姫騎士学園の下剋上性活 ~最弱スキルで異世界のプライド高め美少女たちを堕としたら、毎晩ご奉仕に来る日々が始まった~   作:東雲(しののめ)

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第15話:調査

 獄炎卿打倒を定めた四日目の午後、教室にて。

 お昼にゼゼ先生から渡された、階級戦の対戦候補者リストを熟読する。

 

「……まず三つ星の中で、攻略できそうなのは……」

 

 残された期間は、今日を入れて四日間。

 計画としては、五日目の明日に、三つ星と四つ星を倒す。

 そして明後日には、五つ星と六つ星。

 最終日に七つ星の獄炎卿という流れだ。

 

「……相当難しいスケジュールだけど、先生がくれた調査資料もあるし……」

 

 今日の放課後から、さっそく階級戦を行う手もある。

 しかし事を急いでは足下をすくわれるだろう。

 

「…………三つ星戦は、例の調べ物をしてからだ」

 

 個人的に、いくつか気になることがある。

 担任やクラスメイトに聞けば早いが、女王に筒抜けになる可能性が高い。

 女王にいまだ動きはないが、目立つ行動は避けるべきだ。

 

「調べ物をするなら、あそこだろうな」

 

 僕は教室を出て、心当たりのあった場所に向かう。

 

「――王剣七聖の命令で、男は図書館へは入れません」

 

 がしかし、いきなりお断りをくらった。

 

「いや……本を読むぐらい……」

「異議申し立ては図書統括長にするように」

 

二つ星が、七つ星に抗議しろって無茶な。

面識のない図書統括長様も、例に漏れず男嫌いのようだ。

 

「どうしようか……」

 

 教師たちに言ったら何とかなるか?

 一旦諦めて教務課の前に来るが……いや無理だな。

 七聖は特権持ちで、大人に頼っても状況は変わらない。

 

「何か他に手段は……」

 

 その時、教務課前にある掲示板に目が行く。

 ここには低階級者向けに、雑用仕事が張り出されているが。

 

「――緊急依頼(クエスト)?」

 

 でかでかとした文字で、そう書かれた依頼書が一枚。

 以前、これと同じ文言の撤去作業をしたけど……。

 

「……まさか……いやでもこれしか……」

 

 僕はそれを手に取ると、教務課へと申請に向かった。

 

          ***

 

「――本日の緊急依頼は、図書の運搬作業です!」

 

 図書館の前で、凜とした号令が響き渡る。

 

「……やっぱりヴェルグ先輩いるし」

「なんですかその顔は? 私と二人きりでは不満だと?」

 

 むっ、と眉間に皺を寄せる獄炎卿様だ。

 

「そもそもこの依頼は報酬額が低い。なにが目的です?」

 

 時間のない僕が、安い依頼を受けること自体が疑問のようだ。

 ……な、なんて言い訳したら……。

 彼女も女王の(しもべ)だ。ヘタな発言は命取りになる。

 

「答えなさい! それとも堂々と言えない理由でも!?」

 

 高い身長から、高圧的に迫られる。

 

「それは……そのぉ……」

 

 言いよどむ僕に、彼女は一層顔を近づける。

 ……相変わらず、えげつないくらい整った美少女顔だ。

 怖い表情さえしてなければ、並の男なら簡単に惚れてしまいそうな――あ。

 

「ヴェ、ヴェルグ先輩に、会いたくて、ですね」

「私に会いたい? どういう意味です?」

 

 報酬額を理由にしても説得力がない。

 まして本が好きだからなんて言っても嘘くさい。

 ――だったら感情問題にすり変える。

 これには絶対の正解はなく、だから無下に否定することもできまい。

 

「ヴェルグ先輩が、ずっと、気になっていて」

 

 断じて嘘ではない。獄炎卿戦のためもあってここに来ている。

 

「……わ、私への好意ゆえに、わざわざ依頼を受けたと?」

 

