姫騎士学園の下剋上性活 ~最弱スキルで異世界のプライド高め美少女たちを堕としたら、毎晩ご奉仕に来る日々が始まった~   作:東雲(しののめ)

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第16話:約束

 図書館から寮へ帰った後、拝借した本を読んでいた。

 

「……『王剣七聖』の制度、面白いな」

 

 これまでは七人の最強姫騎士がいる、ぐらいの認識。

 しかし今回で見識が深まった。

 実際に、本の一節を読み上げると。

 

「――学園内の権限を七等分して、王剣七聖に分配する――」

 

 するとヴェルグ先輩は、学園の一/七を自由にできるわけだ。

 

「極論、もし七聖全員が、僕の味方なら……」

 

 七/七の権力が集まり、姫騎士学園を完全自由にできる。

 女王の箱庭は崩壊――いや、それ以上の結果をもたらせるだろう。

 

「そんなの机上の空論……と、言いたいけど」

 

 かつて先輩が口にした『聖婚』という謎文化。

 正式には『主従聖婚』と呼ばれる儀式らしく……。

 

「…………これを使えば、可能になる、か?」

 

 脳内で攻略の方程式が築かれていく。

 新しい単語や概念が、今になって続々と出てきた状況。

 ぶっちゃけ混乱する。飲み込めない事も多い。

 

「……何にせよ、獄炎卿に勝たなきゃ始まらない」

 

 頭を振る。難しい話は後回しにしよう。

 まずは昇格を目指して、三つ星との階級戦に集中だ。

 

「……そろそろ学食行くか」

 

 まだ『決闘制度』についての本は読んでいないが、一旦腹ごしらえに。

 外に出ると、夜空のもと人気のない道を行く――

 

「……ヴェルグ先輩?」

「……カゲルヤ?」

 

 敷地内を歩いていると、風紀統括長様と遭遇する。

 

「「………………」」

 

 放課後の情事を思い出し、互いに言葉が続かない。

 立ち止まったのはいいものの、微妙な空気が流れる。

 

「……あれ」

 

 会話の糸口を探そうとした時。

 観察力を磨いてきた目が、とある異変を気づかせる。

 

「なんか……おめかし、してます?」

 

 きちんと着こなした制服はいつも通り。

 しかし髪が妙にツヤツヤしていて、形も一層整えられているような。

 

「う……わ、分かりますか?」

 

 細かすぎる変化で誰も気づいてくれないのに、と。

 彼女は強ばっていた顔を崩し、照れたように髪先をいじる。

 

「姫騎士とはいえ私も女性……貴君から見てどう、ですか?」

「どうと言われても、可愛い、ですけど」

「か、かわ……!」

 

 しまった。凜々しいとか美しいと表現するべきだったか。

 ……こういう時の選択、僕にはすごく難しい。

 ただ彼女は可愛いと言われ、満更でもなさそうにしていて。

 

「ふ、ふんっ! 貴君に誉められても微塵も嬉しくありません!」

 

 だが強情。にやけた顔で言われてもなぁ……。

 

「……これから、誰かと、会うんですか?」

 

 そこまで気合を入れていると、まさか男に会うとか?

 女尊男卑の世界、ありえないとは、思うけど……正直モヤッとして。

 

「とある男性と密会を――と言ったら?」

「え」

「ふふ。冗談ですよ。貴君をからかってみただけです」

 

 僕をビックリさせると、年頃の少女のような笑みを見せる。

 

「公式な招集なので、別に隠す必要はないのですが……」

 

 念のため小声でと、先輩が僕へと身を寄せてきて。

 ……う、腕に、でっかい胸が当たってる。

 本人無自覚なのか、柔肉がむにゅむにゅと押しつけられた。

 

「……詳しい内容は聞いていませんし、知っていても話しませんが……」

 

 耳元で、吐息混じりに囁かれる。

 誰かに見られたら、逢い引き中と勘違いされそうだ。

 

「――実は、女王様に招集を受けました」

 

 女王に? 先輩はこれから彼女に会いに行くと?

 

「……十中八九、僕がらみのこと、ですよね?」

「さて。先も言った通り招集理由は存じません」

 

 表情を観察するに、先輩は本当に知らないらしい。

 しかし母のように慕う女王と会うのだ。

 風紀に厳しい彼女が、精一杯のおめかしをしたのも納得できる。

 

「女王様に、一人前の姫騎士と認めてもらうのが、私の夢――」

 

 女王なくして、己に存在価値なしと結ぶ。

 こっちが不利になる会談をしそうで複雑だが……。

 嬉しそうな先輩を見ると、そう冷たいことは言えまい。

 

「そ、そういえば、先の図書館での一件ですが……」

 

 謁見の時間が近づいてきているのだろう。

 彼女は最後にと、中途半端に終わった情事を蒸し返す。

 

