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しばらく待っていると腕に包帯を巻いた野郎が俺たちを『アースラ』に案内すると姿を現した。いや、お前が案内するんかい。怪我してるのに大変だねぇ。そうして転移魔法を初体験するとそこは近未来感が物凄い空間だった。……いや、これ本当に魔法なの? あー、でもあれか? 発達した科学は、魔法と見分けがつかない、みたいな言葉もあったはずだし、魔法が発達した科学と見分けがつかないとかいう逆の現象が起きてるってことか?
「(ユーノくん、ここって一体?)」
「(あの女の人は艦って言ってたが……)」
「(時空管理局の次元航行船の中だね。簡単に言うといくつもある次元世界を自由に移動するための船)」
「(はぁ……あ、あんまり簡単じゃないかも……)」
多分異世界の間を行き来できる船ってことなんだろ? 多分そんな感じだと思う。俺は何となくだがユーノの説明で納得できたがなのははまだイマイチ分かっていないようだった。
「(ええとね、なのはが暮らしている世界の他にもいくつかの世界があって僕たちの世界もその一つなんだ。その狭間を渡るのがこの船で……)」
狭間の地って訳だな。いや、窓の外見た感じ地面ねえけど。
「(それぞれの世界に干渉しあうような出来事を管理しているのが彼ら時空管理局)」
「(そうなんだ……?)」
「("管理"ねぇ……)」
大層なお題目だが、あの程度の戦力でいくつもあるであろう世界を管理しきれるもんなのか?
「あぁ君たち、いつまでもその恰好というのは窮屈だろう。バリアジャケットとデバイスは解除して平気だよ」
「あ、おい! なのは……!」
いやいやいや、どう考えても口調こそ優しいが『武装解除せよ』って勧告だろうが! だぁれがまだ味方と決まったわけでもない勢力の艦内部で武装解除するんだよ! まぁ、本来は味方で安心して良いんだろうがこっちは色々やらかしてるだろうが! いつ拘束されるか分からないんだからそう簡単に解除しないでくれよ……。
「……悪いが俺はこのままで行かせてもらおうか。そっちが何かしてこなければ俺からはもう何もしないさ。それで問題あるまい?」
「……あぁ、それなら問題はないな。それから君も元の姿に戻っても良いんじゃないか? ……そっちが本来の姿じゃないんだろう? 趣味でないなら解除してほしいね」
そういって野郎はユーノに視線を向ける。……本来の姿?
「あ、そういえば魔力節約のためにずっとこの姿でいたから忘れてました」
「え?」
「ん?」
するとユーノの身体が淡く光り出して徐々に大きくなっていく……。
「ふぅ……なのはにこの姿を見せるのは久しぶりで……九朗は初めてだよね?」
そして光が収まると俺たちと同じぐらいの背丈の男子がそこに居た。なんと……。
「あ、あ……? えーーーーッッ!?」
「お前……人だったのか」
「ええっ!? だってユーノくんって……うそ! え、あれ? えええええっ! ユーノくんって普通の男の子だったんだ……!?」
「あ、あれ? なのは、僕たちが最初に会った時って僕はこの姿じゃ……?」
「ちがう、ちがうよっ! 最初からフェレットだったよ!?」
おーおー、なのはが大混乱起こしてら。しっかしそうか……ユーノも人間だったのか。小動物をいたぶる趣味はないから見逃していたが……成程"人間の魔導師"だったか……。防御と拘束魔術に長けた魔導師……なのはやフェイト、野郎とも違うタイプの強さを持ってたな。
