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週末、俺はすずかの家に招待された。俺だけでなくなのはやアリサも招待されているらしいがもう先に来ているのだろうか? ま、結局、いつもの四人で楽しく週末過ごしましょうってお誘いなわけだ。
「……相も変わらずデカい家だ」
正面の門の前に立ってそう呟く。
今までにも何回かこういったことはあった。ある時はアリサの家、あるときはなのはの家で。因みにこの週末の集まりで一番集合場所になりやすいのがこのすずかの家で、一番なりにくいのが俺の家だ。ま、なにせ俺の部屋ってほとんど物がないからな。『アンタの部屋殺風景すぎるでしょ! なにか趣味とかないわけ!?』と初めて俺の部屋にきたアリサに突っ込まれたほどだ。
……趣味はあったんだよ。この世界にはないだけでッ!
「っとと、落ち着け……。……よし」
いくつか深呼吸した後、俺はインターホンを押す。……こういう家でもインターホンの音は変わらないんだな。と変な感心しているとインターホンから落ち着いた女性の声が聞こえる。
『烏丸様、ようこそいらっしゃいました。今、門を開けますね』
「お願いします」
その声と共に門が自動で開く。この大きさの金属製の門なのに軋み音などがまったく聞こえないことを考えるによく整備されてるんだろう。
「しかし、門から実際に住んでる家まで距離がある。ってのは金持ちあるあるなのかね?」
よく手入れされている庭の間を通りながら俺は邸宅を目指して再び歩き始めた。
「あー! 九朗、やっと来たわね!」
「くー君おはよー」
「九朗くん、おはよう」
「ん、おはよう。……『やっと』って、時間には間に合ってるはずだが?」
本邸についたあと月村家のメイド長であるノエルさんに案内されてすずか、アリサ、なのはのいる場所まで案内された。
案内された場所では三人がお茶を飲みながらおしゃべりしていた。なのははコップを両手で持ってかわいらしくコクコクと飲んでいて、すずかとアリサは上品に洗練された動作ってやつで飲んでいる。こうみるとアリサもちゃんとお嬢様なんだよなぁ……。普段の言動と俺が入ってきたのを見た瞬間コップを置いてこちらに指さしたりしなければ。
「お茶を用意いたします。九朗様はいつもの物でよろしいでしょうか?」
ノエルさんがそう話しかけてくる。んー、ついにいつもので通じるようになってしまった。まぁ毎回あれを頼んでいたしそうなるか。
けど……うん。
「いや、ノエルさんのおすすめでお願いします」
「かしこまりました」
俺の答えにノエルさんはいつも通り返したつもりだろうが少しだけ驚いた表情を浮かべたのを俺は見逃さなかった。ノエルさんの驚いた表情なんてレアものだな。ノエルさんがお茶の準備で離れていったので俺も部屋の中へと足を編み入れる。
「ってなんだその表情」
部屋の中ではなのは達までもが驚いた表情でこちらを見ていた。
「いや、九朗がいつもと違うお茶を頼んだからちょっと……」
「九朗くん大丈夫?」
「……」
ええい、お茶一つでそんな驚くな! 今まで俺がこのお茶会で飲んできたのはダージリン。出来ればセカンドフラッシュのものだ。このダージリン、『ホトリエノール』という成分がよく含まれている紅茶なのだが効能としては交感神経の働きを抑え、副交感神経を高める。要は強い鎮静・対ストレス効果が高いってこと。
俺がもっとも絶望していた時期にすずかが少しでも俺の気分を楽にしようとこのお茶会でおすすめしてくれたお茶だ。以降毎回俺はこのダージリンを飲んでいたのだが……。
「今の俺はそんなに苦しんでないからな。そろそろ他のお茶も飲んでみたくなったんだが……そんなに変か?」
「ううん、そんなことないよ。そっか……良かった……」
「そういえば確かに。九朗もちらほら笑うようになってたわね」
俺の言葉にすずかは安心した表情を浮かべて、アリサが最近の俺の様子を思い出してそんなことを言う。ふーん、アリサがそんなことを言うぐらいだし結構笑ってるんだろうな……。
ん?
