姫騎士学園の下剋上性活 ~最弱スキルで異世界のプライド高め美少女たちを堕としたら、毎晩ご奉仕に来る日々が始まった~   作:東雲(しののめ)

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第23話:決闘②

 炎と氷が相殺され、周囲には水蒸気が漂う。

 白煙の中で相対する彼女を見て、僕は唇を噛んだ。

 

「――よくできた不意打ちだったと、評価はします」

 

 完璧に隙をついたはずだった。

 しかし必殺の一撃は、装甲によってピンポイントに阻まれている。

 

「――聖装覚醒(エクス・レガリア)」

 

 先輩が唱えると、その身体がさらに燃え上がる。

 

「……っ!」

 

 爆風だけで僕の身体は吹っ飛んだ。

 地面を転がり受け身、すぐに立ち上がって敵を見据える。

 

「本当は、あれを出させる前に、終わらせたかった……!」

 

 彼女の戦闘服が、一瞬にして焼き切れる。

 完全に裸になった――と思った瞬間には変身。

 その巨躯が真紅の鎧に覆われる。

 

「これが私の完全武装化――『紅蓮(ぐれん)閻獄(えんごく)(がい)』!』

 

 手足はゴツい装甲に覆われ、両肩には謎の巨大兵器を装備。

 ただ鎧という割には露出が多く、秘部は最低限にしか隠されず。

 超爆乳もほとんど見えている状態だが……。

 

「なんて、聖気の放出量……!」

 

 鎧の一部なのだろう、頭部には二つの角ようなものを生やす。

 他の生徒は風紀統括長を、番犬みたいだと称するが――

 しかし別世界から来た僕には、もっと強大な存在が被って見える。

 

 ――彼女をモンスターに喩えると、最強種のドラゴン。

 

 その見解は間違っていなかったと、改めて確信する。

 

「これが、同じ人間なのか……!?」

 

 身体へ負荷をかけないため、普段は剣のみ召喚する。

 その状態で使える聖装の力は、本来の三割程度に留まるが。

 

「――これで私は、自分の力を百%使える」

 

 一歩を踏み出すだけで、空間がひずみ大地が揺れる。

 熱風が吹き荒れて、フィールドを覆う結界にもヒビが入るほどだ。

 

「八獄が一手、黒縄獄(こくじようごく)」

 

 両肩の巨大兵器、その正体は砲台だったらしい。

 ピカッ! 一瞬の閃きの後、極太の熱線(レーザー)が放たれた。

 

「……近距離でも厄介なのに……飛び道具まで!」

 

 転がって全力回避すると、熱線は背後の壁を貫通。

 そのまま学園外まで伸びていき――

 ドガアアアアアアアアアアアアアンン!

 遙か彼方にある山にぶつかり、それを丸ごと吹き飛ばした。

 

「地形すら、簡単に変えるのか……?」

 

 学園ナンバーワンの攻撃力は伊達じゃない。

 百年に一人の天才姫騎士、その評価に偽りなし!

 

「もっと距離を取らないと――」

「――させません。燃焼転回(コンバスシヨン・ドライブ)」

 

 大剣をその場でグルリとぶん回す。

 強い炎を出せば、それだけ周囲の空気を集める。

 全ての大気が彼女に吸い寄せられ――僕の身体も風に掠われる。

 

「まずっ……【絶対零度】!」

 

 飛ばされないよう、足首から下を地面に氷でくっつけるが。

 

燃焼(コンバスシヨン)大転回(・ダブル・ドライブ)

 

 覚醒したからこそ成せる技なのか。

 彼女はさらに強火で回転、吸引力を増大させる。

 

「……じ、地面が、浮き上がってっ!?」

 

 最初の地割れで緩んだのも手伝い、足場が大きく浮上する。

 僕は地面ごと獄炎卿の元に吸い込まれて――

 

「八獄が一手――」

 

 大技のためか鎧を再変形、砲台が反転して加速の逆噴射。

 ……彼女の覚醒は、超攻撃特化から、超々々々攻撃特化になること!

 大剣も全身武装も、より禍々しく変形してしまった。

 

「――焦熱地獄!」

 

 僕の身体に、真紅の大剣が叩きつけられた。

 

「……がはっ!」

 

 防御に全能力全神経を回すが、簡単に突破されてしまう。

 剣を砕かれ、土手っ腹を打ち抜かれ、ほぼ全ての肋骨が断絶。

 業火に包まれたまま、僕は壁に激突した。

 

「う、うぐぅぅ……ぐは……っつは!」

 

 大地に倒れ込み、そのまま口から大量吐血。

 血だまりには細かい骨片が浮いていた。

 内臓に骨が刺さり、血と一緒に吐き出されたのだろう。

 

「――肉体を両断するつもりだったのですが」

 

