変更内容 対象︰海防艦犬島・藍島
所属鎮守府 呉鎮守府変更無し
通常指揮官 呉鎮守府提督→広報担当官
艦隊指揮官 呉鎮守府提督変更無し
それだけである。
通常指揮は鎮守府内、港湾施設内、外出時の許可など艦隊指揮には関係内ことのみ。
艦隊指揮はその名前通り、演習、遠征、船団護衛等海上に出ること。
この所属変更の動画を投稿した時の反応。(事前に何も知らされず困惑している担当官と犬島と藍島の様子)
海防艦・犬島/藍島
――今日から、通常指揮官は担当官さんです――
提督が悩んだ末に行った、たった一つの所属変更
※犬島・藍島別世界線
呉鎮守府提督には、しばらく前から一つだけ気になっていることがあった。
重大な問題ではない。
規律違反でもない。
事故でもない。
犬島にも藍島にも過失はない。
広報担当官――犬飼藍人にも何か問題行動があるわけではない。
むしろ。
問題がないからこそ。
提督は少し悩んでいた。
犬島と藍島が。
あまりにも犬飼に懐いている。
---
一 気づけば犬飼のところにいる
犬島。
訓練が終わる。
広報室。
行く。
藍島。
点検が終わる。
広報室。
行く。
犬飼。
外。
休憩。
している。
犬島。
隣。
座る。
藍島。
反対。
座る。
疲れていれば。
寝る。
犬飼。
起こさない。
頭。
撫でる。
犬飼。
仕事。
移動。
する。
犬島。
何となく。
ついていく。
藍島。
同じ。
犬飼。
帰る。
犬島。
途中まで。
一緒。
藍島。
待つ。
提督。
何度も。
見た。
ある日。
執務室。
時雨。
書類。
持ってくる。
提督。
窓。
見る。
外。
犬飼。
歩いている。
その右。
犬島。
左。
藍島。
三人。
並ぶ。
提督。
「……また一緒だな」
時雨。
外。
見る。
「ああ」
少し。
笑う。
「いつもの三人だね」
提督。
「そうなんだよ」
時雨。
「何か問題?」
「いや」
提督。
首。
振る。
「それが、ない」
---
二 問題がないのが悩み
犬島と藍島。
犬飼。
信頼関係。
高い。
犬飼。
二人を甘やかしすぎるわけでもない。
必要な時。
注意。
する。
仕事中。
邪魔。
すれば。
「今は待て」
言う。
無理。
しようとすれば。
止める。
犬島。
藍島。
犬飼の指示。
素直。
聞く。
ただ。
正式な指揮系統では。
犬島。
藍島。
通常の所属艦娘。
だから。
日常的な許可。
鎮守府内。
移動。
施設。
使用。
外出。
簡単な勤務変更。
全部。
最終的には。
提督。
管轄。
提督。
ある日。
書類。
見る。
犬島・外出許可申請
目的。
玉野造船関係資料の確認。
同行。
犬飼藍人。
次。
藍島・施設使用申請
広報部資料室。
担当。
犬飼藍人。
次。
犬島・臨時広報協力
監督。
犬飼藍人。
提督。
「……」
結局。
ほとんど。
犬飼。
一緒。
提督。
判子。
押す。
「これ」
副官。
「はい」
「犬飼に任せても同じじゃない?」
副官。
少し。
考える。
「通常業務の範囲なら」
提督。
「だよな」
---
三 ただし艦隊指揮は別
提督が最も重視したのは。
そこ。
だった。
犬飼。
広報担当官。
艦隊指揮官ではない。
演習。
遠征。
船団護衛。
戦闘。
海上警戒。
そうした。
実艦を動かす任務。
これは。
今まで通り。
呉鎮守府提督。
指揮。
する。
犬飼へ。
移す。
つもり。
ない。
変えるのは。
日常。
だけ。
鎮守府。
内部。
港湾施設。
外出。
勤務。
広報。
休養。
その他。
艦隊運用に関係しない。
通常指揮。
提督。
紙。
一枚。
見る。
そして。
「これなら」
少し。
笑う。
「犬飼も二人も、あんまり変わらないか」
---
四 軍令部へ
提督。
軍令部。
申請。
内容。
簡潔。
対象
海防艦 犬島
海防艦 藍島
所属鎮守府
呉鎮守府
変更なし
通常指揮官
呉鎮守府提督
↓
呉鎮守府広報担当官 犬飼藍人
