姫騎士学園の下剋上性活 ~最弱スキルで異世界のプライド高め美少女たちを堕としたら、毎晩ご奉仕に来る日々が始まった~ 作:東雲(しののめ)
――決闘制度、発令。
数百年続く学園の歴史で、それを使用した者は一人だけ。
現女王、ルフェリア・アヴァロニクスのみだ。
しかしその伝説が、今日をもって覆される。
「――聞いた? 獄炎卿と転入生が決闘するって!」
正午にゼゼ先生と、最終作戦を練った後。
放課後には、決闘の噂が学園中に広まっていた。
「――ど、どっちかホントに死ぬってこと?」「――バカ! これは階級戦じゃないのよ!」「――他の七聖様たちのご様子は?」「――ヤバすぎる。急いで上に確認して」
生徒も教師も、大慌てで走り回っていた。
無人の教室にいるからこそ、彼女たちの喧噪がよく聞こえてくる。
「――決闘の噂を流す、これで良かったのよね?」
廊下すぐ近くの席に座っていると。
扉近くで一人の少女が立ち止まり、小さく呟いた。
「……助かったよ、ウルズ」
「別に。たまたま面白い噂を耳にして。たまたまクルドとサンディにも伝えて。たまたま三人でお喋りしてたら、他の生徒にも聞かれた――それだけよ」
偶然が重なっただけと、彼女は鼻を鳴らす。
「みんな大盛り上がりしてる。決闘を見る機会なんて普通ないからね」
「……思惑通り、外堀は埋められたわけだ」
「ま、最弱の男VS最強の女。こんなカード注目するしかないでしょ」
獄炎卿には、決闘を承諾してもらわなくてはいけない。
また女王からの横槍を、牽制する動きも必要だ。
そこで『本気で決闘をやるんだ!』という空気がほしかった。
学園中の期待値を高めて、引き返せない所まで流れを作る。
「……あんた死ぬわよ?」
「かも、しれない」
曖昧な僕の回答に、ウルズは舌打ちをする。
「あの世に行かれたらリベンジできないんだけど?」
「そうなったら……来世に期待で」
以前に言われた言葉を、真似して返す。
「あっそ。でも万が一あんたが勝ったら……まずはエッチで勝負だから」
「は? エッチ?」
「獄炎卿に勝利したら七つ星になる。星の差が開いて階級戦はすぐできないもの」
僕みたいに決闘などという、バカな手段も取らない。
だから夜の再戦ということらしいけど……。
「…………でも、先生とのが、既に控えてるし……」
「ん? なんか言った? まさか逃げるの?」
「……い、いや……」
「じゃあ決まりね。言っとくけどガチでテク磨いてるから。前みたいにやられっぱなしにはなんない。ひぃひぃ言わせてやるから覚悟しときなさい」
……な、なんで、エッチの予定ばかり埋まるんだろう?
……ホントに搾られすぎて死ぬぞこれ。
「そうだ、あとウルズ、明日の決闘だけど……」
「例のやつね。明日の朝に済ませればいいんでしょ?」
そっちの件も了承と返ってくる。
しかしここまで協力してくれるとは、かつての彼女からは考えられない。
「そりゃ獄炎卿にはボコられた借りがあるからね」
僕に手を貸すことで、一矢報いてやるのだとわざとらしく笑う。
「ザコって、うざいくらいしぶといの、簡単には死なないの」
そして自分にも言い聞かせるように、彼女は僕へ告げる。
「来世は分かんないけど――あんたの今世には、少しは期待してあげる」
ウルズはそう言い残して去って行く。
「……期待、か」
あれだけイジメてきた少女に、激励をされるとは。
やり直しの人生、何があるか分からないものだ。
***
夕暮れが校舎を照らす頃。僕は彼女を呼び出した所に向かった。
「……貴君との出会いを、思い出していました」
立派な校門を見上げる、黄金髪の美少女。
初邂逅したこの場所で、僕はヴェルグ先輩と向かい合う。
「学園創設以来、史上二度目となる決闘制度の使用」
噂はもう知っていると、すぐに本題を切り出される。
「学園唯一の男、最弱種とされる貴君が、私へ決闘を挑むなど……」
正気の沙汰ではないと、ヴェルグ先輩が重たく瞑目する。
「……既に、女王様の耳にも入っているそうです」
「そう、ですか」
「ここまで大事になっているのです。女王様も体面上なかったことにはできない」
山よりも高いプライドの持ち主なのだ。
――女は絶対強者。男から逃げることはありえない。
これを無下にすれば、世界のその鉄則にヒビが入る。
