姫騎士学園の下剋上性活 ~最弱スキルで異世界のプライド高め美少女たちを堕としたら、毎晩ご奉仕に来る日々が始まった~ 作:東雲(しののめ)
実力、ね。
そりゃ僕は剣術が上手いわけでも、授かった能力が強いわけでもない。
でも実力差を覆すのが攻略というものだし。
「……それに、場数だけは、僕だって積んできている」
今回もそう、迷宮で培った経験、頭脳を駆使して戦うだけだ。
そこで、改めて自分へ問題を出そうじゃないか。
――彼女はなぜ、瞬間移動のようなことができる?
いきなり距離が詰まったり、いきなり側面から現れたり……。
その謎を解明しないと、僕に勝利はない。
「いきますわよ愚民! せいぜい逃げ回りなさいな!」
ジャスティーヌ先輩の猛攻が再開。
僕は【草蔦】で回避したり、【蒸気】で目眩まして逃げる。
傷つきながら、貫かれながら、頭をフル回転させ――
「――高速移動って線はない――本当に一瞬で現れてくる――!」
脚力を強化してるとか、そういう単純な話ではない。
聖装の能力【貫通】を、どう使えばこの現象が起きるのか。
早く答えを見つけないとジリ貧だ!
「お疲れかしら! 取り柄の逃げ足が遅くなってますわよ!?」
「ッ! 別に取り柄ってわけじゃ――って、え?」
またしても攻撃をもらい、派手に吹っ飛ばされる間隙で。
フィールドに残った蒸気に、大きなヒントを得た気がした。
「……蒸気がランスに触れる前に消えていく?」
本来なら、蒸気はランスに触れた後、貫かれ消えるべきだ。
しかし現実はそうなっていない。
「――触れていないのに貫かれている――すると別の何かが貫かれて――それに付随する形で蒸気も消されて――……あっ! そういうことか!」
瞬間移動のカラクリが、ようやく分かった。
今一度距離を取ると、ずっと勝ち誇ったままの相手に告げる。
「……ランスで『空間』を貫いたわけ、ですね」
そう呟くと、先輩は眉尻を上げた。
「ふぅん。見破りましたか。カグヤが見込んだ生徒というだけあります」
この短い時間でよく分かったな、と得意げに笑う。
「その通りですわ。わたくしの聖装は森羅万象を穿つのです」
僕と彼女の間に、どれほど物理的距離が開いていても関係ない。
隔てる空間、三次元そのものに穴を空けて、中を最短で突っ切ってくる。
正しくは瞬間移動ではない。
空間移動、あるいは四次元移動と呼ぶ方がふさわしいかも。
「これで聖装覚醒でもしたら、時間や概念すらも貫けるんですかね?」
「…………さぁ。どうでしょうか」
テキトーな感じでふっかけると、表情が強張り妙な間があった。
――ちょっとマズいな、これは。
たぶん、たぶんだが、彼女の聖装はきっとそれができる。
七聖のように完全覚醒できるかは分からないが。
もし時間や概念まで操作されたら、さすがに勝ち目が薄い。
「……認めますよ。確かに強すぎる聖装です」
正直にそう述べると、彼女はちょっと驚いてから哄笑。
「おほほ! ようやくわたくしに恐れをなしたようですわね!」
「…………」
「よろしい! その素直さに免じて施し(チヤンス)を与えます!」
「チャンス……?」
「ええ。わたくしの目標はあくまでカグヤに勝つこと。愚民の態度によっては、降参することを認めてもよろしくってよ? さっすが高貴なわたくしは器が大きい!」
器が大きいって、自分で言っていてよく恥ずかしくないな。
「……一応訊きます。その態度ってのは?」
「ここで土下座なさい。そして保健室での非礼を詫びるのです」
案の定、こちらのことを舐めきったロクでもない要求だ。
――ただ、場の流れが相手に傾きつつあるのも事実。
もちろん要求は飲まないし、この流れをどうにか断ち切る必要がある。
「森羅万象、何でも貫くって言いますけど――」
主導権を取り戻すためには、刺す言葉を返さないといけない。
「――でも、カグヤ先輩の盾だけは、貫けなかったんですよね?」
そう告げると、彼女はこれまでで一番の険しい顔になる。
以前にカグヤ先輩が『能力的に格付けは済んでいる』と言っていた意味――
「矛盾という熟語には、有名な逸話があります」
曰く、とある商人が二つの武器を売っていた。
一つが何でも防ぐ盾。もう一つが何でも貫く矛。
では、両者がぶつかった時に勝つのはどちらか。
逸話内では結局答えが出なかったが……。
「けどこの世界では答えが出た。勝ったのはカグヤ先輩の盾だった」
「っ! 知ったような口を……お黙りなさい!」
「だから格付け済み。その能力では一生カグヤ先輩に勝てない」
「わ、わたくしが施しを与えたのに! よほど痛い思いをしたいようですわね――!」
刹那、ジャスティーヌ・ダルクが一直線に突っ込んでくる。
またも距離が急激に縮まり、気づけばもう目の前だ。
「貧相下劣な愚民には、百烈突きをお見舞いですわ!」
超高速で刺突攻撃を繰り出してくる。
「どこが百発だ……せいぜい数十発だろうに……!」
「気持ちの問題ですのよ!」
致命傷は避けつつも、防戦一方の僕を見て彼女が笑う。
途中、何度か炎を放つが、全て貫かれてしまう始末。
――このままだと押し切られる!
