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暗い暗い空の中、どこまでも落ちていく。掴むものなく、目指すものなく、ただ落ちていく。どれだけ落ちても地面は見えてこない、無限の落下。恐ろしさは感じない。むしろ不思議な安心感さえ覚えている。風は静かで、穏やかだ。……まるで揺り籠のようにさえ思える。
――そして人は揺り籠で空を飛び続ける、か……――
あぁ、そうだな。このまま揺り籠のような風の中で過ごすのも悪くない。ここに来る前の記憶は朧気だけどきっととても良い思いをしたんだろう。胸の中は満足感であふれている。だからこのまま……。
――ー君――
あ?
――朗――
どこからが声が聞こえてくる。
――九朗!――
誰かが呼んでる?
――……あの時私を助けてくれてありがとうな。大好きやで、九朗くん。私の魔法使いさん―――
綺麗な思い出があった。
――私やっぱり、くー君が好き。くー君と一緒に居たい。だから私まだまだ強くなるよ――
そうだ。まだ、約束があった。
――うん。来て、九朗――
つけ切れていない、決着があった。
俺はなすが儘に落下していた身体を起こして体勢を整える。
「まだ、まだ終わってない!」
なぁにがこのままでも良いだ! バーカ! そもそもこんなの飛んでるとは言えねぇよ! 落ちてるだけじゃないか、カッコつけてな!
「ふざけるなよ……俺はレイヴンでイレギュラーでドミナントでリンクスで人類種の天敵で、ミグラントで、黒い鳥で、C4-621だぞ!」
俺は自分の意志で戦場を選び、力強く羽ばたくんだ! こぉんななんもない空で落ちてるだけなんて趣味じゃない! いつの間にか両手の中にあったレイレナードとオーメルのネックレスを強く握りしめて叫ぶ。
「メインシステム戦闘モード、起動!」
瞬間、俺はバリアジャケットを身に纏い、上へと飛んでいく。どこからか、光が差し込んできたような気がした。
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「ゴホッ、ガハッ! ッハ、ハァハァ……何が……」
次の瞬間、俺はベッドから飛び起きようとして失敗する。体が言うことを聞かない。ここは……アースラの医務室か。何度も世話になったし見たことのある天井だ。
「クソ、邪魔だな……」
口に当てられていた人工呼吸器をが邪魔で取り外したいけど……うん、無理。体全体がだるくて力が入らん。仕方がないからあたりを確認する。誰もいない、個室だ。艦船の中に個室の病室とは贅沢な……。というか……
「これ、生命維持装置ってやつだろ? めっちゃついてるじゃん……」
口以外にも胸やら腹やら色々管刺さってるんだけど、やっぱ俺結構ヤバかった感じか? ……いや、ナースコールどこ? いや、あるのか分からんけど!? あっても押す気力もないけどさぁ。 くそ、ミッド語は変に英語と似ているせいで微妙に分かり辛いんだよ!
「九朗、今日もお見舞いきた―――ぜェ――?」
「あ、丁度良かった、状況をしり……楠姉ぇ?」
え、ここアースラだよね? どうして楠姉ぇが?
「く、ぐろ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛! お゛お゛ん゛!」
「わぁー! 待って楠姉待って色々管刺さってるからタックル不味いって!」
「オ゛オ゛ン゛ よ゛がっ゛だ! よ゛がっ゛だぁぁぁぁ゛゛゛!」
「分かった! 心配してくれてありがとう! お見舞いもどうも! 取り合えず人呼んで、人!」
「スゥウウウウウウウ、ハァアァァァ、ギマ゛ル゛ゥゥゥゥ」
「どさくさに紛れて吸うんじゃねぇ!!」
泣きながら弟の匂い吸って決まってんじゃねぇよ! 怖いんだよ!
