キヴォトス型外見変容⁠症候群   作:さめ箱

7 / 7
また導入に近い内容なのに少し遅れました
センセンシャル!


第7話

 

第七話

「十五歳の朝」

 

20XX年5月31日

公式確認例:27

(ネット等での実質の推定数:48)

 

公式で確認されている数で全国で27人

数字だけ見れば極めて珍しい病気

人口一億人からすれば存在しないも同然だった。

 

ニュースにもならない。

朝のワイドショーは芸能人の結婚を報じSNSでは新作ゲームの話題で盛り上がる。

世界は今日も平和だった。

 

 

埼玉県

六月一日 午前六時四十分

今日は朝倉 海斗の十五歳の誕生日だった。

中学三年生

特別な予定はない

夜には家族でケーキを食べるくらい

目覚まし時計を見る。 

 

6:40

「学校か……」

身体を起こす

その瞬間、強い違和感。

 

「……」

髪が視界へ落ちる。

長い 黒ではない

淡い茶色

 

「え?」

心臓が一度だけ跳ねる

昨日まで読んでいた掲示板

そしてとあるニュースで取り上げられていたらデータの内容を思い出す。 

 

『十五歳以上』

『朝起きたら』

『誰にも見られていない』

 

「……まさか」

ゆっくりベッドから降りる

床に映る影は何時もより小さい。

洗面所の鏡に映っているのは……

少女

 

肩まで伸びた明るい茶髪

頭上には静かな光輪

着ている制服は見覚えのない深い紺色のブレザー いやとあるゲームに出てくるものによく似ていた

海斗は鏡の前で固まった。

 

「……」

声も出ない

昨日まで掲示板を笑っていた。

「創作だろ」

「釣りだろ」 

 

そう書き込もうとして結局やめた

なにかとても嫌な予感がしたからだ。

そして今になって理由が分かった

「本当だった……」

 

一階で母親が自分の名前を呼ぶを

「海斗ー!」

 

返事が出来ない

 

「遅刻するわよ!」

ドンドンと階段を上る音がする。

その音が大きくなる程自分の心臓の音も大きくなっていく。

そしてドアにノックされる音

 

「何してるの?入るわよ!」

「待って!」

思わず高い声が自分の身体から出る

そして母親が思わず止まる。

 

「……海斗?」

「お願い……お願いだからまだ入らないで」

海斗は今着ている服を脱ぎいつも着ている服に着替えた。

十分後ドアが開く

母親の目の前には見知らぬ少女がいる。

しかし自分の息子が着ているジャージ姿であった

それが解った母親は一歩だけ後ろへ下がった

 

「……母さん」

「……」

「俺、海斗」

「……」

 

沈黙。

母親は震える手で頬へ触れる

温かい

夢ではない。

母は声を絞り出しながらやっと言葉を出した

 

「海斗、病院に行こう」

海斗は小さく頷いた

 

 

匿名掲示板

 

【Part1】俺、まだキヴォトス生徒なんだけど

802 :風吹けば名無し

今日十五歳になった

 

803 :風吹けば名無し

おっそうなんだ

 

804 :風吹けば名無し

めでたいな

 

805 :風吹けば名無し

誕生日おめ

 

806 :スレ主

15歳か

 

807 :風吹けば名無し

おめ

 

808 :風吹けば名無し

誕生日なのにわざわざスレを見に来てるのか(困惑)

 

809 :風吹けば名無し

もっと自分の時間を大切にしろ

 

810 :風吹けば名無し

誕生日か いまとなってはなぁ(社会人)

 

811 :風吹けば名無し

……なった

 

812 :風吹けば名無し

うん?

813 :風吹けば名無し

何が?

814 :風吹けば名無し

ブルアカの例の生徒

 

815 :風吹けば名無し

え?

 

816 :風吹けば名無し

マジ?

 

817 :風吹けば名無し

冗談でなく?

 

818 :スレ主

誕生日にですか?

 

819 :風吹けば名無し

その手の冗談はおもろないゾ

 

820 :風吹けば名無し

またまた…w 嘘やろ?

 

821 :風吹けば名無し

え?何時なったって?

 

822 :風吹けば名無し

今日

 

823 :二人目

え?よりによって誕生日に?

 

824 :風吹けば名無し

マジで!?

 

825 :風吹けば名無し

おおっ…うん…

 

 

 

画面の向こうで研究員の秋山が見ていたら椅子から立ち上がっていただろう。

だがその書き込みを見ていたのは当時、暇つぶししているスレの住民だけだった。

 

 

826 :風吹けば名無し

また釣りやろ?

 

827 :風吹けば名無し

流石になぁ

 

828 :風吹けば名無し

目立ちたいだけやろ

 

829 :風吹けば名無し

最近流行ってる設定

 

830 :風吹けば名無し

だったらいつもの証拠提示しろ定期

 

831 :風吹けば名無し

はよ 画像はよ

 

832 :風吹けば名無し

うpキボンヌ

 

833 :風吹けば名無し

画像

 

834 :風吹けば名無し

おらあくしろよ

 

835 :風吹けば名無し

写真

 

 

そこには中学生の学生証 生年月日

今日、十五歳

そして…制服姿の少女

 

 

838 :風吹けば名無し

……え?

 

849 :風吹けば名無し

ガチ?

 

850 :風吹けば名無し  

本物?

 

851 :風吹けば名無し

解析班はよ

 

852 :風吹けば名無し

いや加工だろ

 

853 :風吹けば名無し

また手の込んだやらせだろ

 

854 :風吹けば名無し

嘘乙!

 

 

 

……嘘だよな?

 

855 :風吹けば名無し

でも毎回こんな手の込んだヤツ出せるか?

 

856 :風吹けば名無し

う〜んでもなぁ

 

857 :風吹けば名無し

タイミング良すぎる……

 

 

初めて掲示板に完全な否定ではない空気が流れた

 

 

 

国立感染症研究所

 

六月二日 午前九時

秋山はコーヒーを飲みながらいつものように掲示板を開いていた

彼は仕事で見ている

遊びではない。

 

昨夜の書き込みで「今日十五歳になった」

その一文を見て秋山は手を止めた

すぐに症例一覧を開く。

 

十五

十八

二十一

三十

五十一

十七

十九

四十二

三十五

十五

十五

十六

 

公式に確認されているだけの変異者だが全員十五歳以上未満はゼロであった。

 

「……」

偶然か、いや……

偶然では説明しづらい

秋山は新しい付箋を貼る。

 

仮説B

現象は十五歳到達後から発生可能

彼はその付箋を今度は机ではなく症例ファイルの一ページ目へ貼り付けた

 

 

 

東京都 佐々木

 

夜、コンビニの帰り

交差点で信号待ち

ふと向こう側を見る

 

少女

制服姿

そして頭上には光輪(ヘイロー)

 

「……あ」

 

目が合う

相手も止まる

数秒、二人とも何も言わない

少女は少しだけ会釈した

佐々木も返す。

 

青信号になりすれ違う

言葉は交わさない

名前も知らない。

けれど……

 

"あの人もなんだ。"

それだけで分かった。

振り返ると相手も振り返っていた

そして互いに苦く笑う。

その笑顔だけが今まで誰にも理解されなかった孤独をほんの少しだけ和らげてくれた。




木曜日はゲームの更新が多いからね 仕方ないね♂
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