「私なりに、色々考えてますので、しばしお待ちを」

 

 色々って意味深な……一体どんな破廉恥を……。

 

「ただ、それは、重大な校則違反にあたる可能性があり……」

 

 誰にも他言はしてはいけませんよ、と確認される。

 

「も、もちろんです、先輩こそ……」

「これは私と貴君の問題です。女王様に報告するまでもありません」

 

 彼女も情事については口外しないと頷く。

 

「二人だけの秘密です――約束ですよ?」

 

 穏やかな、でも少しエッチな顔をして、彼女は微笑んだ。

 

          ***

 

 ――翌日の朝。

 

 教室へと向かう途中で、またも黄金髪の美少女を見つけた。

 ……最近はよく遭遇するなぁ。

 大前提は敵対関係だとしても、今や無視する間柄でもない。

 

 

「おはようございます、ヴェルグ先輩」

 

 礼儀にうるさい人だし、ちゃんと挨拶はしておく。

 

「………………」

 

 しかし不可思議。なぜかガン無視をされた。

 

「えっと、ヴェルグ先輩?」

 

 さらに声を掛けると、彼女は鋭い目で一瞥。

 

「――男がこの私に、気安く話しかけないでください」

 

 凍てつくような声音で切り捨てられる。

 昨日までの可愛さは微塵もない。

 

 ――圧倒的なまでの拒絶。

 

 それを体現した足取りで去る彼女を、僕は呆然と見つめるしかなった。

 

「…………気づかない内に、校則違反でもしたのか?」

 

 その変貌ぶりに困惑しつつ、僕は自分の教室へ訪れたのだが――

 

「――それでは、これよりホームルームを始めます」

 

 遅刻ギリギリでの登校。でも間に合った。

 

「おはよう、ございます」

 

 担任にも一応挨拶すると、彼女は僕を無言で見てから。

 

「まずは本日の連絡事項から――」

 

 こちらを完全無視して、事務報告を始めてしまう。

 ――転校初日は、本当に僕に気づかず話を始めたけど。

 今回は違う。分かった上でスルーを決め込んでいる。

 

「「「「「………………」」」」」

 

 クラスメイトたちもそうだ。

 教室のトップはカゲルヤ・ノアと承知してなお、無視して席に着いている感じだ。

 

「……一体なにが起きてる?」

 

 なら彼女はどうだと、後方の席に目をやる。

 手下のサンディとクルドはいるが……ウルズがいない?

 授業をサボる時は、三人一緒にサボるのが常なのに。

 

「…………ウルズは、どこに?」

 

 僕はサンディとクルドに尋ねるが――

 

「「…………っ」」

 

 二人は沈黙を貫くだけ。

 いいや違うな。微かに震えている。何かを恐怖する顔だ。

 

「――ウルズだけズルいな。良いサボり場があるなら教えてほしいのに」

 

 席についてわざとらしく独り言を呟く。

 するとサンディとクルドは、二人だけで会話を始める。

 

「……な、なんか授業めんどくさぁ、訓練場の裏とか行こうかなー」

「……ですねぇ、あ、あそこは、絶好のサボリ場ですもの」

 

 イジメっ娘三人組にだって友情はあるのだ。

 二人は会話の中で、ウルズの場所を教えてくれる。

 

「…………助かる」

 

 僕は小さくお礼を告げると走った。

 ここまでガン無視されていれば、授業もクソもない。

 

「――ウルズ!?」

 

 訓練場の裏に行くと、確かに彼女はいた。

 薄暗い影の中で、血だらけになって横たわっている。

 

「……なにし、に、きたの、よ」

「しゃ、喋らない方がいい。保健室に運ぶから」

「……よけいな、おせわ……がはっ……」

 

 いつもの生意気な台詞も、吐血によって口に出せない。

 構わずに背負って、保健室に直行するが。

 

「…………男子生徒、立入禁止?」

 

 そう書かれた紙が、扉に大きく張り出されている。

 頼みの綱であるゼゼ先生まで、僕を拒絶、した?

 

「……ろうか、に、おいて、いき、なさい」

 

 女子生徒だけなら入室もできるだろう。

 彼女も、扉の前からなら這っていけると告げる。

 

「……それより、きをつけ、なさい」

 

 そっと床に降ろすと、ウルズが途切れ途切れに忠告する。

 

「……ごく、えん、きょう、よ」

 

「獄炎卿? ヴェルグ先輩? どういう――」

 

 その時、彼方から巨大な爆発音がした。

 窓に近寄って確認すると、学園外から炎と煙が上がっている。

 

「あの方角には……」

 

 男たちの収容所が、ある。

 

「まさか、いやそんな、ヴェルグ先輩が……」

 

 ウルズを一瞥すると『行け』と視線で言われる。

 僕は嫌な予感をさせながら、収容所へと走るのだった。

 

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