姫騎士学園の下剋上性活 ~最弱スキルで異世界のプライド高め美少女たちを堕としたら、毎晩ご奉仕に来る日々が始まった~   作:東雲(しののめ)

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第12話:リベンジ

『――これより階級戦を始めます』

 

 訓練場に合図が響く、学園三日目の午後。

 収容所から帰ってきた僕は、戦闘服に着替えウルズと対峙していた。

 

「行くわよ! 全敗記録を更新してあげるわ!」

 

 彼女は己の聖装(レガリア)である、三日月剣(シャムシール)を召喚する。

 

「今日もたくさん遊びま――しょッ!」

 

 こちらに駆けつつ、風斬撃を乱れ打ち。

 最小限の動きで回避しながら、その斬撃の一つに(さや)を当てる。

 

「【吸収】」

 

 (きら)めく鞘。これにより一定時間は僕も【旋風】を使える。

 現れた薄緑の短剣を、見せつ(、、、)ける(、、)ように(、、、)抜く(、、)

 

「――前回より、聖装が、大きい?」

 

 疾走するウルズが、その違和感を口にする。

 鞘も、その内に現れた剣も、狩猟ナイフからショートソードほどへ。

 

 ――童貞卒業により、サイズが変化したんだ。

 変わったのは外見だけじゃないが、それは後ほど。

 

「――――っ!」

 

 第一撃を交え、激しい剣戟(けんげき)が始まった。

 

「っは! いつも以上に口数少ないじゃない!」

「……ウルズが、喋りすぎなだけ、だっ」

 

 ギリギリで刃を(さば)くが、風の追加攻撃には肌を斬られていく。

 

「くふふ、あんたも短剣に風を付与したら!?」

「……つッ!」

「せっかく吸収したのに一切使わないとか、とんだ腰抜けね!」

 

 散々に(あお)られるが、ここは辛抱の時。

 どうせ自分の【旋風】では、ウルズのような威力が出ない。

 彼女の肌に届く前に、かき消されるのがオチだ。

 

「経験の差! じり貧! 逃げ惑うので精一杯――!」

 

 彼女の哄笑(こうしょう)しながらの攻めに、ひたすら後手に回る。

 

「――終わりよ、ザコはさっさと死になさい!」

 

 ウルズの身体が突風に変わる。

 竜巻と踊るような手足の超過駆動、その姿も剣も捉えきれない。

 あれでは迎撃どころか回避も困難――これまでだったら、な。

 

「つあああああああああああああああ!?」

 

 瞬間。鮮血が舞って絶叫が漏れる。

 

「――全敗記録は、今日で止める」

 

 短剣に付いた血を払い、相手を見据える。

 そこには、斬られた左目を押さえるウルズがいた。

 

「ぐ、うぅ……っ!?」

「片目を潰した。これで視界は半分だ」

 

 ウルズは失明の痛みに、残った目に涙をにじませる。

 

「プロの【旋風】に、素人の【旋風】が、威力や速度で勝てるはずがないんだ」

 

 童貞を卒業しても、人生が劇的に変わらないように。

 経験の差だって、簡単に埋められたりしない。

 二度も敗北をして、何も考えずここに立つもんか。

 

「っ……だったら、なんで、あたしの動きが読めて… …!」

「風を操る力は、飛び道具にしたり、自分を加速させるだけじゃない」

 

 彼女の技を真似(まね)て、馬鹿正直に力比べしようとした。

 でもそれは大きな間違いだったんだ。

 

「…………フィールド全体に、弱い風が吹いて、る?」

 

 ようやくウルズも気づく。

 左目から(こぼ)れる血が、カーブを描いて落下したのだ。

 無風状態であれば、重力によって真っ直すぐに落ちるはずなのに。

 

「――【旋風】能力は、最初から使っていた」

 

 戦闘開始時、あえて鞘のサイズ変化を強調した。

 そこに違和感を持たせた隙に、能力発動。

 蜘蛛(くも)の巣を張るように、空間全域に僕の風を散布した。

 

「その上、こっちの【旋風】は未熟、風力が弱すぎてより気づけない」

 

