姫騎士学園の下剋上性活 ~最弱スキルで異世界のプライド高め美少女たちを堕としたら、毎晩ご奉仕に来る日々が始まった~ 作:東雲(しののめ)
「八獄が最終手――」
折れた大剣から、これまでで最も巨大な炎が生じる。
「――大焦熱地獄ッッッ!」
全身全霊。持ちうる全てを注ぎ込んだ大技。
ひたすら攻撃力全振りで、ただただ剣を叩きつける力業だ。
「【獄炎業火】!」
右手の紅の長剣を振るうが、あっけなく砕かれる。
彼女の剣の炎を僅かに弱めたが、僕の右腹をえぐって駆け抜けた。
「【絶対零度】!」
まだ終わらない。獄炎卿が下から猛追してくる。
それに対し、さらに白銀の剣をぶつけるが、やはり粉砕された。
僕の頬を一枚裂いて、大剣は空へと抜ける。
「【旋風】!」
獄炎卿も足を踏ん張り、ダメ押しの上段から振り下ろし。
火力をだいぶ減らしながらも、薄緑の剣を両断、僕の左腕を切断した。
「これで、詰みです――!」
持っている武器を全て破壊した、と。
そう目で語る彼女は、最後となる必殺の一撃を放つ。
「――いや。まだ武器はある」
獄炎卿は隙が多い。攻撃特化すぎて防御が甘いのだ。
そして決着が付くと勝手に思い込んで、今までで一番の大ぶり――
「なっ!? 鞘で受け止めた!?」
三つの能力を犠牲にして、彼女の炎は随分と力を落とした。
ここが絶好のタイミングと、自分の聖装をぶつけたのだ。
「パズルの、最後のピースは、僕自身の力――!」
普段なら砕かれそうな鞘だが、この状況に限ってはそうではない。
「カゲルヤ……貴君は……!」
「……鞘だって、立派な武器だ!」
折れた大剣を、逸らすようにして弾き飛ばす。
そして自らの鞘を、鈍器にしてフルスイング。
「――勝利のためには、手段は選ばない!」
告白してくれた美少女の頭を、思いっきり打ち抜いたのだった。
***
頭部を強打され、獄炎卿がぶっ倒れる。
鎧は喪失している上、大剣さえも手放してしまう。
「う、ぐぅ……!」
これで気を失っていないのだから、すさまじい肉体の強さだ。
彼女は地に手を突き、なんとか起き上がろうとする。
「――僕の、勝ちです」
鞘を持って、彼女の頭に向ける。
もしもう一度振り抜けば、さすがの獄炎卿も再起不能だ。
観衆も勝敗を理解し、重く静まり返るが――
『こ、このゴミクズ女がぁぁぁぁぁぁ!』
女王が沈黙を破って、いきなり汚い言葉を叫び散らす。
『七聖が男に負けるなど! 大醜態だ! さっさと死ねこの駄犬が!』
ヴェルグ先輩を犬呼ばわりして罵倒を始める。
「女王様……」
母代わりであった彼女の変わりよう。
先輩はそれを見て、膝をついたまま動けない。
『才覚が少々あったゆえ、貴様のような薄汚い孤児を拾ってやったのに!』
「わ、私は、これまで、女王様のために……」
『貴様は最悪の駒であった! 頭が硬く、融通が利かず――腕力しかない無能のくせに、余に会うたびにバカな犬のように尻尾を振る! 鬱陶しいったらなかったわ!』
「っ…………!」
女王のために力を尽くして。
会える日が来たら精一杯の化粧もして。
しかし先輩のその想いは、何一つだって届いていなかったのだ。
『とっとと死に失せろ! 貴様の顔を見ているだけで吐き気がするわ!』
母のようと慕っていた人物に、完全に切り捨てられる。
ヴェルグ先輩の目から、一滴の涙が零れた。
「――……私を殺しなさい。カゲルヤ・ノア」
女王に捧げた人生は、あっけなく終わりを迎えた。
彼女の心中、その絶望は、他人である僕には推し量れない。
「殺しません」
しかし終わったらなら始めればいいのだ。
僕のように、第二の人生を。
「……私の降参はないと、言ったはずです」
「もう決着はついています」
僕が殺さないと終わらないと、彼女は涙を流しながら怒鳴る。
「いいから……殺せっ……頼むから、殺してくれ……っっ!」
もうこんな世界にいたくない、と喚く。
しかし本当に決着はついているのだ。
「だって先輩、一番最初に言ったじゃないですか」
転校初日。空から隕石の如く降ってきた美少女。
彼女は他の姫騎士たちに向かって、こう宣言したのだ。
「涙は敗者の証」
先輩はハッとして面を上げる。
