姫騎士学園の下剋上性活 ~最弱スキルで異世界のプライド高め美少女たちを堕としたら、毎晩ご奉仕に来る日々が始まった~ 作:東雲(しののめ)
「――このような所に呼び出し、申し訳ありません」
翌日の正午。僕は小さな庭園に訪れていた。
学園は広大な敷地で、こうした人の目のない場所がいくつもある。
「昨日も、協力者でありながら何もできず……」
「謝らなくていいです。さっき骨折も氷でくっつけてくれましたし」
「かなり荒技の治療ですがね……養護教諭としても申し訳ない限りです」
女王の嫌がらせは加速している。
保健室だけでなく、教務課や図書館、学食に至るまで……。
ほぼ全てのエリアが、男子立入禁止となった。
「……教室と訓練場だけは解放ってのも、タチが悪いですけど」
僅かな希望を残すあたり、さすが極悪女王だ。
しかも『僕と親しくするな』というお触れもでているそうで。
「……完全孤立、してしまいましたね」
彼女は責任を感じ、重たげに呟くが。
「いえ。まだゼゼ先生がいます」
「カゲルヤさん……」
「表だっては会えませんけど、心強い存在だと、今は思っています」
気持ち的にも、そして今後のことを考えても――
「――階級戦、どうなさいますか?」
先生が本題を切り出す。
当初の予定では、六つ星まで昇格して、獄炎卿と階級戦をする。
そして女王への挑戦権を手に入れるはずだった。
「女王から提示された猶予期間は、本日を入れて二日間となります」
今日のうちに、三つ星から六つ星を全員倒す。
そして明日に獄炎卿戦を……。
「……というのは現実的に無理、ですよね」
僕の見解に、先生も同意を示す。
とてもじゃないが、一日に四つも戦いはこなせない。
最初は勝てても、後半ではボロ雑巾になるのがオチだ。
「残念ですが――撤退を、講じるべき段階かと」
学園から逃げるべきだ、と提案される。
「僕の首元には、女王の呪いがかかってます」
遠くに逃亡すれば即死である。
「……まさかですけど、先生なら解呪できるんですか?」
「できません。しかし残された時間を使って何とか……」
珍しく歯切れの悪い口調。
無表情ながらも、不安そうなのはなんとなく伝わる。
「――僕は、逃げません」
説得する態度の彼女に、ハッキリと告げる。
これまでの人生、色々なことから逃げてきたけど……。
自分のためだけじゃないと思えば、それはもうできない。
「しかし戦況はもう……」
「まだ、詰んでません」
諦め気味の先生に、僕は図書から知った情報を話す。
「……今から約五年前。学園最高傑作と呼ばれた姫騎士がいました」
氷雪系最強の能力を持ち、七聖に駆け上った女がいたのだ。
「その名は――氷絶卿、ゼスティア・ゼネルヴィア」
明かされた真名に、先生の目が見開く。
「女王へ反逆をした、伝説の姫騎士です」
「……わたしのことを、調べたのですか」
在学中に謀反を起こした人物。
現在では、死んだ者として扱われている。
女王体制下では、誰もがその名を避けるだろうが……。
「図書館にある戦闘記録を、片っ端から読み漁りました」
そして見つけた。
転校初日に先生が見せた、聖装と能力が一致するし――
「頭文字を繋げてゼゼ。ちょっと安直すぎる気がしますけど」
「……参りましたね」
お手上げですと首を左右に振った。
「命からがら逃げのび、マルリスたちに匿われ、ようやく学園に潜入したというのに」
「……気づいているのは、僕だけです」
彼女は徹底して、聖気も聖装も使わない。
さらに生徒や職員との、必要以上の交流も避けている。
ずっと傍にいた自分で、ようやく察知できたのだ。
「しかし、わたしの正体に気づいたとて……」
以前のようにはもう戦えない身体だ。
獄炎卿や女王を闇討ちすることもできないだろう。
この最悪の状況は変わらない、と結ぶが。
「まだ『決闘制度』があります」
「なっ――!」
安全だけど長い時間がかかるルート。
危険だけど短い時間でいけるルート。
――そして、超危険だけど一瞬でいけるルート。
攻略者業界ではそれを『裏技』と呼んだりする。
「決闘制度は裏技。最短最速で下剋上できるシステムです」
本来ならもっと早く知るべきだった。
しかし先生が秘密したのも当然で……。
「……正気、ですか?」
「制度概要はちゃんと調べました」
階級戦は同格か、一つ格上の者としか戦えない。
しかし決闘はまったく違う。
「階級、身分、年齢、性別――あらゆる格差を無視して、挑戦できる制度ですよね」
一つ星だろうと、七つ星に挑戦できる。
これを用いれば、僕は獄炎卿に挑めるのだ。
「……であれば、決闘の条件も知っているはずですが」
「
階級戦では、特殊な結界がフィールドに張られている。
怪我をしても治り、死んでも生き返れる『復活措置』があるのだ。
しかし決闘では、それがない。
