犬島・藍島 月1回の広報動画
――「今回は本当に普通の一日です」――
犬島と藍島には、月に一度だけ少し変わった仕事がある。
呉鎮守府特別広報担当としての動画撮影。
もともとは犬島の知名度が上がったことをきっかけに始まった企画だったが、藍島が加わり、さらに広報担当官の犬飼藍人まで半ばレギュラー出演者のようになったことで、今では呉鎮守府公式動画の中でも特に人気の高いシリーズになっていた。
動画の内容は月ごとに違う。
基地施設の紹介。
一日の仕事。
艦体整備。
玉野への広報訪問。
食堂。
訓練。
休日。
鉄道を見に行った話。
時には事故後の説明が入ることもある。
ただし、今回の企画書は妙に簡単だった。
犬島は広報室で紙を見ながら首を傾げた。
「担当官さん」
犬飼がパソコンから顔を上げる。
「何?」
「今回、何するんです?」
「そこに書いてあるだろ」
犬島はもう一度読む。
企画名。
『犬島と藍島の普通の一日』
犬島は困ったように犬飼を見る。
「普通の一日を撮るんです?」
「そう」
藍島も横から企画書を見る。
「ほんまに何も決めてないんですね」
「最低限だけ。朝の点検、昼食、広報室、夕方の岸壁。それ以外は普段どおり」
犬島が確認する。
「事故を起こす企画ではない?」
犬飼。
「そんな企画があってたまるか」
藍島が少し笑った。
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一 撮影開始
午前七時三十分。
第一岸壁。
カメラが回り始める。
犬島は自分の実艦の艦首に立っていた。
第二岸壁には藍島。
画面下に字幕が出る。
『月1広報 今回は二人の普通の一日を撮ります』
犬飼の声がカメラの後ろから聞こえる。
「犬島、朝何してる?」
犬島は少し考える。
「艦体確認です」
「具体的には?」
「機関、軸、舵、電気系統、係留状態、兵装、安全設備とかです。全部を毎朝分解して見るわけではないですけど、異常がないか確認します」
犬飼。
「今日は?」
「異常なしです」
犬飼。
「よし」
第二岸壁。
藍島にも同じ質問。
「藍島は?」
「うちも異常ありません」
犬飼。
「それだけ?」
藍島。
「犬島さんより少し早く終わりました」
第一岸壁から犬島が反応する。
「何で競っとるんです?」
藍島。
「競ってません」
字幕。
『朝から少し張り合う』
犬島。
「字幕で勝手に関係作らんでください」
撮影担当が笑った。
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二 犬島の工具箱
次に撮影されたのは、犬島が普段使っている工具箱だった。
犬飼。
「これ以前から気になってたんだけど」
犬島。
「はい」
「何でこんなに入ってるの?」
犬島は工具箱を見る。
それほど大きくない箱だが、中にはドライバー、スパナ、小型レンチ、布、油差し、予備のネジ類などがきれいに整理されている。
「使うので」
「全部?」
「だいたい」
藍島が横から覗く。
「犬島さん、壊れた物見つけるとすぐ直します」
犬島。
「直せる物なら直した方がええでしょう」
犬飼。
「この前、広報室の椅子も直したな」
「ネジ緩んどったので」
「頼んでないのに」
「座った時に気づきました」
藍島。
「あと休憩室の棚」
犬島。
「あれも金具が緩んどりました」
犬飼はカメラを見る。
「こういう感じです」
字幕。
『犬島:艦体以外もよく修理する』
犬島は少し不満そうだった。
「もっとちゃんとした紹介してください」
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三 藍島の方は質問が多い
続いて藍島。
犬飼が尋ねる。
「藍島は普段何してる?」
「犬島さんと似ていますけど、知らない設備があると聞きます」
「誰に?」
「工廠の人とか、犬島さんとか、担当官さん」
犬飼。
「俺、艦体設備そんなに詳しくないぞ」
「広報設備は担当官さんに聞きます」
「それなら分かる」
犬島が横から言う。
「藍島さん、質問始めたら長いですよ」
藍島。
「犬島さんも工具見つけたら長いです」
犬島。
「別です」
藍島。
「同じです」
犬飼。
「二人とも似た者同士だよ」
二人。
同時に犬飼を見る。
「違います」
撮影担当がまた笑う。
この同時発言は、そのまま本編に採用された。
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四 午前十時、予定外の貨物列車の話
広報室へ移動する途中。
遠くから列車の走行音が聞こえた。
犬島が一瞬だけ振り向いた。
カメラがそれを捉える。
犬飼。
「今何見た?」
犬島。
「別に」
藍島。
「列車です」
犬島。
「藍島さん」
犬飼。
「最近貨物列車見に行ったから?」
犬島は少し迷ってから頷く。
「前より気にはなります」
画面には以前の犬島公式投稿が表示される。
『貨物列車知識:本人申告18%』
犬島。
「そこ出すんです?」
犬飼。
「分かりやすいから」
藍島。
「今も18%?」
