姫騎士学園の下剋上性活 ~最弱スキルで異世界のプライド高め美少女たちを堕としたら、毎晩ご奉仕に来る日々が始まった~ 作:東雲(しののめ)
『一一発――』『一二発――』『一三発――』『
殴られて嗚咽する音と、女王の愉しそうなカウントだけが響く。
バキッ! 二〇発目を越えたところで肋骨が折れた。
僕は必死に痛みに耐え、何度も立ち上がる。
「……失望、です、よ」
血反吐と共に、眼前の獄炎卿に舌鋒を吐く。
「……こんな嫌がらせに、なんの、意味があるん、だか」
彼女自身だって、他生徒から散々嫌がらせを受けてきたろうに。
なのに今度は、自分がする側か。
「……はっ、姫騎士は、常に、正々堂々たれ?」
「黙ってください」
「……命令されたら、抗わず、簡単に信念を、曲げるのに」
「黙れ」
「……これで、なにが、一人前の姫騎士になる、だ」
「黙れと言っているッッッ!」
彼女の剛拳が、顔面をモロに殴る。
奥歯が砕けた音がして、そのまま地面に叩きつけれた。
「わ――私は、女王様に、認めてもらえればそれでいい!」
空に段々と雲がかかり、雷鳴が鳴り始める。
「……どんな手段でも、勝てば、いいんです、もんね」
騎士道精神を捨てようが燃やそうが。
僕を一方的に殴り殺すことで、手に入るものがあるからそうする。
「……常識も倫理もない世界、ルール的に、文句はないけど」
ノロノロと起き上がり、腫れ上がった目で相手を穿つ。
理屈を抜きにして、一つだけ言えるとしたら――
「結局あんたも、女王と一緒、最低の、クズ女だ」
「……ッッッッ!」
唇を噛みしめた獄炎卿が、また拳を振り上げる。
そうして一方的な撲殺が続き――
『――っぷ! ふはは! ふはははははははははははは!』
ほぼ死体同然の僕に、女王は大爆笑。
骨折複数、出血多数、己の血でできた水溜まりに倒れて動けない。
『今ので百発目だ。まさか生き延びるとはなぁ』
僕の無残な姿に、女王やその部下は大満足。
見守ることしかできない男たちは、涙を流しながら俯くしかない。
『よくやったヴェルグ。いやそなたには簡単すぎた仕事か』
「……いえ、お褒めにあずかり光栄の至りです」
映像の主に傅き、獄炎卿は頭を垂れる。
『カゲルヤ。残された期間はあと僅か。階級戦頑張らんとなぁ』
「……ぅ……」
『だがその身体ではもう無理か。いっそここで余に降参(ごめんなさい)するか?』
ゲラゲラと爆笑をする女王。
『――さてと、特別指導はここまでとしようか。ほら撤収せい』
女王が手を叩くと、部下たちが剣を収め引き上げていく。
「…………カゲルヤ……」
獄炎卿は僕を一瞥するが、諦めたように去って行った。
ここで収容者たちの一部が、ようやく僕を助けられると動くが。
「――おい男ども! 貴様らも今すぐ戻れ!」
誰もカゲルヤ・ノアを助けるな、と女騎士たちが警告。
男たちは恐怖で止まり、それでもと僕を見るが……。
「……ぃぃ……」
光の見えない眼で『構うな』と告げる。
彼らは悔しそうに、何度も頭を下げて去って行く。
いまやこの地獄に残ったのは、僕一人だけ。
「…………っ……」
次第に雨が降り出す。土砂降りだ。
それは周囲の残り火を消すが、同時に僕をずぶ濡れにした。
地面に這いつくばったまま、一時間二時間三時間と動けず――
「…………うぅ……」
はたして何時間経ったか、朦朧とした意識で考える。
雨は降り続いていて、身体が寒くて重たい。
――なにを、やってるんだ、僕は。
学園に戻らなきゃ。階級戦をやらなきゃ。
「…………いや、むり、か……」
この身体では満足に動けない。
まして今日予定していた階級戦もおじゃん。
残された二日間で、三つ星から六つ星までに勝って、七聖挑戦など――不可能だ。
「ここでも、惨めだな、僕は……」
誰も倒せない女王を倒せば、人生が大逆転できる。
異世界に来て、困惑しつつも戦えたのは、そんな希望があったから。
「……これが、現実、強いヤツがちょっと命じれば何もできない」
結局、僕は子供の時から変わらず、ひとりぼっちで弱いままだ。
教室での居場所をなくした。
頼りのゼゼ先生も会えない。
収容所にいる男性たちとも、今後は接触するべきではないだろう。
なにより、ヴェルグ・モルドレイドとの関係も……終わった。
「……僕は平凡な上に、無力、か」
絶望と孤独を忘れるように、意識がまた暗転を迎えた。
「――……はぁ……はぁ……くそ重いわねぇ……!」
深夜に目を覚ますと、僕は誰かに背負われていた。
その人物は、雨の中で息を切らしながら、学園へと向かっている。
「……ウル、ズ……?」
血だらけの僕を背負っていたのは知己の美少女。
「……なん、で……」
「なんで? 今朝の借りを返しに……って言ってもつまんないか」
