姫騎士学園の下剋上性活 ~最弱スキルで異世界のプライド高め美少女たちを堕としたら、毎晩ご奉仕に来る日々が始まった~   作:東雲(しののめ)

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第20話:裏技

「――このような所に呼び出し、申し訳ありません」

 

 翌日の正午。僕は小さな庭園に訪れていた。

 学園は広大な敷地で、こうした人の目のない場所がいくつもある。

 

「昨日も、協力者でありながら何もできず……」

「謝らなくていいです。さっき骨折も氷でくっつけてくれましたし」

「かなり荒技の治療ですがね……養護教諭としても申し訳ない限りです」

 

 女王の嫌がらせは加速している。

 保健室だけでなく、教務課や図書館、学食に至るまで……。

 ほぼ全てのエリアが、男子立入禁止となった。

 

「……教室と訓練場だけは解放ってのも、タチが悪いですけど」

 

 僅かな希望を残すあたり、さすが極悪女王だ。

 しかも『僕と親しくするな』というお触れもでているそうで。

 

「……完全孤立、してしまいましたね」

 

 彼女は責任を感じ、重たげに呟くが。

 

「いえ。まだゼゼ先生がいます」

「カゲルヤさん……」

「表だっては会えませんけど、心強い存在だと、今は思っています」

 

 気持ち的にも、そして今後のことを考えても――

 

「――階級戦、どうなさいますか?」

 

 先生が本題を切り出す。

 当初の予定では、六つ星まで昇格して、獄炎卿と階級戦をする。

 そして女王への挑戦権を手に入れるはずだった。

 

「女王から提示された猶予期間は、本日を入れて二日間となります」

 

 今日のうちに、三つ星から六つ星を全員倒す。

 そして明日に獄炎卿戦を……。

 

「……というのは現実的に無理、ですよね」

 

 僕の見解に、先生も同意を示す。

 とてもじゃないが、一日に四つも戦いはこなせない。

 最初は勝てても、後半ではボロ雑巾になるのがオチだ。

 

「残念ですが――撤退を、講じるべき段階かと」

 

 学園から逃げるべきだ、と提案される。

 

「僕の首元には、女王の呪いがかかってます」

 

 遠くに逃亡すれば即死である。

 

「……まさかですけど、先生なら解呪できるんですか?」

「できません。しかし残された時間を使って何とか……」

 

 珍しく歯切れの悪い口調。

 無表情ながらも、不安そうなのはなんとなく伝わる。

 

「――僕は、逃げません」

 

 説得する態度の彼女に、ハッキリと告げる。

 これまでの人生、色々なことから逃げてきたけど……。

 自分のためだけじゃないと思えば、それはもうできない。

 

「しかし戦況はもう……」

「まだ、詰んでません」

 

 諦め気味の先生に、僕は図書から知った情報を話す。

 

「……今から約五年前。学園最高傑作と呼ばれた姫騎士がいました」

 

 氷雪系最強の能力を持ち、七聖に駆け上った女がいたのだ。

 

「その名は――氷絶卿、ゼスティア・ゼネルヴィア」

 

 明かされた真名に、先生の目が見開く。

 

「女王へ反逆をした、伝説の姫騎士です」

「……わたしのことを、調べたのですか」

 

 在学中に謀反を起こした人物。

 現在では、死んだ者として扱われている。

 女王体制下では、誰もがその名を避けるだろうが……。

 

「図書館にある戦闘記録を、片っ端から読み漁りました」

 

 そして見つけた。

 転校初日に先生が見せた、聖装と能力が一致するし――

 

「頭文字を繋げてゼゼ。ちょっと安直すぎる気がしますけど」

「……参りましたね」

 

 お手上げですと首を左右に振った。

 

「命からがら逃げのび、マルリスたちに匿われ、ようやく学園に潜入したというのに」

「……気づいているのは、僕だけです」

 

 彼女は徹底して、聖気も聖装も使わない。

 さらに生徒や職員との、必要以上の交流も避けている。

 ずっと傍にいた自分で、ようやく察知できたのだ。

 

「しかし、わたしの正体に気づいたとて……」

 

 以前のようにはもう戦えない身体だ。

 獄炎卿や女王を闇討ちすることもできないだろう。

 この最悪の状況は変わらない、と結ぶが。

 

「まだ『決闘制度』があります」

「なっ――!」

 

 迷宮(ダンジヨン)の最奥へ向かうとき、攻略者はルート選択をするものだ。

 安全だけど長い時間がかかるルート。

 危険だけど短い時間でいけるルート。

 

 ――そして、超危険だけど一瞬でいけるルート。

 

 攻略者業界ではそれを『裏技』と呼んだりする。

 

「決闘制度は裏技。最短最速で下剋上できるシステムです」

 

 本来ならもっと早く知るべきだった。

 しかし先生が秘密したのも当然で……。

 

「……正気、ですか?」

「制度概要はちゃんと調べました」

 

 階級戦は同格か、一つ格上の者としか戦えない。

 しかし決闘はまったく違う。

 

「階級、身分、年齢、性別――あらゆる格差を無視して、挑戦できる制度ですよね」

 

 一つ星だろうと、七つ星に挑戦できる。

 これを用いれば、僕は獄炎卿に挑めるのだ。

 

「……であれば、決闘の条件も知っているはずですが」

命を(、、)賭けて(、、、)闘う(、、)こと(、、)、ですよね」

 

 階級戦では、特殊な結界がフィールドに張られている。

 怪我をしても治り、死んでも生き返れる『復活措置』があるのだ。

 しかし決闘では、それがない。

 