残す手札はウルズの【旋風】ぐらいだが……。
「待っていなさいカグヤ! この男を葬りすぐに再挑戦ですわ!」
天照卿の名前を叫んで自らを鼓舞。さらに攻撃の苛烈さを増す。
しかしカグヤ先輩の名を聞いて、僕の脳裏に閃きが奔る。
「――そうだな――その手が最適解かもな――」
温存してた【旋風】を発動。足に風を纏わせて加速移動をする。
「攻めるでなく、また距離を取って……とことん腰抜けですわね!」
ジャスティーヌ先輩が、逃げる僕を猛追してくる。
思った通りの展開。この人に後退なんて考えはないのだ。
「追い詰めました! これで決着ですわ!」
訓練場の端まで来て、足を止めたところ、すかさず鋭い一撃を放ってきた。
一見すれば絶体絶命の状況だが……。
――このフィールドには、特殊な結果が張られている。
――それは戦いの傷を全回復させる効果を持つ。
――そして同時に、観戦する人々を守る、防壁の役目を担っている。
本気の獄炎卿の力でさえ、ヒビを入れただけで壊れはしなかった。
しかし彼女の、何でも貫く能力であれば――
『なっ! 危ないやろ!』
自分の背後は、ちょうど審判席がある。
そこにいるのは、天照卿カグヤ・スメラギ。
僕が紙一重でランスを躱すや、切っ先は結界を貫いて彼女に迫って――
『【天照煌盾】!』
カグヤ先輩が己の身を守るため聖装召喚。
この緊急事態でも、落ち着いて薙刀を一回転させる。
ガキンッッ! 出現した盾にランスが止められた。
「能力再現……【蒸気】!」
「くっ! また目眩まし! 愚民はどこに――下っ!?」
風で今日一の加速移動、死角から急所を狙う。
無論相手は元六つ星、そんな不意打ちはお見通しだろう。
実際、ジャスティーヌ先輩は突きをキャンセル、横薙ぎのカウンターを返してくる。
「能力再現――【天照煌盾】!」
鞘から光の剣を生成、グルリと回す溜め動作をする。
そうして出現するは光の盾。
盾を作る速度も、盾の大きさも、全てカグヤ先輩には劣るだろう。
しかし、どんな攻撃も必ず防ぐ、その特性だけは一緒だ。
「っ! さきほどカグヤの能力を吸収して! こんな荒唐無稽な手を……!」
「勝利があれば、それでいい……!」
貫通を無力化。先輩のランスを完璧に受け止める。
「何でも貫く槍に対する最適解は、何でも防ぐ盾しかない」
僕が闇雲に逃げていたわけではないと、ようやく相手も悟る。
「――くっ、こうなれば聖装の覚醒を――」
ジャスティーヌ先輩にはまだ奥の手があったらしい。
だが、使わせない。
超至近距離まで詰めて、ランスの長所を活かせないようにする。
動揺する彼女に、容赦なく剣を振り抜く。
最後に、見届人のカグヤ先輩が、満足そうに結果を告げる。
『決着――カゲルヤくん勝ちや』