姫騎士学園の下剋上性活 ~最弱スキルで異世界のプライド高め美少女たちを堕としたら、毎晩ご奉仕に来る日々が始まった~   作:東雲(しののめ)

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第48話:貫通

 実力、ね。

 そりゃ僕は剣術が上手いわけでも、授かった能力が強いわけでもない。

 でも実力差を覆すのが攻略というものだし。

 

「……それに、場数だけは、僕だって積んできている」

 

 今回もそう、迷宮で培った経験、頭脳を駆使して戦うだけだ。

 そこで、改めて自分へ問題を出そうじゃないか。

 

 ――彼女はなぜ、瞬間移動のようなことができる?

 

 いきなり距離が詰まったり、いきなり側面から現れたり……。

 その謎を解明しないと、僕に勝利はない。

 

「いきますわよ愚民! せいぜい逃げ回りなさいな!」

 

 ジャスティーヌ先輩の猛攻が再開。

 僕は【草蔦】で回避したり、【蒸気】で目眩まして逃げる。

 傷つきながら、貫かれながら、頭をフル回転させ――

 

「――高速移動って線はない――本当に一瞬で現れてくる――!」

 

 脚力を強化してるとか、そういう単純な話ではない。

 聖装の能力【貫通】を、どう使えばこの現象が起きるのか。

 早く答えを見つけないとジリ貧だ!

 

「お疲れかしら! 取り柄の逃げ足が遅くなってますわよ!?」

「ッ! 別に取り柄ってわけじゃ――って、え?」

 

 またしても攻撃をもらい、派手に吹っ飛ばされる間隙で。

 フィールドに残った蒸気に、大きなヒントを得た気がした。 

 

「……蒸気がランスに触れる前に消えていく?」

 

 本来なら、蒸気はランスに触れた後、貫かれ消えるべきだ。

 しかし現実はそうなっていない。

 

「――触れていないのに貫かれている――すると別の何かが貫かれて――それに付随する形で蒸気も消されて――……あっ! そういうことか!」

 

 瞬間移動のカラクリが、ようやく分かった。

 今一度距離を取ると、ずっと勝ち誇ったままの相手に告げる。

 

「……ランスで『空間』を貫いたわけ、ですね」

 

 そう呟くと、先輩は眉尻を上げた。

 

「ふぅん。見破りましたか。カグヤが見込んだ生徒というだけあります」

 

 この短い時間でよく分かったな、と得意げに笑う。

 

「その通りですわ。わたくしの聖装は森羅万象を穿つのです」

 

 僕と彼女の間に、どれほど物理的距離が開いていても関係ない。

 隔てる空間、三次元そのものに穴を空けて、中を最短で突っ切ってくる。

 正しくは瞬間移動ではない。

 空間移動、あるいは四次元移動と呼ぶ方がふさわしいかも。

 

「これで聖装覚醒でもしたら、時間や概念すらも貫けるんですかね?」

「…………さぁ。どうでしょうか」

 

 テキトーな感じでふっかけると、表情が強張り妙な間があった。

 ――ちょっとマズいな、これは。

 たぶん、たぶんだが、彼女の聖装はきっとそれができる。

 七聖のように完全覚醒できるかは分からないが。

 もし時間や概念まで操作されたら、さすがに勝ち目が薄い。

 

「……認めますよ。確かに強すぎる聖装です」

 

 正直にそう述べると、彼女はちょっと驚いてから哄笑。

 

「おほほ! ようやくわたくしに恐れをなしたようですわね!」

「…………」

「よろしい! その素直さに免じて施し(チヤンス)を与えます!」

「チャンス……?」

「ええ。わたくしの目標はあくまでカグヤに勝つこと。愚民の態度によっては、降参することを認めてもよろしくってよ? さっすが高貴なわたくしは器が大きい!」

 

 器が大きいって、自分で言っていてよく恥ずかしくないな。

 

「……一応訊きます。その態度ってのは?」

「ここで土下座なさい。そして保健室での非礼を詫びるのです」

 

 案の定、こちらのことを舐めきったロクでもない要求だ。

 ――ただ、場の流れが相手に傾きつつあるのも事実。

 もちろん要求は飲まないし、この流れをどうにか断ち切る必要がある。

 

「森羅万象、何でも貫くって言いますけど――」

 

 主導権を取り戻すためには、刺す言葉を返さないといけない。

 

「――でも、カグヤ先輩の盾だけは、貫けなかったんですよね?」

 

 そう告げると、彼女はこれまでで一番の険しい顔になる。

 以前にカグヤ先輩が『能力的に格付けは済んでいる』と言っていた意味――

 