「決闘では結界に制限がかかる。怪我は治るみたいですけど――」

「――命は保証されない。負ければ本当に死にます」

 

 裏技には大きなリスクが伴う。

 もう二度と、再挑戦(コンテニュー)はできないと先生は続ける。

 

「それにです、低階級者が七聖と決闘をしても、結果は決まっています」

 

 レベル一のモンスターが、レベル百のモンスターに勝てる道理はない。

 まして敗北は、文字通り死を意味する。

 

「一応は降参もできますが、それを受け入れるかは相手次第」

 

 少なくとも、男の僕はそのまま殺されるだろう。

 どちらにせよ呪いで余命僅か、降参を使う気は端からない。

 

「……決闘制度は、大昔からある古い制度です」

 

 彼女は額を抑え、頭痛に耐えるように言う。

 

「伝統として形式的に残っているだけで……」

「誰も使わなくても、僕は使います」

 

 勝つために、手段は選ばない。

 

「……願わくば、ずっと知らないでいてほしかったです」

 

 この制度を知れば、カゲルヤ・ノアは必ず使う。

 そう予期していた先生は、悲痛な面持ちで嘆息する。

 

「でも先生、悪いことばかりじゃないはずです」

 

 聞けば、決闘の結果は絶対遵守だという。

 

「……もし僕が獄炎卿に勝てば、彼女の全てが手に入る」

 

 階級、財産、功績、肉体――そして人生までも。

 命を賭けて闘う制度上、女王だろうとそれに口出しはできない。

「結局、階級戦で勝って得られるのは、女王の心を害しない範囲のものだけ」

 

 勝者が全てを手に入れる。

 これを本当に望むなら、女王に勝って頂点に立つか。

 もしくは個人間の決闘で、相手を完全屈服させることだけ。

 

「……それに、これは大事な布石なんですよ」

「布石? 今を生き残るため以外の目的が?」

「獄炎卿との決闘は、女王を倒すための攻略の第一歩です」

 

 最強女王の完全攻略法。

 決闘を用いることで、その方程式が少しずつ、でも確実に見えてきた。

 

「……あなたを止めることは、できませんね」

 

 諦めたように、先生は面を上げる。

 

「しかし決闘をしても、獄炎卿に勝算はあるのですか?」

「まぁ、一応は……あります、けど……」

「急に声のトーンが落ちましたね。先生は不安です」

 

 ダメな弟を見る姉のように、やれやれと肩を竦める。

 

「先ほど、あえてわたしの真名、過去について触れましたね」

 

 彼女も覚悟を決めたのか、真剣な面持ちで発す。

 

「決闘に向けて私に――いえ、ゼスティア・ゼネルヴィアに何をさせようと?」

 

 戦勘がいい。さすが元七聖だ。

 

「では単刀直入に。頼みたいことは二つあって――……」

 

 力技な策ではあるが、勝率がアップするのは確かだ。

 

「……大きな賭けに、なりますね」

 

 話を聞いた先生が、珍しく緊張の色を見せる。

 

「しかしやるしかありません。その仕事任されました」

「っ……ありがとうございます……!」

「ただし、私からも二つお願いがあります」

 

 彼女は身を寄せてきて、こちらをじっと見つめる。

 

「一つ、必ず勝って、生きて帰ること」

「は、はい」

「二つ、この一件が全部片付きましたら――」

 

 氷細工のように美しい手が、僕の下半身をそっと撫でた。

 

「夜のお相手、して頂きます」

 

 頑張って働くから、癒やしが欲しいとか何とか。

 確かに彼女には、かなり無茶な頼み事をしたけど。

 

「で、でも、エッチでストレス発散って……」

「いけませんか?」

「教師として……」

「いけませんか?」

 

 ものすごい圧をかけられる。僕は苦笑いで頷くしかない。

 

「あなたが待っている。それならわたしはもっと戦えますから」

「ゼゼ先生……」

「ただ夜は覚悟していてください。手加減なしの本気交尾をさせて頂きますので」

 

 こ、交尾って……どれだけ搾る気なんだろうか。

 僕、決闘で勝っても、エッチで殺されるのでは?

 

「じゃ、じゃあ、話をまとめますけど――」

 

 決闘は今日中に、ヴェルグ先輩に申し込む。

 そして明日、彼女と勝負をする。

 その間にゼゼ先生には暗躍してもらう流れだ。

 

「そういえば、これは余談ですが――」

 

 そろそろ解散するかとなった時、彼女がおもむろに告げる。

 

「カゲルヤさんは『決闘制度は誰も使わない』と仰いましたが、これは間違いです」

 

 認識の誤りがあると指摘された。

 

「何百年と続く学園の歴史ですが……」

「決闘制度を、僕以外に、使った人がいると?」

「はい。過去にたった一人だけですが」

 

 それは調査不足だった。一体どんな人物なのだろう。

 

「今から一五年近く前。その少女は入学初日に決闘を行いました」

「え? 初日? まだ一つ星ですよね?」

「はい。しかし結果は快勝。当時の七聖に完全勝利してしまったのです」

 

 い、いくらなんでも嘘だろう。

 そんな怪物がこの世にいるな……んて……あ。

 

「ま、まさか、それって」

「驚きます。あなたとまったく同じ。勝利のためには手段を選ばない」

 

 史上唯一、決闘制度を使った人物――

 

「――その少女の名は、ルフェリア・アヴァロニクス」

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