彼女が言った台詞を、僕をそのまま返してやる。
「女が泣いたら負け、なんですよね――?」
もう一度言う。だからこれで決着なんだ。
「……私など傍に置いても、厄介なだけですよ……」
「僕は、そう思いません」
でなければ、聖婚など端から申し出ない。
「……私と、一生を共にする覚悟は、ありますか?」
「もちろん」
「…………ふっ、やはり貴君は、大馬鹿者ですね」
少女は目元を緩ませ笑った。
それから涙を拭って、なんとか立ち上がって口を開く。
女王と、そして大観衆に聞こえるよう堂々宣言。
「ヴェルグ・モルドレイド――降参(リザルト)、します」
その言葉を聞いて、会場中がどよめいた。
下剋上――弱者の男が、強者の女を倒したのだ。
さらにこの光景は、通信設備により国中に届いている。
『こ、降参!? 馬鹿者めが! 自害だ! 自ら腹を切れェ!』
外野にいる女王が獄炎卿を責め立てる。
しかしその必要はないと、僕は首を振って否定を示す。
「勝者であるカゲルヤが望んでいない……ゆえに、自害はいたしません」
『こ、この恥知らずのクソ女がぁぁぁ!』
女王が怒髪天。一層激しく罵ろうとするが――
「――――あんまり怒ると、シワがもっと増えるのに」
僕のボソッとした呟きに、女王は目を見開く。
『シ、シシシシ、シワァ!? 余にそんなものないわ!』
「……一番顕著なのは、手の甲で……」
『でたらめを抜か――お、おい映像でアップにするな! さっさと放送を止めろォ!』
女王は大慌てで、通信設備を止める。
『カ、カゲルヤァ! 余のことをまた……』
「ババア……いやクソババア扱い?」
『ク、クソバ……もう許さん! 絶対に許さんからなっ!』
すると女王はムリヤリに余裕ぶった笑みを浮かべた。
そして部下たちに何か命令を発っそうとする。
『おい! 準備させていた騎士団を動かし――』
「――当てつけに、収容所の男たちを殺戮する、と?」
僕が先回りしてその命令を、言い当てる。
『な、ど、どうして……それを……』
「……僕が勝っても負けても、あくどい嫌がらせをするのは予想してた」
なにせ腐りきった性根の持ち主だ。
だが前回の拷問のようにはいかない。既に手は打ってある。
『――じょ、女王様! 大変です!』
部下の一人が、凄まじい形相で女王に駆け寄る。
『な、何事だ!?』
『そ、それが……配備していた騎士たちが、全滅して、います』
『はぁ!?』
その時、会場空中にいきなり映像が映る。
『――お久しぶりですね、女王』
収容所をバックに、仮面をつけた銀髪の姫騎士が立っている。
『ゼ、ゼスティア・ゼネルヴィア……!』
『この程度の騎士の殲滅、わたしには容易いことです』
これがゼゼ先生にお願いした、もう一つのこと。
――収容所に先回し、女王の部下を倒してほしい。
それは達成したが、姿を晒し、僕が【絶対零度】まで借りたのだ。
学園内に氷絶卿が隠れていると疑われる不安はある。
しかしその心配は無用。
アリバイはもう完了して――って、細かい話は後で話そう。
『氷絶卿……貴様が余の配下を……!』
『いつか必ずあなたを倒します。どうかご覚悟を』
そこで通信が一方的に切られてしまい、プルプルと女王が震える。
女王の軍が、収容所に黙って配備されていた事実。
そこにダメ押しの追い打ちを掛ける。
「まさか僕を倒したくて、あの最強女王が、収容所を人質にしていたなんて……」
『ひ、人質ぃ!? 余はそんな姑息なことは一度もせんわ!』
「……じゃあ僕の思い込み、今後はないみたいで安心だ」
『あ、当たり前だ! 勘違いも甚だしいわ!』
全生徒と全職員の手前、そう言わざるをえない。
しかし大衆の面前で釘は刺せた。
何かある度に、収容所の人々を人質を取られてはたまらない。
『お、おい! それより早く氷絶卿を追え! 絶対に逃すな!』
『じょ、女王様、まずはこの場を……』
伝説の姫騎士の登場、女王と僕のやり取り、そして男の下剋上。
それにより決闘場はすさまじい混乱に。
『くぅ! 決闘はこれにて仕舞いだ! そして此度の勝者は……勝者はぁ……!』
女王は悔しさ一杯という表情で、観衆に向かって宣言する。
『カゲルヤ・ノアであるッッ!』