『ジュエルシード事件』が一先ずの終わりを迎えて私、高町なのはは自分の日常に戻ってきた。今まで通りだけど……いろんなことがあった分、今までとは結構変わってしまった日常。
くー君は私と一緒に向かった旅先で怪我を負って海外の病院にいるということになった。そこから訪れた『くー君のいない、日常』
今まで一緒にいることが当たり前すぎてもはや本当に日常と言えるのかも分からないそんな日々。これが短くて半年、長ければ一年以上……。ミッドチルダでもくー君の治療法が見つからなければ一生……。そんな日々を私は過ごせるのか、不安でいっぱい。
だけど気がかりなのはそれだけじゃなくて……綺麗な目をした……きっと優しいあの子のことも私は気になっていた。
そんな不安を抱えながら過ごしていた数日後、私の携帯にアースラから電話が届きました。フェイトちゃんが私に会いたいって、言ってくれてるみたいなの!
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私は指定された時間に海鳴臨海公園へとやってきた。そこにはフェイトちゃんにアルフさん、クロノくんがいた。……くー君はいないみたい。
「フェイトちゃん……」
「ん……」
三人に駆け寄って声をかける。ほんの数日あっていないだけなのにひどく懐かしく感じるのはそれだけ彼女たちと過ごした時間が自分の中で大きかったということなんだろう。
「僕たちは向こうにいるから、少し二人で話すといい」
「うん、ありがとう」
「ありがとう」
「だが、言っておくが僕は面倒が嫌いだ。特に、ここにいない"あの男"について君たちが揉めるような面倒ごとは本当に嫌だからな!」
クロノ君はそういって私たちの方をジトっと睨みつけてくる。
「私から仕掛けたりはしない。だから向こうがなにもしてこなければ大丈夫」
「私も大丈夫。今日はフェイトちゃんと話しに来たんだもん。大丈夫……うん、大丈夫だよ?」
「なら良いんだが。くっ、どうして僕がこんな気を遣わなくちゃいけないんだ……」
何かを小声で呟きながらクロノ君、アルフさん、それからユーノくんが離れていく。
「あはは……いっぱい話したい事あったのに……ヘンだね、フェイトちゃんの顔見たら忘れちゃった」
「……そうだね、私もうまく言葉にできない。……だけど、ありがとう。嬉しかった、真っすぐに向き合ってくれて」
二人で手すりを掴んで海を眺めながら、時折顔を見合わせながら会話を続けていく。
「友達になれたらいいなって思ったの」
「……うん」
「でも、今日もうこれから行っちゃうんだよね……?」
「そうだね……少し長い旅になる」
ミッドチルダがとれだけ遠い所なのか私は理解しきれてない。けどフェイトちゃんの顔から本当に長い旅だというは分かる。……そんな長い間、船の中って言う閉鎖空間でくー君と一緒にいるんだ……。私の目の届かないところで……。ってダメダメ! いまは我慢……。
「また……会えるんだよね……?」
「少し、悲しいけどやっとホントの自分を始められるから。それに頼りになる男の子もいるから、大丈夫」
お゛お゛ん? フェイトちゃん、そっちからは仕掛けてこないって言ったよね?
「来てもらったのは……返事をするため。君が言ってくれた言葉……友達になりたいって」
「ああ……うん! うん!」
不味いの、さっきのフェイトちゃんの中だと『仕掛け』にすらなってないの。それだけの日々を既にくー君と過ごしてる雰囲気が出てきたの……むむむ。
「私に出来るなら……私で良いなら……って。だけど私どうしていいか分からない。だから……教えて欲しいの。どうしたら友達になれるのか」
……少しだけ頬を赤くしてそう聞いてくるフェイトちゃん。……あぁ、くー君が可愛がるのも少し納得できちゃったかも。
「友達になるの……簡単だよ、すっごく簡単。名前を呼んで……。はじめはそれだけで良いの。君とか、あなたとかじゃなくて、ちゃんと相手の目を見てはっきり名前を呼ぶの。私、高町なのは! なのはだよ!」
「……なのは」
「うん!」
「なのは……」
「うん……」
あぁ、ダメだ。涙が……。
「……なのは。ありがとう、なのは」
「うん……」
私はギュッとフェイトちゃんの手を握りしめる。
「少し、分かったことがある。友達が泣いてると…・・・同じように自分も悲しいんだ」
「フェイトちゃん!」
私はフェイトちゃんに抱き着いて涙を流す。
「ありがとう、なのは。今は離れてしまうけどきっとまた会える。そうしたらまたなのはって呼んでいい?」
「うん……うん…うん!」
「会いたくなったら、きっと名前を呼ぶ。だからなのはも私を呼んで。なのはに困ったことがあったら今度は私がなのはを助けに行く。その時は九朗も引っ張って連れていくから」
ん?