「ふぅーん……」
「あー、すまない。君たちの事情はよく知らないが……艦長を待たせているのでできれば早めに話を聞きたいんだが……とりあえずこちらを優先してもらっていいか?」
「あ……はい」
「すみません……」
野郎がいつまでもわたわたしている二人に咳払いをしてから声を掛けてその場を収めた。そうして俺たちは再び野郎の案内で途中寄り道しながら(必要な寄り道らしい)艦内を進んでいく。
「ここだ」
少し歩いたのち、野郎がある扉の前で止まる。この先か……。艦長ってさっきの画面に出てた女の人なんだろうか? オペレーターって感じじゃなかったもんな。
そんなことを考えている間に扉が開く。
「え?」
「んー?」
開いた扉の先の空間に俺となのはが困惑する。真っ白な部屋に赤い敷物、壁に並べられた盆栽に、不自然な鹿威し……なんか外人が考えた日本、みたいな空間が広がっていた。いや、それもそうか。この人たち外人かだもんな。ただし海外じゃなくて異世界人っていうもっと広い意味での外人だけど。
「艦長……来てもらいました」
「お疲れ様~。さ、三人ともどうぞどうぞ、楽にして~」
「あ、は……はい」
「どうも」
艦長と呼ばれたのはやはり先ほどモニターに現れた女性だった。腹芸、なんだろうな、モニター越しのときとは違いフレンドリーな感じを醸している。席に着いた俺たちは出されたお茶とお菓子を摘まみながらこれまでのことを話した。……にしてもこの艦長さん、話がうまいなぁ……。俺たちはまだこの人の名前も聞けていないのにペラペラとこっちのこと話しちゃって。すっかり向こうのペースに乗せられてる。
「なるほど……そうですか……あのロストロギア、ジュエルシードを発掘したのはあなただったんですね」
「はい……」
「立派だわ」
「だけど同時に無謀でもある」
「あの……ロストロギアってなんなんですか?」
「んー……異質世界の遺産―――」
ロストロギアの発掘、そして紛失。それを自分の手で再び集めようとする、という行為がどれくらいのものか分からなかったが時空管理局の二人の反応的にユーノは結構無茶なことをしていたらしい。ジュエルシードという物体の危険度は知っていたがそもそも俺たちの世界に来たこと自体が無茶っぽいな。
なのはがなんか質問しているが回収しているものが危険なものと分かっていれば個人的に問題なく、ロストロギアというもの自体の由来にはさほど興味はないのでお茶を飲みながら聞き流す。異世界の歴史なんざ興味はないのでね。
「だから……これよりロストロギア『ジュエルシード』の回収は私たち『時空管理局』が全権を担当します」
「あ?」
あ、おい、ちょっと待て。少しボーッとしている間に面倒なことになってないか? 全権を時空管理局が担当ってそれは……。
「君たちは今回のことは忘れて……それぞれの世界に戻って元通りに暮らすと良い」
「でも……そんな!?」
やっぱりそういう流れかよ! なのはも急な戦力外通告に驚いている。人の闘争にケチをつけるとはいい度胸だ。アセンに貴賎なし! どんなアセン、戦法だろうとそれがチートでないならケチをつけられる謂れはねぇぞ! なんならここでもうひと暴れしてやろうか!?
「次元干渉にかかわる事件だ。民間人の介入は許可できない……はずだったんだが」
「ん?」
あ? なんか流れ変わったか?
