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「……ん、くぁ―――。んー。ん?」
「おはよう、九朗。―――うん、時間通り。九朗の生活リズムもやっと直ってきたね」
「ありがと、フェイト」
目が覚める。ぼんやり頭で目を開けると視界に入ってくるのは金色の髪と彼女の纏う黒色の服。
アースラで海鳴を発ってから2週間ほどが経過した。俺はICUを出て、かつてなのはに割り当てられていたという個室で日々を過ごすようになっていた。
のだが……。
「んん゛っあんまり、個室って感じはしないよな…… それからおはようフェイト、アルフ」
「おはよう、九朗」
「フェイトも九朗もおはよう」
フェイトとアルフ、この二人と一緒にこの部屋で過ごすことが多い……というかほとんど毎日一緒に過ごしてるからだ。
フェイトも言っていたがアースラが出発した最初の内は寝たり起きたり、窓もないわで生活リズム崩壊してたからなぁ……。
「今日の正午頃にはミッドチルダに着くんだっけ?」
「正確にはミッドチルダ近くの次元空間にある時空管理局本局にだね」
俺はスーツケースを広げて、フェイトは部屋のクローゼットを開けて着替えたり、朝の身支度をしながら会話する。……俺の部屋ではあるけどやっぱ女の子の服の方が大事じゃん? だからクローゼットはフェイトに貸してる。アルフは……うん、変身で一発だな。
「時空管理局、本局……」
ついに魔法の総本山か。どんな魔法を使う人たちがいるんだろう、どれだけ強い人がいるんだろう。どんな戦いが待っているんだろう……。
「九朗の身体の治療法、見つかるといいね」
「そう、だな」
けど、それなんだよなぁ。結局コジマ粒子をどうにかする方法を見つけないと魔法も満足に使えないだろうし……。ホント、困った。
「ホント、見つかってほしいよ」
「私に協力できることがあったら言ってね、私、なんでもするから」
そういって俺の方を見てくるフェイト。その目は本気そのものでやると言ったらほんとにヤる目をしていた。
「ふっ、お気持ちだけありがたく貰っとくよ。それから女の子が軽々しく『なんでも』とか言うんじゃないの」
「誰にも言わないよ。私は、九朗にだから言ってるの」
軽く流すつもりが思った以上に真剣な瞳でこっちを見てくるフェイト。
「そっか。ありがとうな」
「うん。だからなんでも言ってね」
「おう」
思った以上にガチすぎて俺はそういって自分の着替えに戻ることしかできなかった。そんな俺の隣にアルフがやってきてボソッと一言。
「誰のせいなんだろうね、まったく」
……うーん、これ俺が悪いか? 悪いか……。朝の身支度も終わり俺たちは三人並んで部屋を出て食堂に向かう。途中頭を押さえて苦い顔をしたクロノ執務官とばったり出くわす。
「おやおや執務官殿朝から険しい表情で、またなにか問題でもありましたかな?」
「おはよう、クロノ」
「おはよーさん」
「あぁ、おはよう三人とも。それから一番問題を起こしている君が、どの口でそんなことを言うんだ……!」
「この口でーす」
顎にピースサインを当てつつ舌を出す。フェイトがなぜかゴクリと生唾を飲む。
「九朗のベロ、長い……」
「こぉんの生意気なっ!」
「だはーっ怒ったー! ……んで、何があったんです?」
「うわぁっ、急に冷静になるんじゃないよ!」
俺の挑発にクロノ執務官が青筋を浮かべ、握りこぶしを掲げたのでアルフの後ろに逃げるふりをした。そのままアルフの周りを一周したあとクロノ執務官に質問する。するとあまりの俺の変わりようにアルフが驚いてツッコミを入れてくる。
「はぁ……。実はさっき地球にいるなのはに教導メニューを送ろうと通信をしていたんだが丁度結界内でトレーニング中でな」
「ほぅ?」
「なのは!」
なのはの名前が出てフェイトの目が嬉しそうになる。
「スターライトブレイカーで結界を内側から破壊したんだ」
「ん?」
結界を内側から破壊……? いや、ダメだ分からん。俺の印象だとなのはなれやれそうだねー、で納得できてしまうんだけどそれってすごいのか?