「決闘では結界に制限がかかる。怪我は治るみたいですけど――」
「――命は保証されない。負ければ本当に死にます」
裏技には大きなリスクが伴う。
もう二度と、
「それにです、低階級者が七聖と決闘をしても、結果は決まっています」
レベル一のモンスターが、レベル百のモンスターに勝てる道理はない。
まして敗北は、文字通り死を意味する。
「一応は降参もできますが、それを受け入れるかは相手次第」
少なくとも、男の僕はそのまま殺されるだろう。
どちらにせよ呪いで余命僅か、降参を使う気は端からない。
「……決闘制度は、大昔からある古い制度です」
彼女は額を抑え、頭痛に耐えるように言う。
「伝統として形式的に残っているだけで……」
「誰も使わなくても、僕は使います」
勝つために、手段は選ばない。
「……願わくば、ずっと知らないでいてほしかったです」
この制度を知れば、カゲルヤ・ノアは必ず使う。
そう予期していた先生は、悲痛な面持ちで嘆息する。
「でも先生、悪いことばかりじゃないはずです」
聞けば、決闘の結果は絶対遵守だという。
「……もし僕が獄炎卿に勝てば、彼女の全てが手に入る」
階級、財産、功績、肉体――そして人生までも。
命を賭けて闘う制度上、女王だろうとそれに口出しはできない。
「結局、階級戦で勝って得られるのは、女王の心を害しない範囲のものだけ」
勝者が全てを手に入れる。
これを本当に望むなら、女王に勝って頂点に立つか。
もしくは個人間の決闘で、相手を完全屈服させることだけ。
「……それに、これは大事な布石なんですよ」
「布石? 今を生き残るため以外の目的が?」
「獄炎卿との決闘は、女王を倒すための攻略の第一歩です」
最強女王の完全攻略法。
決闘を用いることで、その方程式が少しずつ、でも確実に見えてきた。
「……あなたを止めることは、できませんね」
諦めたように、先生は面を上げる。
「しかし決闘をしても、獄炎卿に勝算はあるのですか?」
「まぁ、一応は……あります、けど……」
「急に声のトーンが落ちましたね。先生は不安です」
ダメな弟を見る姉のように、やれやれと肩を竦める。
「先ほど、あえてわたしの真名、過去について触れましたね」
彼女も覚悟を決めたのか、真剣な面持ちで発す。
「決闘に向けて私に――いえ、ゼスティア・ゼネルヴィアに何をさせようと?」
戦勘がいい。さすが元七聖だ。
「では単刀直入に。頼みたいことは二つあって――……」
力技な策ではあるが、勝率がアップするのは確かだ。
「……大きな賭けに、なりますね」
話を聞いた先生が、珍しく緊張の色を見せる。
「しかしやるしかありません。その仕事任されました」
「っ……ありがとうございます……!」
「ただし、私からも二つお願いがあります」
彼女は身を寄せてきて、こちらをじっと見つめる。
「一つ、必ず勝って、生きて帰ること」
「は、はい」
「二つ、この一件が全部片付きましたら――」
氷細工のように美しい手が、僕の下半身をそっと撫でた。
「夜のお相手、して頂きます」
頑張って働くから、癒やしが欲しいとか何とか。
確かに彼女には、かなり無茶な頼み事をしたけど。
「で、でも、エッチでストレス発散って……」
「いけませんか?」
「教師として……」
「いけませんか?」
ものすごい圧をかけられる。僕は苦笑いで頷くしかない。
「あなたが待っている。それならわたしはもっと戦えますから」
「ゼゼ先生……」
「ただ夜は覚悟していてください。手加減なしの本気交尾をさせて頂きますので」
こ、交尾って……どれだけ搾る気なんだろうか。
僕、決闘で勝っても、エッチで殺されるのでは?
「じゃ、じゃあ、話をまとめますけど――」
決闘は今日中に、ヴェルグ先輩に申し込む。
そして明日、彼女と勝負をする。
その間にゼゼ先生には暗躍してもらう流れだ。
「そういえば、これは余談ですが――」
そろそろ解散するかとなった時、彼女がおもむろに告げる。
「カゲルヤさんは『決闘制度は誰も使わない』と仰いましたが、これは間違いです」
認識の誤りがあると指摘された。
「何百年と続く学園の歴史ですが……」
「決闘制度を、僕以外に、使った人がいると?」
「はい。過去にたった一人だけですが」
それは調査不足だった。一体どんな人物なのだろう。
「今から一五年近く前。その少女は入学初日に決闘を行いました」
「え? 初日? まだ一つ星ですよね?」
「はい。しかし結果は快勝。当時の七聖に完全勝利してしまったのです」
い、いくらなんでも嘘だろう。
そんな怪物がこの世にいるな……んて……あ。
「ま、まさか、それって」
「驚きます。あなたとまったく同じ。勝利のためには手段を選ばない」
史上唯一、決闘制度を使った人物――
「――その少女の名は、ルフェリア・アヴァロニクス」