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なのはと別れた後、フェイトを先頭に俺たちは時の庭園深部、プレシアがいるであろう場所へと飛んでいく。
「前から高速型、二機来るよ!」
「高速……? 随分のろまだな!」
アルフの警告に視線を凝らすと確かにこちらに向かって飛んできているゴーレムを二つ確認できた。
俺は一気に加速して二機に対して正面から突っ込む。
「まず、一機! からの……もう一機!」
すれ違いざまにレーザーブレードを展開して一機を両断する。そのあとすぐにクイックターンを発動して180度旋回、相手の背後を取ってそのまま三連ロケをぶち込み撃破する。
「っし! いっちょ上がりィ!」
「まぁ、高速型とは言えアンタと比べたら確かにのろまだね」
「ありがとう九朗」
遅れて飛んできた二人と合流して再び深部へ向かう。フェイトを無事プレシアの元まで送り届けることを目標に先ほどからこうして出てきた敵の迎撃に当たってるんだが……流石に数が減ってきたな。深部まであとどれくらいだ?
「九朗、ちょっとこっち見て」
「ん?」
そんなことを思いながら飛んでいるとフェイトが隣にぴったり寄ってきてそう言った。その言葉に従ってフェイトの方を見る。赤色の宝石みたいなわずかに心配を孕んだ瞳がこちらをジッと見つめていた。
「どうしたフェイト?」
「少しだけ瞳に緑が混じってきたけど、もうすぐ深部だし大丈夫かな」
「おーい、フェイトー? どしたー?」
「唇……九朗は『また今度に』って言ってたけどあの子はしてたし、私もしても良いよね―――――」
「どんな魔法を使っても……過去を取り戻すことなんかできやしない! 世界はいつだって『こんなはずじゃない』ことばっかりだよ。ずっと昔からいつだって、誰だってそうなんだ……」
「深部に着いたよフェイト! だけどクロノがもう到達してる!」
「……ッ」
クロノの声のあとアルフが状況を報告する。すると徐々に近づいてきていたフェイトはバッと距離を取って正面に視線を向ける。……結局何だったんだ?
「こんなはずじゃない現実から逃げるか立ち向かうかは個人の自由だ。だけど……自分勝手な悲しみに無関係な人間まで巻き込んでいい権利はどこの誰にもありはしない!」
フェイトと共にプレシアの近くに着地する。
「母さん……」
「大丈夫だフェイト、言いたいこと言ってやれ」
緊張していたフェイトの隣に立って手を繋ぐ。フェイトはその手を見つめた後頷いて、しっかりと真正面のプレシアを見据える。
「何を……しにきたの? 消えなさい、もうあなたに用はないわ」
なら、俺が貰っても文句はないですよねェ!! ―――と言いたいのを必死に抑える。
口に出したらなんか場の雰囲気とかフェイトの決心が揺らぎそうだし。
「あなたに……言いたいことがあって来ました。私は……アリシア・テスタロッサじゃありません。私はただの失敗作で、偽物なのかもしれません。それでもこんな私を受け入れてくれる人もいた、だからいなくなれって言うなら遠くに、この人のところに行きます」
そういって俺の方に視線を一度向けるフェイト。おい、さっきまでしんみりした雰囲気だったのにちょっと空気変わったぞ。見ろ、プレシアさんも若干困惑顔で俺の方見てるじゃないか。『そういえば誰よ、この子』みたいな感じで。
「だけど、私は……フェイト・テスタロッサは……あなたに生み出して貰って育ててもらったあなたの娘です……。今までずっと、今もきっと……。母さんに笑ってほしい……幸せになってほしいって気持ちだけは本物です。私の、フェイト・テスタロッサの本当の気持ちです」
すげぇ、雰囲気をあそこから真面目な方に直しやがった……。
「ふふ……ふ…あはははは! だから何!? いまさらあなたを娘と思えと言うの?」
「あなたが、あなたがそれを望むなら私は世界中の誰からも、どんな出来事からもあなたを守る。私があなたの娘だからじゃない……あなたが私の母さんだから……」
そういってフェイトは俺と繋いでいるのとは逆の手をプレシアに差し伸べる。
「くだらない……」
「きゃッ!?」
「不味い……っ!」
「なっ、はぁ!?」
呟きながら杖を地面にたたきつけるプレシア。それに呼応するようにジュエルシードが光り輝き、次元震の揺れが真面立っていられなくなるほど強くなる。
『艦長、ダメです庭園が崩れます! 戻ってください、この規模の崩壊なら次元断層は起こりませんから! クロノ君たちも脱出して! 崩壊まで時間がないよ……!』
「了解した……フェイト・テスタロッサ! 九朗! 聞こえたな!」
聞こえはしたけど……。
「私は行くわ……アリシアと一緒に。言ったでしょう……? 私はあなたが大嫌いだって」
そう言うとプレシアの足元が崩壊してアリシアの入った培養器と一緒に謎の空間に落ちていく。
「させるかッ!」
俺はフェイトの手を振りほどき、クイックブーストでプレシアのもとまで接近する。くっそ、ワンテンポ遅れた。
ダイビングキャッチのような形で俺はプレシアの手を掴むことに成功し――――
「いてててて!? なんだこれ、魔法が抜けて……!?」
「……あなた、知らないで突っこんできたのね。ここから先は虚数空間、ありとあらゆる魔法が使えなくなる地獄の空間よ」
「マジか!? あぁ、それで強化の魔法が抜けて、身体能力が普通に戻ってるのか」
小学生のこの体で成人女性と謎の培養器はキツイって!
