姫騎士学園の下剋上性活 ~最弱スキルで異世界のプライド高め美少女たちを堕としたら、毎晩ご奉仕に来る日々が始まった~   作:東雲(しののめ)

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第18話:カゲルヤ・ノア

『一一発――』『一二発――』『一三発――』『

 

 殴られて嗚咽する音と、女王の愉しそうなカウントだけが響く。

 バキッ! 二〇発目を越えたところで肋骨が折れた。

 僕は必死に痛みに耐え、何度も立ち上がる。

 

「……失望、です、よ」

 

 血反吐と共に、眼前の獄炎卿に舌鋒を吐く。

 

「……こんな嫌がらせに、なんの、意味があるん、だか」

 

 彼女自身だって、他生徒から散々嫌がらせを受けてきたろうに。

 なのに今度は、自分がする側か。

 

「……はっ、姫騎士は、常に、正々堂々たれ?」

「黙ってください」

「……命令されたら、抗わず、簡単に信念を、曲げるのに」

「黙れ」

「……これで、なにが、一人前の姫騎士になる、だ」

「黙れと言っているッッッ!」

 

 彼女の剛拳が、顔面をモロに殴る。

 奥歯が砕けた音がして、そのまま地面に叩きつけれた。

 

「わ――私は、女王様に、認めてもらえればそれでいい!」

 

 空に段々と雲がかかり、雷鳴が鳴り始める。

 

「……どんな手段でも、勝てば、いいんです、もんね」

 

 騎士道精神を捨てようが燃やそうが。

 僕を一方的に殴り殺すことで、手に入るものがあるからそうする。

 

「……常識も倫理もない世界、ルール的に、文句はないけど」

 

 ノロノロと起き上がり、腫れ上がった目で相手を穿つ。

 理屈を抜きにして、一つだけ言えるとしたら――

 

「結局あんたも、女王と一緒、最低の、クズ女だ」

「……ッッッッ!」

 

 唇を噛みしめた獄炎卿が、また拳を振り上げる。

 そうして一方的な撲殺が続き――

 

『――っぷ! ふはは! ふはははははははははははは!』

 

 ほぼ死体同然の僕に、女王は大爆笑。

 骨折複数、出血多数、己の血でできた水溜まりに倒れて動けない。

 

『今ので百発目だ。まさか生き延びるとはなぁ』

 

 僕の無残な姿に、女王やその部下は大満足。

 見守ることしかできない男たちは、涙を流しながら俯くしかない。

 

『よくやったヴェルグ。いやそなたには簡単すぎた仕事か』

「……いえ、お褒めにあずかり光栄の至りです」

 

 映像の主に傅き、獄炎卿は頭を垂れる。

 

『カゲルヤ。残された期間はあと僅か。階級戦頑張らんとなぁ』

「……ぅ……」

『だがその身体ではもう無理か。いっそここで余に降参(ごめんなさい)するか?』

 

 ゲラゲラと爆笑をする女王。

 

『――さてと、特別指導はここまでとしようか。ほら撤収せい』

 

 女王が手を叩くと、部下たちが剣を収め引き上げていく。

 

「…………カゲルヤ……」

 

獄炎卿は僕を一瞥するが、諦めたように去って行った。

ここで収容者たちの一部が、ようやく僕を助けられると動くが。

 

「――おい男ども! 貴様らも今すぐ戻れ!」

 

 誰もカゲルヤ・ノアを助けるな、と女騎士たちが警告。

 男たちは恐怖で止まり、それでもと僕を見るが……。

 

「……ぃぃ……」

 

 光の見えない眼で『構うな』と告げる。

 彼らは悔しそうに、何度も頭を下げて去って行く。

 いまやこの地獄に残ったのは、僕一人だけ。

 

「…………っ……」

 

 次第に雨が降り出す。土砂降りだ。

 それは周囲の残り火を消すが、同時に僕をずぶ濡れにした。

 地面に這いつくばったまま、一時間二時間三時間と動けず――

 

「…………うぅ……」

 

 はたして何時間経ったか、朦朧とした意識で考える。

 雨は降り続いていて、身体が寒くて重たい。

 ――なにを、やってるんだ、僕は。

 学園に戻らなきゃ。階級戦をやらなきゃ。

 

「…………いや、むり、か……」

 

 この身体では満足に動けない。

 まして今日予定していた階級戦もおじゃん。

 残された二日間で、三つ星から六つ星までに勝って、七聖挑戦など――不可能だ。

 

「ここでも、惨めだな、僕は……」

 

 誰も倒せない女王を倒せば、人生が大逆転できる。

 異世界に来て、困惑しつつも戦えたのは、そんな希望があったから。

 

「……これが、現実、強いヤツがちょっと命じれば何もできない」

 

 結局、僕は子供の時から変わらず、ひとりぼっちで弱いままだ。

 教室での居場所をなくした。

 頼りのゼゼ先生も会えない。

 収容所にいる男性たちとも、今後は接触するべきではないだろう。

 なにより、ヴェルグ・モルドレイドとの関係も……終わった。

 

「……僕は平凡な上に、無力、か」

 

 絶望と孤独を忘れるように、意識がまた暗転を迎えた。

 

 

 

「――……はぁ……はぁ……くそ重いわねぇ……!」

 

 深夜に目を覚ますと、僕は誰かに背負われていた。

 その人物は、雨の中で息を切らしながら、学園へと向かっている。 

 

「……ウル、ズ……?」

 

 血だらけの僕を背負っていたのは知己の美少女。

 