 話をまとめよう。

 僕は【旋風】を攻撃にも加速にも使わない。

 

「その代わり、風向き(、、、)の探知(、、、)に全力を注いだんだ」

 

 彼女の動きは超立体的で、肉眼では軌道を追いきれない。

 しかし彼女の動作には、必ず(、、)強風が(、、、)伴って(、、、)いる(、、)

 

「フィールド全体に規則的な微風を流す。それが乱れた場所から攻撃が来るわけで――」

 

 この図式なら、相手の行動を先読みできると考えた。

 

「……ウルズが単純な性格で、助かったよ」

 

 逆に煽りを返すと、彼女は目をつり上げて歯ぎしりする。

 

「こ、殺してやるわ――ッッッ!」

 

 ウルズが三日月剣を構えて叫ぶ。

 

「――限定(リミテツド)聖装(・エクス)覚醒(・レガリア)!」

 

 いきなり彼女の身体が強く輝きだす

 そして光が収束した時、ウルズの右腕だけが(よろい)化していた。

 

 なん、だ、あれは……?

 未知の力を見て、動揺する僕に彼女は(わら)う。

 

「聖装の本来の使い方は、全身を武装化させることにある」

「全身、武装化……?」

 

 剣や槍や斧は、あくまで聖装の一部にすぎないと告げられる。

 

「あまりに負荷が大きいから、完全覚醒できるのは七聖ぐらいだけど――」

 

 限定的に覚醒させるぐらいは自分でもできる、と。

 ウルズの右腕から、さらに莫大(ばくだい)な風が巻き起こる。

 

「……覚醒って、そんなの、知らないぞ」

 

 後出しの新情報に、冷や汗と苦笑いが零れる。

 しかし理屈はなんとなく分かった。

 

 たとえば人間は普段、全身の筋肉のうちの、三〇%程度しか使用できないとされる。

 それ以上は負荷が大きすぎて、脳が制限をかけているのだ。

 

「……人が安全に使える、聖装の三〇%が、剣や槍として現れるなら……」

 

 全身武装化とは、聖装の百%を引き出すこと。

 ウルズはまだ右腕しか鎧化できてないが……。

 

風発(コンプレツサ)機関(・エンジン)!」

 

 シュイイイイン! 音を立てて鎧が起動する。

 大気を右腕に取り込むと、鎧に内蔵された円羽(タービン)が回転した。

 それが風を増幅させ、嵐のような暴風を剣に纏わせる。

 

「第二ラウンド、始めましょう――かッ!」

 

 ウルズの姿が、消えた!?

 

「こっちよノロマ!」

 

 真下からの(ぎゃく)袈裟斬(きさぎ)り。スピードがさっきと桁違い!?

 

「風の流れであたしの動きを予想する!? なら今度もやってみなさいよボケ!」

 

 ウルズはガンガン風を生んで、周囲にまき散らす。

 フィールドはまさに乱気流に見舞われた状況。

 僕の探知風は狂って、正確な敵位置情報を(つか)めなくなる。

 

「……一部覚醒でも、ここまで出力が上がるのか!」

 

 切っ先を回避しても、付与された風の追加攻撃がくる。

 

「内臓なんて惜しくないんだっけぇ!? じゃあもらっとくわ!」

 

 肌一枚どころか、右脇腹をごっそりいかれた。

 (あふ)れそうになる血と臓、自らの【旋風】の風圧で内に押し止めるが。

 

「あは! 死ね死ね! さっさと降参しちゃえェ!」

 

 左目を奪われた怒りで、ウルズは一層容赦ない攻撃を放つ。

 

「男なんて全員カス! ゴミ! 生きる価値ゼロ!」

 

 勝利至上主義の異世界。

 聖気(オーラ)を宿さない男は、弱者として虐げられる。

 強者である女性に支配されるのは、仕方ないのかもしれない。

 

「……それでも、賢明に、生きている男たちがいる」

 

 収容所で助け合いながら、毎日必死に働いている人たち。

 苦しい生活の中、見ず知らずの自分にも、優しくしてくれた人たち。

 

 ――今、この世界で、彼らのために戦えるのは僕しかいないんだ!