犬島。
「たぶん」
「EH800覚えたでしょう」
「それ込みで18です」
犬飼。
「百分率の基準が未だに分からない」
犬島。
「うちも厳密には分かりません」
字幕。
『誰も基準を知らない18%』
公開後、この字幕はかなり人気になることになる。
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五 広報室
午前十一時。
三人は広報室へ入る。
犬島と藍島にとっては、もはや珍しい場所ではない。
撮影がなくても普通に来ることがある。
犬飼は自分の席に座る。
犬島はすぐ近くの椅子。
藍島もその隣。
犬飼。
「これが普段の配置です」
撮影担当。
「二人の席、決まってるんです?」
犬飼。
「正式にはない」
犬島。
「空いとるところです」
藍島。
「だいたいここが空いてます」
犬飼。
「結果的に俺の横になる」
撮影担当。
「懐いてますね」
犬島。
「……」
藍島。
「否定しないんです?」
犬島。
「否定したら担当官さんに失礼かなと思って」
犬飼。
「別に否定していいぞ」
犬島。
「じゃあ少しだけです」
犬飼。
「そこは5%とか言わないんだな」
撮影担当が声を出して笑った。
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六 犬飼の仕事を二人が見る
今回は犬飼自身の仕事も少し撮影する。
広報資料の確認。
写真の公開範囲。
機密情報のチェック。
字幕確認。
海外海軍の広報部門との連絡。
SNS投稿案。
犬島が犬飼の画面を見る。
「結構いっぱいありますね」
「誰のせいだと思ってる?」
犬島。
「うちら?」
犬飼。
「かなり」
藍島。
「事故投稿が多いから?」
「それもある」
犬島。
「すみません」
犬飼。
「別に怒ってない」
少し間を置く。
「でも最近、河口事故が起きるたびに他所から資料が来るのはどうにかしてほしい」
犬島。
「それはうちらに言われても困ります」
藍島。
「アメリカからも来ましたね」
犬飼。
「フレッチャーのやつな」
字幕。
『呉鎮守府は河口事故専門部署ではありません』
犬島。
「またそれ出すんですね」
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七 昼食
今回の動画では食堂も撮影する。
犬島。
焼き魚。
味噌汁。
ご飯。
小鉢。
藍島もほぼ同じ。
犬飼は少し違う定食。
三人で座る。
犬島。
「担当官さん、それ美味しいです?」
「普通に美味しい」
藍島。
「一個もらってええです?」
犬飼。
すぐ。
「今日は交換しない」
藍島。
「何でです?」
「前に変な話題になったから」
犬島。
「ああ」
撮影担当。
「何の話です?」
犬飼。
「説明しなくていい」
字幕。
『詳しくは過去動画参照』
犬飼。
「字幕担当!」
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八 白桃デザート
昼食後。
偶然。
デザート。
白桃ゼリー。
犬島の目が少し明るくなる。
藍島も同じ。
犬飼。
「岡山組、反応早いな」
犬島。
「白桃なので」
藍島。
「担当官さんも岡山でしょう」
犬飼。
「俺は高梁だから白桃だけで反応するわけじゃない」
犬島。
「でも食べます?」
「食べる」
藍島。
「岡山ですね」
犬飼。
「判定基準が雑」
字幕。
『玉野・玉野・高梁』
さらに。
『三人とも岡山県に縁あり』
犬島は字幕を見る。
「これはええですね」
犬飼。
「三兄妹って書かなければな」
次の瞬間。
字幕。
『※血縁関係はありません』
犬飼。
「先回りされた」
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九 午後の自由撮影
午後一時四十分。
今回の企画には、「二人が自由に過ごしているところを十五分撮る」という項目があった。
犬飼。
「俺は一回仕事戻るから」
犬島。
「はい」
藍島。
「何します?」
犬島。
「特に」
「動画なのに?」
「普通の日なので」
二人はしばらく第一岸壁と第二岸壁の間を歩く。
そして犬島が自分の艦を見る。
藍島も自分の艦を見る。
藍島。
「犬島さん」
「はい」
「こうして見ると結構違いますね」
「どこです?」
そこから。
艦橋。
通風設備。
整備口。
甲板配置。
二人で話し始める。
結局、十五分の自由時間のうち九分ほどを、自分たちの艦体の違いについて話して使った。
撮影担当。
「二人とも休み方が技術寄りですね」
犬島。
「普通ですよ」
藍島。
「普通です」
字幕。
『二人にとっては普通』
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十 犬飼が戻ってくる
午後二時。
犬飼が戻る。
「何してた?」
犬島。
「艦体の違い見てました」
犬飼。
「自由時間に?」
藍島。
「はい」
犬飼。
「まあお前ららしいけど」
犬島。
「担当官さんは何しとったんです?」
「仕事」
藍島。
