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始まりの合図なんてものはなく、戦闘は唐突に始まった。俺はクイックブーストを使用して一気にアルフとの距離を詰める。
「チェーンバインド!」
「おっそい!」
アルフがこちらに手を向けた瞬間、オレンジ色の魔法陣が現れいくつもの鎖が俺に向かって飛んでくるがそのすべてを振り切って飛ぶ。
「やっぱ早い!」
「どぉうら!」
「ック!」
アルフに思いっきり蹴りを叩き込み、森の奥の方に吹き飛ばす。背後でなのはとフェイトの戦闘も始まったようでフェイトの光刃の一撃をなのはが飛んで避けていた。
「なのは! 抜かるなよ!」
「うん!」
なのはに一声かけて俺はアルフの吹き飛んだほうに飛行して移動する。
「いた!」
アルフはフェイトとなのはが戦闘している場所から少し離れた位置にある大きな木の幹に衝突していた。俺はすかさずモーターコブラで攻撃する。
「チィッ!」
アルフは飛んでいる俺の姿をとらえると直ぐに起き上がりモーターコブラの射撃を木々の間を走ったり、跳んだりして回避する。まさに動物的機動。俺は地面に着地してアルフと正面から向き合う。
「……ふふっ、やっぱこっちの方が良いな」
「なんだい急に笑い出して。気味が悪いね」
「ん? あぁ悪い。続けよう」
やっぱり抑えられるものじゃないか。俺は緩む口角を引き締めるのを放棄して両手の武器をしっかりと構えなおす。そんな俺に対してアルフもガシッとこぶしを握り締めてファイティングポーズをとる。
「言われなくても! ブレイク!」
拳をわずかに発光させながらアルフの方から突撃してくる。それを横に回避しながら引き金を引く。それをバク転の要領で回避しながら蹴りをかましてくるアルフ。それも後ろに下がることで避けて射撃し、アルフが魔力弾をはじいて攻撃してきて、回避して―――。近距離で回避と攻撃を交互に繰り返し繰り出しあう戦闘が続く。
「ふ、ふふふふ」
楽しい、楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい!
「アンタ案外いいやつかと思ってたけど根はかなりヤバそうだね!」
「好きに言ってろ!」
アルフの言葉と共に繰り出された一撃を今度は大きく距離を取って回避する。そこからオーメル突撃ライフルを突き刺そうと構え、オーバードブースト、さらにクイックブーストも使用して一気に加速。
「これで終―「ッシ!」――バァ!?」
俺の左肩に何かが衝突してバランスを崩す。アルフに一撃加えることはできず姿勢は崩れゴロゴロと地面を転がり仰向けに倒れる。
な、なにが起きた……? 背中に感じる地面の感触、ジンジンと痛む左肩、視界に映る肘鉄を繰り出した姿勢のアルフ。……あ、当てられた? オーバードブースト+クイックブーストの超スピードで移動していた俺に?
「いったたた……寸前で防御魔法かなにかを使ってたね。……さて何が起きたか理解できないって顔だね」
「まぁ、な」
肘部分をさすりながらアルフはそう口にする。……恐らくプライマルアーマーのことだ。元々プライマルアーマーはブレードとかの近接武器には弱いし、オーバードブーストで減衰させたのは失敗だった。
仰向けだった体を動かし立ち上がろうとする。
―――痛い痛い痛い! 声は途切れ途切れにしか出ないくせに、涙は止まらずに出てくる。これがゲームでは決して感じることのできない実戦の痛み!
「クッ、そ」
デバイスを手に入れて、再び戦場に舞い戻った気分になっていた俺は冷たい水をブッかけられた気分だった。
戻ってなんかいなかったんだ。確かに
この瞬間になって俺は漸く理解した。俺は舞い戻ってなんかいない。俺はこの世界に来て、初めて戦場に立ってたんだ。
――あぁ、なんて――
「確かにアンタの加速とスビートは脅威さ。でもね、アタシにまっすぐ向かってくるって分かってるなら、ただそこに
アルフの言葉にハッとさせられる。確かにそれもそうだ。ネクストは相手をロックオンしてまっすぐ加速してブレードで切りかかるけどそれはあくまでゲームの使用上。ベルリオーズだってOPのラストはクイックブーストを使って相手の側面に回り込んでマーヴを突き刺してた。あぁ、なんて大事なことを忘れてたんだ。その代償がこの痛みか……。
これが実戦。ゲームとしての腕ではなく実際の技量とセンスが問われる現実……。
――なんて――
――楽しいんだ!――
「シャッァ!」
「またかい!」
俺は勢いよく立ち上がり、アルフに向かってクイックブーストを使用して距離を詰める。アルフは再び攻撃を置こうとするがそれよりも先に左へクイックブースト、前クイックブースト、右へクイックターン。アルフの側面に回り込み、オーメル突撃ライフルを突き刺すのではなく、回転の勢いを利用して切り裂く。
「チッ」
ザクッとアルフの右わき腹に切り傷を負わせた後、彼女がこちらに反応するより早く後ろにクイックブーストして距離を取りながらトラバースで射撃、アルフを吹き飛ばす。
「ガハッ!」
もっと、もっと自由に! もっと複雑に! せっかく上下にもクイックブーストができるようになっていたんだ。ゲームの動きを真似するだけじゃない、それを受け継いだ独自の戦い方を見つけるんだ!