艦隊指揮官
呉鎮守府提督
変更なし
通常指揮の範囲
・鎮守府内における勤務
・港湾施設内の移動
・外出許可
・広報部との協働
・休養時間の調整
・艦隊運用を伴わない日常的指示
艦隊指揮の範囲
・演習
・遠征
・船団護衛
・警戒任務
・海上航行を伴う任務
・戦闘行動
・艦隊編成および海上指揮
軍令部。
検討。
結果。
許可。
理由。
犬飼と二隻の間に高い信頼関係があり、日常管理上の合理性が認められる。
艦隊指揮権。
変更なし。
指揮系統。
混乱。
なし。
提督。
許可書。
見る。
「通ったか」
副官。
「通りました」
提督。
「じゃあ」
少し。
考える。
「本人たちに言うか」
副官。
「先に?」
提督。
少し。
笑う。
「いや」
「ちょうど所属紹介動画撮る予定あるだろ」
副官。
「ああ」
提督。
「そこで言おう」
---
五 誰も知らされていない
数日後。
通常広報。
撮影。
テーマ。
『呉鎮守府所属艦の指揮系統について』
犬飼。
カメラ。
準備。
犬島。
右。
藍島。
左。
犬島。
「今日は何するんです?」
犬飼。
「所属紹介らしい」
藍島。
「うちらも?」
「提督から二人出してほしいって」
犬島。
「分かりました」
犬飼。
資料。
見る。
ただし。
重要部分。
封筒。
中。
提督。
持っている。
犬飼。
知らない。
犬島。
知らない。
藍島。
知らない。
撮影補助。
提督だけ。
知っている。
---
六 動画開始
カメラ。
回る。
提督。
中央。
犬飼。
少し。
横。
犬島。
藍島。
並ぶ。
提督。
「今回は、呉鎮守府に所属する艦娘の指揮系統について、一部変更がありますのでお知らせします」
犬飼。
横。
少し。
見る。
「変更?」
提督。
「うん」
犬島。
藍島。
顔。
見合わせる。
提督。
続ける。
「対象は」
少し。
間。
«「海防艦犬島、海防艦藍島」»
犬島。
「うち?」
藍島。
「うちら?」
犬飼。
眉。
少し。
上がる。
「何も聞いてないんですけど」
提督。
「今言ってる」
犬飼。
「そういう意味じゃなくて」
撮影補助。
すでに。
少し。
笑いそう。
---
七 所属鎮守府
提督。
書類。
開く。
「まず、所属鎮守府」
犬島。
少し。
緊張。
する。
藍島。
同じ。
«「呉鎮守府。変更なし」»
犬島。
ほっ。
藍島。
同じ。
犬島。
「良かった」
犬飼。
犬島。
見る。
少し。
安心。
提督。
「二人とも呉所属のまま」
「はい」
「はい」
---
八 艦隊指揮官
提督。
「次、艦隊指揮官」
犬飼。
ここ。
重要。
見る。
«「呉鎮守府提督。変更なし」»
犬島。
「はい」
藍島。
「分かりました」
提督。
「演習、遠征、船団護衛、警戒任務、それ以外の海上行動については、今まで通り私が指揮する」
犬島。
「はい」
藍島。
「はい」
犬飼。
頷く。
ここまで。
何も。
おかしくない。
---
九 通常指揮官
提督。
「そして」
一枚。
めくる。
「通常指揮官」
犬島。
普通。
聞く。
藍島。
同じ。
犬飼。
カメラ。
確認。
提督。
淡々。
«「呉鎮守府提督から、呉鎮守府広報担当官・犬飼藍人へ変更します」»
沈黙。
犬島。
「……」
藍島。
「……」
犬飼。
「……」
撮影補助。
カメラ。
回す。
五秒。
犬飼。
最初。
反応。
«「俺?」»
提督。
「うん」
犬島。
犬飼。
見る。
藍島。
犬飼。
見る。
犬飼。
提督。
見る。
「俺ですか?」
「そう」
「広報担当官ですよ?」
「知ってる」
「艦隊指揮経験ありませんよ?」
「艦隊指揮はさせない」
犬飼。
「……」
---
十 犬島と藍島も困惑
犬島。
少し。
手。
上げる。
「提督」
「何?」
「通常指揮って、どこまでです?」
提督。
「鎮守府内、港湾施設内、外出許可、広報協力、日常勤務、休養調整」
藍島。