 やや赤面する先輩。激怖フェイスが崩れ始めたぞ。

 

「き、貴君の気持ちは尊重しますが……そんな露骨に迫られても……」

 

 彼女は急に恥ずかしくなったのか、僕からさっと身を引く。

 

「嫌われ者同士、多少は共感しあえてもですね……」

「じゃ、そろそろ仕事始めましょうか」

「しかし私は女で、貴君は男、この身分の差はどうやっても……」

「あの、先輩……?」

 

 風紀統括長様が乙女モードに突入。

 でっかい身体でも、高潔で繊細なお心をお持ちなのだ。

 

「――い、いいでしょう、ひとまず納得してあげます!」

 

 彼女はわざとらしく強気になって、話を締め括る。

 

「ただ業務中、破廉恥な行為は、絶対に許しませんからね?」

「……し、しませんよ!」

 

 だってその瞬間、僕は撲殺されてゲームオーバーなんだから。

 

「では作業に入ります。具体的には――」

 

 図書館の玄関口、屋根の下に置かれた箱の山。

 本が詰まったその箱を、館内に運ぶという……まぁ今回も肉体労働だな。

 

「ところで、先輩は何でこの依頼を?」

「本来の搬入者を、別件でしょっぴいたのでその代わりです」

 

 真面目で律儀で美少女。

 あとは腕力さえセーブできれば……言うことなんだけどなぁ。

 

 

 

 図書館の入館証を手に入れ、箱を各指定場所へ運び込んでいく。

 ――今が千載一遇のチャンス。

 あえて指定場所が遠い箱を運んだ。

 そして中身を取り出してから散策を開始。

 

「……まずは階級戦以外の戦い方、『決闘制度』について……」

 

 前もって生徒手帳の規則も読んできた。

 そこに『決闘制度』という謎の一文が記載されていたのだ。

 ただ単語のみで詳細はなく……。

 

「……姫騎士学園の詳細要項、これかな」

 

 ここで読む時間はないので、空いた箱の中に隠しておく。

 しかしパクったことが即露見しては困る。

 長らく誰も借りていないらしい、埃をかぶったものを選んでいく。

 

「……結婚とは違う、聖婚とやらについても……」

 

 役立ちそうなことは片っ端から調べよう。

 

「……あとは過去の階級戦の記録……」

 

 この学園の図書館は超巨大。

 すさまじい量の本があるので、記録関係も収められているはずで……。

 

「…………やっぱり予想通り、あった」

 

 彼女の年齢を逆算して年代を割り出す。

 目当ての戦闘記録を見つけると、それも空箱に収めた。

 

「……きちんと後で返せば問題なしだ」

 

 こっちは文字通り命がかかってるんだ。

 申し訳ないが、多少の無断借用はどうか見逃してほしい。

 

「――やけに時間がかかりましたね」

 

 箱を外に隠して戻ると、ヴェルグ先輩と鉢合わせる。

 

「……ええ、なにせ初めて来たので、道に迷って」

 

 まるで迷宮のようです、と言い訳する。

 

「まったく。迅速にお願いしますよ」

 

 すると彼女は、十個近い箱を一人で持ち上げる。

 ……一つでも結構重いのに、なんて馬鹿力……。

 つくづく人間離れした身体性能だ。

 

「これらは全部同じ指定場所に運びます。二箱ほど余ってますが――」

「じゃあ、僕が持って一緒に運びます」

「助かります」

 

 両手に箱を持ちすぎて、視界が完全に埋まった先輩。

 彼女が箱を少し残したのは、僕に誘導してもらうためだろうか?