自身も包帯だらけなのに、得意げに肩を竦める。
それから彼女は闇の空を見て、意地悪そうに笑う。
「たまに夜遊びでもしようかなって、そう思っただけよ」
***
「――どっこいしょっと!」
ウルズに背負われて、寮の自室に到着する。
濡れた服から着替えさせられ、ベッドへと放り込まれる。
「……助けたの、見つかったら、まずいんじゃないか……」
「助けてない。さっきも言ったけど夜遊びしてたら、偶然あんたを拾っただけ」
彼女はずぶ濡の髪をかき上げる。
「人目につかないよう運んだし、あんたが余計なこと言わなきゃ大丈夫よ」
さすがはサボり魔娘というか。
誰にも見つからない道を選んで、ここまで連れきてくれた。
「……体調は、もう、いいのか?」
「そっちの方が重傷でしょうが。あたしは問題な……つぅぅ!」
いたたたた、と脇腹を押さえる。
やはり怪我を無視して、駆けつけてくれたらしい。
「……じゃ、もう行くから」
「ウルズ」
かすれた声で、去ろうとする彼女を呼び止める。
「…………主従聖婚って、知ってるか?」
「はぁ? 聖婚? なによ突然?」
首を傾げつつも、当然知っていると相づちを打ってくる。
「学園卒業時に行う大儀式よ。女王様と契約して正式な姫騎士になるの」
契約を結べば、従者は主君に絶対服従。
つまり今後の人生を、女王に捧げことになる。
「卒業した時の階級に応じて、与えられる立場や仕事は変わってくるけどね。だからあたしたちは階級を一つでもあげようして――って、それがなに?」
どうせ一生従うなら、少しでも良い待遇を得たい。
階級戦は、彼女たちにとっては就職活動のようなもの――
「……学園の生徒が、僕と聖婚するって、ありえる、か?」
男に一生従うなど、出世コースを外れる蛮行。
それを分かった上でそう尋ねると、彼女は目を点にする。
「あ、あたしに、プロポーズしてるわけ?」
「……いや、そういうわけじゃ……」
「あんた殴られすぎて、さらに頭おかしくなってるわ」
……その言い方だと、元からおかしいみたいだぞ。
「結論としては、百パー不可能ね」
「僕は、ウルズに、勝ってる、勝者が全てを手に入れるなら……」
「無理よ。だってあくまで絶対勝者は女王様だもの」
学園は最強女王の箱庭だ。
階級戦で勝った負けたをしても、それはあくまで彼女の掌の上でのこと。
「勝てば大抵のものは手に入る。でも頂点たる女王様を害すること――聖婚していずれ所有物になるあたしたちを、横取りするような真似は許されない」
それが全生徒の共通認識だという。
「もし許されるとしたら、それこそ女王様に勝つしかないわ」
彼女は手を顎にあて考える。
「あるいは……聖婚したい生徒と『決闘』して……いや流石に無理か……」
決闘制度。
そうだ。色々あって後回しになってしまったけど。
机に置いてある、まだ未読の学園要項の本を思い出す。
「とにかく絶対不可能。あたしにプロポーズしたいなら来世に期待ね」
「……意外だ、来世なら、検討してくれるんだ」
「っ! うっさいわね! 怪我人はもう寝なさい!」
彼女はやや頬を赤らめ、早足で部屋を去ってしまう。
「……決闘……」
あの本の中に、この状況を打開するヒントがあるかも。
しかし取りに向かいたいが、激しい痛みに身動きがとれない。
床に手をつき、這ってでも行こうとするが……。
「…………あれ?」
ベッドの下、指先が何かを掠める。
寝返りを打ち、なんとか引っ張ると謎の紙袋が。
『明日の正午に話し合いを待たれたし。ゼゼ。』
袋を開けると、その短いメッセージが入っていた。
他には鎮痛剤や解熱剤、怪しい栄養ドリンクなども入っている。
「……先生の方も、状況が、悪そうだ」
保健室の『男子は立入禁止』の張り紙もそう。
女王の締め付けが強くなり、こういう形でコンタクトを取ったのだ。
「……とりあず、全部、飲んどくか」
絶体絶命の状況だが、それでも簡単には死ねない。
不味すぎる栄養ドリンクで薬を流し込むと――
「――……あれ、少し、寝てた?」
薬で眠気を誘われたのか、一時間ほど眠っていたらしい。
疲労困憊で満身創痍、正しくは気絶したと言うべきかも。
「……でも、身体はちょっと楽に、なったような」
ダメージの蓄積に加え、骨が折れているのだ。
発熱も覚悟してたけど、薬が効いたのかな。
それでも身体は重く、ほとんど身動きできな――
「…………!」
コンコンと、外から扉を叩く音がした。
もしかしてゼゼ先生か? それともウルズが戻ってきた?
「……鍵、開いてます」
ウルズは慌てて去ったので、締め忘れているのだ。
僕はベッドの上から、弱々しい声で応える。
「――失礼します」
現れたのは予想外、黄金髪の姫騎士であった。