姫騎士学園の下剋上性活 ~最弱スキルで異世界のプライド高め美少女たちを堕としたら、毎晩ご奉仕に来る日々が始まった~ 作:東雲(しののめ)
獄炎卿打倒を定めた四日目の午後、教室にて。
お昼にゼゼ先生から渡された、階級戦の対戦候補者リストを熟読する。
「……まず三つ星の中で、攻略できそうなのは……」
残された期間は、今日を入れて四日間。
計画としては、五日目の明日に、三つ星と四つ星を倒す。
そして明後日には、五つ星と六つ星。
最終日に七つ星の獄炎卿という流れだ。
「……相当難しいスケジュールだけど、先生がくれた調査資料もあるし……」
今日の放課後から、さっそく階級戦を行う手もある。
しかし事を急いでは足下をすくわれるだろう。
「…………三つ星戦は、例の調べ物をしてからだ」
個人的に、いくつか気になることがある。
担任やクラスメイトに聞けば早いが、女王に筒抜けになる可能性が高い。
女王にいまだ動きはないが、目立つ行動は避けるべきだ。
「調べ物をするなら、あそこだろうな」
僕は教室を出て、心当たりのあった場所に向かう。
「――王剣七聖の命令で、男は図書館へは入れません」
がしかし、いきなりお断りをくらった。
「いや……本を読むぐらい……」
「異議申し立ては図書統括長にするように」
二つ星が、七つ星に抗議しろって無茶な。
面識のない図書統括長様も、例に漏れず男嫌いのようだ。
「どうしようか……」
教師たちに言ったら何とかなるか?
一旦諦めて教務課の前に来るが……いや無理だな。
七聖は特権持ちで、大人に頼っても状況は変わらない。
「何か他に手段は……」
その時、教務課前にある掲示板に目が行く。
ここには低階級者向けに、雑用仕事が張り出されているが。
「――緊急
でかでかとした文字で、そう書かれた依頼書が一枚。
以前、これと同じ文言の撤去作業をしたけど……。
「……まさか……いやでもこれしか……」
僕はそれを手に取ると、教務課へと申請に向かった。
***
「――本日の緊急依頼は、図書の運搬作業です!」
図書館の前で、凜とした号令が響き渡る。
「……やっぱりヴェルグ先輩いるし」
「なんですかその顔は? 私と二人きりでは不満だと?」
むっ、と眉間に皺を寄せる獄炎卿様だ。
「そもそもこの依頼は報酬額が低い。なにが目的です?」
時間のない僕が、安い依頼を受けること自体が疑問のようだ。
……な、なんて言い訳したら……。
彼女も女王の
「答えなさい! それとも堂々と言えない理由でも!?」
高い身長から、高圧的に迫られる。
「それは……そのぉ……」
言いよどむ僕に、彼女は一層顔を近づける。
……相変わらず、えげつないくらい整った美少女顔だ。
怖い表情さえしてなければ、並の男なら簡単に惚れてしまいそうな――あ。
「ヴェ、ヴェルグ先輩に、会いたくて、ですね」
「私に会いたい? どういう意味です?」
報酬額を理由にしても説得力がない。
まして本が好きだからなんて言っても嘘くさい。
――だったら感情問題にすり変える。
これには絶対の正解はなく、だから無下に否定することもできまい。
「ヴェルグ先輩が、ずっと、気になっていて」
断じて嘘ではない。獄炎卿戦のためもあってここに来ている。
「……わ、私への好意ゆえに、わざわざ依頼を受けたと?」
やや赤面する先輩。激怖フェイスが崩れ始めたぞ。
「き、貴君の気持ちは尊重しますが……そんな露骨に迫られても……」
彼女は急に恥ずかしくなったのか、僕からさっと身を引く。
「嫌われ者同士、多少は共感しあえてもですね……」
「じゃ、そろそろ仕事始めましょうか」
「しかし私は女で、貴君は男、この身分の差はどうやっても……」
「あの、先輩……?」
風紀統括長様が乙女モードに突入。
でっかい身体でも、高潔で繊細なお心をお持ちなのだ。
「――い、いいでしょう、ひとまず納得してあげます!」
彼女はわざとらしく強気になって、話を締め括る。
「ただ業務中、破廉恥な行為は、絶対に許しませんからね?」
「……し、しませんよ!」
だってその瞬間、僕は撲殺されてゲームオーバーなんだから。
「では作業に入ります。具体的には――」
図書館の玄関口、屋根の下に置かれた箱の山。
本が詰まったその箱を、館内に運ぶという……まぁ今回も肉体労働だな。
「ところで、先輩は何でこの依頼を?」
「本来の搬入者を、別件でしょっぴいたのでその代わりです」
真面目で律儀で美少女。
あとは腕力さえセーブできれば……言うことなんだけどなぁ。
図書館の入館証を手に入れ、箱を各指定場所へ運び込んでいく。
――今が千載一遇のチャンス。
あえて指定場所が遠い箱を運んだ。
そして中身を取り出してから散策を開始。
「……まずは階級戦以外の戦い方、『決闘制度』について……」
前もって生徒手帳の規則も読んできた。
そこに『決闘制度』という謎の一文が記載されていたのだ。
ただ単語のみで詳細はなく……。
「……姫騎士学園の詳細要項、これかな」
ここで読む時間はないので、空いた箱の中に隠しておく。
しかしパクったことが即露見しては困る。
長らく誰も借りていないらしい、埃をかぶったものを選んでいく。
「……結婚とは違う、聖婚とやらについても……」
役立ちそうなことは片っ端から調べよう。
「……あとは過去の階級戦の記録……」
この学園の図書館は超巨大。
すさまじい量の本があるので、記録関係も収められているはずで……。
「…………やっぱり予想通り、あった」
彼女の年齢を逆算して年代を割り出す。
目当ての戦闘記録を見つけると、それも空箱に収めた。
「……きちんと後で返せば問題なしだ」
こっちは文字通り命がかかってるんだ。
申し訳ないが、多少の無断借用はどうか見逃してほしい。
「――やけに時間がかかりましたね」
箱を外に隠して戻ると、ヴェルグ先輩と鉢合わせる。
「……ええ、なにせ初めて来たので、道に迷って」
まるで迷宮のようです、と言い訳する。
「まったく。迅速にお願いしますよ」
すると彼女は、十個近い箱を一人で持ち上げる。
……一つでも結構重いのに、なんて馬鹿力……。
つくづく人間離れした身体性能だ。
「これらは全部同じ指定場所に運びます。二箱ほど余ってますが――」
「じゃあ、僕が持って一緒に運びます」
「助かります」
両手に箱を持ちすぎて、視界が完全に埋まった先輩。
彼女が箱を少し残したのは、僕に誘導してもらうためだろうか?
