姫騎士学園の下剋上性活 ~最弱スキルで異世界のプライド高め美少女たちを堕としたら、毎晩ご奉仕に来る日々が始まった~ 作:東雲(しののめ)
「ヴェルグ、先輩……?」
制服の肩にトートバックを持って現れた美少女。
首だけを持ち上げ、ベッドの傍らに来た彼女を見上げる。
「……なにしに、来たん、ですか」
「約束を、果たしに来ました」
彼女が言っているのは、図書館で中途半端に終わった情事のこと。
誰にも口外しないと約束をした一件だろう。
彼女はそれを完遂するために来たらしいが……。
「……もう今更、いいですよ、そんなこと」
散々殴られて、こっちも嫌気が来ている。
「し、しかしですね……」
「実際は、秘密になんてせず、女王にも告げ口してるんでしょう?」
「そ、そんなわけ……!」
女王は関係ないと、獄炎卿は首を横に振る。
「これは私と貴君だけの問題です!」
「……どうだか。女王に言われてまた襲いに来たんでは?」
「ち、違っ――!」
知っていた。人を簡単に信用するなと。
……ほだされそうになってた、どうかしてたんだ僕は。
彼女は完全に敵なんだ。まともに応じる必要はない。
「わ、私は、貴君に礼をせねばと思って……」
「また騎士道が云々ですか? でも捨てたんですよねそれ?」
女王に命じられれば、喜んで殺戮ショーも手伝う。
老人だろうと、子供だろうと、男は劣等種として一掃するのだ。
「……私は、ただ、女王様に……」
彼女は悔しそうに拳を握り込み、俯いてしまう。
「良かったじゃないですか。大好きなご主人様に誉めてもらえて」
そう告げると、なぜか泣きそうな目をされる。
……もう、早くいなくなってほしい。
「私を、嫌いになりましたか……?」
初めて異性に告白する時みたいに。
緊張で怖さいっぱいという表情で尋ねられる。
「虫のいい話ですが、もしも、ほんの少しでも、貴君の中にまだ私を――」
いい加減にしつこいと思う。何がしたいんだこの人は。
彼女の言葉を遮り、苛立った僕はつい言ってしまう。
「嫌いになる? 敵同士なんだから、最初から大嫌いですよ」
「――――っ!」
彼女はすごく悲しそうな顔をして、それから力なく微笑む。
「……そ、そうです、よね……分かって、いました……」
馬鹿らしい。まるで失恋でもしたいみたな落ち込みだ。
「……ですが、やはり約束は、果たしたいのです」
彼女は肩のトートバック、色々詰め込んだらしいそれを握りしめる。
「男性に、いえ貴君に、喜んでほしくて勉強をしてきました」
情事の続きをしたい、と健気に発す。
「そのための道具を揃えていたら、こういう状況になってしまって……」
「あの」
「湯浴みは済ませてきました! けして時間も手間も取らせません!」
「ですから」
「今日だけは校則違反もないです。望むなら何度でも接吻しますし、好きなだけ胸も触ってください。は、破廉恥は苦手ですが、それでも満足してもらえるように――」
「先輩!」
必死に明るく振る舞う彼女に、もういいですと返す。
「帰って、ください」
こんなことしたって、何の意味もない。
「………………わ、分かり、ました」
獄炎卿は弱々しく頷いた。
「最後に、実は食べ物や水も持って来たんです、せめて……」
一縷の望みにかけるように声をうわずらせるが。
「……いえ、いらない、ですよね、何でもありません」
信用がない相手。まして敵からの食料を食べるマヌケはいない。
彼女もそれを理解して、バックを摑む手を緩める。
「お邪魔しました。帰ります……」
大きな身体なのに、とても小さな挨拶で踵を返す。
「……貴君は男、そして私は男が嫌いです」
しかし扉のドアノブを回した時、少女は一瞬立ち止まって。
「ですが」
けして振り返らず、静かに告げてから去って行く。
「カゲルヤ・ノアのことは――好きでした」
***
本当は分かっているんだ。
