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「Grooaaaaa!!」
「遅いな」
大声を上げながら触手をふるってくる思念態。その一撃をクイックブーストで横に避ける。
「うん……いいね。しっかり二段もできる」
なんとなくできるという確信があったが本当にクイックブーストができてよかった。……手元にコントローラーこそないものの感覚はあの時のまま、鈍っている気配はない。
「Gya!」
思念体が今度は連続で触手を繰り出して浮いている俺を叩き落とそうとしてくる。……もとよりこっちは地上旋回戦が得意なんだ。感極まって飛翔したが、地上戦が望みなら付き合ってやるさ。
「おっ!?」
急降下して接地とともに回避をしようとしたら真下に向かってクイックブーストができた。これ、真上に向かってもできるな……。 ゲームの再現はもちろん、今は現実の鎧になっている訳だし……こういうこともできるのか……。いや、結構便利だぞこれ!?
「ほらほら、どうした? 一撃も当てられないのか? まだサイレントアバランチのほうが手強いんじゃないか?」
……いや、まぁ俺が結構あいつら面倒だな、って思ってる分もあるんだろうけど。確かに倒せなくはないんだけど、頭数もう少しそろえられたらまだまだいい戦果上げられると思うんだよねサイレントアバランチ。
「そら、今度はこっちから行くぞ!」
俺は右手のモーターコブラを構え、引き金を引く。ダダダダダッ、という音と共に高速でいくつもの薄いオレンジ色の光が思念体に向かって飛んでいく。……ん? これ実体弾じゃ無くね? 薬莢も出てないし……あ、魔法かこれ!
「GugYaaaaa!?」
「……火力も発射レートも下がってないし別に構わないか!」
モーターコブラの攻撃がガリガリと思念体の体表を削っていく。……プライマルアーマーかよ、あれ。苦し紛れの反撃で襲ってくる触手を左右移動で回避しつつ左手のオーメル突撃ライフルも構える。W鳥開始だ。
「Gogッッ!?」
「おー、貫通して穴開けたぞ」
突撃ライフルだとこうなるのか……。相変わらずこっちも魔力っぽいけど。モーターコブラでプライマルアーマーを剥ぎつつダメージも稼いで、さらにオーメル突撃ライフルで火力の底上げ。……うん、こっちでも通用するみたいでよかった。
「とはいえ……若干火力不足なのか? なんか再生してるんだけど……」
んー、こうなるとトラバースや三連ロケを使いたいよなぁ……。起動時に頭に情報が流れ込んできたし多分どうにか使えるんだろうけど……。うーん……肩のスキュラでも使ってみるか?
「GRUwaaaaaaa!」
「とあっ、とと。あっぶ!? なのは、できれば早めにお願い!」
俺が考え込んでいる間に再生を終えた思念体が攻撃を仕掛けてくる。相当痛めつけられたのが気に食わなかったのか今までよりも大きな声を上げて攻撃も苛烈だ。
よけるのには全く問題ないが、決め手がわからない以上なのはにあとは任せるしかないんだけど……まだかかりそうですかね?
「す、すごい。あれだけの攻撃を一人で捌いてる。それにすごく早い……」
「ユーノくん、それよりもどうすれば良いか教えて!」
「あ、あぁ! ごめん、それじゃあ僕の後に続いて呪文を唱えて」
おい、まじか。二人とも今まで見入ってたのかよ。……いや、初めてネクストの動きを見たら見入るのは仕方がないか。俺もAC4のOP見たときは唖然としたものな。
それはそれとしてようやくなのはとユーノの方も動き出したので、もう少し時間稼ぎするしかないみたいだ。
「ふふっ」
再び視線を目の前に戻す。先ほどから方向し一生懸命触手を繰り出すがまったくかすりもしない思念体。……なんか、そんな様子を見ていたら凄く興奮してきた。これだけ攻撃しても一発も与えられないとか、どんだけ惨めなんだこいつ。
「……あはっ」
形は多少も違えど再びこうして闘争に身を置けたせいだろうか。以上にテンションが高いし、体の奥が熱くうずいているのがわかる。
「もう少しだけ、俺と遊ぼうぜ……!」
色々試したいこともあるしな! 俺はクイックブーストで一気に思念体との距離を詰める。
「そらっ!」
「GBoッッ?!」
そのままのスピードで思いっきり右足で蹴りを叩き込む。やっぱできるか! そして目論見通り脚部のエクハザールスタビライザーが突き刺さってる。……いたそー。そしてそのまま右方向へのクイックターンで右足を引き抜きつつ左手のオーメル突撃ライフルの棘部分で思念体を突き刺す。
「射撃が効かねぇなら、白兵で仕留めるまでよ!」
格納のブレードもあるはずなんだけど使い方がわからないし、このマーヴっぽい見て目を生かしたフロムマジックのほうが断然カッコいいからな!
