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「クッソ! 何が起きた!」
爆風と閃光から視界が回復すると俺はいきなりの奇襲を避けるためクイックブーストで近くの建物の影に避難して、身を隠しながらあたりを確認する。
なのはは? フェイトは? ジュエルシードはどうなった?
「……いた」
なのはは吹き飛ばされてがれきの上に倒れこんでいる。意識は失ってるけど傷はほとんどない。ただレイジングハートにひびが入っていてかなりボロボロだ。
そしてジュエルシード、これもすぐ見つかった。というか閃光の前と変わらず同じ位置で浮遊していた。ただ異様に強い光を放っていてどう見てもただ事じゃない。
「どう見ても暴走してるよな……。―――って、フェイト!?」
脈打ちながら光をどんどんと強めているジュエルシードをまるで抑え込むようにフェイトが握りしめる。瞬間ジュエルシードは再び光と暴風をまき散らしはじめ、フェイトの指の隙間から光があふれ出て周囲に近づけないほどの風が吹き荒れる。というか、なんで素手で行った?
「あ、もしかしてバルディッシュも……」
至近距離で爆風を受けたレイジングハートがあんなにボロボロだったんだ。バルディッシュも同じように損傷していて無茶をさせられないとフェイトが判断したのか? 確かユーノが言っていたけどデバイスなしの封印って滅茶苦茶高度な封印魔法が必要で危険だったはず……。
「あー、もぅ! ほんと根が良い子だよな!」
俺は建物の影から飛び出して吹き荒れる風の中をオーバードブーストの推力で無理やりかき分け、フェイトに近づく。
「フェイト!」
「ッ!? ダメ! 危ないから離れて!」
俺の姿を見るなりそう叫ぶフェイト。ってよく見るとジュエルシードを押さえてる手から血が出てるじゃん!
――美味しそう……。
一人で無茶して、そもそも俺が邪魔しにきたとかは考えてないのとか、あぁもう本当に優しい子だな!
俺はフェイトの腕をつかむ。
「ダメだ! 絶対離れない! 俺は難しい術式とかはまだ分からない! けど魔力量だけはそれなりにある! フェイトを手伝いたいんだ! 教えてくれ、どうすればお前を助けられる!?」
「……! 私の手を上から握って!」
「おぅ!」
俺は両手のデバイスを収納してジュエルシードを握りしめているフェイトの手に自分の手を重ねて握りしめる。
「術式は私が構築するから九朗はそのまま私の手に魔力を流して!」
「分かった!」
指示通りにフェイトの手に魔力を流し始める。
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「……っ、う……」
あれ? 私、気を失って……。確かくー君と一緒にフェイトちゃん達とジュエルシードをめぐって戦ってたらジュエルシードが急もに光だして―――。
そうだ! フェイトちゃんとどっちが先にジュエルシードを封印するかってなってほぼ同時にデバイスをジュエルシードにぶつけたら急に視界が真っ白になって吹き飛ばされたんだ!
「あれから、どうなって……」
体に全然力が入らない。どうにかも顔と目だけを動かして周囲を確認する。
「ぇ」
私の視界の先には両ひざをついた状態で向き合い、フェイトちゃんの手を握りしめているくー君がいた。
「なん、で」
どうしてくー君はフェイトちゃんの手を握っているの? 私とは手を繋がなくなっちゃったのに、どうしてアリサちゃとは、すずかちゃんとは……どうして私以外の子とは繋いでるの? ねぇ、くー君、なんで私はダメなの?
……ううん、違う。くー君は悪くない。だってさっきも一緒に帰ろうって言ってくれてたもん。帰り道でくー君はきっと私の手を握ってくれていた。だから悪いのは……。
「私……強くなりたい……」
悪いのは帰る直前になってジュエルシードを強制発動させたフェイトちゃん達。元々魔法と出会ってくー君はおかしくなっていたけど、フェイトちゃん達が現れてから一気に悪化した気がする。
前にくー君はジュエルシード捜索のことを『楽しいこと』って言ってた。きっと魔法で戦うことが楽しいんだ。だから強い魔導師のフェイトちゃん達が現れてお熱になっちゃってるの。だからきっと私がフェイトちゃん達もくー君も倒せるくらいに強くなればきっと……!