 

 皆の英雄になるなんて、大それたことは言わないさ。

 でも優しくされた分、期待された分くらいは報いてみたい。

 

「――だから僕は、勝たなくちゃいけない!」

 

 あっという間に満身創痍、不格好に逃げながら思考を回す。

 

「足が止まったわね! 死になさいこのマヌケ!」

 

 とある地点まで来ると、ウルズがニヤリと笑った。

 彼女は空いている左手で、小さく合図をする。

 

 すると地面が割れて【蒸気】が発生。視界を目眩ましされ、さらに足止めの【草蔦(くさつた)】まで這い出てきて――

 

「――マヌケなのは、そっちだ」

 

「【吸収】」

 

 煌めく鞘。【蒸気】【草蔦】が消えて僕のものになる。

 

「罠に気づいて!? それに前は吸収できなかったはずで――!?」

「鞘が大きくなったことで、今は複数の(、、、)能力(、、)を吸収できる――!」

 

 性懲りもなく、また罠を仕掛けたのは知ってた。

 ――ここぞって時に、使うと思ったよ。

 

 彼女を単純と言ったが、ねじ曲がった性格ゆえ用意周到な所がある。

 さらに分析すれば、聖装の覚醒で消耗も激しい。

 罠を使用して、勝利の確実性を上げると予想していた。

 

「逃げてたんじゃない――この地点にあたしを誘導して――っ!」

 

 同じ能力対決で、まして覚醒したウルズには勝てない。

 でも僕が、三つの能力を同時に操るとしたら?

 

能力再現(リバイバル)――」

 

 鞘内に【蒸気】を秘めた短剣を作り、左手で抜く。

 

「――【蒸気】【旋風】!」

 

 左短剣で真っ白な蒸気を発生させる。

 それを右短剣の旋風で操作、ウルズの鎧化した右腕にぶつけた。

 

 ――あの鎧は、外気を取り込んで増幅させる仕組み。

 なら蒸気をグングン吸い込めば……。

 

「ごほっ! ごほっ! なんなのよこれっ!?」

 

 右腕から膨大な蒸気が出てきて、煙まみれのウルズが咳き込む。

 

「何にも見え――こんな目眩ましで――!」

 

 両手の短剣で斬りかかると、ウルズはめちゃくちゃに動いて抵抗。

 しかし流石は二つ星というべきか。

 直感と経験だけで、僕の左短剣を(はじ)き飛ばす。

 

「チッ! 限定(リミテツド)聖装(・エクス)覚醒(・レガリア)――解除ッ!」

 

 蒸気でロクに周りが見れないのだ。奥の手だった覚醒状態を解いてくれる。

 

「こんのぉ… …!」

 

 相手の余裕はゼロ。まさに気合いの踏み込みで迫ってくる。

 残った僕の右短剣を押さえるや、地面に倒してきて――

 

「あは、あはは! 今度こそ獲ったわ!」

 

 肩で息をしながら馬乗りとなり、仰向けの僕に刃を突き立てようとする。

 だがその寸前――ザクッ!

 ウルズの左腹部に短剣が突き刺さった。

 

「へ」

 

 間抜けな声を漏らす姫騎士。

 それは彼女が先ほど弾き飛ばした、蒸気の短剣だ。

 その剣の持ち手の部分には、一本の蔦が絡まっている。

 

「忘れてないか? 今の僕には能力が三つある」

 

 倒れる間際に、【草蔦】を秘めた短剣を生成。

 弾かれた短剣を、蔦で引っ張ってきてぶつけた――簡単なカラクリだ。

 

「あたしの、左の視界を、奪ったのは、死角から奇襲するため……?」

 

 僕は逆にウルズを転ばして、マウントを取る。

 

「――遊びは、もう終わりだ」

 

 ウルズの心臓を切っ先が穿(うが)つや、フィールドに決着の合図が響く。

 これが、クラスカーストが逆転した瞬間。

 僕はついに――下剋上を果たしたのだ。

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