「海に出たら?」
「私」
犬島。
「演習は?」
「私」
藍島。
「遠征」
「私」
犬島。
「船団護衛」
「私」
藍島。
「戦闘」
「私」
犬島。
少し。
考える。
そして。
犬飼。
見る。
«「じゃあ、普段は担当官さん?」»
提督。
「そう」
藍島。
«「海に出る時は提督?」»
「そう」
二人。
「……」
また。
犬飼。
見る。
犬飼。
「俺を見るな」
---
十一 犬飼の第一反応
犬飼。
書類。
受け取る。
読む。
上。
下。
もう一回。
読む。
「軍令部許可済み?」
提督。
「済み」
「いつ?」
「三日前」
犬飼。
「俺に相談は?」
「してない」
犬飼。
「何で?」
提督。
少し。
笑う。
「したら断りそうだったから」
犬飼。
即答。
「断るか検討する時間はくださいよ!」
撮影補助。
吹き出す。
犬島。
藍島。
まだ。
困惑。
---
十二 理由
犬飼。
「そもそも、なんで俺なんです?」
提督。
犬島。
見る。
藍島。
見る。
そして。
犬飼。
見る。
「理由聞きたい?」
「そりゃ」
提督。
あっさり。
«「この二人、お前に懐きすぎてるから」»
犬島。
「……」
藍島。
「……」
犬飼。
「……」
撮影補助。
顔。
伏せる。
犬飼。
「それ、正式な人事理由なんです?」
提督。
「もっと正式な文章では『日常指揮上の信頼関係および業務合理性』」
犬飼。
「言い換えただけじゃないですか」
「そうとも言う」
---
十三 二人の反応
犬島。
少し。
恥ずかしそう。
「うち、そんなにです?」
提督。
「かなり」
藍島。
「うちも?」
「かなり」
犬島。
「……」
藍島。
「……」
犬飼。
二人。
見る。
「俺も否定しづらい」
犬島。
「担当官さんまで」
犬飼。
「だって」
指。
折る。
「広報室来る」
犬島。
「はい」
「仕事終わるの待つ」
藍島。
「はい」
「外で休憩してたら隣に来る」
二人。
「はい」
「そのまま寝る」
犬島。
藍島。
「……はい」
犬飼。
「ほら」
---
十四 提督の本音
提督。
少し。
真面目。
なる。
「別に二人を犬飼へ押しつけるつもりはない」
犬飼。
聞く。
「艦隊指揮は私が持つ」
「海に出る時の責任は変わらない」
「ただ、鎮守府内の日常を見ていると」
犬島。
藍島。
見る。
「二人が一番自然に頼る相手が犬飼になってる」
犬飼。
少し。
黙る。
提督。
続ける。
「それなら、日常的な許可や調整について毎回私を経由するより」
「信頼している相手に任せた方がいい」
「私も犬飼を信頼してる」
犬飼。
「……」
少し。
表情。
変わる。
---
十五 犬島
犬島。
提督。
見る。
「提督」
「うん」
「うちは」
少し。
考える。
「嫌じゃないです」
犬飼。
犬島。
見る。
犬島。
続ける。
「担当官さんに普段のこと見てもらうのは、今までとそんな変わらんですし」
藍島。
「うちも」
犬島。
「でも」
犬飼。
見る。
少し。
不安。
«「担当官さんは、嫌です?」»
犬飼。
止まる。
こういう時。
犬島。
「犬飼さん」
とは。
まだ。
呼ばない。
感情。
大きく。
動いている。
でも。
不安。
抑えている。
犬飼。
それ。
気づく。
「嫌ではない」
犬島。
少し。
安心。
---
十六 藍島
藍島。
「ほんまに?」
犬飼。
「ほんと」
「うちらが今まで以上に広報室行っても?」
「仕事の邪魔しなければ」
「外出許可も?」
「書類持ってこい」
「休憩も?」
「好きに休め」
犬島。
少し。
笑う。
藍島。
表情。
緩む。
そして。
«「……犬飼さん、良かった」»
犬飼。
「あ」
犬島。
見る。
藍島。
自分でも。
気づく。
「あ」
犬飼。
「名前になった」
藍島。
少し。
恥ずかしい。
「安心したので」
犬飼。
少し。
笑う。
「そうか」
---
十七 犬島も
提督。
犬飼。
書類。
渡す。
