姫騎士学園の下剋上性活 ~最弱スキルで異世界のプライド高め美少女たちを堕としたら、毎晩ご奉仕に来る日々が始まった~ 作:東雲(しののめ)
炎と氷が相殺され、周囲には水蒸気が漂う。
白煙の中で相対する彼女を見て、僕は唇を噛んだ。
「――よくできた不意打ちだったと、評価はします」
完璧に隙をついたはずだった。
しかし必殺の一撃は、装甲によってピンポイントに阻まれている。
「――聖装覚醒(エクス・レガリア)」
先輩が唱えると、その身体がさらに燃え上がる。
「……っ!」
爆風だけで僕の身体は吹っ飛んだ。
地面を転がり受け身、すぐに立ち上がって敵を見据える。
「本当は、あれを出させる前に、終わらせたかった……!」
彼女の戦闘服が、一瞬にして焼き切れる。
完全に裸になった――と思った瞬間には変身。
その巨躯が真紅の鎧に覆われる。
「これが私の完全武装化――『
手足はゴツい装甲に覆われ、両肩には謎の巨大兵器を装備。
ただ鎧という割には露出が多く、秘部は最低限にしか隠されず。
超爆乳もほとんど見えている状態だが……。
「なんて、聖気の放出量……!」
鎧の一部なのだろう、頭部には二つの角ようなものを生やす。
他の生徒は風紀統括長を、番犬みたいだと称するが――
しかし別世界から来た僕には、もっと強大な存在が被って見える。
――彼女をモンスターに喩えると、最強種のドラゴン。
その見解は間違っていなかったと、改めて確信する。
「これが、同じ人間なのか……!?」
身体へ負荷をかけないため、普段は剣のみ召喚する。
その状態で使える聖装の力は、本来の三割程度に留まるが。
「――これで私は、自分の力を百%使える」
一歩を踏み出すだけで、空間がひずみ大地が揺れる。
熱風が吹き荒れて、フィールドを覆う結界にもヒビが入るほどだ。
「八獄が一手、黒縄獄(こくじようごく)」
両肩の巨大兵器、その正体は砲台だったらしい。
ピカッ! 一瞬の閃きの後、極太の熱線(レーザー)が放たれた。
「……近距離でも厄介なのに……飛び道具まで!」
転がって全力回避すると、熱線は背後の壁を貫通。
そのまま学園外まで伸びていき――
ドガアアアアアアアアアアアアアンン!
遙か彼方にある山にぶつかり、それを丸ごと吹き飛ばした。
「地形すら、簡単に変えるのか……?」
学園ナンバーワンの攻撃力は伊達じゃない。
百年に一人の天才姫騎士、その評価に偽りなし!
「もっと距離を取らないと――」
「――させません。燃焼転回(コンバスシヨン・ドライブ)」
大剣をその場でグルリとぶん回す。
強い炎を出せば、それだけ周囲の空気を集める。
全ての大気が彼女に吸い寄せられ――僕の身体も風に掠われる。
「まずっ……【絶対零度】!」
飛ばされないよう、足首から下を地面に氷でくっつけるが。
「
覚醒したからこそ成せる技なのか。
彼女はさらに強火で回転、吸引力を増大させる。
「……じ、地面が、浮き上がってっ!?」
最初の地割れで緩んだのも手伝い、足場が大きく浮上する。
僕は地面ごと獄炎卿の元に吸い込まれて――
「八獄が一手――」
大技のためか鎧を再変形、砲台が反転して加速の逆噴射。
……彼女の覚醒は、超攻撃特化から、超々々々攻撃特化になること!