ん? なにか固いものを掠ったか?
「GiYaaaaaaa!!」
「なわっ、と!?」
いきなり思念体の攻撃が激しくなり俺を遠ざけようとしてか自身の周囲を薙ぎ払うように触手を振り回し始めた。
この唐突な反応に一か所だけあった固い感触……。たしか、ジュエルシードの暴走思念態とかってユーノは言っていたな……。ジュエル、シード……シード、種……。
「あ、こいつ核があってそれ壊さないと無限再生パターンか!?」
あー、なるほどー。そりゃ余計にトラバースか三連ロケほしいな……。この二つなら核ごと殲滅か核以外吹き飛ばせるし。んー、どうしよっかなぁ……ひとまずスキュラ撃って、削れるところまで削るか?
「レイジングハート、セットアップ!!」
「ん?」
俺が悩んでいると背中の方から届く桃色の極光。何事かと振り返ればなのはが赤い宝石を掲げて光に包まれていた。お、変身か? 思念態も動きを止めたので俺も拝見させてもらおう。
「落ち着いてイメージして! 君の魔法の杖を、そしてその身を守る強い衣服の姿を!」
「そんな急言われても……。えーっと、えーと……」
えー、初変身だともしかして自分の杖のデザインとか出来た感じ? というかなに、強い衣服って。変身したら身に着けてたこの服のことなんだろうけどそれも最初の変身だと自分が好きなようにできたの? ……俺はじめっからこのデザインで、要望出した記憶とかないんだけど。
いや、アリーヤっぽいデザインで気に入ってるんだけどね。デザインできるなら折角だったしやってみたかったよね。
「取り合えずこれで!」
イメージがまとまったらしいなのはが声を上げると一気に光が強くなりなのはの姿が見えなくなる。そういえば俺は一瞬だったけどなのははどうなるんだろう? おぼろげな前世の記憶だどこういう時の女の子の変身って途中ですっぽんぽんになったりした記憶があるんだよな。外から見えちゃったりしないか?
「成功だ……!」
俺の心配をよそに一瞬で光の中からなのはが姿を現す。ユーノがそう言ってるし変身は成功したらしい。なるほど全く何も見えなかった。おまけに変身ってこんなに早いんだ。なんか長いイメージがあったわ。……あれか? あの光の中と外で時間の流れが違うやつ。
さっきの光の中に頭突っ込んだらなのはの全裸姿やなっがい変身シーンを見れたってことか? 見るつもりはないが。
「こ、これが……」
「来ます!」
「おっと。なんだ、もうなのはの方に夢中か?」
なのはが変身した自分の姿に驚愕しているのと、思念態はの好きを見逃さず新たに表れた脅威を一気に排除しようと飛び上がったあとなのはに向かって急降下する。ユーノが気が付いてなのはに声をかけた。まったくツレないやつだな。
「お願いっ!」
≪Protection≫
なのはがそう言いながら杖を突きだすと杖から女性の声が流れてなのはの身体を守るバリアを展開した。へぇ……おれは全然使わなかったけどあれが防御の魔法か。というか今喋ったよな? あの杖。
んー……。
「……ダメか」
自分の杖も喋らないものかと少し念じながら振ってみるが反応はない。少しだけ残念だ。
「ええっい!」
「GouRrrrrr!?」
「まじか……」
なのはが突き出した杖を横なぎに振るうと思念態は吹き飛びバラバラになる。俺、結構攻撃したけどあんな風にバラバラにはならなかったけど? んー、喋ったり攻撃力が高かったりなのはの持っているあのデバイスは結構いいものらしい。
「やったじゃん、なのは」
「くー君。私……」
自分の力に驚いて少し茫然としているなのはの近くによって話しかける。
「まだですッ!」
「おっと!」
「ふぇっ」