「また優しく笑ってくれるよね、くー君……」
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「止まった……?」
「うん、封印完了。
フェイトの手を握って魔力を流し続けて数十秒。光も暴風も止まり、結界内に静寂が訪れた。恐る恐るフェイトに確認すればフェイトが封印に成功したことを教えてくれる。あー、良かったぁ~。
「ありがとう、九朗の……お、かげ―――」
「おい、フェイト!?」
フェイトが言葉の途中でこちらに倒れこんでくる。急いで抱き留めて、声をかける。……返事がない。呼吸はしてるし手はジュエルシードを握りしめたままだから気絶しただけだな。フェイトの身体をゆっくりと抱き上げる。
「お疲れ様フェイト。……アルフ!」
「ここだよ」
俺がアルフを呼ぶと彼女はすぐに後ろにいた。きっと暴風が収まってからすぐにこちらに向かっていたんだろう。
「後任せる。ゆっくり休ませてやってくれ。あとジュエルシードももう放さないだろうし持って行っていいよ」
「あぁ、わかったよ。それから……フェイトを手伝ってくれてありがとな」
「どういたしまして」
俺は人型になったアルフにフェイトを渡す。アルフはフェイトを受け取るとビルの上まで跳躍して結界内から姿を消した。
「……はぁ、疲れた~」
アルフ達の姿が消えた後、俺はその場に倒れこみ大きく息を吐いたのだった。
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予想通りというか、なんというか。レイジングハートは大きく損傷。現在自動修復機能をフル稼働させているらしい。ユーノの推測ではフェイトのバルディッシュも同じ状況ですぐには行動できないだろうということらしい。
「……つまり、昨日みたいな強制発動の可能性はない。それはそれとして自然発動の場合は俺だけで対処しなくちゃいけないってことか……」
いや、別に暴走体を相手すること自体は構わないんだけど封印はどうすればいいんだよ。俺もユーノに封印魔法習ったけど全然出来ねぇし……。
「とはいえ、探知魔法もそれほど上手なわけじゃないし、手詰まりだな」
ユーノから習った探知魔法で反応があった公園をジュエルシードを探しながらぶらつくがそれらしいものは見つからない。……というか! 俺の腕のせいもあるんだけどこの探知魔法全然絞り切れない! 範囲もだだっ広いし今の俺より低い位置にあるのか高い位置にあるのかもわからん。
「あ゛ー、もぅやってられない!」
俺は近くのベンチに勢いよく腰掛けそう愚痴を呟く。……まぁ、悪いことばかりじゃないんだ。実は昨日の出来事でなのはに変化が起こったらしく士郎さんや恭也さん、美由希さんに色々習い始めるらしいうん、なのはの戦闘スタイルだと近づかれたときが厄介だからな、そこを高町家の御神真刀流で補うのはいい選択だと思う。んー、俺もタイミングを見て習った方が良いのだろうか……。
「ん?」
ベンチに座りそんなことを考えていたら視界の端に最近よく見る金髪が写りこんだ気がした。
「……俺も案外疲れてたのかな、フェイトの幻覚が見える」
公園の池の周りの道を静かに歩くフェイト。ふーん、あっちもデバイスは壊れているはずだし散歩か何かか? 手には包帯がまかれてる。昨日の傷か。
「はぁ、分かってる。分かってるよ。流石に幻覚じゃないよな。……おーい、フェイトー!」
「……ぁ」
手を振りながら声をかけるとフェイトはこちらに気が付いたようで少しだけ驚いた表情を浮かべる。ベンチの自分の隣を指さすと意味を察してくれたのかパタパタと小走りでこちらに向かってくるフェイト。
「全然歩いてきてよかったのに、なんか悪いな」
「ううん大丈夫」
近寄ってきたフェイトを隣に座らせる――――前に。フェイトの方をじっと見る。
「えっと、どうかした?」
「私服、初めてみた。うん、とっても似合ってるよ、フェイト」
「あ、ありがとう」
「ほら、こっち座りなよ」
ベンチの上に俺のハンカチを広げてその上に座るように言う。するとフェイトは再びお礼を言った後、チョコンとベンチに座る。
「あの」
「ん?」
すると以外にもフェイトの方から口を開いた。
「昨日は協力してくれてありがとう。私、途中で気絶しちゃってお礼ちゃんと言えてなかったから……」
「あぁ、そのこと。別に気にしないで。俺は封印できないし、あのままだったらジュエルシードがどうなってたかもわからない。協力するのは当たり前だよ」
「気絶した私を抱えてくれてたってアルフから聞いたよ」
「それも当然のことだよ。頑張ってジュエルシードを封印してくれたんだ。地面に倒れるのを見逃せるわけない」
「それでも、色々ありがとう」
……なんかアレだな。こんな感じのやり取りはやてともした気がするわ。ならここは直にお礼を受け取っておくべきだな。
「どういたしまして。んで、今日もジュエルシード探し? もしかしてバルディッシュは全然ダメージ受けてなかったり?」
「ううん、バルディッシュはダメージを受けて修復中。その言い方、もしかして―――」
フェイトは俺の喋り方で色々察したらしい。
「そう、レイジングハート……なのはのデバイスも自動修復機能をフル稼働中。今日はジュエルシード探しも中断って訳」
「じゃあ私といっしょだね」
「あぁ」
ま、俺は全然戦闘自体はできるんだけど。
「それで? どうしてこんなところに? 俺は散歩だけど」
「そっか、お揃いだ」
お揃い?