正式。
任命。
犬飼。
受け取る。
そして。
犬島。
藍島。
見る。
犬飼。
「じゃあ」
少し。
困ったように。
「今日から、鎮守府内では一応俺が通常指揮官らしい」
犬島。
まだ。
不思議そう。
犬飼。
続ける。
「でも今まで通りでいい」
「何かあったら言え」
「外出したいなら言え」
「疲れたら休め」
「ただし仕事は仕事」
犬島。
目。
少し。
見開く。
その言い方。
いつもの。
担当官。
そのまま。
犬島。
ほっとする。
«「……犬飼さん」»
犬飼。
「うん」
犬島。
少し。
笑う。
«「よろしくお願いします」»
犬飼。
「こちらこそ」
---
十八 提督
提督。
三人。
見る。
「これで決まり」
犬飼。
「軽いですね」
提督。
「書類は重いよ」
犬飼。
「そういう意味じゃなくて」
撮影補助。
「これ動画使います?」
提督。
「使う」
犬飼。
「全部?」
「全部」
犬飼。
「俺の『俺?』も?」
「使う」
犬飼。
「……」
犬島。
少し。
笑う。
藍島。
同じ。
---
十九 最初の指示
撮影。
まだ。
回る。
提督。
「じゃあ犬飼」
「はい」
「通常指揮官として最初の指示を」
犬飼。
「今?」
「今」
犬飼。
犬島。
藍島。
見る。
二人。
少し。
姿勢。
正す。
犬飼。
考える。
五秒。
そして。
«「撮影終わったら二人とも休憩」»
犬島。
「え」
藍島。
「それ?」
犬飼。
「朝から収録してるだろ」
提督。
吹き出す。
撮影補助。
笑う。
犬飼。
「何です?」
提督。
「いや」
「もう適任だなと思って」
犬飼。
「それで判断しないでください」
---
二十 公開
数日後。
呉鎮守府公式。
タイトル。
【公式】海防艦犬島・藍島の指揮系統を一部変更します
概要。
«対象:海防艦犬島・海防艦藍島
所属鎮守府:呉鎮守府(変更なし)
通常指揮官:呉鎮守府提督 → 広報担当官 犬飼藍人
艦隊指揮官:呉鎮守府提督(変更なし)
本変更は軍令部承認済みです。
海上任務・演習・遠征・護衛・戦闘等の艦隊指揮系統に変更はありません。»
---
二十一 冒頭の反応
提督。
«「対象は海防艦犬島、海防艦藍島」»
コメント。
«「何!?」»
«「転属?」»
«「呉からいなくなる?」»
所属。
呉。
変更なし。
«「よかった」»
«「びっくりした」»
艦隊指揮官。
提督。
変更なし。
«「海上指揮は変わらないのね」»
そして。
通常指揮官。
«「広報担当官・犬飼藍人へ変更します」»
コメント。
爆発。
«「は?????」»
«「兄が正式に上司になった」»
«「犬飼兄、ついに指揮官」»
«「ネットの兄認定が人事に影響したみたいになってる」»
---
二十二 三人の困惑が人気になる
犬飼。
«「俺?」»
犬島。
«「……」»
藍島。
«「……」»
コメント。
«「三人とも知らなかったw」»
«「犬飼さんの顔」»
«「犬島藍島も完全に固まってる」»
犬飼。
«「軍令部許可済み?」»
提督。
«「済み」»
犬飼。
«「俺に相談は?」»
«「してない」»
コメント。
«「本人最後に知るタイプの人事」»
«「正式人事を動画で知る指揮官」»
---
二十三 理由が公開される
提督。
«「この二人、お前に懐きすぎてるから」»
コメント。
一瞬。
止まる。
そして。
大量。
«「知ってた」»
«「視聴者全員知ってた」»
«「提督もそう思ってたのか」»
«「ついに軍令部公認で懐かれてる男」»
«「正式名称:日常指揮信頼関係」»
犬飼。
«「それ正式な理由なんです?」»
提督。
«「文書上は『日常指揮上の信頼関係および業務合理性』」»
コメント。
«「めちゃくちゃ真面目な文章になった」»
---
二十四 視聴者が一番安心した場面
犬島。
«「担当官さんは、嫌です?」»
犬飼。
«「嫌ではない」»
コメント。
«「ここ大事」»
