────────────────────────
フェイトにケーキを奢った次の日、レイジングハートは完全復活した。ということは向こうのバルディッシュも復活したとみていいだろう。そして俺たちは再びジュエルシードの捜索を始めたがここ2、3日は大人しいもので平穏な日々を過ごせていた。
この数日、ユーノは俺と共に行動してジュエルシードの捜索。なのはは自宅で家族から御神真刀流を、レイジングハートからは魔法についてと自身のトレーニングに当てていた。
「んで、やっとジュエルシードのお目覚めか。……なのはとレイジングハートは復帰戦だけど大丈夫そ?」
「うん! ばっちりだよ!」
≪全く問題ありません。私もマスターも絶好調です≫
「それは良かった」
俺の言葉に自信満々な返事をしてくるなのはとレイジングハート。顔色も良いし、怯えや戸惑いもない。……この数日で人ってこんなに変われるもんなんだなぁ……。俺は夕暮れに染まった公園でなのはの顔を見ながらそんなこと考えていた。
……はい。公園です。この3日間、探知魔法使ったけど結局見つけられなかったジュエルシードが発動しました。それも遠くからでもはっきりとわかるくらいに強力な反応を伴って。
……はぁー、もう捜索やめたら俺? なんでこんな反応するぐらい協力なジュエルシード見逃してたわけ? マジで探知魔法の才能なさすぎだろ。あれかなー、レーダー装備してたらなんか変わったのだろうか? 061ANRとかつけとけばよかったか? いや、でもこのアセン組んだ時ってもうだいぶACfaやりこんでて敵の配置とか覚えてたから必要なかったんだよなぁ……。そもそもACfaのレーダーって必要か迷うし……。
「ねえ、くー君……」
「ん?」
俺が自責やら公開に苛まれているとなのはが俺の袖を引っ張って声をかけてきた。
「私、強くなったから……。私のこと見ててね」
「……あぁ?」
なのはのことは大切な、大好きな人として思ってるから強かろうが弱かろうが見てるけどなぁ? ま、なのは自身がそうお願いしてきたんだ。今回はどれだけ実力が上がったか"見"に回るのもありかもしれない。
「話はまとまったみたいだね。きっとフェイト達もやってくると思う、なのは、九朗。お願い!」
「もちろん」
「まっかせて、ユーノ君」
「それじゃあ、封鎖結界!」
ユーノがなのはの肩から降りて結界を展開する。世界の色がどことなくセピア調になり、空気が変わる。
「GUooooooaaaa!!」
今回のジュエルシードは公園の樹木にとりついたらしく大きな木の怪物が姿を現した。……なんか、こういう真っ当な怪物って久々じゃないか? ……プールの水の化け物以来じゃないか? だってあの後は車輪骸骨に、ただ巨大な樹木、アルフ、そしてフェイトとアルフ戦。うん久々だ。
「なのは、行くぞ」
「うん!」
「メインシステム戦闘モード起動」
「レイジングハート、セッートアッープ!」
二人でバリアジャケットを身に纏い、木の化け物に相対する。化け物がこちらに気が付き大きく咆哮を上げたその瞬間。そらから金色の雷光が降り注ぐ。
「これって!」
「フェイトの奴らもお出ましだ」
雷光の飛んできた方向を振り返る。するとそこには電柱の上に乗ったフェイト……。ってまた電柱の上かよ! ほんっと好きだねぇ……。
「バリア……今までの奴より強い」
フェイト、母親のところでなんかあったか? なんか前にあった時よりも表情が……。
「GAAAAAAッッ!!」
「くー君!」
「チッ!」
攻撃されてこちらを脅威と認識したのか化け物は咆哮を上げて地中に埋まっていた根っこを触手のようにこちらに襲い掛からせる。
「飛んで! レイジングハート!」
≪フライヤーフィン≫
「くそっ、固いな」
なのはは飛んで上空に避難し、俺はクイックブーストで左右に翻弄しながらモーターコブラとオーメル突撃ライフルで触手を迎撃する。しかし触手本体もそれ名入りに防御力が高いのかそれなりに硬い。元々けん制や雑魚掃討用だがモーターコブラの攻撃が弾かれまくって、突撃ライフルじゃないと攻撃が通らない。
≪アークセイバー≫
≪ツインスピアー≫
自爆が怖いがいっそトラバースで諸共吹き飛ばそうかと考えていると背後から光刃が飛んできて、上空からは桃色の流星が落ちてきた。そうして二つの光は俺を追っていた触手を切り落としていく。
「大丈夫?」
「くー君! 怪我無い!?」
「……なんかあっさり触手切ってたけど、あれ結構固くなかったか?」
隣にバルディッシュをサイズモードにしたフェイトがやってきて、前からはシューティングモードのレイジングハートを持ったなのはが駆け寄ってくる。……フェイトは良い。前からサイズモードはあったし近距離から中距離で戦う魔導師ぽかったし。しかしなのは! お前、そのレイジングハートの魔法はなんだ? 見た目こそシューティングモードのレイジングハートだけど先端の音叉部分からなんバルディッシュのサイズモードと似たような魔力の刃が出てますけど!? というか魔法でサポートしている部分はあるんだろうけど接近戦の動きがだいぶ良くなってたな!?