「休んでないですね」
犬飼。
「俺は今日休暇じゃない」
犬島。
少し考える。
「飲み物持ってきます?」
犬飼。
「大丈夫」
藍島。
「持ってきます」
「聞いてた?」
二人とも広報室へ向かう。
犬飼は少し呆れながら、その後を見送った。
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十一 撮影予定にない場面
数分後。
犬島。
お茶。
藍島。
コーヒー。
持って戻る。
犬島。
「担当官さん」
「何?」
「どっちです?」
犬飼。
「俺コーヒー」
犬島。
藍島を見る。
藍島。
「うち当たりです」
犬島。
「別に競ってないでしょう」
犬飼。
「さっきも聞いた会話だな」
結局。
犬島のお茶。
犬島本人。
飲む。
三人が並んで休憩。
この場面。
撮影担当はカメラを止めなかった。
特に会話はない。
犬島はお茶。
藍島は水。
犬飼はコーヒー。
ただ三人で座っている。
一分ほどして。
藍島が聞く。
「担当官さん」
「何?」
「今日、事故の連絡ないですね」
犬飼。
「その確認やめない?」
犬島。
「ええことです」
「それはそうだけど」
この場面が、公開後かなり人気になる。
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十二 夕方の岸壁
午後五時十分。
最後の撮影。
第一岸壁と第二岸壁。
夕暮れ。
犬島の琥珀色の瞳に、少しオレンジ色の光が入る。
藍島も隣にいる。
犬飼はカメラの後ろ。
犬島。
「今回、ほんまに普通でしたね」
犬飼。
「最初からそういう企画」
藍島。
「事故ありませんでした」
犬飼。
「それを成果みたいに言うな」
犬島。
「貨物列車も見てません」
犬飼。
「朝見てた」
犬島。
「あれは遠くに見えただけです」
藍島。
「見てました」
犬島。
「藍島さん」
三人の笑い声。
そして犬飼が最後の質問をする。
「二人にとって、広報って何?」
犬島は少し考える。
以前なら答えに時間がかかった質問だった。
「うちらが何しとるか知ってもらうことです」
藍島も続ける。
「事故の時だけじゃなくて、普通の日も見てもらうことだと思います」
犬島が頷く。
「事故ばっかりの艦じゃないので」
犬飼。
「それは大事だな」
犬島。
「はい」
画面。
暗転。
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十三 完成した動画
三日後。
編集完了。
タイトル。
【月1広報】今回は本当に普通の一日です 海防艦犬島・藍島の日常
動画時間。
28分14秒。
概要欄。
«今月の特別広報は、犬島・藍島の通常勤務日の様子を紹介します。
特別な訓練やイベントはありません。
朝の艦体確認、広報室、昼食、休憩、夕方の岸壁まで、普段に近い形で撮影しました。
広報担当官・犬飼藍人も通常どおり出演しています。
撮影当日、重大事故はありませんでした。»
犬飼。
完成版を見る。
「最後の一文いる?」
編集担当。
「視聴者が安心するので」
犬飼。
「そういう番組になってるんだな……」
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十四 公開直後の反応
動画公開。
十分。
コメント。
一気に増える。
«「こういうのでいい」»
«「むしろこういうのが見たかった」»
«「何も起きない28分」»
«「犬島と藍島が普通に仕事してご飯食べてるだけなのに見られる」»
そして。
犬島の工具箱。
«「犬島、本当に修理好きなんだな」»
«「広報室の椅子まで直してるの笑う」»
«「『壊れたらまた直せばええ』が生活に浸透しすぎてる」»
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十五 18%
貨物列車。
場面。
当然。
反応。
大きい。
«「朝から列車見てる」»
«「18%健在」»
«「貨物列車が画面に映ってないのに犬島が振り向いたことで存在が分かる」»
«「音で貨物か分かった?」»
犬島。
公式コメント。
«そこまでは分かりません。列車の音がしたので見ただけです。»
返信。
«「じゃあ20%にはまだ遠いか」»
犬島。
«急に上げません。»
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十六 広報室の三人
予想以上に人気になったのは、三人が広報室でただ座っている場面だった。
特に。
犬島。
藍島。
犬飼。
三人で飲み物を飲んでいるだけの一分。
コメント。
«「ここ好き」»
«「何も起きない安心感」»
«「この三人、喋ってなくてもいつもの感じがする」»
«「犬島と藍島が担当官の近くに自然に座るの良い」»
そして。
«「『今日事故の連絡ないですね』」»
«「『その確認やめない?』」»
このやり取り。
切り抜き。
拡散。
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十七 「担当官さんの隣」