 

「――二つ星に、なったそうですね」

 

 先導する僕に、先輩が厳かに呟く。

 

「自分のためでなく、誰かのために戦う……あのアドバイスのお陰です」

「はて。そんな助言をした記憶はありませんが」

 

 あ、そっか、あれ独り言って設定でしたね。

 

「貴君を叩き潰せる機が高まり、喜ばしい限りです」

「……校則違反で、既に何度かぶっ飛ばされてますけど……」

「あれらを正当な戦いとは呼びません」

 

 彼女はそう続けて。

 

「女王様への侮辱、私への破廉恥行為、貴君によって騎士の誇りを傷つけられた」

 

 それを取り戻さなくてはいけない、と告げる。

 

「正面から真っ向勝負――姫騎士として、それを望みます」

 

 そのために僕には六つ星になってほしい。

 随分遠回しだけど、彼女の声にはそんな期待感があった。

 

「――……着きました。ここが指定場所みたいです」

 人気(ひとけ)のない空間、探していた本棚の前で止まる。

 

僕は手元の二箱を置いて、先輩に振り返ると。

 

「なんかグラグラしてますけど、降ろすの手伝いますか……?」

「け、結構です! 私は七聖ですので!」

 

 謎の強がり。腕力面では余裕みたいだけど。

 丁寧に荷下ろし……細かい作業が苦手みたいだ。

 

「っ! どうですできましたよ! 侮ってもらっては困ります!」

 

 全て降ろして、パッと自慢げな笑顔を見せる。

 しかし積み上がった箱の一番上、それが――崩れた!?

 彼女の頭へ向かって落下する。

 

「ヴェルグ先輩……っ!」

 

 たとえ直撃しても、その屈強な身体ならノーダメージだろう。

 なんならヘタに助けると二次事故に繋がる。

 

 頭ではそう分かってる――が、気づけば身体が動いていた。

 

 先輩を押し倒し、庇った僕が箱をくらう。

 本が散らばる中で、互いの顔が急接近して――

 

「前回の瓦礫撤去の手伝いもそうですが……ま、また私を、助けてくれたのですか」

 

 強者の女を、弱者の男が身を挺して庇う。

 その事態に恥じたのか、それとも別の感情があったのか。

 正解は分からないが、彼女の頬が朱に染まっていく。

 

「「…………」」

 

 静寂の図書館、無言で見つめ合う。

 もう一押し屈めば、簡単に唇同士が触れる距離だ。

 

「そこまで、私を、好いているのか……?」

 

 先輩は姫騎士ではなく、少女としての顔を見せる。

 僕が返す言葉に窮していると……。

 

「……騎士として、借りは、返さなくてはいけない」

 

 前回の緊急依頼の手伝いは、独り言(アドバイス)で礼を返した。

 では、落下物から守られた今回はどうするのか。

 

「……私が敬愛するのは女王様だけ。貴君に恋をしているわけではありません」

 

 ヴェルグ・モルドレイドは――目を瞑ることを選んだ。

 

「……今なら誰の目もありません。好きにしなさい」

 

 キスをせがむように、やや突き出した唇を震わせる。

 

「せ、先輩、あの……」

「……貴君が気にしているこの胸も、ほ、ほんの少しなら……触れても、いい」

 

 今だけ特別。まさに据え膳以外の何でもない状況。

 日陰者でも僕は男。本能が刺激され嫌でも熱くなる。

 

「……ヴェルグ先輩」「……カゲルヤ」

 

 互いの名を口にし、ゆっくりと唇を近づけて――

 

「「――――っ!」」

 

 誰かの足音がして、二人してハッと飛び上がる。

 どうやら近くに他の生徒がいるらしい。

 

「……さ、さて、わ、私は、他の仕事が、ありますので」

 

 真っ赤になった先輩は、大慌ててで制服を整える。

 

「……この借りは、今度、必ず返しますから」

 

 そう言い残すと、ものすごい早歩きで去って行ってしまう。

 ぽつんと残された僕は……。

 

「ち、散らかった本を、片付けよう、かな」

 

 平静になろうと、場当たりに作業を始める。

 しかしどんなに没頭しても――僕の身体は、火傷したように熱かった。

 

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