「何はともあれ、目覚めてくれてよかったわ九朗くん。……その……」
「ぉぉぉ゛ぅ、ぉぉぉん」
「娘のことは気にしないでくださいリンディさん」
「よくあることなんですよ」
「は、はぁ……」
少しして医務室の人が戻ってきて起きている俺とそんな俺に抱き着いて泣いている楠姉を発見し、報告。リンディ艦長にクロノ執務官、そして俺の両親が医務室に集まっていた。
そしてもう本当に楠姉は自重してくれ、と叫びたかった。見ろよリンディ艦長とクロノ執務官の困惑顔。
「なぜ、両親がここに?」
「そうね、それから説明しましょうか」
俺が質問するとリンディ艦長が答えてくれる。
「まずあなたの容体だけど、少し前まで危篤状態だったのよ。それで至急ご家族に連絡、アースラまでご案内したわ」
危篤って。やっぱあの空落ち続けてたらヤバかったのか。
「それで九朗くんの身に何が起こったのかを説明するためにはどうしても魔法についての説明は避けられなかったのよ」
「成程……。ごめん、父さん母さん。俺約束守れなかった」
俺がそういうと母さんがゆっくり俺の身体を抱きしめて、父さんが反対側からガシガシと頭を撫でる。
「本当よ。無事に帰ってきてって言ったのに、こんな無茶しちゃって」
「……苦しくはないか?」
「うん。今は大丈夫」
「そうか」
「ぅ゛ぅ゛ぅ゛……ぐろ゛゛お゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛」
母さんは泣かせちゃったし、父さんも少し涙目だ。楠姉はもう何も言うまい。
……リンディ艦長は優しい暖かい目で見てくれてる、クロノ執務官も同じだけど……なんか父さんの方に目線がよく行ってる気がする。
あれ? そういえばクロノ執務官のお父さん、リンディ艦長の旦那さんの話って聞いたことないな。……今度聞いてみるか。
「リンディ艦長、ちなみに状況は?」
「それは僕から説明しよう」
クロノ執務官が楠姉を避けながらこっちに近づいてきた。
「まず、君が意識を失ったってから6日が経過している。その間にまず僕たちとフェイト・テスタロッサの方で一つづつジュエルシードを確保した。これが4日前。そして昨日、未だ未発見だった残りのジュエルシード7つが同時発動するという事態が起きた」
「7つ同時……。ヤバくないですか?」
「あぁ、かなりヤバい事態だった。フェイト・テスタロッサが海中にあったジュエルシード7つを強制発動、高町なのはが無断出撃をキメてこれを協力し撃破。直後一連の事件の主犯と思われるプレシア・テスタロッサの攻撃を受けてフェイト・テスタロッサたちは3つジュエルシードを奪い逃走した。かなり大規模の魔力攻撃だったからしばらくはプレシア・テスタロッサもフェイト・テスタロッサも動けないだろうということで高町なのはは一時帰宅、今頃学校で友人たちと久々の交流をしているだろう」
「はぁ……」
ん、と……なんかすごいことになってるのは分かったけど情報量が多い! 誰だよプレシア・テスタロッサって! いや、フェイトと前話したときに出てきてたフェイトの母親なんだろうけど! それよりもなに? フェイトが7つ同時に強制発動? なのはが無断出撃? な、なにがなんやら。
「まぁ口だけでこれだけ言われても理解はできないと思う。今、エイミィが君が倒れてからの状況をまとめた資料を作ってくれている。医務室のベッドの上は暇だからな、完成したら持ってくるから見るといいさ」
「あー、そうさせてもらいます」
うん、エイミィさんの資料の出来にすべてを賭けよう。
「九朗」
「父さん?」
「少し大事な話をしよう。お前の今後についてだ」
真剣な表情で父さんがそう言う。今まで立っていたのだが椅子を持ってきて俺のベッドの隣に座る。母さんも楠姉さえも真面目な顔になった。
「リンディさんからお前の身体のことを説明された。そして家族みんなで話し合ったんだ。九朗、お前はこの事件が終わったらリンディさんたちのお世話になりつつミッドチルダに向かいなさい。治療法を探してくるんだ」
「え?」
「私も科学者だ。この船に使われてる技術、魔法という高度なプログラムで運用されるクリーンエネルギー。地球とミッドチルダじゃ科学力に天と地ほどの差があるがすぐに分かった。今の地球の科学じゃどうやってもお前を助けられない」