 メラメラ燃えながら近づいてくる獄炎卿。

 覚醒状態では、炎を全身に纏っても問題ないらしい。

 

「――粉砕骨折程度で済ませるとは、貴君の対応力と頑丈さには感服します」

 

 這いつくばる僕を、仁王立ちして見下す。

 

「――もう十分です――せめて一撃で――」

 

 そして大剣を振り上げた時である。

 

『――ヴェルグ』

 

 玉座にいた女王が、待ったの命令を下す。

 

『まだまだ愉しめるであろう?』

「女王様……しかし……」

『やれ』

「…………かしこまりました」

 

 獄炎卿は大剣をゆっくりと地面に降ろした。

 そして代わりに、僕の左手の指を、足で踏み潰す。

 

「ッッッッッ~~……!」

「耐えなさい。まずは一本です」

 

 再びの拷問。親指から小指まで順番に潰されていく。

 しかも炎の鎧に覆われた足は超高熱。

 指を折られると同時に、ジュゥゥゥと音をたてキツく焼かれる。

 

「っく……い……ぅう……!」

 

 僕はもう言葉も発せなかった。

 地獄のような痛みと苦しみ、それに呻くしかない。

 

『くは、くはははははは、ははははははははははははは!』

 

 女王が大爆笑。観衆もこの光景を嘲笑しながら見物していた。

 

「……左手は済みました……これで……」

『ヴェルグ! まだ右手も両足も残っておるだろう!』

「……ですが、騎士として……」

『やれ! それとも余の命令に逆らうのか!?』

「………………はい」

 

 しかし不思議なもので。

 ……やっぱり彼女の方が、自分よりも辛そうな顔してる。

 いま一番痛い目に遭っているのは、僕のはずなのに。

 

「――だ、ったら――」

 

 彼女のために、もっと戦えると思える。

 まだ逆転できる手はあるのだ。あとは――自分の気持ち次第!

 

「……【絶対零度】!」

 

 腰につけていた鞘内に、銀色の剣を生成する。

 氷の能力を発動させるため、血みどろの左手を鞘へ持って行くが―― 

 

「無駄な抵抗です」

 

 僕が剣を抜くより先に、獄炎卿の足が動く。

 銀色の剣柄を踏み潰され、生成された剣が呆気なく消失する。

 

「――無駄じゃ、ない」

 

 だって、僕が本当に使いたかった力は、絶対零度ではないから。

 

「能力再現(リバイバル)っ!」

 

 銀の剣が消えて、代わりに薄緑の剣が現れた。

 そしてその剣柄が、獄炎卿の足にピタッと触れる。

 

「【旋風】」

 

 昨日打ち合わせをして、今朝ウルズから密かに渡された力だ。

 剣を鞘に収めたまま、その風の能力を発動する。

 

「ですから無駄な抵抗です! 今の私に貴君の攻撃は通じな――」

 

 決闘をすればこうなると覚悟していたはず、と怒る。

 みっともなく足掻く僕を見て、彼女はカチンと来たらしい。

 全身から一層激しい大炎が発せられる。

 

「――感情に引っ張られて炎を出す、知ってますよ――」

 

 学園初日の朝、見せてもらったから。

 そして、そこまで炎を出してもらえれば十分。

 

「――なぜなら、これは攻撃じゃ、ない!」

 

 僕は旋風を使い、ありったけの風を彼女に送り込む。 

 ――覚醒状態で初めて、百%の炎を使うことができる。

 強力な分、身体に掛かる負荷は相当なものだろう。

 

「……そこでさらに、僕が炎を強化してあげたら、どうなります?」

「貴君! まさか風の燃料を私に与えて――っ!?」

 

 本人が扱える以上の火力を、こっちから出させてやる。

 平常時と比べ、覚醒では百%の炎を扱えるって? 

 では百五十%の炎は? では二百%の炎になったら? 

 

「僕は知っている――許容量を超えた聖装が、どうなるか」

 

 一番最初に殴られたとき、鞘で炎を吸収できなかった。

 同じだろう。彼女だって自分の想定以上の炎は扱えない。

 

「こ、こんな、搦め手で、私が――うぐうううううっ!」

 

 獄炎卿の鎧が、エラーを起こしたように紅白に点滅。

 限界突破した炎に包まれ、彼女は断末魔の叫びを上げる。

 

「カ、カゲルヤ・ノアァ――!」

 

 刹那。彼女の鎧が大爆発を起こす。

 黒い爆風が上がり、熱波によって僕はまた吹き飛ばされる。

 

「女王なんかに、従ったから負けたんだ……!」

 

 必死に熱さに耐えながら、敗北しただろう彼女に告げる。

 ――大技を決めた後、ちゃんとトドメをさしていれば!