別のコメント。
«「犬島と藍島、正式な席ないのに毎回犬飼さんの横に座るの?」»
犬島。
公式返信。
«空いとるので。»
藍島。
«落ち着くので。»
犬島。
少し後。
«それもあります。»
ネット。
«「犬島後から認めた」»
«「担当官の横=定位置」»
犬飼。
«広報室には他にも椅子があります。»
藍島。
«知っています。»
犬飼。
«じゃあ何で毎回俺の横なんだ。»
藍島。
«落ち着くので。»
犬飼は、それ以上返信しなかった。
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十八 岡山三人組
昼食場面。
『玉野・玉野・高梁』
字幕。
人気。
出る。
«「岡山三人組」»
«「犬島=玉野」»
«「藍島=玉野」»
«「犬飼=高梁」»
«「海側二人と山側一人」»
犬飼。
«高梁代表ではありません。»
犬島。
«前も言っとりましたね。»
藍島。
«でも三人とも岡山です。»
犬飼。
«それはそう。»
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十九 犬島公式SNS
動画公開後。
犬島。
投稿。
«今月の広報動画が公開されました。
今回は特別な行事ではなく、普通の日を撮ってもらいました。
朝の艦体確認、工具箱、広報室、昼食、夕方の岸壁などが入っています。
貨物列車の知識18%も出ました。
担当官さんの隣に座ることについてもコメントが来ています。
空いていることが多いのと、近くにいると落ち着くので座っています。
今回は事故もなく、かなり普通です。
こういう広報もええなと思いました。»
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二十 藍島公式SNS
«月1広報動画が公開されました。
今回は犬島さんとうちの普段の一日です。
犬島さんの工具箱が思ったより詳しく紹介されています。
犬島さんは広報室の椅子も直したことがあります。
うちは質問が多いと言われました。
その通りだと思います。
担当官さんの近くに座るのは、犬島さんと同じで落ち着くからです。
次回も事故ではなく普通の動画がいいです。»
犬飼。
返信。
«俺もそう思います。»
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二十一 犬飼公式SNS
«【広報担当・犬飼藍人】
今月の犬島・藍島特別広報動画を公開しました。
今回は特別企画をほぼ入れず、普段の勤務日に近い内容です。
二人が普段どんな確認をしているか、広報室で何をしているか、昼休みに何を話しているかなどを撮影しています。
犬島の貨物列車知識が18%であることも改めて確認されました。
なお、この数字に公式な基準はありません。
二人が私の隣に座る理由については、本人たちが動画内とSNSで説明しています。
次回の企画はまだ未定です。
河口進入企画ではありません。»
犬島。
«そんな企画最初からありません。»
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二十二 最も評価されたコメント
動画公開から一日。
最上位コメント。
«「犬島と藍島って事故報告や戦闘記録だとどうしても『大丈夫か』って見方になるけど、こういう普通の日を見ると、本当に普通に働いて、普通にご飯食べて、担当官さんのところへ行って、姉妹で話して暮らしてるんだなと思う。月1広報はこういう回を定期的にやってほしい。」»
犬島。
いいね。
藍島。
いいね。
犬飼。
いいね。
提督公式。
いいね。
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終章 月に一度
翌月の企画会議。
広報室。
犬島。
藍島。
犬飼。
三人。
犬飼。
「来月何する?」
犬島。
「もう考えるんです?」
「月1だからな」
藍島。
「普通の一日、またでもええですよ」
犬飼。
「毎回同じにはできない」
犬島は少し考える。
「じゃあ、うちらが普段行かん場所を紹介するとか?」
藍島。
「工廠?」
犬島。
「工廠はよく行きます」
犬飼。
「貨物列車とか言うなよ」
犬島。
「まだ何も言ってません」
藍島が笑う。
犬飼も笑った。
月に一度。
特別なことをする日でもあり、二人の普通を見せる日でもある。
犬島と藍島にとって、広報はもう単に「人前に出る仕事」ではなかった。
事故が起きた時だけ知られるのではなく、何も起きていない日の自分たちも知ってもらう。
それが二人にとって、一番大きな意味になり始めていた。
そして、その月の動画の最後には、こんな字幕が追加された。
『今月も二人とも無事です。来月もよろしくお願いします。』
犬島は完成版を見て言った。
「これ、毎月最後に入れてもええですね」
犬飼。
「そうだな」
藍島。
「来月も普通に入れられるようにしましょう」
犬島。
「はい」
犬飼。
「そこは本当に頼むよ」
三人は笑った。