「ミッドチルダにいる間、九朗のお世話は任せて。絶対九朗を元気にして見せるから」
目の前でふんすふんすと意気込むフェイトちゃんは可愛いけど……
「フェイトちゃん……」
「なのは?」
「一線超えたらマジでぶっ飛ばすの」
「私からは何もしない。でも"九朗から"迫られたら約束できない」
「私、アリサちゃん、すずかちゃんの三人がかりでも落とせてないの。フェイトちゃん一人じゃとても無理だと思うよ」
「これから始まるホントの私は未知数、ヤってみなくちゃ分からない。それに私には母さんの衣装もある」
「だからヤったらぶっ飛ばすの」
「……」
「……」
い、今からでも私もアースラに乗ってミッドチルダまでついて言ったほうが良い気がしてきた……! アルシオーネさんが私とくー君の仲を応援して手助けしてくれてるとは言え、アルシオーネさんは医務官として忙しい日々を送っている。いつでも対応はできない……ッ!
「そこまでだ! ここでの戦闘は危険すぎ―――九朗は来てないよな?」
「デジャヴってやつだね」
「大丈夫、ここに来る前フェイトと一緒に医務室寄ったけどぐっすり寝てたよ」
クロノ君が私とフェイトちゃんの間に入って静止してくる。
「まったくどうして君たちは……! 言っただろう、僕は面倒が嫌いなんだ! 特に九朗関連で引き起こされる奴! ……はぁ、そろそろ時間だ。いいか?」
もう出発の時間らしい。……くっ、仕方がない。アルシオーネさんにあとは任せるの。私は自分のツインテールのリボンを外す。
「フェイトちゃん……思い出にできるもの……こんなものしかないんだけど……」
「じゃあ、私も……」
するとフェイトちゃんも自分の頭についてるリボンを外した。そして私たちはお互いのリボンを交換する。
「ありがとう、なのは。きっとまた、ね」
「うん! フェイトちゃんもきっとまた。バイバイ、またね……クロノくん、アルフさん、フェイトちゃん!」
そうして私はフェイトちゃんと別れ、フェイトちゃんと九朗くんを乗せたアースラはミッドチルダへと向かいました。
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「アッハハハ、って、あ、痛、いたたたたた。笑い過ぎて腹が痛い……ククッ」
「笑い事じゃない! まったく僕がどれだけ胃を痛めたか君は分からないからそうやって笑えるんだ。そもそも、君のあっちにいったりこっちにいったりとハッキリしない態度がなのはやフェイトを――――」
ミッドチルダへと向かっているアースラ船内、俺はクロノ執務官から海鳴臨海公園でのやり取りを聞いて笑っていた。クロノ執務官やアルシオーネ医務官の目が若干冷たいが知ったことではない。
「ってここに来た理由は違うんだ。九朗、帰路のミッドについた後の身柄の扱いについて話に来たんだ」
「ほう?」
なかなか興味深い話だ。
「一旦だが、君は今回の事件の参考人として扱わせてもらう。それで君にも事情聴取のために本局に呼び出されることもあるが拒否することもできる」
「でもフェイトの為には出頭した方が良いよな?」
「そうだ。その際フェイトが裁判で不利にならないような証言の仕方とかはあとで教えよう」
「お願いします」
「で、ミッドや本局についた後だがアースラが君の住所、と言うことになる。ICUから出られたら個室を用意してある。そこを使ってくれ」
「アースラが住所……」
動く船が住所になるとは……というかそんな『職場が家です』みたいな……。いや、構わないんだけどさ。
「言っておくが女を連れ込むんじゃないぞ」
「クロノ執務官の中で俺がどういう扱いなのか一度問いただしたい気分だ」
「戦闘狂の女たらし」
んー、否定しきれない。そんな時、部屋の扉がノックされた。どうぞー、と声を掛けると入ってきたのはフェイトとアルフだった。
「九朗、起きてたんだね。おはよう、と言ってもお昼過ぎだけど」
「成程おそようだったか」
ぱぁ、と顔を明るくして俺が横になっているベッドにパタパタと寄ってくるフェイト。
「それじゃあ、僕はお暇する。頼むからミッドでは騒ぎを起こさないでくれよ九朗」
「えぇ、努力はしますよ」
最後にクロノ執務官はそう釘をさして医務室を後にした。
「最近はすぐ眠くなったり、ふとした時に起きたりでもう時間感覚がボロボロだ」
「それだけ体が休息を欲してるってことよ。当り前ね、二回もICUから抜け出してるんだから」
なるほど、アルシオーネ医務官の言う通りだ。フェイトとなのはの決闘のときと時の庭園の二回。今も中々だけど戻ってきた直後のアルシオーネ医務官の物凄く冷たい目はなかなか忘れられるものではない。
「貴方のそのしぶとさが少しでもあの人にあれば違ったのかしらね……」