「なのは?」
そんな中なのはが席を立って俺そばに来てこちらの顔を覗き込んでくる。
「……くー君、本当に大丈夫?」
「あぁ、大丈夫だって」
まるで何かを確かめるようにそう聞いてくるなのは。一体なにがそんなに心配なんだろうか? 元々視覚に以上があったわけではないのだが、最近は世界が色鮮やかに見えるし、頭だって冴えている気がする。ここのところの俺は間違いなく転生後一調子がいい。
「それよりも、ほら、席に着こうぜ」
「……うん」
俺はなのはの肩を押して先に座らせ、俺自身も席について会話に混ざる。途中ユーノがすずかの家の猫に追いかけられるというハプニングもあったがお茶会の時間はゆっくり楽しく過ぎていった。
過ぎていく、はずだった。
――なんか……つまらない?――
もしかして俺が思っている以上にダージリンの効果はあったのか!? 最近の調子の良さや頭の冴えなら、なくても大丈夫だと思ってたんだけど……。ダメだ、ダメダメダメ……! 落ち着け、冷静に……今の俺は笑えているか? つまらなそうな顔なんかしてないよな!? 大丈夫、頭はボーっとしてない、世界も色鮮やかなままだ。
ならどうして!? どうしてこんなに……物足りなさを感じてるんだ俺は!?
「――ッ!」
「――ぁ」
「キュイ!」
俺、なのは、ユーノがわずかに反応する。近くでジュエルシードが発動したらしい。あの瞬間独特の
「(なのは、九朗!)」
「(分かってる、ジュエルシードだろう?)」
「(すぐ近くだね。どうしよう……)」
なのははちらりとすずかとアリサを見る。確かにこのお茶会の状況でジュエルシードを探しに行くのには二人が
「(そうだ!)キューーー!」
「(ん?)」
なにかを思いついたらしいユーノが鳴き声を上げながらジュエルシードの反応があった森の方へ駆け出していく。……なるほどね、そういうことか。
「あれ!? ユーノくん?」
「ユーノ、どうかしたの?」
なのはが席を立ちユーノを探すふりをする。それにアリサが反応して声をかける。
「うん。ユーノくん、なにかを見つけたみたいで森のほうに入って行っちゃったみたい。ちょっと探してくるね!」
「一緒に行こうか?」
「まてすずか、俺が一緒にいってくる」
席を立とうとしたすずかを席に座らせて変わりに俺が行くといって立ち上がる。
「行くぞ、なのは」
「うん」
そういって俺となのははすずかの敷地内にある庭……というかもう森だよなこれ。森の中へと走っていく。
「ダメだ、ここだと人目が……。結界を作らなきゃ!」
ある程度の距離を走っるとユーノがそう言いだした。
「結界ってあれか、プールの時の。大丈夫なのか?」
「うん、あまり広い空間は無理だけどこの付近だけなら……!」
「前回見たいに二人を巻き込むのだけは勘弁してくれよ」
賢い二人のことだ、もう夢だと言ってごまかすのは無理だろうからな。
「大丈夫! 距離も離れてるし、切り取る範囲も広くないから!」
そういいながらユーノは魔法を発動した。一瞬周囲の空間の色味が変わり、次に流れる空気が変わったのを感じる。
「に゛ゃあああぁぁ」
「……猫?」
「猫だねぇ」
結界が展開を完了すると同時にジュエルシードが完全発動したらしく、巨大な猫が現れた。……なるほどすずかの家の猫が発動させたか。……の割には。
「なんか図体がデカいだけで普通だな」
今までのジュエルシードの化け物見たいに凶悪さというか、こっちに対する害意みたいなのがまるで感じられない。というか顔つきも成猫というより子猫のそれだし……。
「多分……あの猫の『大きくなりたい』って願いが正しく叶えられた結果だと思う……」
ユーノが唖然としながらそう解説した。
「なるほど……願いが正しく叶えられた……。なんだ暴走じゃないのか、つまらん」
特に危険もなさそうなので俺は手に握りしめていたネックレスを離す。