「……なん、で……」

「なんで? 今朝の借りを返しに……って言ってもつまんないか」

 

 自身も包帯だらけなのに、得意げに肩を竦める。

 それから彼女は闇の空を見て、意地悪そうに笑う。

 

「たまに夜遊びでもしようかなって、そう思っただけよ」

 

***

 

「――どっこいしょっと!」

 

 ウルズに背負われて、寮の自室に到着する。

 濡れた服から着替えさせられ、ベッドへと放り込まれる。

 

「……助けたの、見つかったら、まずいんじゃないか……」

「助けてない。さっきも言ったけど夜遊びしてたら、偶然あんたを拾っただけ」

 

 彼女はずぶ濡の髪をかき上げる。

 

「人目につかないよう運んだし、あんたが余計なこと言わなきゃ大丈夫よ」

 

 さすがはサボり魔娘というか。

 誰にも見つからない道を選んで、ここまで連れきてくれた。

 

「……体調は、もう、いいのか?」

「そっちの方が重傷でしょうが。あたしは問題な……つぅぅ!」

 

 いたたたた、と脇腹を押さえる。

 やはり怪我を無視して、駆けつけてくれたらしい。

 

「……じゃ、もう行くから」

「ウルズ」

 

 かすれた声で、去ろうとする彼女を呼び止める。

 

「…………主従聖婚って、知ってるか?」

「はぁ? 聖婚? なによ突然?」

 

 首を傾げつつも、当然知っていると相づちを打ってくる。

 

「学園卒業時に行う大儀式よ。女王様と契約して正式な姫騎士になるの」

 

 契約を結べば、従者は主君に絶対服従。

 つまり今後の人生を、女王に捧げことになる。

 

「卒業した時の階級に応じて、与えられる立場や仕事は変わってくるけどね。だからあたしたちは階級を一つでもあげようして――って、それがなに?」

 

 どうせ一生従うなら、少しでも良い待遇を得たい。

 階級戦は、彼女たちにとっては就職活動のようなもの――

 

「……学園の生徒が、僕と聖婚するって、ありえる、か?」

 

 男に一生従うなど、出世コースを外れる蛮行。

 それを分かった上でそう尋ねると、彼女は目を点にする。

 

「あ、あたしに、プロポーズしてるわけ?」

「……いや、そういうわけじゃ……」

「あんた殴られすぎて、さらに頭おかしくなってるわ」

 

 ……その言い方だと、元からおかしいみたいだぞ。

 

「結論としては、百パー不可能ね」

「僕は、ウルズに、勝ってる、勝者が全てを手に入れるなら……」

「無理よ。だってあくまで絶対勝者は女王様だもの」

 

 学園は最強女王の箱庭だ。

 階級戦で勝った負けたをしても、それはあくまで彼女の掌の上でのこと。

 

「勝てば大抵のものは手に入る。でも頂点たる女王様を害すること――聖婚していずれ所有物になるあたしたちを、横取りするような真似は許されない」

 

 それが全生徒の共通認識だという。

 

「もし許されるとしたら、それこそ女王様に勝つしかないわ」

 

 彼女は手を顎にあて考える。

 

「あるいは……聖婚したい生徒と『決闘』して……いや流石に無理か……」

 

 決闘制度。

 そうだ。色々あって後回しになってしまったけど。

 机に置いてある、まだ未読の学園要項の本を思い出す。

 

「とにかく絶対不可能。あたしにプロポーズしたいなら来世に期待ね」

「……意外だ、来世なら、検討してくれるんだ」

「っ! うっさいわね! 怪我人はもう寝なさい!」

 

 彼女はやや頬を赤らめ、早足で部屋を去ってしまう。

 

「……決闘……」

 

 あの本の中に、この状況を打開するヒントがあるかも。

 しかし取りに向かいたいが、激しい痛みに身動きがとれない。

 床に手をつき、這ってでも行こうとするが……。

 

「…………あれ?」

 

 ベッドの下、指先が何かを掠める。

 寝返りを打ち、なんとか引っ張ると謎の紙袋が。

 

『明日の正午に話し合いを待たれたし。ゼゼ。』

 

 袋を開けると、その短いメッセージが入っていた。

 他には鎮痛剤や解熱剤、怪しい栄養ドリンクなども入っている。

 

「……先生の方も、状況が、悪そうだ」

 

 保健室の『男子は立入禁止』の張り紙もそう。

 女王の締め付けが強くなり、こういう形でコンタクトを取ったのだ。

 

「……とりあず、全部、飲んどくか」

 

 絶体絶命の状況だが、それでも簡単には死ねない。

 不味すぎる栄養ドリンクで薬を流し込むと――

 

 

 

「――……あれ、少し、寝てた?」

 

 薬で眠気を誘われたのか、一時間ほど眠っていたらしい。

 疲労困憊で満身創痍、正しくは気絶したと言うべきかも。

 

「……でも、身体はちょっと楽に、なったような」

 

 ダメージの蓄積に加え、骨が折れているのだ。

 発熱も覚悟してたけど、薬が効いたのかな。

 それでも身体は重く、ほとんど身動きできな――

 

「…………!」

 

 コンコンと、外から扉を叩く音がした。

 もしかしてゼゼ先生か? それともウルズが戻ってきた?

 

「……鍵、開いてます」

 

 ウルズは慌てて去ったので、締め忘れているのだ。

 僕はベッドの上から、弱々しい声で応える。

 

「――失礼します」

 

 現れたのは予想外、黄金髪の姫騎士であった。

 

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