「なめるんじゃ……ないよ!」
煙の中からアルフが飛び出して殴り掛かってくる。俺には及ばないが鋭く、素早い一撃だ。
だけど……。
「っグハッ!?」
「ありがとう、アルフ。いろいろ勉強になった、もうお前に僕は捉えられない」
上下左右のクイックブーストを織り交ぜた近距離旋回戦。モーターコブラで削り、オーメル突撃ライフルで確実にダメージを稼ぎながらも、意識や姿勢に隙が出来れば近接攻撃を仕掛け一気にダメージを稼ぎに行く。もう少し練ればまだまだ詰められそうな戦法だが今はこれでいい。少なくとも、アルフ相手にはこれで十分だ。
そこからは一方的な戦闘となり。少しした頃には俺は左肩に一発貰った傷のみで、アルフは全身ボロボロというありさまだった。深手の傷はないがもうアルフは立ってもいられず膝をついて荒い息をしていた。
「んー、一応致命傷は避けたつもりだけど、無事かアルフ?」
「いたたた……。アンタねぇ、このありさまを見て本気で言ってるなら目か頭の病院に行くんだね」
「ははは、そうだな。悪い悪い」
俺は膝をついているアルフの喉元にオーメル突撃ライフルを突き付けながら笑う。
「でさ、こっちから一つ提案があるんだけど聞いてくれない?」
「はっ! アタシが敵であるアンタの提案に乗るような奴だと思ってるのかい?」
ギロリとアルフがこちらを睨む。その反抗的な感じも良いけど今は必要ないんだよなぁ……。
「そう、威嚇するなよ……なぁ? 別にフェイトやお前を傷つけようって提案じゃないんだ。それどころかお前たちにとってもいい話のはずだ」
俺はオーメル突撃ライフルの棘部分をアルフの頬に当ててゆっくりと力を込めていく。ある程度力を入れるとプツッと小さな音がしてアルフの頬に赤い線が浮かび上がる。
「だからさぁ……提案でも、お願いでも、勝者からの命令でもなんでもいいからさ、黙って言うこと聞いてくれない?」
「……聞くだけ聞いてやるよ。でも、ふざけた提案なら例え、刺し違えてもこの場でアンタをかみ殺してやるよ」
「おー、こわこわ」
牙を見せながらこちらを睨みつけるアルフにそう言いながら、オーメル突撃ライフルを外して隣に腰掛ける。そして前回アルフに掛けられたあとユーノに習った治癒魔法を使用してみる。
「アンタ、これ……」
「あぁ、前にアルフが俺にしてくれた魔法だ。あのあと仲間の魔導士に頼んで教えてもらったんだ。まだまだへたっぴで専門じゃないから大きな怪我は治しきれないんだけどね」
「あれから数日でもう覚えたのかい!? というか、そうじゃなくてなんでアタシにその魔法掛けてるのさ!」
アルフが驚きながら俺から距離を取る。
「ってダメだって! まだ治療中なんだから!」
「いやだからどうしアタシにその魔法を!」
「だって話聞いてくれるんでしょ? なら血を流したままにさせるわけないじゃん」
なに、おかしなこと言ってるんだろアルフは。
「いや、そもそもこれはアンタのせい……。まぁいいや、もう」
「そーそー、細かいことは気にしない方が良い。それで提案なんだけど、要求ははシンプル。今回はそっちがジュエルシード持ってって良いから、今日はもう戦うのやめない? 俺としては治療してもらった恩のあるアルフをこれ以上傷つけたくないんだけど。」
「はァ? アンタが戦わないならアタシはフェイトを手助けしに―――」
「悪いけどそれはダメ。どうしても行くってならこの提案はなかったことにしよう。そんでせっかく直した傷をもう一度つけることになる」
立ち上がろうとしたアルフの喉元にオーメル突撃ライフルを拾って突き付ける。アルフを傷つけたくないって思いは確かにあるけど、それ以外にも個人的な問題からこれ以上戦いたくないんだけどなぁ……。
「フェイトは強いんだろう? なら心配するなよ、なのははきっと負ける」
それにこれからのことを考えるとなのはには対人経験を積んでもらわないと困る。そういう意味でフェイトは最高の相手だ。少し見ただけで腕利きなのは理解できたし、根が優しいもんだからなのはを殺しはしないだろう。最高の練習相手になってくれるはず。
「アンタ、仮にもあのなのはって子の味方だろうに……」
「味方だからこそ、時には敵以上に厳しくなるんだよ」
「……いいさ、フェイトが負けるとは思えないしアンタの提案に乗ってやるよ」
