姫騎士学園の下剋上性活 ~最弱スキルで異世界のプライド高め美少女たちを堕としたら、毎晩ご奉仕に来る日々が始まった~   作:東雲(しののめ)

22 / 24
第19話:決意

「ヴェルグ、先輩……?」

 

 制服の肩にトートバックを持って現れた美少女。

 首だけを持ち上げ、ベッドの傍らに来た彼女を見上げる。

 

「……なにしに、来たん、ですか」

「約束を、果たしに来ました」

 

 彼女が言っているのは、図書館で中途半端に終わった情事のこと。

 誰にも口外しないと約束をした一件だろう。

 彼女はそれを完遂するために来たらしいが……。

 

「……もう今更、いいですよ、そんなこと」

 

 散々殴られて、こっちも嫌気が来ている。

 

「し、しかしですね……」

「実際は、秘密になんてせず、女王にも告げ口してるんでしょう?」

「そ、そんなわけ……!」

 

 女王は関係ないと、獄炎卿は首を横に振る。

 

「これは私と貴君だけの問題です!」

「……どうだか。女王に言われてまた襲いに来たんでは?」

「ち、違っ――!」

 

 知っていた。人を簡単に信用するなと。

 ……ほだされそうになってた、どうかしてたんだ僕は。

 彼女は完全に敵なんだ。まともに応じる必要はない。

 

「わ、私は、貴君に礼をせねばと思って……」

「また騎士道が云々ですか? でも捨てたんですよねそれ?」

 

 女王に命じられれば、喜んで殺戮ショーも手伝う。

 老人だろうと、子供だろうと、男は劣等種として一掃するのだ。

 

「……私は、ただ、女王様に……」

 

 彼女は悔しそうに拳を握り込み、俯いてしまう。

 

「良かったじゃないですか。大好きなご主人様に誉めてもらえて」

 

 そう告げると、なぜか泣きそうな目をされる。

 ……もう、早くいなくなってほしい。

 

「私を、嫌いになりましたか……?」

 

 初めて異性に告白する時みたいに。

 緊張で怖さいっぱいという表情で尋ねられる。

 

「虫のいい話ですが、もしも、ほんの少しでも、貴君の中にまだ私を――」

 

 いい加減にしつこいと思う。何がしたいんだこの人は。

 彼女の言葉を遮り、苛立った僕はつい言ってしまう。

 

「嫌いになる? 敵同士なんだから、最初から大嫌いですよ」

「――――っ!」

 

 彼女はすごく悲しそうな顔をして、それから力なく微笑む。

 

「……そ、そうです、よね……分かって、いました……」

 

 馬鹿らしい。まるで失恋でもしたいみたな落ち込みだ。

 

「……ですが、やはり約束は、果たしたいのです」

 

 彼女は肩のトートバック、色々詰め込んだらしいそれを握りしめる。

 

「男性に、いえ貴君に、喜んでほしくて勉強をしてきました」

 

 情事の続きをしたい、と健気に発す。

 

「そのための道具を揃えていたら、こういう状況になってしまって……」

「あの」

「湯浴みは済ませてきました! けして時間も手間も取らせません!」

「ですから」

「今日だけは校則違反もないです。望むなら何度でも接吻しますし、好きなだけ胸も触ってください。は、破廉恥は苦手ですが、それでも満足してもらえるように――」

「先輩!」

 

 必死に明るく振る舞う彼女に、もういいですと返す。

 

「帰って、ください」

 

 こんなことしたって、何の意味もない。

 

「………………わ、分かり、ました」

 

 獄炎卿は弱々しく頷いた。

 

「最後に、実は食べ物や水も持って来たんです、せめて……」

 

 一縷の望みにかけるように声をうわずらせるが。

 

「……いえ、いらない、ですよね、何でもありません」

 

 信用がない相手。まして敵からの食料を食べるマヌケはいない。

 彼女もそれを理解して、バックを摑む手を緩める。

 

「お邪魔しました。帰ります……」

 

 大きな身体なのに、とても小さな挨拶で踵を返す。

 

「……貴君は男、そして私は男が嫌いです」

 

 しかし扉のドアノブを回した時、少女は一瞬立ち止まって。

 

「ですが」

 

 けして振り返らず、静かに告げてから去って行く。

 

「カゲルヤ・ノアのことは――好きでした」

 

          ***

 

 本当は分かっているんだ。

 ヴェルグ先輩が、喜んで人を傷つけるわけがないって。

 