お、おぉぅ……まさかのミッド行き決定か。
「しっかり体を直して、また私たちに元気な九朗の姿を見せてほしい」
「家族で話し合ってそうなったのなら俺は別にいいけど……よく楠姉は納得したね」
「あァ? 弟の命掛かってんだ、我儘なんざ言うワケねェだろうが」
……滅茶苦茶スンとした表情で言い切った。
「俺、初めて楠姉をカッコいいと思ったかも知れない」
「お? んだァ、やっと姉ちゃんの良さが分かっ……初めて? え、初めて……? 嘘だろ、おォい」
ショックだったのか固まった楠姉を放置して俺は父さんたちの方に顔を向ける。
「でも、良いのかな」
「いいに決まってるだろ、学校への説明も協力する。なにか不安なことがあるのか?」
「多分、ここが人生の分岐点な気がするんだ。父さんたちった説明のときに俺が魔法使ってるときの映像見たりした?」
「あぁ、見せてもらった」
なら話は早い。
「俺、魔法使うのが好きなんだ。そして魔法使って人と争うのが好きなんだ。見ててわかったでしょ? タブ、ミッドに行ったら魔法が当たり前の世界で文化に、歴史に触れてもっと魔法が、戦うのが好きになって帰ってくる。
多分、それ以外の生き方ができなくなる……。純粋に学校にいって友達と遊んで……そういうまともな子供じゃなくなる。父さんと母さんは俺がそうなっても大丈夫? あと1、2年の寿命でもミッドに行かず二人の普通の子供として過ごした方が―――「馬鹿か、お前は」―――痛っ」
父さんに頭をはたかれる。
「どんな風な生き方をしようと、お前は私たちの子供だ」
「いい? 親にとって子どもは元気でいてくれるだけで嬉しいものなのよ。だから、諦めないで。少しでも長く生きる方法を探しなさい」
両親からそう言われて父さんには頭を撫でられ、母さんには手を握られる。そんな中楠姉が笑って肩を組んでくる。
「九朗は争うのが好きなのか? 良いじャねェか! 姉ちゃんも陸上で他の選手と争うの好きだぜ、お揃いだな!」
「映像の中の九朗、とても生き生きとしていたな。あんなに楽しそうな表情は初めてみたかもしれん」
「実験が自分の理論通り、成功したときのお父さんと顔が似ていたわ。やっぱり親子なのねぇ」
楠姉に父さんに母さんが和気あいあいと俺について語りだす。映像ってのがいったいいつの戦闘のときのかは分からないが……なんだか気恥ずかしいな。
「とこれで映像の中でがっつりチューしてたけど、この金髪のフェイトちゃん? みたいな子が九朗は好みなのか? 父さんとしては隣のナイスバディなアルフさんの方が気になるのだ―――」
「あ・な・た?」
「―――ん゛ん゛っ。なんでもない忘れてくれ」
映像って
「まぁ、嫌いじゃないよ。一緒に翠屋も行ったし」
「うぇ、マジかよ九朗……よりによって美由希ンとこ連れてったのかよ……美由希ンとこの妹は居なかったのか?」
「うん、丁度居なかった」
「九郎もだけど、
そんな風に少し家族でおしゃべりした後俺はまだ起きた直後ということでその場は解散となった。
・超闘争の九朗くんはフロムの思い出で勝手に再起した。リリカル九朗くんは今世の約束や思い出で再起した。んー、人間性の差。
・とはいえ、生命維持装置フルセット装着の九朗くん。子供の身体に生命維持装置を付けるのは身体に大きな負荷がかかるけど、つけなかったら即お陀仏の為仕方なしに装着。
・通常運転楠姉。リンディさんもちょっと引くレベル。
・『父親』というものに若干興味津々なクロノ執務官。近い未来九朗くんが地雷を踏みぬくのが決定しました。
・7つ同時起動のジュエルシード、実は九朗が血反吐吐いてるのを目撃してしまったフェイト、血反吐を浴びちゃったなのは、両名とも精神的な理由でちょっと本調子ではなく原作以上封印に苦戦していた。両者敗北からのバッドエンドもありえた。
・そしてミッド行が確定した九朗くん
・く、楠姉が真面目でカッコいい、だと。
・九朗くんの闘争癖に肯定的な家族。
・失言お父さん。
次回 なのは、久々の登校でアリサ、すずかに詰め寄られる。
あ、ちなみに前話、一か所だけ透明文字があります。
一応両方やるつもりだけどどっちが先読みたいですか?
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EXCEEDSルート