姫騎士学園の下剋上性活 ~最弱スキルで異世界のプライド高め美少女たちを堕としたら、毎晩ご奉仕に来る日々が始まった~ 作:東雲(しののめ)
図書館から寮へ帰った後、拝借した本を読んでいた。
「……『王剣七聖』の制度、面白いな」
これまでは七人の最強姫騎士がいる、ぐらいの認識。
しかし今回で見識が深まった。
実際に、本の一節を読み上げると。
「――学園内の権限を七等分して、王剣七聖に分配する――」
するとヴェルグ先輩は、学園の一/七を自由にできるわけだ。
「極論、もし七聖全員が、僕の味方なら……」
七/七の権力が集まり、姫騎士学園を完全自由にできる。
女王の箱庭は崩壊――いや、それ以上の結果をもたらせるだろう。
「そんなの机上の空論……と、言いたいけど」
かつて先輩が口にした『聖婚』という謎文化。
正式には『主従聖婚』と呼ばれる儀式らしく……。
「…………これを使えば、可能になる、か?」
脳内で攻略の方程式が築かれていく。
新しい単語や概念が、今になって続々と出てきた状況。
ぶっちゃけ混乱する。飲み込めない事も多い。
「……何にせよ、獄炎卿に勝たなきゃ始まらない」
頭を振る。難しい話は後回しにしよう。
まずは昇格を目指して、三つ星との階級戦に集中だ。
「……そろそろ学食行くか」
まだ『決闘制度』についての本は読んでいないが、一旦腹ごしらえに。
外に出ると、夜空のもと人気のない道を行く――
「……ヴェルグ先輩?」
「……カゲルヤ?」
敷地内を歩いていると、風紀統括長様と遭遇する。
「「………………」」
放課後の情事を思い出し、互いに言葉が続かない。
立ち止まったのはいいものの、微妙な空気が流れる。
「……あれ」
会話の糸口を探そうとした時。
観察力を磨いてきた目が、とある異変を気づかせる。
「なんか……おめかし、してます?」
きちんと着こなした制服はいつも通り。
しかし髪が妙にツヤツヤしていて、形も一層整えられているような。
「う……わ、分かりますか?」
細かすぎる変化で誰も気づいてくれないのに、と。
彼女は強ばっていた顔を崩し、照れたように髪先をいじる。
「姫騎士とはいえ私も女性……貴君から見てどう、ですか?」
「どうと言われても、可愛い、ですけど」
「か、かわ……!」
しまった。凜々しいとか美しいと表現するべきだったか。
……こういう時の選択、僕にはすごく難しい。
ただ彼女は可愛いと言われ、満更でもなさそうにしていて。
「ふ、ふんっ! 貴君に誉められても微塵も嬉しくありません!」
だが強情。にやけた顔で言われてもなぁ……。
「……これから、誰かと、会うんですか?」
そこまで気合を入れていると、まさか男に会うとか?
女尊男卑の世界、ありえないとは、思うけど……正直モヤッとして。
「とある男性と密会を――と言ったら?」
「え」
「ふふ。冗談ですよ。貴君をからかってみただけです」
僕をビックリさせると、年頃の少女のような笑みを見せる。
「公式な招集なので、別に隠す必要はないのですが……」
念のため小声でと、先輩が僕へと身を寄せてきて。
……う、腕に、でっかい胸が当たってる。
本人無自覚なのか、柔肉がむにゅむにゅと押しつけられた。
「……詳しい内容は聞いていませんし、知っていても話しませんが……」
耳元で、吐息混じりに囁かれる。
誰かに見られたら、逢い引き中と勘違いされそうだ。
「――実は、女王様に招集を受けました」
女王に? 先輩はこれから彼女に会いに行くと?