 ――収容所で殴られていた時、僕よりずっと辛そうな顔をしていた。

 

 女王に救われ、女王に認めれたい一心。

 皆に忌避されても、彼女の元でしか存在価値を見いだせない。

 

 ――僕も同じだ。迷宮攻略しかなかった。

 

 もしも逆の立場だったら、僕も彼女を百発殴っていたかもしれない。

 

「……っ……」

 

 とっくに身体は限界、それでも気持ちで立ち上がれた。

 ベッドを飛び出して、扉の先に消えた人を追う。

 

「……こんなこと、無意味なはずなのに……」

 

 昔の僕だったら寝てやりすごす。

 好きって言われたからなんだ。

 女の言葉なんか信用できないぞって。

 

「……でも……」

 

 言い過ぎた。意地悪な言葉を吐いた自覚はある。

 モヤモヤして、イライラして、つい感情的に当たってしまった。

 

「……ヴェルグ、先輩!」

 

 裸足のまま走って、彼女の名前を呼ぶ。

 

「カゲルヤ……!?」

 

 間に合った。目の前まで来てくれた彼女と見つめ合って――

 

「……これで、いいんですか?」

 

 本当に騎士道、捨てるんですか。

 この世界に五万といる、普通の女と一緒に、なっちゃうんですか。

 

「……あの極悪女王に、人生を捧げることが、あなたの正解なんですか?」

 

 それで幸せだというのなら、もう何も言わない。

 

「僕は、今の先輩は嫌いですけど」

 

 彼女の別れ際の台詞に、僕も同じように返事をしよう。

 

「前の先輩は……好きでした」

 

 清く、正しく、美しく、弱い自分には体現できない強い生き方。

 かっこいいと、心から思う。

 

「……私は、女王様のために生きてきました」

 

 こちらの言葉を受け、少女は深く俯く。

 

「……先の行いが、正しいか正しくないのか、分かりません」

 

 母と崇める女王からの命令。

 幼少からずっと従ってきて、いきなり反抗はできないだろう。

 

「ですが女王様の行いに、一つも疑問がないわけでは……ない」

 

 僕が女王の敵だからだろう。

 周りの女性には言えない本心を、ようやく語ってくれる。

 

「この世界のルールは強者が全て。ゆえにこんな感情は不要なのに……」

 

 最強女王は、どんな理不尽をしても許される。

 でも人間には感情があるのだ。

 

「私だって、騎士道は、捨てたくありません」

 

 理屈では分かっていても、どうしても受け入れられないこともある。

 彼女は諦めきった顔で悲しく笑う。

 

「女王様より良い主人がいれば、捨てなくても済んだのでしょうが……」

「いたら、どうするんですか?」

 

 予想外の返答だったのか。先輩は一瞬驚いてから――

 

「一生お仕えします。騎士道にかけて私の全てを捧げます」

 

 その表情には、いつもの高潔さが表れていた。

 もしも彼女を自分の騎士にできたら、きっとそいつは幸せ者だろうな。

 

「……幸せ者、か……」

「カゲルヤ?」

 

 人間はどうやったら幸せになれるか。

 女王は自分を抱くことなんて豪語してたけど。

 それでも、ずっと悩んできたものが、少しだけ見えた気がした。

 

「……誰かのために戦うが大事だって、前に言いましたよね?」

「え、ええ」

 

 自分の心に従って、覚悟を決める。

 僕は虐げられる男たちに報いたと思った。

 そして今この時、新たな誰かのためにが生まれた。

 

「――僕は、あなたのために戦いたい」

 

 全員が女王に従う。従わないのは僕だけ。

 今の彼女に手を差し伸べられるは、自分しかいないのだ。

 

「ふふ。私のためですか。では新たな主君にでもなってくれますか?」

 

 先輩は冗談ぽく言うが、僕は重ねて問う。

 

「男に従うのは、嫌ですか?」

「嫌です。しかしカゲルヤであれば――……いえ、こんな話は夢ですね」

 

 いいやそうでもない。

 まだ決闘制度の詳細不明だが、ピースは確かに揃い始めている。

 

「それに先輩、前にこうも言ってましたよね」

 

 結婚の代わりに、聖婚があるって教えてくれた時。

 

「私を堕としたくば戦って勝ちなさい、って」

 

 だったらそうしようじゃないか。

 

「僕はあなたのために――あなたに勝ちます」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。