「矛盾という熟語には、有名な逸話があります」

 

 曰く、とある商人が二つの武器を売っていた。

 一つが何でも防ぐ盾。もう一つが何でも貫く矛。

 では、両者がぶつかった時に勝つのはどちらか。

 逸話内では結局答えが出なかったが……。

 

「けどこの世界では答えが出た。勝ったのはカグヤ先輩の盾だった」

「っ! 知ったような口を……お黙りなさい!」

「だから格付け済み。その能力では一生カグヤ先輩に勝てない」

「わ、わたくしが施しを与えたのに! よほど痛い思いをしたいようですわね――!」 

 

 刹那、ジャスティーヌ・ダルクが一直線に突っ込んでくる。

 またも距離が急激に縮まり、気づけばもう目の前だ。

 

「貧相下劣な愚民には、百烈突きをお見舞いですわ!」

 

 超高速で刺突攻撃を繰り出してくる。

 

「どこが百発だ……せいぜい数十発だろうに……!」

「気持ちの問題ですのよ!」 

 

 致命傷は避けつつも、防戦一方の僕を見て彼女が笑う。

 途中、何度か炎を放つが、全て貫かれてしまう始末。

 ――このままだと押し切られる!

 残す手札はウルズの【旋風】ぐらいだが……。

 

「待っていなさいカグヤ! この男を葬りすぐに再挑戦ですわ!」

 

 天照卿の名前を叫んで自らを鼓舞。さらに攻撃の苛烈さを増す。

 しかしカグヤ先輩の名を聞いて、僕の脳裏に閃きが奔る。

 

「――そうだな――その手が最適解かもな――」

 

 温存してた【旋風】を発動。足に風を纏わせて加速移動をする。

 

「攻めるでなく、また距離を取って……とことん腰抜けですわね!」

 

 ジャスティーヌ先輩が、逃げる僕を猛追してくる。

 思った通りの展開。この人に後退なんて考えはないのだ。

 

「追い詰めました! これで決着ですわ!」

 

 訓練場の端まで来て、足を止めたところ、すかさず鋭い一撃を放ってきた。

 一見すれば絶体絶命の状況だが……。

 

 ――このフィールドには、特殊な結果が張られている。

 ――それは戦いの傷を全回復させる効果を持つ。

 ――そして同時に、観戦する人々を守る、防壁の役目を担っている。

 

 本気の獄炎卿の力でさえ、ヒビを入れただけで壊れはしなかった。

 しかし彼女の、何でも貫く能力であれば――

 

『なっ! 危ないやろ!』

 

 自分の背後は、ちょうど審判席がある。

 そこにいるのは、天照卿カグヤ・スメラギ。

 僕が紙一重でランスを躱すや、切っ先は結界を貫いて彼女に迫って――

 

『【天照煌盾】!』

 

 カグヤ先輩が己の身を守るため聖装召喚。

 この緊急事態でも、落ち着いて薙刀を一回転させる。

 ガキンッッ! 出現した盾にランスが止められた。

 

「能力再現……【蒸気】!」

「くっ! また目眩まし! 愚民はどこに――下っ!?」

 

 風で今日一の加速移動、死角から急所を狙う。

 無論相手は元六つ星、そんな不意打ちはお見通しだろう。

 実際、ジャスティーヌ先輩は突きをキャンセル、横薙ぎのカウンターを返してくる。

 

「能力再現――【天照煌盾】!」

 

 鞘から光の剣を生成、グルリと回す溜め動作をする。

 そうして出現するは光の盾。

 盾を作る速度も、盾の大きさも、全てカグヤ先輩には劣るだろう。

 しかし、どんな攻撃も必ず防ぐ、その特性だけは一緒だ。

 

「っ! さきほどカグヤの能力を吸収して! こんな荒唐無稽な手を……!」

「勝利があれば、それでいい……!」

 

 貫通を無力化。先輩のランスを完璧に受け止める。

 

「何でも貫く槍に対する最適解は、何でも防ぐ盾しかない」

 

 僕が闇雲に逃げていたわけではないと、ようやく相手も悟る。

 

「――くっ、こうなれば聖装の覚醒を――」

 

 ジャスティーヌ先輩にはまだ奥の手があったらしい。

 だが、使わせない。

 超至近距離まで詰めて、ランスの長所を活かせないようにする。

 動揺する彼女に、容赦なく剣を振り抜く。

 最後に、見届人のカグヤ先輩が、満足そうに結果を告げる。

 

『決着――カゲルヤくん勝ちや』

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