«「犬島ちょっと不安そうだった」»
藍島。
«「ほんまに?」»
犬飼。
«「ほんと」»
そして。
二人。
安心。
藍島。
«「……犬飼さん、良かった」»
犬島。
«「……犬飼さん。よろしくお願いします」»
コメント。
«「二人とも犬飼さんになった」»
«「感情かなり動いてる」»
«「安心した瞬間だけ名前になる設定がここで効く」»
---
二十五 最上位コメント
一位。
«「変更されたのは書類上の通常指揮官だけで、映像を見る限り日常は何も変わらなさそうなのが一番面白い。」»
二位。
«「提督『二人がお前に懐きすぎてる』→視聴者『知ってた』」»
三位。
«「海へ出る時は提督、帰ってきたら犬飼さん。役割分担としてかなり分かりやすい。」»
四位。
«「兄ではない。艦隊指揮官でもない。でも日常指揮官にはなった。」»
五位。
«「犬飼さん、ネット上で兄にされ、本人が吹っ切れて兄と名乗り、ついに公式上でも犬島藍島の日常責任者になる。」»
犬飼。
五位。
見る。
長い。
沈黙。
«「人生何があるか分からないな……」»
---
二十六 犬島公式SNS
«犬島と藍島さんの指揮系統が少し変わりました。
所属は今まで通り呉鎮守府です。
海上での演習、遠征、護衛、戦闘などは今まで通り提督の指揮です。
鎮守府内や港湾施設、外出許可など、普段のことだけ担当官さんの指揮になりました。
事前に聞いてなかったので、かなり驚きました。
担当官さんが嫌ではないと言ってくれて安心しました。
その時は犬飼さんと呼んどります。
今までと大きく変わることは、たぶんありません。
これからもよろしくお願いします。»
犬飼。
返信。
«こちらこそ。仕事の邪魔だけはするなよ。»
犬島。
«はい。»
---
二十七 藍島公式SNS
«今日から、うちと犬島さんの通常指揮官は担当官さんです。
海に出る時は今まで通り提督です。
なので、普段の生活で相談する相手が正式に担当官さんになった感じです。
元々かなり相談しとったので、たぶんあまり変わりません。
担当官さんが「嫌じゃない」と言ってくれた時はかなり安心しました。
犬飼さんと呼んだのはそのせいです。
これからは外出許可も担当官さんに出します。»
担当官。
«書類はちゃんと書けよ。»
藍島。
«はい。»
---
二十八 犬飼の公式コメント
«【広報担当・犬飼藍人】
私自身も撮影時に初めて知らされました。
通常指揮の対象は鎮守府内・港湾施設内での日常的な勤務、外出許可、休養調整、広報協力等です。
演習、遠征、護衛、戦闘など海上での艦隊指揮権は従来通り呉鎮守府提督が保持します。
犬島・藍島との普段の関係自体はほとんど変わらないと思います。
ただ、今まで提督へ回していた日常的な申請がこちらへ来るため、書類は増えます。
そこだけは確実に変わりました。»
反応。
«「一番の被害:書類」»
«「兄から保護者になった」»
犬飼。
即返信。
«保護者でもありません。通常指揮官です。»
---
二十九 提督公式コメント
提督。
«犬島・藍島について、艦隊指揮は引き続き私が担当します。
今回の変更は、両艦の日常業務において犬飼担当官との連携が非常に多く、本人同士の信頼関係も十分であることから行ったものです。
軍令部の審査・承認を受けています。
海上任務に関する指揮系統の変更はありません。
簡単に言えば、海に出たら私、帰ってきたら犬飼です。»
ネット。
«「提督の最後の一文分かりやすすぎる」»
犬飼。
«その説明が一番分かりやすいの少し悔しいです。»
---
三十 変更後、最初の朝
翌日。
午前八時。
広報室。
犬飼。
仕事。
犬島。
入る。
「担当官さん」
「おう」
書類。
出す。
「外出許可お願いします」
犬飼。
見る。
「行き先、玉野?」
「はい」
「藍島は?」
後ろ。
藍島。
「一緒です」
犬飼。
「帰投予定は?」