「えーっと、はっきり言うわね。今、アースラは切り札であるクロノ執務官が負傷、一番の精鋭部隊も命に別状はないけど重症で戦線を離脱。戦力不足でジュエルシードに対処できる魔導師が足りないの」
「どこかの誰かさんが派手に暴れてくれた結果な」
そう言って艦長と野郎ことクロノ執務官が俺のほうをジッとみてくる。
「……え、あれで切り札と精鋭部隊?」
「き、君なぁ!?」
「すごい子ねぇ……」
「くー君、今言うべきは絶対それじゃなかったよ……」
「九朗……君は……」
なんかクロノ執務官以外から呆れと恐れが混じったような視線を向けられる。クロノ執務官だけちょっと怒り交じりかな。けど戦力不足を俺たちに明かしてさらに民間人の現地徴用とは……。それほど深刻と見た。だが丁度いい。戦い続ける理由もあるし、これで大義名分も得るわけだ。俺の営業努力もなかなかのものだったってことで。
「断る理由はないな、よろしくお願いします」
「あ、わ、私も是非協力させてください!」
「二人ともありがとう。ただ場合によっては少し家を空けないといけないからご家族をうまく説得してほしいの。勿論、説得のために私たちが必要なら魔法のことは伏せなきゃだけどカバーストーリーを用意して協力するわ」
おぉ、まさに『管理』って感じのお仕事だ。そうして今、話すべきことはまとまったので、俺たちはアースラから元々いた公園に送り返されたのだった。……家族の説得ねぇ、両親は多分俺がやりたいっていえば心配はすれど背中を押してくれるだろうけど……楠姉がなぁ……。
「ゴホッ、ゴホッ……風邪でも引いたか?」
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高町なのは達が帰った後、僕はエイミィと共に今回の事件に大きく関わっている三人の魔導師たちについて分析していた。
「へぇぇ! これは凄いわ……三人ともAAAクラスの魔導師よ。魔力の平均値を見てもなのはちゃんが127万、黒い子が143万、最大発揮時はさらにその3倍以上……。そして九朗くんは平均値が312万、だけど常に一定で最大発揮時も数値にほとんどブレがないわ……」
「……ふむ」
一見、烏丸九朗が異常に見えるが最大発揮時には高町なのはが381万、黒い被疑者は429万か……。
「クロノ君より魔力だけなら上回っちゃってるねぇ」
「魔法は魔力値の大きさだけじゃない……状況に合わせた応用力と適格に使用できる判断力だろ」
……まぁ、それでも――
「それでも勝てなかったんだが……」
「それはそうだねぇ。クロノ君、傷は大丈夫?」
そう言いながらエイミィは僕の右腕の方に視線をやる。
「あぁ、何とか。あの時高町なのはとユーノ・スクライアが声を掛けてくれていなかったら腕が飛んでいたかもしれないな」
「お姉さんポジションの私としてはもぅ弟が心配で仕方なかったよ」
お姉さんポジションって……。
「……エイミィ、君と僕は2歳しか歳が離れていないんだが……」
「まぁ、相手がイレギュラーすぎたってことで」
「それで自分の実力不足を納得させちゃ、管理局員として失格だ。次は勝てるように努力しないと」
「頑張ってね、クロノ君!」
エイミィとそんな会話をしていると自動扉を壊さんばかりの勢いで無理やり開けて母さんが分析室に飛び込んできた。
「クロノ!」
「母さ、艦長!? どうしたんで―――「体調に変化があったり気分が悪くなったりはしてない!?」――えっと……問題ありません」
僕がなにか云うよりも母さんは僕の肩をつかんで仕切りに体に異常がないか確認してくる。
「何かあったんですか、艦長?」
混乱している僕に変わりエイミィが母さんに質問してくれる。特に変わりのない僕に安心したのか母さんは落ち着きを取り戻し深呼吸する。
「感染性はないって言われてたけど一応ね……」
「感染性?」
「……実はさっき医務室から報告を受けたのよ。アースラに来たときなのはさんたちも怪我がないか軽くメディカルチェックしたでしょう?」
「えぇ、『怪我してたらそのままお話しするのは辛いだろうから』と艦長の命令で立ち寄りました」
あの時なにかあったのだろうか?
「まあ、怪我の有無もだけど、二人のデータをちょっと取りたくて寄らせたのよね……」
我が母ながら抜かりないし、ちゃっかりしてる。
「で、九朗くんの方なんだけど……。彼自身気が付いていないみたいなんだけど、なにか……有毒性の粒子? のようなものが体内に蓄積しているらしいの」
・"管理"というワードに反応する九朗くん。レイヴンなら仕方がないこと。
・初期設定ははやて単独ルート。そこから色々設定を変えながら今の設定になり執筆しているわけですが中にはユーノが女の子になってる設定のバージョンもあった……。
・見返してこの段階だと一切名乗っていないのに情報を聞き出しているリンディさんにビビる。多分話のペースを握るのがうまい人。
・アセンに貴賎なし……いいですね? 貴賎は……貴、な……な゛い゛!゛(血涙)
・原作よりスムーズにアースラ合流。これも九朗くんの営業努力(ひゃはーしただけ)のおかげ。
・有毒性の粒子……いったい何マ粒子なんだ……。