「多分、あのバリアは射砲撃の魔法に対して強い効果を発揮してるんだと思う」
「だからあんなに手間取ったのか」
俺が感じた疑問に防御系魔法に優れたユーノが答えてくれる。なるほどね……ああいう感じで一つの効果に特化させる使い方もあるのか……。いやー、しかしそうなると面倒だな……。
「だとしたら近接魔法で仕留めるか」
「バリアごと吹き飛ばすしかないね」
フェイトとなのはが口を開いて顔を見合わせる。
「フェイトちゃん、一先ずあいつを倒すまでは協力してよ」
「……分かった。けどジュエルシードは譲れない」
「それは私も同じ。でも私はジュエルシード以外にもフェイトちゃんに譲れないものがあるの。だから負けない」
おぉう……フェイトとの戦いはなのはを成長させてくれるとは思ってたけどまさかここまでとは……。嬉しい誤算ってやつだな。二人は俺のことはもはや眼中にないのか互いに目を合わせた状態でピリピリとした空気を醸し出している。
「なぁ、アンタの方のあの、なのはって子あんな感じだったかい?」
こっそり近づいてきていたアルフが耳打ちしてくる。
「前回の戦いからなのはも鍛え始めたからな。よっぽど俺を取られたくないらしい」
「うん。なのははそっちのフェイトって子に九朗の関心が向くのが嫌だったみたいで凄く努力して―――。まって九朗」
「ん?」
あの空気に耐えられなくなったのかいつの間にか俺の肩に乗ってきていたユーノがここ数日のなのはの努力を教えてくれていたが途中で止まる。一体どうしたんだ?
「なのはが君にその……好意を向けてるのに君は気が付いてるのかい?」
「え、うん」
なぁんだそんなことか。
「君はッ! ―――はぁ……。せめてこれが終わったらなのはを褒めてあげてよ。本当になのは、頑張ってるんだ」
「分かったよ」
なんだかユーノがかなり疲れた顔をしている。
「なんだいアンタ、雌から求愛されてるの知ってながら相手してないのかい」
「まぁね」
ユーノとの会話を聞いてアルフも質問してくる。つか、求愛って……。
「酷い雄だね、まったく。さっさと相手するなり振るなりしてやればいいものを」
「好意を向けてきているのがなのはだけじゃないからな。俺自身どうすればいいのか迷ってるんだよ」
なのは、アリサ、すずか……。いや、ホントどうしたらいいんだろうね。
「そんなの全員囲っちまえばいいじゃないか。あたし達は違うけど野生じゃたまにそういう奴らもいるよ」
「は?」
何言ってんだこいつ……。あ、いやそうか、使い魔って元々は野生動物だっけ!? 確かユーノの魔法授業でそんなことを言ってたような気がする! いやにしても全員、全員って……。
「はいはい、この話はもうお終い。奴さんも動き出したぞ!」
化け物が動き出したのをいい事に話題をズラして強制的に話を切り上げる。
「ともかくあいつを倒すまでは協力、ジュエルシードに関してはまた前回みたいに奪い合うってことで! 触手は俺が引き付けるから、なのはとフェイトでぶっ飛ばして! ユーノ、アルフはサポートを!」
柄ではないまとめ役を行い、俺はさっさと触手の群れの前に躍り出る。
「ほら、かかってこい!」
襲い掛かってくる触手をクイックブーストで避けつつ、二人の魔法のチャージ時間を稼ぐ。しっかし数が多い、いくら早くても物量で押されて逃げ場をつぶされ続ければいずれ捕まるか……。
「せめて、せめて逃げ道を作れたら……! ―――ん?」
初めてフェイトと出会ったときと似たような感覚を覚える。そう、確かトラバースが使えるようになったときもこんな……。
「おおっ! 近接!」