「聞けば、むしろこの機を、男たちへの見せしめに利用するつもりらしいです」
彼女は政治的な動きまで教えてくれる。
男性最後の希望とされる僕を、完全に打ちのめす。
それで更に支配力を高めようというわけだ。
「……全部、予想の範疇ですよ」
僕に残された手段は、もう決闘しかないのだ。
どうしても成立させるため、わざわざ学園に噂を流布した。
「……いっそ女王は、喜んでるでしょうね」
大衆の前で、最高の殺戮ショーができるのだ。
まして男と戦うのは、自分が可愛がっている獄炎卿。
彼女が負ける可能性はゼロと安心もできる。
「ヴェルグ先輩……いや、獄炎卿ヴェルグ・モルドレイド」
僕は静かに、しかしハッキリと告げる。
「あなたに、決闘を申し込む」
その宣言を受けて、彼女は俯いた。
しばし沈黙してから、ゆっくりと面を上げる。
「……もう、引き返せないのですね」
覚悟は決めたと、意思の強そう瞳を向けてくる。
「カゲルヤ・ノアからの決闘――承知しました」
両者の合意。
決闘の噂が、真実へと変わった瞬間だ。
「私に勝てば、貴君は七つ星になります」
そして首の呪いも解け、女王への挑戦権も得られる。
「それなりに資産も所有していますが、他にも欲しいものあれば……」
勝者が全てを手に入れる。
今回の決闘は、女王の御心関係なく、際限なく全てが得られるのだ。
「お金も何もいらないですよ――なんなら、七つ星の階級もいらないです」
僕の返答に、彼女は困惑顔をする。
「どういう、意味ですか?」
「女王からの試練は、七聖の一人を倒すことで、階級は重要じゃないです」
当初は七聖との階級戦のために、高い星を必要とした。
そして良い暮らしのためにも階級は必要だが……。
でもそれは本質的な問題ではない。
「僕の最終目標は、女王を完全攻略すること」
そのためにはむしろ、僕は七聖になってはいけないのだ。
「では、女王様の試練をクリアするためだけに、決闘を?」
「…………」
「特権も財産も、私の持つものなど、なに一つ要らないというわけですか」
彼女は怒っているような悲しんでいるような。
「分かっていますよ。私のような女のこと、すぐに忘れたいですよね」
そんな複雑な顔をして、僕のことを睨んでくる。
「……いえ、一つだけ、ほしいものはあります」
もしもこちらが勝利したら、その時は彼女を自分の騎士に――
いや、こんな柔い言い方では、本気度は伝わらないか。
「――ヴェルグ・モルドレイドを完全屈服させて、僕の雌奴隷(モノ)にする」
喧嘩を売るように、あえて呼び捨てで告げる。
「私が、雌、奴隷……?」
「勝ったら主従聖婚をします。それで男に一生服従です」
改めて聖婚についてまとめると。
それは『騎士は二君に仕えず』を体現した大儀式である。
一方が他方の配下になるために契約を結ぶのだ。
「姫騎士が主従聖婚できるのは、生涯に一度だけ――」
正式に主を決めたら、その人間に一生を捧げることになる。
「本来は学園卒業時に、女王と結ぶはずの契約儀式らしいですけど――」
結果を絶対遵守とする決闘制度。
個人間でどんなやり取りをしようと、誰も文句はつけられない。
「聖婚をする……本気、ですか?」
ここで恥ずかしがっては強いオスとは言えない。
僕は確かに頷いて見せた。
「私に新たな主君……しかし残念です。それはありえない」
決闘が決まったことで、彼女は強い闘志を見せる。
「私は貴君を殺す」
女は男に屈しない。負ける気はないと言葉を返される。
「それに私は、降参を選ぶこともありません」
決闘の勝敗の決め方は二つ。
一つは相手を戦闘不能――つまりは殺すこと。
もう一つは、どちらかが降参を選ぶかだ。
「もしも貴君が勝つとしても、それは私を殺した時だけです」
当然ながら、死者と聖婚をすることはできないのだ。
「この決闘では、どちらかが必ず死ぬのです」
僕の考えを甘いと断じて、彼女は踵を返す。
「さらばです。カゲルヤ・ノア」
去って行く少女の背を、黙って見届ける。
これまでだったら、バカみたいに呆然としていたけど。
「――誰も倒せないなら、代わりに僕が完全攻略する」
今の自分に暗い気持ちはない。
相手は学園最強の一角である獄炎卿。
それを倒して僕は、彼女の全てを手に入れる。