「そりゃどうも。それじゃあ傷を治し次第、仲良く観戦と行きますか」
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「ジュエルシード、封印……」
≪キャプチャー≫
なのはを倒した後、フェイトは倒れている巨大猫に向かって封印魔法を使用してジュエルシードをバルディッシュの中に収容した。
「お疲れフェイト」
「成程、確かに強い」
「アルフ、それにあなたも……戦わなかったの?」
俺とアルフが近づくとフェイトは一瞬俺のほうを見て驚いたが隣のアルフの様子を見て俺たちが本気で戦っていなかったことに気が付いたらしい。
「いいや、確かに戦ったよ。俺の圧勝」
「アタシも一撃叩き込んだし、圧勝じゃないだろ!」
俺がフェイトにピースしながらそう言うとアルフが俺の左肩をグリグリと刺激しながら反論してきた。
「いっっっ! ちょ、悪かった、悪かったから力緩めて!」
「ふ、ふふ」
アルフがうりうり、と言いながら左肩を刺激して、俺が少し大げさにリアクションとる。すると俺たちの様子が面白かったのか小さくフェイトが笑う。……は? ――可愛いかよ」
「え? あっ、」
「そうなんだよ! フェイトは取っても優しくてかわいい子なんだよ!」
「あ、アルフ、やめて……」
フェイトが顔を赤くして俯く。
「ん? 口に出てた?」
「出てたよ、思いっきり!」
そっか、それはしまった。今日は色々な学びがあったせいでテンションが上がってるな。無意識に口が緩くなってる。
「と、ともかく! アルフには勝ったららしけど、このジュエルシードはもう私が回収したから、渡さない!」
「ん? ジュエルシード? あぁ、全然持ってって良いよ」
「へ?」
俺の言葉にフェイトはキョトンとした顔を浮かべる。
「ユーノには悪いんだけどさ、俺としては海鳴からジュエルシードがなくなることが……まぁ、一番な訳で。誰が封印するかはあまり重要じゃないんだよ。それに、なのはが無事ならまぁ、それでいいよ。なのはは?」
「あっちの方で倒れてる。多分今頃あの使い魔が治療魔法をかけてるはず」
フェイトがデバイスでなのはの倒れてる方を指し示す。
「おっけ、ありがと。……今日はもう帰るのか?」
「ジュエルシードも確保できたし、帰るよ」
「そっか、それじゃあまたな。次は俺と戦おうな、フェイト」
そういって俺は手を振り、なのはが倒れているという方向に向かって歩き出す。
「うん、またね。……私、負けないよ」
「次は負けないからなー! 覚えてろよ九朗!」
二人ともそう言いながら結界の外へ飛び去って行った。
「とりあえず……なのはの状態を確認して、か」
場合によってはユーノの捜索中に転んで気絶したことにするか……。にしても、
「『次は俺と戦おうな』か……」
アルフと戦っているときにも隠せなくなっていたが、もう自分を誤魔化せない。
……本当は海鳴のことも、友達のことも、家族のことさえ、どうだっていいんだ。ただずっと俺は―――。
「戦い続けたい」
受け入れれば本心を口にするのは簡単だった。
『身体は闘争を求める』
バカは死んでも治らない。結局俺はどこまでもフロムによって脳を焼かれた存在だということだ。転生して数年、なのは達との交流でごまかし続けていた本心がジュエルシードの関連の出来事で再び大きく燃え上がったのだ。
――一度生まれたものは、そう簡単には死なない――
まさにその通りだな、ハンドラー・ウォルター。けれど、純粋に闘争を楽しむには俺はこの数年である問題を抱えてしまっていた。
「どうしたらいいんだろうなぁ……」
俺は自身の問題について頭を悩ませながら、歩を進めるのだった。
・鎖の間を縫いながら接近してくるという某天パのようなことをする九朗くん。
・初めての真面な被弾で涙が止まらない九朗くん。ここはゲームではないからね、しっかりと痛覚もありますよ。
・そしてある意味覚醒九朗くん。
・んー、あざといフェイト。
・そして自身の本心を理解してしまった九朗くん。しかしどうやら問題があるようで……?
あと、すいません。新作が出るってことなのでアイアンレインで『うげぇ』となって以降買ってなかった地球防衛軍6を買ったのでこれから少し更新遅れると思います。……なんかフェンサー強くね? いや、5の時以上に……