「あの人?」
「忘れなさい。それじゃ私も離れるけど大人しくしてるのよ」
そういって部屋には俺とフェイト、アルフだけが残された。
「ねぇ、九朗。今日のなのはと少しだけどお話したの。それでね、私なのはと友達になったの」
「そうか、遂に……」
ずっと前からなのはは友達になりたいって言ってたもんなぁ~。
「九朗は友達の作り方って知ってる?」
「戦闘」
「違うよ! なのはに教わったから九朗にも教えてあげる。名前を呼ぶの、相手の目を見てはっきりと。それだけで良いんだって」
「成程……」
確かになのはの言いそうなことだ。そう納得していると何か期待するような目でこちらを見ているフェイトと目が合う。これは……。
「フェイト」
「うん!」
「フェイト」
「九朗」
「フェイト」
「ふふ、どうしたの九朗?」
「いや、呼んでみただけ」
「そっか。ねぇ九朗」
「ん?」
「呼んでみただけだよ」
「そうか」
そんなくだらないやり取りをして二人して笑いあう。よく、笑うようになったな……。そのあともフェイトとお喋りして過ごしていたのだがふと、眠気が俺を襲う。
「あ……九朗、もしかして眠くなってきちゃった?」
「ん……ごめん、せっかく色々話して、くれてる……のに……」
まだ、まだ起きていられ、る、はず……。
「ううん、大丈夫だよ九朗。ゆっくり休んで、また起きたときにお話ししてくれれば私は構わないから。あ……」
自然と瞼が下がってきて、目を開ける、のが……つらく、なって―――。
「フェ、フェイト?」
「これもお世話だから」
ベッドに、誰か入って……きて、る。抱き、しめられて、顔にやわら、かい物があたる。頭、なで、られ―――。
「ふふ、九朗の寝顔かわいい……。アルフもおいで」
「い、いや、アタシは……」
「アルフも一緒にお昼寝しよ?」
「あー、じゃあこっちの姿で足元で丸くならせて貰うよ」
あったか、ねむ。
「お休み、九朗」
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――23:58:00――
まったく、九朗くんは人を待たせすぎや。もうじき約束の3週間が過ぎてまうで?
――23:59:00――
ほら、ギリギリまで来んと私をびっくりさせるつもりなんやろ? それやったらもう、十分やからチャイムを鳴らすなり、ドアを叩くなりしぃや。
――23:59:50――
なぁ、お願いやから……。
――23:59:55――
「私を一人にせんとってや……」
――00:00:00――
日が、変わってしもた。約束の期間が過ぎてしもた。つまり、九朗くんはもう―――。
「ちゃう! 絶対にちゃう! 九朗くんは死んでなんかない! そうやで! 九朗くんは戦わんと世界が危ないって言うてた! その世界には何も起きとらへんんやし、九朗くんは勝ってるはず! ただ、ちょっと戦いで疲れて家に来るのが遅れてるだけや! うん、一度寝よ! もしかしたら朝起き時にはボロボロになった九朗くんがおるかもしれへん。
そしたら―――、そしたら、な……。私、『なに、女の子との約束に遅れてんの! ちゃんと反省しぃ!』って、そうやって……お、おこって、ぐすっ、やるんや……っぐ、からぁ!」
分かってる。ほんまは分かってる。あの時の九郎君の目は真剣そのもんで約束を破ったり、嘘をついたりするわけがない。つまり―――
九朗くんはもう、この世にはおらへん。
「う、ゥぅ……なんで? なんで私の大切な人たちはすぐにどこかへ行ってまうの? 嫌、もう嫌や……えぐっ、っぐ……。九朗くん、帰ってきてや! 一人にしんとってや……。う、うぅ……あぁぁあああぁぁ!」
私はその夜、夜中なのも気にせんと大泣きしてもうた。
はやてが泣いてる頃の九朗くん
「……うみゅ、んく、翠屋の……シュー、クリーム……」
・「九朗ッ、そこ咥えちゃ! あんッ、ひゃッ!」
・九朗くん、やらかす。度重なる重症による意識混濁に加え、休眠の多発、窓がなく時間間隔が狂う艦内環境と言うことで大事な約束を忘れミッドチルダへ。次地球に来るのはA'sが始まってから、つまり最低半年後です。あーあー。
・九朗くんのせいでCV杉田ではなくCV速水に進化してしまいそうなクロノ君。
・なのはとフェイトは無事友達に。ただし
・フェイトちゃん、プレシア衣装を所持している。研究者時代は普通だったのにどうしてあんな恰好になっちゃったんでしょうね、プレシア。
・なのは、すずか、アリサ、はやてに見られたらブチ切れられそうな艦内生活を送る九朗くん。
次回からミッド探訪編
一応両方やるつもりだけどどっちが先読みたいですか?
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