「……十中八九、僕がらみのこと、ですよね?」
「さて。先も言った通り招集理由は存じません」
表情を観察するに、先輩は本当に知らないらしい。
しかし母のように慕う女王と会うのだ。
風紀に厳しい彼女が、精一杯のおめかしをしたのも納得できる。
「女王様に、一人前の姫騎士と認めてもらうのが、私の夢――」
女王なくして、己に存在価値なしと結ぶ。
こっちが不利になる会談をしそうで複雑だが……。
嬉しそうな先輩を見ると、そう冷たいことは言えまい。
「そ、そういえば、先の図書館での一件ですが……」
謁見の時間が近づいてきているのだろう。
彼女は最後にと、中途半端に終わった情事を蒸し返す。
「私なりに、色々考えてますので、しばしお待ちを」
色々って意味深な……一体どんな破廉恥を……。
「ただ、それは、重大な校則違反にあたる可能性があり……」
誰にも他言はしてはいけませんよ、と確認される。
「も、もちろんです、先輩こそ……」
「これは私と貴君の問題です。女王様に報告するまでもありません」
彼女も情事については口外しないと頷く。
「二人だけの秘密です――約束ですよ?」
穏やかな、でも少しエッチな顔をして、彼女は微笑んだ。
***
――翌日の朝。
教室へと向かう途中で、またも黄金髪の美少女を見つけた。
……最近はよく遭遇するなぁ。
大前提は敵対関係だとしても、今や無視する間柄でもない。
「おはようございます、ヴェルグ先輩」
礼儀にうるさい人だし、ちゃんと挨拶はしておく。
「………………」
しかし不可思議。なぜかガン無視をされた。
「えっと、ヴェルグ先輩?」
さらに声を掛けると、彼女は鋭い目で一瞥。
「――男がこの私に、気安く話しかけないでください」
凍てつくような声音で切り捨てられる。
昨日までの可愛さは微塵もない。
――圧倒的なまでの拒絶。
それを体現した足取りで去る彼女を、僕は呆然と見つめるしかなった。
「…………気づかない内に、校則違反でもしたのか?」
その変貌ぶりに困惑しつつ、僕は自分の教室へ訪れたのだが――
「――それでは、これよりホームルームを始めます」
遅刻ギリギリでの登校。でも間に合った。
「おはよう、ございます」
担任にも一応挨拶すると、彼女は僕を無言で見てから。
「まずは本日の連絡事項から――」
こちらを完全無視して、事務報告を始めてしまう。
――転校初日は、本当に僕に気づかず話を始めたけど。
今回は違う。分かった上でスルーを決め込んでいる。
「「「「「………………」」」」」
クラスメイトたちもそうだ。
教室のトップはカゲルヤ・ノアと承知してなお、無視して席に着いている感じだ。
「……一体なにが起きてる?」
なら彼女はどうだと、後方の席に目をやる。
手下のサンディとクルドはいるが……ウルズがいない?
授業をサボる時は、三人一緒にサボるのが常なのに。
「…………ウルズは、どこに?」
僕はサンディとクルドに尋ねるが――
「「…………っ」」
二人は沈黙を貫くだけ。
いいや違うな。微かに震えている。何かを恐怖する顔だ。
「――ウルズだけズルいな。良いサボり場があるなら教えてほしいのに」
席についてわざとらしく独り言を呟く。
するとサンディとクルドは、二人だけで会話を始める。
「……な、なんか授業めんどくさぁ、訓練場の裏とか行こうかなー」
「……ですねぇ、あ、あそこは、絶好のサボリ場ですもの」
イジメっ娘三人組にだって友情はあるのだ。
二人は会話の中で、ウルズの場所を教えてくれる。
「…………助かる」
僕は小さくお礼を告げると走った。
ここまでガン無視されていれば、授業もクソもない。
「――ウルズ!?」
訓練場の裏に行くと、確かに彼女はいた。
薄暗い影の中で、血だらけになって横たわっている。
「……なにし、に、きたの、よ」
「しゃ、喋らない方がいい。保健室に運ぶから」
「……よけいな、おせわ……がはっ……」
いつもの生意気な台詞も、吐血によって口に出せない。
構わずに背負って、保健室に直行するが。
「…………男子生徒、立入禁止?」
そう書かれた紙が、扉に大きく張り出されている。
頼みの綱であるゼゼ先生まで、僕を拒絶、した?
「……ろうか、に、おいて、いき、なさい」
女子生徒だけなら入室もできるだろう。
彼女も、扉の前からなら這っていけると告げる。
「……それより、きをつけ、なさい」
そっと床に降ろすと、ウルズが途切れ途切れに忠告する。
「……ごく、えん、きょう、よ」
「獄炎卿? ヴェルグ先輩? どういう――」
その時、彼方から巨大な爆発音がした。
窓に近寄って確認すると、学園外から炎と煙が上がっている。
「あの方角には……」
男たちの収容所が、ある。
「まさか、いやそんな、ヴェルグ先輩が……」
ウルズを一瞥すると『行け』と視線で言われる。
僕は嫌な予感をさせながら、収容所へと走るのだった。