「十八時」
「連絡端末」
「持ってます」
「よし」
判。
押す。
犬島。
書類。
受け取る。
「……」
犬飼。
「何」
犬島。
「ほんまに担当官さんが許可出すんですね」
「昨日説明されたろ」
藍島。
「不思議です」
犬飼。
「俺も不思議」
---
三十一 最初の「指揮」
犬島。
藍島。
出る。
直前。
犬飼。
「二人とも」
振り返る。
「はい」
「はい」
犬飼。
「帰り遅くなるなら連絡」
犬島。
「はい」
藍島。
「分かりました」
「あと玉野で工具買いすぎるなよ」
犬島。
「……」
藍島。
犬島。
見る。
犬飼。
「犬島」
「はい」
「前回持てないくらい買っただろ」
犬島。
「今回は気をつけます」
藍島。
笑う。
犬飼。
「藍島も止めろ」
「はい」
二人。
広報室。
出る。
廊下。
藍島。
小声。
「ほんまに兄みたいですね」
犬島。
小声。
「言わん方がええです」
犬飼。
室内。
«「聞こえてるぞ」»
二人。
足。
速くなる。
---
三十二 変わらない午後
夕方。
二人。
帰る。
犬島。
「ただいまです」
藍島。
「戻りました」
犬飼。
「おかえり」
犬島。
買ったもの。
持つ。
犬飼。
見る。
「……犬島」
「はい」
「それ全部工具?」
犬島。
「一部です」
犬飼。
「何個買った?」
犬島。
目。
逸らす。
藍島。
「十一個です」
犬島。
「藍島さん」
犬飼。
ため息。
「次から予算上限つけるぞ」
犬島。
「それ通常指揮に入ります?」
犬飼。
「入れる」
藍島。
笑う。
---
三十三 提督が見る
その様子。
廊下。
提督。
見る。
犬飼。
犬島。
工具。
確認。
藍島。
横。
説明。
三人。
いつも通り。
提督。
少し。
笑う。
副官。
「変わりました?」
提督。
「何が?」
「所属変更後」
提督。
三人。
見る。
「何も」
少し。
考える。
「書類の提出先だけ」
副官。
「それだけですか」
提督。
「それだけでいいんだよ」
---
終章 たった一つの変更
海防艦犬島。
海防艦藍島。
所属。
呉鎮守府。
変わらない。
艦隊指揮。
呉鎮守府提督。
変わらない。
演習。
提督。
遠征。
提督。
船団護衛。
提督。
戦闘。
提督。
海。
出れば。
提督。
ただ。
鎮守府。
帰る。
そこから。
少し。
違う。
外出。
したい。
«「担当官さん、許可お願いします」»
休み。
変更。
したい。
«「担当官さん、明日の予定なんですけど」»
広報室。
行く。
«「担当官さん」»
港。
移動。
する。
«「担当官さん、ちょっと行ってきます」»
犬飼。
毎回。
«「分かった」»
«「気をつけろ」»
«「戻ったら連絡」»
«「無理するな」»
今まで。
非公式に。
やっていたこと。
それが。
少しだけ。
書類上。
正式。
なった。
動画。
最後。
三人。
並ぶ。
提督。
カメラ。
外。
声。
«「じゃあ犬飼、二人をよろしく」»
犬飼。
少し。
困った。
顔。
それでも。
«「はい」»
犬島。
犬飼。
見る。
藍島。
同じ。
犬飼。
二人。
見る。
「何だよ」
犬島。
少し。
笑う。
「いや」
藍島。
「通常指揮官さん」
犬飼。
「それは呼びにくいだろ」
犬島。
«「じゃあ、今まで通り担当官さんで」»
犬飼。
「それでいい」
藍島。
«「はい、担当官さん」»
犬飼。
少し。
笑う。
「よろしく」
二人。
同時。
«「よろしくお願いします」»
字幕。
『所属鎮守府:変更なし』
『艦隊指揮官:変更なし』
『通常指揮官:犬飼藍人』
そして。
最後。
小さく。
『三人の日常:ほぼ変更なし』
犬飼。
試写。
見る。
「最後の一行いる?」
撮影補助。
「一番分かりやすいので」
犬島。
「合っとります」
藍島。
「はい」
犬飼。
少し。
考える。
それから。
«「……まあ、そうだな」»
今度は。
消せとは。
言わなかった。