「単純魔力砲で広域結界を破壊したってこと? 『貫通』じゃなくて?」
「あぁ、『結界機能の完全破壊』だ。威力を高めようと改良した結果付加効果がついたらしい。まったく理論ではなく感覚で魔法を組む子はなんとも恐ろしい」
「でも凄いことだよ。私も負けてられないなー」
「まぁな。そういう君も結構凄いんだがな……」
クロノとフェイトの二人はことのすさまじさが理解できるのか会話を淡々と続けている。しかし……うん、俺は無理。
「……フェイト」
「どうしたの九朗?」
「俺、よく魔法のことは分かんないから教えて?」
「……っ!」
「フェイト?」
俺が教えを乞うとなぜかフェイトはビシリと動きを止めた。何かやってしまったか? 俺に緊張が走るがそれとは真逆にフェイトの目はどんどん煌めいて―――。
「任せて! 私もどちらかと言うと戦闘関連の知識に偏ってはいるけど九朗もそっちの方が喜ぶだろうし……たっくさん教えてあげるね!」
「お、お願い……」
「そういえば君も感覚派の魔導師だったな。丁度いい機会だ、治療法と一緒にちゃんとした魔法の勉強もしてみるといいさ」
物凄いフェイトが張り切りだした。これは……今日の午前は魔法の勉強漬けになりそうだな。でもクロノ執務官の言う通り、理論としての魔法をしっかりと学ぶいい機会かもしれないし……真面目に受けてみるか。
そのまま四人で食堂へ向かい朝食を済ませたあと、予想通り午前はフェイト先生による魔法講座が始まった。ある技術において本当に優秀な人は他人にその技術を教えるのも上手い、という話はよく聞くが本当だな。フェイトも、フェイトに魔法を教えた人も本当に優秀なのが伝わる分かりやすい授業だった。そのことをフェイトに伝えるとフェイトは嬉しそうに笑っていた。
『九朗、フェイト、そろそろ本局に着くブリッジに来てくれ』
そんな風にすごしているとクロノ執務官から呼び出しがかかる。ようやく到着か。授業を中断しブリッジに向かうと真正面に見えるのは次元の海に浮かぶ巨大な円筒状の小惑星……のようなもの。
「あれが時空管理局?」
「あぁ。時空管理局、本局。僕たち次元航行部隊の本拠地さ。君やフェイトにはミッドチルダ首都クラナガンにある地上本部に向かってもらう必要があるがそっちはその時に説明しよう」
なんだっけ? 海と陸だったか、そんな区別があるんだよな……。
「フェイトさんの裁判に、九朗くんの治療法、アースラも次元跳躍攻撃や次元震の影響でドックで修復。しばらくは本局内での内勤が多くなりそうね」
そう言ってリンディ艦長は椅子の上で体を伸ばす。ここで俺の治療法を探すのか……。もし、もしここでコジマ粒子をどうにかする方法が見つからなければ俺はあと一年以内に……。
「……ッ」
今になってなんともなかった不安が頭をよぎる。あーあー、なんともなかったはずなのに。別に死ぬのも怖くなかったはずなのに……。いろいろ変わっちまったな、俺も。
「九朗」
「……フェイト?」
「大丈夫、きっと大丈夫だよ」
俺の不安に勘ずいたのかフェイトがそっと俺の手を握りしめてくれた。
「ありがとう」
「うん」
「二人とも、この数日ですっかり仲良くなっちゃって。やっぱり若いって良いわ―――「艦長! 本館に緊急入電!」―――なんですって!?」
突如アースラに警報音が鳴り響きオペレーターのランディさんの声が響く。
「読みます! 『発・
執行……艦隊?
「取り舵、左八点!!」
リンディ艦長の指示のもとアースラは進路を変更した。そして今までアースラが進んでいた航路を別の艦隊が進んでいく。
「なんだあのデッカイ船たち……アースラの倍ぐらいないか?」
「T級戦艦一番艦ザンザスに、二番艦バリオス。A級次元潜航巡洋艦アリコーン、あとはSt級駆逐艦が数隻だな」
俺の呟きにクロノ執務官が答えてくれる。はぁ……大艦隊なのは分かるけどそれ以外の情報がまったく分からん。というか……。
「なんかボロい?」
負傷艦は勿論なんだけど引っ張ってる側も結構ボロボロじゃないか?
