キヴォトス型外見変容⁠症候群   作:さめ箱

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たまには早めの投稿


第9話

 

第九話

「名称」

 

20XX年7月3日

 

公的確認例:92

推定確認例:118

 

梅雨はまだ明けない

日本では一日に何万人も生まれ何千人も亡くなる。

その中での約100人

 

その数字はまだ統計にも埋もれるほど小さかった。

 

 

 

厚生労働 午前十時

小会議室

 

机の中央には一枚の紙

 

議題

「原因不明形態変化症例」の正式呼称について

 

課長が言う

「いつまでも"原因不明形態変化症例"では長い」

「確かに」

「何か案は」

 

若い職員が恐る恐る口を開く。

 

「分類としては症候群……になるのでしょうか」

「まあ、そうなるな」

 

別の職員

「外見だけではありません」

「身長も、骨格も、体組成も全部変わっています」

 

教授が資料を閉じる。

「では…」

ペンを走らせる

 

暫定名称

Kivotos Syndrome

(キヴォトス症候群)

 

誰も反対しなかった

理由は単純だった

患者全員が

ゲーム『ブルーアーカイブ』に登場する一般生徒に酷似している

それ以上の説明ができなかった。

 

 

その日行政文書にだけ初めて

KS症候群

という文字が記された

一般公開はされない。

 

 

匿名掲示板

 

【Part2】俺たちまだ戻らないんだけど

 

401 :風吹けば名無し

最近増えてない?

 

402 :風吹けば名無し

なにが?

 

403 :風吹けば名無し

普通に考えてブルアカモブになるやつの話だろアホ

 

403 :風吹けば名無し

増えてんの?

 

404 :風吹けば名無し

知らん

 

405 :風吹けば名無し

気のせい

 

406 :風吹けば名無し

え?そうなん?

 

407 :風吹けば名無し

まあ少しずつ話題にはなっとるよ

 

408 :風吹けば名無し

ニュースとか見んからわからん

 

409 :風吹けば名無し

SNSでは見た

 

410 :風吹けば名無し

SNSwwwwww

 

411 :風吹けば名無し

お前それ騙されてんぞ

 

412 :風吹けば名無し

コスプレだろ

 

413 :風吹けば名無し

AI、画像加工

いつもの

 

414 :風吹けば名無し

まあ少しずつ認知はされていってる気がする

 

415 :風吹けば名無し

一部のモノ好きが触れとるだけやろ

 

416 :風吹けば名無し

それでもゲーム外でもブルアカの話題は増えとる気はするなぁ

 

417 :風吹けば名無し

まあブルアカについて話す奴は多くなった

 

418 :スレ主

……実は今日一人見た

 

419 :風吹けば名無し

それ本当?

 

420 :風吹けば名無し

変様者?

 

421 :風吹けば名無し

スレ主マジ?

 

422 :風吹けば名無し

自分以外のヤツ見たん?

 

423 :スレ主

多分

 

424 :風吹けば名無し

話した?

 

425 :風吹けば名無し

なんか会話した?

 

426 :スレ主

話さなかった

 

427 :風吹けば名無し

え?なんで?

 

428 :風吹けば名無し

何もしなかったん?

 

429 :スレ主

向こうも分かってた

 

430 :風吹けば名無し

ん?なにが?

 

431 :スレ主

目が合った

それだけで十分だった

 

 

掲示板の空気が少しだけ変わる

最初は「自分だけ」だった

今は「自分以外にもいる」ことを皆が知っている。

 

 

 

 

東京都

 

研究員 秋山

午後六時 コンビニ

 

コーヒーを持ってレジへ並ぶ

その前には制服姿の少女、光輪…例の症状の人であった

「……」

 

少女は振り返り目が合う

数秒、秋山は研究者としてではなく一人の人間として頭を下げた

少女も会釈する。

「……」

 

言葉はなかった

レジが終わり少女は店を出る

秋山は追い掛けなかった

追い掛けるべきではないと思った

 

 

研究メモ

秋山個人ノート 7月3日

 

今日変様者を外で偶然見掛けた

全員同じ反応をする

驚かない、大声も出さない。

ただ、

「ああ、この人も」

という顔をする。

少し考えてもう一行書き加えた。

 

孤独は共通するらしい

 

 

 

北海道

 

遠藤 

 

休日のショピングモール

服売り場の婦人服コーナー

「……」

 

店員が近付く

「お探しですか?」

「ええ……」

少し迷ってから

「自分用です」

 

店員は一瞬だけ驚いた

それでも笑顔を崩さない

「でしたらこちらのサイズが近いと思います」

遠藤は服を受け取る

 

「ありがとうございます」

 

試着室の鏡に映る少女

私服を着ている

制服ではない。

 

そう、普通の服

どこにでもいる高校生のようだった。

「……」

 

ほんの少しだけ現実感が薄れていくように感じた

 

 

 

国立感染症研究所 夜

 

症例一覧

 

20

21

22

23

 

秋山は新しいグラフを作る

 

月別

 

四月、五月、六月、七月

 

まだ始まったばかり

折れ線はわずかに右肩上がりだった

 

「増えてる……」

声にすると数字以上の重みがあった。

 

「先生」

教授が近付く

「どうした」

「増加率です」

教授はグラフを見て静かに頷く

 

「……」

「偶然では説明しにくくなってきました」

教授は否定しない

「その言葉はまだ外では言うな」「はい」

「この数では社会はまだ動かない」「ですが……」

 

教授は窓の外を見る

夜の東京、無数の明かり。

 

「数百人になったら、数千人になったら……」

「……その時も我々は"偶然"と言えるだろうか」

 

 

 

同日 午後11時59分

 

日本のどこかで一人の少女が眠る。

今日は十四歳最後の日

そして日付が変わる。

 

 

7月4日 0時00分

 

十五歳の誕生日。

しかし何も起こらない

静かな夜で世界は眠っている

変様は必ず「目覚めた朝」に起こる

そのため本人も家族もまだ何も知らない

明日の朝、この家族の日常は静かに終わることを

 

 

 

 




このペースが続くといいですねぇ(他人事)
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