開。
コメント。
«「本当に犬飼さん呼び=感情大きく動いた時なんだ」»
«「心配した瞬間だけ二人とも名字になる」»
«「落ち着いたら担当官さんに戻るの好き」»
«「呼称だけで二人の感情分かるようになってきた」»
人気コメント。
«「『担当官さん』はいつもの安心できる人、『犬飼さん』はその人を失いたくないって感情が強く出た時の呼び方に聞こえる。」»
犬島。
このコメント。
見る。
少し。
黙る。
藍島も。
読む。
犬飼。
「どうした?」
犬島。
「いや」
藍島。
「ちょっと合っとるかもしれません」
犬飼。
一瞬。
言葉。
止まる。
犬島。
いつもの。
「担当官さん」
「何」
「これからもよろしくお願いします」
藍島。
「お願いします」
犬飼。
少し。
笑う。
「こちらこそ」
---
終章 兄ではない、けれど
数か月前。
誰か。
コメント。
«「兄みたい」»
犬飼。
即。
«「俺は犬島と藍島の兄じゃないぞ」»
数か月。
続く。
兄。
兄。
兄。
名前。
公開。
犬飼藍人。
さらに。
兄。
そして。
ある月。
撮影。
開始。
犬島。
«「海防艦犬島です」»
藍島。
«「海防艦藍島です」»
犬飼。
一瞬。
カメラ。
見る。
もう。
否定。
疲れた。
そして。
«「犬島と藍島の兄の広報担当官、犬飼藍人です。よろしくお願いします」»
犬島。
藍島。
同時。
«「犬飼さん!?」»
撮影補助。
爆笑。
犬飼。
「お前ら今名前で呼んだな」
犬島。
「そこじゃありません!」
藍島。
「何で自分から言うんですか!」
犬飼。
「もういいかなって」
犬島。
「急すぎます」
藍島。
「びっくりしました」
犬飼。
少し。
笑う。
「悪かった」
その後。
撮影。
続く。
犬島。
気づけば。
犬飼。
横。
藍島。
反対。
犬飼。
移動。
二人。
ついてくる。
犬飼。
休憩。
二人。
隣。
寝る。
犬飼。
頭。
撫でる。
撮影補助。
カメラ。
回す。
そして。
動画。
最後。
犬飼。
カメラ。
向く。
「一応言っておきます」
犬島。
「何です?」
藍島。
「また兄じゃないって?」
犬飼。
少し。
考える。
二人。
見る。
以前なら。
否定。
する。
でも。
今回は。
«「血縁上は兄じゃない。ただ……まあ、こういう関係も悪くないと思ってます」»
犬島。
一瞬。
固まる。
«「……犬飼さん」»
藍島。
笑顔。
«「犬飼さん」»
犬飼。
「また名前になった」
二人。
「はい」
犬飼。
その意味。
もう。
分かっている。
だから。
今度は。
訂正。
しない。
ただ。
二人。
頭。
軽く。
撫でて。
«「はいはい」»
と。
笑った。
動画。
暗転。
最後の字幕。
『犬島・藍島との血縁関係:なし』
次。
『二人からの信頼:非常に高い』
次。
『本人の兄否定:最近かなり弱くなりました』
犬飼。
試写。
«「最後の一行消せ」»
撮影補助。
«「事実です」»
犬島。
«「合っとります」»
藍島。
«「はい」»
犬飼。
二人。
見る。
少し。
黙る。
そして。
«「……もう好きにしてくれ」»
撮影補助。
«「吹っ切れましたね」»
犬飼。
«「それ今一番言われたくない」»