大剣も全身武装も、より禍々しく変形してしまった。
「――焦熱地獄!」
僕の身体に、真紅の大剣が叩きつけられた。
「……がはっ!」
防御に全能力全神経を回すが、簡単に突破されてしまう。
剣を砕かれ、土手っ腹を打ち抜かれ、ほぼ全ての肋骨が断絶。
業火に包まれたまま、僕は壁に激突した。
「う、うぐぅぅ……ぐは……っつは!」
大地に倒れ込み、そのまま口から大量吐血。
血だまりには細かい骨片が浮いていた。
内臓に骨が刺さり、血と一緒に吐き出されたのだろう。
「――肉体を両断するつもりだったのですが」
メラメラ燃えながら近づいてくる獄炎卿。
覚醒状態では、炎を全身に纏っても問題ないらしい。
「――粉砕骨折程度で済ませるとは、貴君の対応力と頑丈さには感服します」
這いつくばる僕を、仁王立ちして見下す。
「――もう十分です――せめて一撃で――」
そして大剣を振り上げた時である。
『――ヴェルグ』
玉座にいた女王が、待ったの命令を下す。
『まだまだ愉しめるであろう?』
「女王様……しかし……」
『やれ』
「…………かしこまりました」
獄炎卿は大剣をゆっくりと地面に降ろした。
そして代わりに、僕の左手の指を、足で踏み潰す。
「ッッッッッ~~……!」
「耐えなさい。まずは一本です」
再びの拷問。親指から小指まで順番に潰されていく。
しかも炎の鎧に覆われた足は超高熱。
指を折られると同時に、ジュゥゥゥと音をたてキツく焼かれる。
「っく……い……ぅう……!」
僕はもう言葉も発せなかった。
地獄のような痛みと苦しみ、それに呻くしかない。
『くは、くはははははは、ははははははははははははは!』
女王が大爆笑。観衆もこの光景を嘲笑しながら見物していた。
「……左手は済みました……これで……」
『ヴェルグ! まだ右手も両足も残っておるだろう!』
「……ですが、騎士として……」
『やれ! それとも余の命令に逆らうのか!?』
「………………はい」
しかし不思議なもので。
……やっぱり彼女の方が、自分よりも辛そうな顔してる。
いま一番痛い目に遭っているのは、僕のはずなのに。
「――だ、ったら――」
彼女のために、もっと戦えると思える。
まだ逆転できる手はあるのだ。あとは――自分の気持ち次第!
「……【絶対零度】!」
腰につけていた鞘内に、銀色の剣を生成する。
氷の能力を発動させるため、血みどろの左手を鞘へ持って行くが――
「無駄な抵抗です」
僕が剣を抜くより先に、獄炎卿の足が動く。
銀色の剣柄を踏み潰され、生成された剣が呆気なく消失する。
「――無駄じゃ、ない」
だって、僕が本当に使いたかった力は、絶対零度ではないから。
「能力再現(リバイバル)っ!」
銀の剣が消えて、代わりに薄緑の剣が現れた。
そしてその剣柄が、獄炎卿の足にピタッと触れる。
「【旋風】」
昨日打ち合わせをして、今朝ウルズから密かに渡された力だ。
剣を鞘に収めたまま、その風の能力を発動する。
「ですから無駄な抵抗です! 今の私に貴君の攻撃は通じな――」
決闘をすればこうなると覚悟していたはず、と怒る。
みっともなく足掻く僕を見て、彼女はカチンと来たらしい。
全身から一層激しい大炎が発せられる。
「――感情に引っ張られて炎を出す、知ってますよ――」
学園初日の朝、見せてもらったから。
そして、そこまで炎を出してもらえれば十分。
「――なぜなら、これは攻撃じゃ、ない!」
僕は旋風を使い、ありったけの風を彼女に送り込む。
――覚醒状態で初めて、百%の炎を使うことができる。
強力な分、身体に掛かる負荷は相当なものだろう。
「……そこでさらに、僕が炎を強化してあげたら、どうなります?」
「貴君! まさか風の燃料を私に与えて――っ!?」
本人が扱える以上の火力を、こっちから出させてやる。
平常時と比べ、覚醒では百%の炎を扱えるって?
では百五十%の炎は? では二百%の炎になったら?
「僕は知っている――許容量を超えた聖装が、どうなるか」
一番最初に殴られたとき、鞘で炎を吸収できなかった。
同じだろう。彼女だって自分の想定以上の炎は扱えない。
「こ、こんな、搦め手で、私が――うぐうううううっ!」
獄炎卿の鎧が、エラーを起こしたように紅白に点滅。
限界突破した炎に包まれ、彼女は断末魔の叫びを上げる。
「カ、カゲルヤ・ノアァ――!」
刹那。彼女の鎧が大爆発を起こす。
黒い爆風が上がり、熱波によって僕はまた吹き飛ばされる。
「女王なんかに、従ったから負けたんだ……!」
必死に熱さに耐えながら、敗北しただろう彼女に告げる。
――大技を決めた後、ちゃんとトドメをさしていれば!
――正々堂々やれば、あんなにも強いのに!