ヴェルグ先輩が、喜んで人を傷つけるわけがないって。
――収容所で殴られていた時、僕よりずっと辛そうな顔をしていた。
女王に救われ、女王に認めれたい一心。
皆に忌避されても、彼女の元でしか存在価値を見いだせない。
――僕も同じだ。迷宮攻略しかなかった。
もしも逆の立場だったら、僕も彼女を百発殴っていたかもしれない。
「……っ……」
とっくに身体は限界、それでも気持ちで立ち上がれた。
ベッドを飛び出して、扉の先に消えた人を追う。
「……こんなこと、無意味なはずなのに……」
昔の僕だったら寝てやりすごす。
好きって言われたからなんだ。
女の言葉なんか信用できないぞって。
「……でも……」
言い過ぎた。意地悪な言葉を吐いた自覚はある。
モヤモヤして、イライラして、つい感情的に当たってしまった。
「……ヴェルグ、先輩!」
裸足のまま走って、彼女の名前を呼ぶ。
「カゲルヤ……!?」
間に合った。目の前まで来てくれた彼女と見つめ合って――
「……これで、いいんですか?」
本当に騎士道、捨てるんですか。
この世界に五万といる、普通の女と一緒に、なっちゃうんですか。
「……あの極悪女王に、人生を捧げることが、あなたの正解なんですか?」
それで幸せだというのなら、もう何も言わない。
「僕は、今の先輩は嫌いですけど」
彼女の別れ際の台詞に、僕も同じように返事をしよう。
「前の先輩は……好きでした」
清く、正しく、美しく、弱い自分には体現できない強い生き方。
かっこいいと、心から思う。
「……私は、女王様のために生きてきました」
こちらの言葉を受け、少女は深く俯く。
「……先の行いが、正しいか正しくないのか、分かりません」
母と崇める女王からの命令。
幼少からずっと従ってきて、いきなり反抗はできないだろう。
「ですが女王様の行いに、一つも疑問がないわけでは……ない」
僕が女王の敵だからだろう。
周りの女性には言えない本心を、ようやく語ってくれる。
「この世界のルールは強者が全て。ゆえにこんな感情は不要なのに……」
最強女王は、どんな理不尽をしても許される。
でも人間には感情があるのだ。
「私だって、騎士道は、捨てたくありません」
理屈では分かっていても、どうしても受け入れられないこともある。
彼女は諦めきった顔で悲しく笑う。
「女王様より良い主人がいれば、捨てなくても済んだのでしょうが……」
「いたら、どうするんですか?」
予想外の返答だったのか。先輩は一瞬驚いてから――
「一生お仕えします。騎士道にかけて私の全てを捧げます」
その表情には、いつもの高潔さが表れていた。
もしも彼女を自分の騎士にできたら、きっとそいつは幸せ者だろうな。
「……幸せ者、か……」
「カゲルヤ?」
人間はどうやったら幸せになれるか。
女王は自分を抱くことなんて豪語してたけど。
それでも、ずっと悩んできたものが、少しだけ見えた気がした。
「……誰かのために戦うが大事だって、前に言いましたよね?」
「え、ええ」
自分の心に従って、覚悟を決める。
僕は虐げられる男たちに報いたと思った。
そして今この時、新たな誰かのためにが生まれた。
「――僕は、あなたのために戦いたい」
全員が女王に従う。従わないのは僕だけ。
今の彼女に手を差し伸べられるは、自分しかいないのだ。
「ふふ。私のためですか。では新たな主君にでもなってくれますか?」
先輩は冗談ぽく言うが、僕は重ねて問う。
「男に従うのは、嫌ですか?」
「嫌です。しかしカゲルヤであれば――……いえ、こんな話は夢ですね」
いいやそうでもない。
まだ決闘制度の詳細不明だが、ピースは確かに揃い始めている。
「それに先輩、前にこうも言ってましたよね」
結婚の代わりに、聖婚があるって教えてくれた時。
「私を堕としたくば戦って勝ちなさい、って」
だったらそうしようじゃないか。
「僕はあなたのために――あなたに勝ちます」