ユーノの鋭い声に思念態が跳んでいった方を見ると飛び散った破片が一か所に集まって再生しようとしている。
「やっぱあれか、あの固い弱点……ジュエルシードだっけ? あれを破壊しないといけない感じ?」
「似たようなものです。あれはあくまで思念。大本を封印しないと埒があきません」
「封印っていったいどうすれば?」
ユーノはなのはの方に向き直る。
「なのはさん、心を落ち着かせて自らの内に集中してください。そうすればアナタの呪文が浮かんでくるはずです」
「あぁ、そういうシステムなんだ」
「心の内……」
なのはが目を閉じて集中をはじめる。俺はその間ゆっくり移動してなのはと思念態の間に移動する。これなら万が一、思念態か動き出してもなのはへの攻撃は防げる。何をしているかは分からないがユーノはユーノでなのはの支援をしているらしい。
「っと、再生の方が早かったか」
「Grooo!」
再び巨大な姿に戻った思念態が猛スピードで突っ込んでくる。さて、少しばかり怖いが今度は防御力も確かめなきゃな。
「バリア!」
「GuGyaaaaaa!」
俺がユーノに教えてもらった通りにバリアと唱えると先ほどなのはが使って見せたものと同じように円形の魔法陣が表れて思念態の攻撃を受け止め―――?
「これは……?」
よく見ると魔法陣と思念態との間に距離がありその二つの間を薄い緑の膜が遮っている。プライマルアーマーか、これ。観察しているとプライマルアーマーは次第に薄くなっていきほぼほぼ突進の威力が消えたときにプライマルアーマーも消えうせほとんど威力の減衰した突進が俺のバリアにぶち当たる。おぉ……プライマルアーマー、この世界だとこうやって作用するのか……。
「リリカル・マジカル!」
「封印すべきは忌まわしき器、ジュエルシード!」
「ジュエルシード封印!」
≪Sealing mode set up≫
俺が感心しているとなのはが呪文らしきものを唱えて杖から光が発せられる。
「おぉ……」
杖の先からピンクに淡く光るリボンが無数に伸びてきて思念態を縛り上げる。私大にリボンの数は多くなっていき、完全に突進の勢いは消えて思念態の姿も見えなくなる。
≪Stand ready≫
「ジュエルシード、シリアル21 封印!」
なのはがそう言うとリボンはドンドン巻き付きをきつくしていき思念態を圧縮していく。……圧縮なんだ、封印方法。どんどん思念態とリボンは小さくなっていき最終的には野球のボールほどの大きさになった。するとハラリとリボンがほどけて青い宝石だけがその場に残った。その宝石になのはが自分の杖を当てると杖の中に青い宝石が収納されていった。……おそらくあれがジュエルシードってやつなんだろう。
「終わりか?」
「はい」
ユーノに確認すればどうやらこれで終わりだそうだ。あたりはボロボロになった公園と静寂だけが残っていた。となれば……。
「なのは、移動しよう。このまま誰かに見つかったら厄介なことになる。ひとまず詳しい事情は明日聞かせてくれ」
「わ、わかった!」
「ユーノもそこでもっと詳しく説明してくれ。それで良いか?」
「はい」
両名に確認も取ったところで。さっさと退散だ。滅茶苦茶になった公園は申しおけないが行政に頑張ってもらうとしよう。そのための管理者だろう?
こっそり家に戻った俺はこれから訪れるであろう非日常に口角が上がるのを抑えられなかった。
・真下、真上のクイックブーストに感動する九郎くん。
・ACのオープニングはどれも素晴らしいが4、fa、Vの三つは傑作すぎると思う。
・オーメル突撃ライフルでフロムマジックをする九郎くん。
・今生に絶望していた少年が楽しみを見つけて徐々に笑顔になっていく……。