トラバースと同じようにオーメル突撃ライフル下部の棘部分が変形する。棘はまるでACVシリーズのカラサワのように左右に真っ二つになり中心からレーザーの刃が展開される。俺には分かるこれ、格納に入れてたEB-O600だ。
「このレーザーブレードなら!」
俺は目の前に迫っていた触手に向かってブレードを振るう。すると触手はズバッと綺麗に切り落とされる。
「うっし!」
いいねぇ、攻撃方法も増えて現状の打開も可能だ! 俺が喜んでいると視界の端に黄色と桃色の極光が移りこむ。
「ディバイン……バスターーーー!」
「サンダーー……スマッシャーー!」
なのはとフェイトの砲撃が化け物に向かって放たれる。すごい魔力の量……フェイトは分からないけどなのははまだ魔法を知ってから一年も経ってないのにすごいな……。
二人の砲撃の挟まれた化け物は最初こそバリアで耐えていたが次第にバリアにひびが入る。どれだけ強固な壁であろうと一度罅が入ってしまえばもろいもので、そこからは哀れになるほどあっというまだった。瞬時にバリアは砕け散り二つの魔法……いや魔砲によって化け物は消滅させられた。
「……あれは」
「ジュエルシード」
そうして化け物がいた場所にはジュエルシードだけが残された。さて、ここからが本番って感じだな……。
「ジュエルシードには……衝撃を与えたらいけないみたい」
え、あれ魔力のぶつかり合いとかが原因じゃなくて衝撃なの? ……初めてフェイトと会ったとき俺デバイスで突っついたりしてたけどあれ危険な行為だったんだ……。
「うん。前回みたいなことになったら私のレイジングハートもフェイトちゃんのバルディッシュも可哀そうだもんね」
「でもさっきも言った通り、譲れない」
「私は……フェイトちゃんと話したいだけなんだけど……本当に色々。でも今のままじゃお話、聞いてくれないよね……。だから、私が勝ったら……ただの甘ったれた子じゃないって分かったら……! 『お話』聞いてくれる?」
あー、もしかしてあれかな。俺は間に挟まらない方が良い感じかな。アルフの方に目を向けるとどうやら彼女も静観のつもりらしい。
「はぁ……。なのは、譲ってやるから頑張れよ」
そういって俺はデバイスを終い見学へと移る。
「うん。見ててね、くー君」
なのははこちらを向かず声だけで返事する。あんな真剣な表情のなのはあんまり見ないよなぁ。……いいなぁフェイト。あんな、なのはの相手ができるなんて。
そして二人は互いのデバイスを近接戦闘のモードに切り替え、飛び上がる。……え、なのはマジ? それでいくん?
そして二人が激突する―――あ?
「そこまでだ! ここでの戦闘は危険すぎる。また次元震を起こすつもりか? 僕は時空管理局、執務官クロノ・ハラオウンだ。詳しい事情を聞かせてもらおうか」
俺の相手が湧いてでたな。
・探知魔法クソ雑魚九朗くん。前世では敵の配置を覚えるほどやりこんでいたためレーダーは不要だった。
・確かに強い人のことは大好きだが別に弱いからと言って興味を持たなかったり、嫌いになるわけではないのが人間性のある九朗くん。人間性が擦り切れてたりするとこうはいかなかった。
・無印見返しながら書いてるけどホントフェイト電柱の上好きね……。
・『ツインスピアー』なのはの習得した本作独自設定の魔法。見た目はぶっちゃけるとジム・ストライカーとかが持ってるツインビームスピアー。
・なのはさん、着実に成長中。
・アルフの囲っちまえ発言に引き気味九朗くん。しかし全員好きだし、選ばなかった誰かが将来自分以外の男といるのを想像したりするともやもやする九朗くん。
・レザブレ解禁、銃剣仕様に。
・フェイトと"色々"お話したいなのはさん。
・今回はなのはに譲って暇かぁ、と意気消沈していた九朗くん、第3勢力(九朗くん視点)の登場にウッキウキ。クロノにロックオン。