「九朗! 母さん!」
フェイトも崖際に寄ってきて俺と一緒にプレシアの手を掴んで引っ張り上げようとする。
「あ、アルフは!?」
「ダメ、アルフは使い魔だから虚数空間に近づきすぎると契約の魔法が切れて死んじゃうの!」
あ、そういう弱点があるのね! なら、俺たち二人で引き上げるしかないのか! つーかその培養器重すぎだろ! 離せって言っても聞かなそうだし……!
「離しなさい、あなた達も落ちるわよ」
「そう言われて諦められる性格はできてなくてね!」
「ぜったい離しません!」
とはいえ……流石にきついものが……このままだと本当に落ちることになるし……どっかのタイミングでフェイトだけでも後方に投げ飛ばせないか?
「こんなギリギリでも自分よりフェイトの心配をするのね。……坊や、名前は?」
「あ゛あ゛!? 烏丸九朗! 文化圏が違うから一応説明すると烏丸が姓で九朗が名前な!」
こっちが必死に引き上げようって時に妙に落ち着いた声出しやがって! こっちはそれどころじゃないんだっつーの!
「九朗、九朗くんね……。フェイト、貴女は生きなさい。九朗くん、『娘』をお願いね」
「なっ!?」
「母さん!!」
そう言った後プレシアは俺たちの手を振りほどきアリシアと共に虚数空間へ落ちていった。
「アリシア! 母さん!」
「ッっ! 待てフェイト!」
既に手の届かない位置へと落ちていった二人に向かって手を伸ばし、自分まで虚数空間に落ちそうになるフェイトを抱きしめて止める。
「母さん! 母さんッ!! 離して九朗! 二人が、二人が!」
「ごめん、ごめんなフェイト……。助けられなくてごめん」
俺は腕の中でもがくフェイトを抑え込むように強く強く抱きしめる。何が"『娘』をお願いね"だよ! そんな顔が、そんな声を掛けられるなら、もっと早く賭けてやれよ。その思いをもっと早く……フェイトに伝えてやれよ!
もう二度と家族と会えないってことがどれだけ辛いか、アリシアを失ったアンタになら理解できたはずだろ! もう二度と親と会えないってのがどれだけ……どれだけッ!
「くそ、……くそッ!」
頭の中を既に薄れ始めてしまった前世の家族との思い出が駆け巡る。
「脱出する! エイミィ、ルートを! 九朗! そのままフェイト・テスタロッサを抱えて脱出しろ! できるな!? できないとは言わせないぞ!」
「分かってる! わーってるよ!」
クロノ執務官の言葉に涙をぬぐいながらそう答える。その時、庭園深部の天井が爆発崩壊した。
「フェイトちゃん! くー君! こっちに飛ん―――あーーーーっ! ま、またなんか私のしてもらったことのないことしてるぅぅううーーー!」
「なのは、それどころじゃないから落ち着いて!」
「だってユーノくん! あんな、あんな力強く、無理やり抑え込むみたいなハグ……ッッ」
爆発した天井からなのはとユーノが下りてくる。そして俺とフェイトの方を見てそんな絶叫を上げる。
その絶叫で悲しんでいたフェイトも一瞬呆然としてしまい冷静を取り戻す。……す、すげぇよ、なのは。俺がどうやってフェイトを慰めて立ち直らせようか悩んでたのに一発で解決しやがった。
「……えぃ」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーッッ!」
なのはの顔と俺の顔を交互に見た後フェイトは俺の腕の中で体を反転、フェイトの方からも俺に抱き着き、何故かなのはに勝ち誇ったような顔を向けた。それを見たなのはが物凄い叫びをあげこちらに急接近してくる。
「ちょ、は、離れて! もう、くー君もどうしてフェイトちゃんばっかり!」
「えー? 出会ったころのなのはにもこんなことしなかったっけ?」
「してないの! というか仮にしていても昔と今じゃ全然違うの!!」
「……あったかい」
「だーかーらー離れるの! 何ちゃっかり首筋に顔埋めてるの! もう、こうなったらここでもう一回決闘する?!」
「―――今度は負けない」
「全員、今から脱出だって言ってるだろうが!! こんな時に面倒ごとを起こして! いいか、僕は面倒が嫌いなんだ!!