 ――正々堂々やれば、あんなにも強いのに!

 嫌いな拷問なんかせずに、己の勝利だけを求めるべきだった。

 

「……死んでないことだけを、祈ってます」

 

 彼女の屈強な肉体なら、たぶん生き残っているはず。

 どちらにせよ勝敗はついたのだ。

 彼女が生きていても、意識どころか戦える余力はもうな――

 

「――まだ、ですッ!」

 

 黒煙の中から、怒号が響く。

 姿を現したのは、満身創痍になったヴェルグ先輩。

 鎧はほぼ全壊、丸裸に近い状態で、折れた大剣を引きずっている。

 

「あ、あの状態で、なんで立っていられ……」

 

 生きていただけじゃない。

 彼女の闘志がいまだ消えていないことに驚愕する。 

 

「誇りがあれば、誇りを求める心があれば、私は戦える!」

 

全身を火傷し、血を流しながら大剣を掲げる。

 

「姫騎士は、常に、正々堂々たれ――!」

 

 彼女がまだ戦えることに、複雑なカラクリなんてないんだ。

 気合。根性。元気。騎士道精神。

 彼女は心の強さだけで、ああして立ち上がれるのである。

 

「……結局、最後は精神論じゃ、ないですか」

 

 しかし笑いはしない。

 それでこそ、本物のヴェルグ・モルドレイドという感じだ。

 

「私は、負けたく、ない――!」

 

 勝利を渇望する心が、敗北を拒絶する心が、彼女を突き動かす。

 

「やはり私は、私の誇りを信じたい、信じてきたから、こうして立ち上がれた!」

 

 本当に窮地の時、自分を救えるのは自分だけ。

 母親も、女王も、誰も助けてはくれない。

 

「もう命令は、聞かない、私が絶対の勝利を摑むために!」

 

 獄炎卿の鍛えられた肉体は、彼女自身の想いに応えた。

 そして少女も、命を救ったのが誇りのお陰と、ついに気づいたのだ。

 

「……ここでの最適解は、逃げること」

 

 彼女が限界なのは明らかだ。

 大技を放てるのだって、せいぜいあと一回だろう。

 逃げ回って時間を稼げば、彼女は勝手に自滅する。

 

「……わざわざ真正面から、殴り合うのは不正解だ」

 

 僕はそう呟きながら、身体を気力で起き上がらせる。

 そして先にいる美少女を見つめた。

 

「カゲルヤ・ノア! 私はここに告白する!」

 

 彼女は獰猛に笑って、僕へ切っ先を向けた。

 

「我が誇りを取り戻すため、貴君を完膚なきまでに叩き潰す――!」

 

 そういえば、女の子から告白されたのは初めてだ。

 しかも相手はとびきりの美少女ときた。

 

「ここで逃げたら……かっこ悪すぎる、か」

 

 僕は鞘内に作った剣を抜く。

 真っ向勝負が戦略的に間違っているのは、百も承知だ。

 

「でも、女の子の告白を無視するのは、もっと間違いだ」

 

 人間関係や進路選択の問題に、絶対の正解はない。

 それでも、どちらがより間違ってるか、それは何となく分かるものだ。

 

「ふふ……良いのですか、私の告白を受けて。貴君も限界なのでしょう?」

 

 剣を構えた僕に、獄炎卿が嬉しそうに応える。

 

「七聖クラスの能力を吸収する。それがどれだけの負荷をかけているか」

 

 戦う中で、この聖装の弱点を見抜かれたようだ。

 

「推測するに、私の炎もあの氷も、一日に何度もは使えないはずです」

 

 その通り。無制限に使用できるなら僕は最強だ。

 聖装たる鞘は確かに成長したとも。

 でも、身長や筋肉や体格など、僕自身の肉体は平凡のままだ。

 

「……僕は吸収できても、それを十分使えるだけの身体性能がない」

 

 獄炎卿があれだけ炎を扱えるのは、鍛えられた肉体があってこそなのだ。

 

「身の丈に遭わない能力は命を削ります」

「………………」

「それを知ってなお、貴君はその力を使うのですか?」

「……っは、そんなつまんないこと、訊かないでくださいよ」

「つまらない?」

「常識とか倫理とか、そういう面倒なの、この異世界では不要でしょう?」

 

 勝てばいい。とにかく勝てば報われるのだ。

 

「ふふ。そうですね。愚問でした。では……」

「ええ。そろそろ決着、つけましょうか……」

 

 これが最終決戦。彼女が叫んで僕も叫ぶ

「姫騎士学園二年、ヴェルグ・モルドレイド――いざ尋常に勝負です!」

「姫騎士学園一年、カゲルヤ・ノア――受けて立ちます!」

 

 僕たちは意中の相手を求め、真っ直ぐに駆けだした。

 

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