「――二つ星に、なったそうですね」
先導する僕に、先輩が厳かに呟く。
「自分のためでなく、誰かのために戦う……あのアドバイスのお陰です」
「はて。そんな助言をした記憶はありませんが」
あ、そっか、あれ独り言って設定でしたね。
「貴君を叩き潰せる機が高まり、喜ばしい限りです」
「……校則違反で、既に何度かぶっ飛ばされてますけど……」
「あれらを正当な戦いとは呼びません」
彼女はそう続けて。
「女王様への侮辱、私への破廉恥行為、貴君によって騎士の誇りを傷つけられた」
それを取り戻さなくてはいけない、と告げる。
「正面から真っ向勝負――姫騎士として、それを望みます」
そのために僕には六つ星になってほしい。
随分遠回しだけど、彼女の声にはそんな期待感があった。
「――……着きました。ここが指定場所みたいです」
僕は手元の二箱を置いて、先輩に振り返ると。
「なんかグラグラしてますけど、降ろすの手伝いますか……?」
「け、結構です! 私は七聖ですので!」
謎の強がり。腕力面では余裕みたいだけど。
丁寧に荷下ろし……細かい作業が苦手みたいだ。
「っ! どうですできましたよ! 侮ってもらっては困ります!」
全て降ろして、パッと自慢げな笑顔を見せる。
しかし積み上がった箱の一番上、それが――崩れた!?
彼女の頭へ向かって落下する。
「ヴェルグ先輩……っ!」
たとえ直撃しても、その屈強な身体ならノーダメージだろう。
なんならヘタに助けると二次事故に繋がる。
頭ではそう分かってる――が、気づけば身体が動いていた。
先輩を押し倒し、庇った僕が箱をくらう。
本が散らばる中で、互いの顔が急接近して――
「前回の瓦礫撤去の手伝いもそうですが……ま、また私を、助けてくれたのですか」
強者の女を、弱者の男が身を挺して庇う。
その事態に恥じたのか、それとも別の感情があったのか。
正解は分からないが、彼女の頬が朱に染まっていく。
「「…………」」
静寂の図書館、無言で見つめ合う。
もう一押し屈めば、簡単に唇同士が触れる距離だ。
「そこまで、私を、好いているのか……?」
先輩は姫騎士ではなく、少女としての顔を見せる。
僕が返す言葉に窮していると……。
「……騎士として、借りは、返さなくてはいけない」
前回の緊急依頼の手伝いは、
では、落下物から守られた今回はどうするのか。
「……私が敬愛するのは女王様だけ。貴君に恋をしているわけではありません」
ヴェルグ・モルドレイドは――目を瞑ることを選んだ。
「……今なら誰の目もありません。好きにしなさい」
キスをせがむように、やや突き出した唇を震わせる。
「せ、先輩、あの……」
「……貴君が気にしているこの胸も、ほ、ほんの少しなら……触れても、いい」
今だけ特別。まさに据え膳以外の何でもない状況。
日陰者でも僕は男。本能が刺激され嫌でも熱くなる。
「……ヴェルグ先輩」「……カゲルヤ」
互いの名を口にし、ゆっくりと唇を近づけて――
「「――――っ!」」
誰かの足音がして、二人してハッと飛び上がる。
どうやら近くに他の生徒がいるらしい。
「……さ、さて、わ、私は、他の仕事が、ありますので」
真っ赤になった先輩は、大慌ててで制服を整える。
「……この借りは、今度、必ず返しますから」
そう言い残すと、ものすごい早歩きで去って行ってしまう。
ぽつんと残された僕は……。
「ち、散らかった本を、片付けよう、かな」
平静になろうと、場当たりに作業を始める。
しかしどんなに没頭しても――僕の身体は、火傷したように熱かった。