「なのは、あれなら特に抵抗もなく封印できるだろ。さっさと封印してすずかたちのところに戻ろう」
「うん! それじゃあレイジング―――」
なのはがそこまで言いかけたとき俺たちの頭上を一つの雷光が駆け抜けていった。
「に゛ゃうぅん!」
雷光が直撃し、苦悶の声を上げる巨大猫。
「魔法! ってことは……」
「くー君が言ってた!?」
「……フェイトか」
雷光の飛んできた方を向けば少しはなれた位置の電柱の上に黒いハイレグ衣装に白いスカート擬き、そして黒マントという冷静に見ると中々凄まじい恰好をしている魔導士、フェイトがいた。
「バルディッシュ、フォトン・ランサー、連撃」
≪フォトン・ランサー フルオートファイア≫
おーおー、派手にやるな。いくつもの雷光が飛んできて巨大猫に確実にダメージを与えていく。こりゃ、あれだな。なのはとフェイトでジュエルシードの取り合いってとこか。
「! レイジングハート、お願い!」
≪スタンバイ・レディ セットアップ≫
なのはが素早く変身する。
「九朗! 君も早くセットアップを!」
「わーってるよ」
俺は再びネックレスを握りしめる。
「――メインシステム、戦闘モード起動!」
俺となのはの姿が瞬時にバリアジャケットを身に纏ったものへと変化する。変身したなのはは素早く巨大猫の方に向かって―――っておおい! なのはも空飛び出したんだけど!? え、俺は何となくで飛べてたけどユーノの話だと飛行魔法って結構難しかったんじゃないのか!?
≪ワイドエリア・プロテクション≫
なのはは飛翔して巨大猫の上に飛び乗りプロテクションを発動、迫りくる雷光を防いだ。
……なぜ防ぐ? とりあえず好きなように攻撃させておいてジュエルシードが出たタイミングで横やり入れるもんかと思ってた。
しかしフェイトの反応も素早く、なのはが思っている胴体から狙いをズラして足元に攻撃を加える。
「に゛ゃあぁぁぁ……」
傷ついた巨大猫は倒れこみ気を失う。その間に俺はフェイトのほうにオーメル突撃ライフルを向け、射撃する。
「ほら、フェイト! そんな離れたところに居ないでこっちにこいよ!」
射撃したと言っても当てる気はさらさらない。オーメル突撃ライフルは威力は高いが弾速は遅い方だ。この距離なら十分に回避ができる。俺の撃った弾はフェイトの乗っていた電柱を破壊して足場を壊されたフェイトは高く飛んで近くの木の上に着地する。
「よ、また会ったな」
「うん……。後ろの子たちがあなたの言ってた仲間?」
「おう。そんでそっちのアルフはどこ行った?」
「アタシはこっちだよ」
俺の質問にアルフが答えながらガサガサと木々の間から姿を現す。……お前は歩いてきたんだ。
「あんた達には悪いけど、ジュエルシードはアタシたちが貰うよ!」
「ジュエルシードは頂きます」
≪サイズフォーム≫
向こうはやる気満々か。
「なのは、ユーノはフェイト――、金髪の子の相手してて。アルフ! お前は俺と遊ぼうぜ!」
「わかった! なのは、僕ができるだけ援護するから!」
「うん、ユーノくんお願い!」
≪シューティングモード≫
こちらも武器を構えて、応戦の体勢に入る。こうして魔導士になってから初の対人戦が始まろうとしていた。
・すずかもアリサも最近の九朗くんの変化には気が付いている。ただし、なのはとは違い笑顔の質の変化には気が付いていない。
・平穏な日常はすでに退屈なものへと……。
・珍しくジュエルシードが真っ当に願いを叶えた稀有な例。九朗くんのテンションは下がった。
・九朗くん、昼間に改めてフェイトの恰好を見て戦慄する。
・九朗くんがアルフを相手に選んだ理由としては初対面の時に殴り掛かってきたり、木の根を引きちぎる膂力からフェイトよりアルフの方が近接戦が得意だと思ったから。なのはのことを砲撃型ガチタンだと思ってる九朗くんはアルフという近接機に接近されなのはがとっつかれるのを避けたかった。