嫌いな拷問なんかせずに、己の勝利だけを求めるべきだった。
「……死んでないことだけを、祈ってます」
彼女の屈強な肉体なら、たぶん生き残っているはず。
どちらにせよ勝敗はついたのだ。
彼女が生きていても、意識どころか戦える余力はもうな――
「――まだ、ですッ!」
黒煙の中から、怒号が響く。
姿を現したのは、満身創痍になったヴェルグ先輩。
鎧はほぼ全壊、丸裸に近い状態で、折れた大剣を引きずっている。
「あ、あの状態で、なんで立っていられ……」
生きていただけじゃない。
彼女の闘志がいまだ消えていないことに驚愕する。
「誇りがあれば、誇りを求める心があれば、私は戦える!」
全身を火傷し、血を流しながら大剣を掲げる。
「姫騎士は、常に、正々堂々たれ――!」
彼女がまだ戦えることに、複雑なカラクリなんてないんだ。
気合。根性。元気。騎士道精神。
彼女は心の強さだけで、ああして立ち上がれるのである。
「……結局、最後は精神論じゃ、ないですか」
しかし笑いはしない。
それでこそ、本物のヴェルグ・モルドレイドという感じだ。
「私は、負けたく、ない――!」
勝利を渇望する心が、敗北を拒絶する心が、彼女を突き動かす。
「やはり私は、私の誇りを信じたい、信じてきたから、こうして立ち上がれた!」
本当に窮地の時、自分を救えるのは自分だけ。
母親も、女王も、誰も助けてはくれない。
「もう命令は、聞かない、私が絶対の勝利を摑むために!」
獄炎卿の鍛えられた肉体は、彼女自身の想いに応えた。
そして少女も、命を救ったのが誇りのお陰と、ついに気づいたのだ。
「……ここでの最適解は、逃げること」
彼女が限界なのは明らかだ。
大技を放てるのだって、せいぜいあと一回だろう。
逃げ回って時間を稼げば、彼女は勝手に自滅する。
「……わざわざ真正面から、殴り合うのは不正解だ」
僕はそう呟きながら、身体を気力で起き上がらせる。
そして先にいる美少女を見つめた。
「カゲルヤ・ノア! 私はここに告白する!」
彼女は獰猛に笑って、僕へ切っ先を向けた。
「我が誇りを取り戻すため、貴君を完膚なきまでに叩き潰す――!」
そういえば、女の子から告白されたのは初めてだ。
しかも相手はとびきりの美少女ときた。
「ここで逃げたら……かっこ悪すぎる、か」
僕は鞘内に作った剣を抜く。
真っ向勝負が戦略的に間違っているのは、百も承知だ。
「でも、女の子の告白を無視するのは、もっと間違いだ」
人間関係や進路選択の問題に、絶対の正解はない。
それでも、どちらがより間違ってるか、それは何となく分かるものだ。
「ふふ……良いのですか、私の告白を受けて。貴君も限界なのでしょう?」
剣を構えた僕に、獄炎卿が嬉しそうに応える。
「七聖クラスの能力を吸収する。それがどれだけの負荷をかけているか」
戦う中で、この聖装の弱点を見抜かれたようだ。
「推測するに、私の炎もあの氷も、一日に何度もは使えないはずです」
その通り。無制限に使用できるなら僕は最強だ。
聖装たる鞘は確かに成長したとも。
でも、身長や筋肉や体格など、僕自身の肉体は平凡のままだ。
「……僕は吸収できても、それを十分使えるだけの身体性能がない」
獄炎卿があれだけ炎を扱えるのは、鍛えられた肉体があってこそなのだ。
「身の丈に遭わない能力は命を削ります」
「………………」
「それを知ってなお、貴君はその力を使うのですか?」
「……っは、そんなつまんないこと、訊かないでくださいよ」
「つまらない?」
「常識とか倫理とか、そういう面倒なの、この異世界では不要でしょう?」
勝てばいい。とにかく勝てば報われるのだ。
「ふふ。そうですね。愚問でした。では……」
「ええ。そろそろ決着、つけましょうか……」
これが最終決戦。彼女が叫んで僕も叫ぶ
「姫騎士学園二年、ヴェルグ・モルドレイド――いざ尋常に勝負です!」
「姫騎士学園一年、カゲルヤ・ノア――受けて立ちます!」
僕たちは意中の相手を求め、真っ直ぐに駆けだした。