「まぁ、執行艦隊だからな……」
「執行艦隊……?」
俺がオウム返しすると大きな声では離せない案件なのかクロノ執務官が俺に耳打ちするように話し出してくれた。
「時空管理局は『次元世界の管理と平和維持』を目的に各次元世界に質量兵器一切の破棄や次元世界同士の戦争、管理外世界への侵略などを禁止する、管理局法への批准を求めている。しかし中にはそれに同意しない世界もある。同意しないだけならまだ良いんだ。
だが他の次元世界に戦争や侵略を開始したり、中には自分たちこそが第一次元世界に相応しいとミッドチルダに牙をむく次元世界もあってね。そういった次元世界をやむを得ず武力制圧するための艦隊、それか執行艦隊さ」
なるほどね……管理局の後ろ暗い部分と言う訳か。
「守るべき人々に武器を向けるのが仕事の艦隊って訳か」
「……事実だ。実際に戦争を体験している訳で執行艦隊に所属している局員のPTSD問題や高い離職率は時空管理局の中でも大きな問題になっている。そのせいで一時期管理局内で『執行官計画』なんて馬鹿げたものが提案されるくらいだ」
「ん?」
「別名『第二聖王計画』、『オリヴィエ・クローン計画』とも言われる」
聖王? オリヴィエ? ……なぁーんかまた知らない用語が出てきたぞ……。ガイウスの弟弟子のガイアかよ。若しくは血の貴族ナタン、盾の騎士ナイトハルト。
「……誰?」
「誰って、君は聖王を知らないのか? ―――あぁ、そういえば九朗、君は管理外世界出身だったな。ここ最近馴染みすぎててすっかり忘れてた」
「おい、執務官」
それでいいのか。
「そうだな、魔法の勉強と一緒に聖王の勉強もしてみるといい。こっちの世界だとメジャーな信仰の対象になっていて独自の武装組織の『教会騎士団』なんてのもいる」
「騎士団!」
独自の武装組織! なるほど独特の発展をした武器とか戦法がありそうでそっちも楽しそうだなぁ。
「どうだ興味でただろう」
「勿論」
「だが、管理局とは協力関係の組織だからないきなり殴りこみとかは勘弁してくれよ。向こうにはちょっとした友人がいるから本局についたら連絡してみる。だからほんと、本当に大人しくしていてくれよ」
「……まぁ、なるべく」
「確約はできないのか……」
俺の反応にクロノ執務官は頭を抱える。さて入港まであとどれくらいかな?
・艦内ではほとんどフェイトと同居状態の九郎くん。
・九朗くんの頭を抱きしめて寝るのが若干癖のフェイト。
・ん、いまなんでもするって―――あ、ホントにするつもりだこの子……。
・なのはさんの強化は順調です。
・フェイト先生の魔法講座。はりきりフェイトちゃんはきっと可愛い。
・執行艦隊との遭遇。事件の解決や犯人の確保ではなく、敵対勢力の排除を目的とした明確に『殺し』の経験が身につく艦隊。
・A級次元潜航巡洋艦艦長
「ご友人……稚拙なダンスを素晴らしいダンスに変えるのはなんでしょう? 分かりませか、それはイメージ!! 想像してください ご友人! 私は貴方と上手に踊れるでしょうか? 心配だ……けれどそれよりずっと楽しみです。
ご友人! 汚してしまったのですか! 土足で上がりこんだのですか!! 真っ白なシーツで完っ璧に整えた私のベッドの上に!! 素敵だぁ……。
強大な船! よく飛ぶ砲! 威力ある弾! 大勢の人間! 正確な狙い! あとはそこに贈り物があれば、完成します。 難しい目標を 照準し撃ち抜く、これが甘美な調べ…アリコーンも喜んでいます。分かりませんか! ご友人! 一つの次元世界の犠牲で何億を救うのです!」
・九朗くん執行官計画を知る。
・私はハーメルンの『ここすき』機能を見るのが大好きなんですよ。なので皆さんよろしければどんどん『ここすき』してみてください。
因みに『ここすき』欄だと透明文字も丸見えになるんですよ。あまり数は多くありませんが新しい発見があるかも……。
一応両方やるつもりだけどどっちが先読みたいですか?
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