今からゲートを開くから二人は大人しく九朗を前後からサンドでもしてるんだ!!!」
クロノ執務官が怒号が響き渡り、なのはとフェイトは大人しく前後で俺を挟み込む形に収まり、俺たちは崩壊する庭園から脱出したのだった。
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『今回の事件解決について大きな功績があったものとして……ここに略式ではありますが、その功績をたたえ表彰いたします。 高町なのはさん、ユーノ・スクライアくん……ありがとう』
庭園の方かいを見届けて、次元震の停止と断層が発生していないのを確認した後、なのはとユーノが事件解決に協力して功績を上げたということを表彰されている。―――のを俺はアースラのICUで眺めていた。
「……俺も貰いたいなあ、賞状」
『九朗くんにはその部屋から出られるようになったら改めて渡してあげるわ。だから今は大人しく治療に専念なさい』
通信なのでこちらの声も聞こえているわけで画面越しにリンディ艦長がそう言ってくる。
「はーい。抜け出したくても抜け出せませんよこれは」
俺はそう言いながら視線を横に向けるとそこには青筋浮かべてこちらを見下ろす医務官さんがいた。
「今度抜け出したら後世の為に分解解剖するわよ」
……あい、医療従事者が言って良いセリフなのかそれは。
「それじゃ、私は他の職員達の治療に戻るけど、抜け出すんじゃないわよ」
「分かってますよ」
「それから……」
「ん?」
「良く生きて戻ってきたわね。偉いわ」
そう言って医務官さんは部屋を出ていった。一人になった部屋の中枕に頭を預け天井を見上げる。クロノ執務官に聞いた話通りなら明日にはなのははアースラを下船し、いつも通りの日常に戻る。俺はこのままアースラに乗ってフェイトの本局移送と共にミッドチルダへと旅立つ。
「ミッドチルダ……魔法の当たり前の世界。……楽しみだ、退屈させてくれるなよ?」
俺は未知の世界に期待を膨らませるのだった。
・本作では一般的な空戦魔導師の飛行速度は約400キロから500キロとしています。その中でもスピード重視や最大速度に優れている魔導師(フェイト、なのは等)は約600キロ程度と設定しています。九朗くん? 彼は通常時700から800キロ。クイックブーストを使えば瞬間的でも2000キロ近く出ます。 そのため『高速型?』ってなるわけですし、スカーレット隊は全滅する訳です。さらに脅威なのは加速性能です。0.8から1秒以内に上記のスピードに到達できるのがネクストの一番のぶっ壊れな点だと思います。
・フェイトちゃん、これから彼女は九朗くんが心配で目を覗き込むようになります。
・フェイトを求める九朗くん。空気を呼んで黙り込む。
・フェイトちゃん、母親に『この人のところ行くから』とご挨拶。流石のプレシアも困惑。
・九朗くん、勢いで庭園に来たため虚数空間を知らず、飛び込むところだった。因みに飛び込んでしまった場合、アリシアルートだった。
・最後の最後で『娘』というプレシア。
・前世の親と急に離れ離れになった九朗くん。彼もある意味親を失った子ですからね。フェイト、クロノ、九朗……この空間親を失ったやつらばっかりだな。
・なのは、絶叫。
・フェイトちゃん、コアラみたいに九朗に抱き着いて初めてのドヤ顔。
・クロノ、この歳にして胃痛枠へ……。
一応両方やるつもりだけどどっちが先読みたいですか?
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