「私は今日、午後からお母さんのところに行くの。だから午前中はこうしてお散歩してたの」
「なるほどねぇ……ジュエルシードが集まったよー、って報告か?」
「うん」
なんだか上機嫌だからか、口が軽いなフェイト。お前は笑顔で気が付いていないみたいだけど、少なくとも今のでフェイトは母親に頼まれてジュエルシードを集めてるって分かっちまったぞ。にしても本当に笑顔だな。今まで見たフェイトの笑顔の中でも断トツだぞ。
「フェイト」
「どうしたの?」
「お母さんのこと、好きか?」
「うん。とっても」
本当に笑ってる。嘘偽りのない本心からの笑顔。
「じゃ、せっかくだからお土産を持っていこう。ここ海鳴一、美味しいケーキを紹介するよ」
「え?」
俺はフェイトの手を取って歩き出そうとした。その瞬間―――。
「痛っ」
「ん? あ、ごめん!」
フェイトの手に巻かれた包帯。その存在をすっかり忘れてた。というか―――
「アルフが治癒魔法使えただろうに。どうして包帯なんか」
「魔力はジュエルシード探索にできるだけ使いたくて……これぐらいなら全然我慢でき―――」
「えい」
「いッ! なっ!? ーーーーッッ!!」
包帯の上から傷の場所を親指でグリグリと押す。するとフェイトは痛みで顔をゆがめつつ、どうしてこんなことをするの? という困惑の目線を向けてくる。
「涙目でプルプルしちゃって。やっぱ痛いんじゃん」
「ハーッ、ハーッ、ハーッ……」
涙目のフェイトを見ていると何か心の奥の方からゾクゾクとしたものが湧き上がってくるが、グッと堪えて親指を離す。するとフェイトは肩で息をしながら抗議の目線を向けてくる。
「ん」
「!」
抗議の目線を受けてまたちょっと虐めたくなって親指を押し込むふりをするとフェイトはビクリと体をふるわせて目を瞑る。……ヤバいな、めっちゃ可愛い。とはいえ、これ以上は色々と戻れなくなりそうなのでやめておく。フェイトを再びベンチに座らせて手に巻かれた包帯を取っていく。
「あ、ちょっと傷開いちゃったか。ごめん」
「う、うん……」
包帯を外すと手のひらに残ったいくつもの切り傷、そのいくつかが開いて血が滲んでいた。……俺はフェイトの傷に舌を這わす。
「……んレぇ」
「く、九朗!? な、なん゛っ、舐め!?」
「消毒替わり。一応ね」
――なぁんだ、やっぱり美味しいじゃん……。
そうしてそのあと、俺はフェイトの手に向かって治癒魔法をかけていく。
「これ……」
「これならフェイト達の魔力は使わないからいいだろ? お母さんに会いに行くんだろ? 怪我のない元気な姿見せてやれよ。両親っていつ会えなくなるかわからないんだ。大切にしろよ」
そう言いながら俺の脳内は前世の母親の姿を思い出そうとしていた。ほんと、もっと元気な姿を見せたかったし、まだまだ一緒にいれると思ってたよ。
「……うん」
俺の雰囲気を感じ取ったのか真っ赤になってアタフタしていたフェイトも真面目な顔になった。
「よし、これで終わ……り……。あー、これは自然治癒の方が良かったかもしれない。マジでごめん」
魔法をかけ終わって一安心かと思ったが治療の終わったフェイトの手のひらを見て俺は自分の失敗を悟る。フェイトの手のひら、そこに薄くだが傷跡が残っている。俺が親指で広げた傷の箇所だ。
「いや、マジですいません。ごめんなさい。俺も手のひら切ります。というか指詰める覚悟です」
「そ、そこまでしなくて大丈夫ただよ。……うん、痛くもないし傷も目立たないぐらいのものだし気にしないで」
「すいません。本当に……ケーキ奢らせてください」
一時の欲望の為にすごい過ちを犯した気分……。いや気分じゃなくて過ちは犯してるんだけどさ。
そのあと俺はフェイトを引き連れて喫茶翠屋に向かい、彼女のお土産用とちょっとした軽食をご馳走したのだった。
・フェイトと九朗くんの共同でジュエルシードは封印。
・目の前で九朗を取られるなのはさん。
・本人も気が付いていないが九朗くんを名前呼びし始めたフェイト。
・なのは、御神真刀流習得開始。
・お口ゆるゆるフェイト、うっかりプレシアの情報を流す。
・涙目フェイトを見てイケナイ感覚に包まれる九朗くん。
・フェイトをキズモノにしちゃった九朗くん。
・数年後、時空管理局内にてたまに自分の手のひらの傷痕にキスするフェイト執務官が目撃されたりする。
・喫茶翠屋、厨房にて
「店長! 店長の娘さんの彼氏が見たことない金髪の女の子連れて入店してきました!」
「九朗くんが? ―――ほう? 確かに見たことない子だ……。九朗くんも相変わらずやるなぁ!」
「士・郎・さ・ん? 関心してる場合じゃないでしょ?」
なんてやり取りがバイトと店長夫妻の間であったとか。