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本局についてから数日が立った。
「――ック、……んぅ。――朝、か?」
自室のベッドの上で目が覚める。目の前には俺の頭を抱きしめて眠るフェイトの胸元。いつもより頭に回された腕の力が強いのは俺の診断結果を知ったからだろうか? もしそうであるなら不謹慎だがそれだけ俺のことをフェイトが思ってくれているということなのでちょっと嬉しかったりする。
それはさておき俺はフェイトを起こさないようにゆっくり腕をほどきフェイトの拘束から抜け出す。
「時間は午前4時前……嘘だろ」
いくら何でも早起きし過ぎだ。……大分しっかり目が覚めちゃったな。もう寝れる気がしない。これはもう仕方がない。俺はベッドから降りる。
俺の身柄はアースラ預かりの客人、という感じらしい。細かくはいろいろ違うんだろうが大体そんな感じだ。そしてPT事件と名付けられたジュエルシードにかかわる一連の騒動の解決に一役かったということで俺には謝礼金が送られてるし、フェイトと違って行動の制限や監視もない。つまり何をするかと言うと……。
「繰り出すか、町に」
行ってみるしかないだろう。本局ではなく、ミッドチルダの首都クラナガンに! ……俺は手早く、静かに着替え、メカニックルームから戻ってきたデバイスたちを手に取り部屋をあとにした。
さすがにこの時間はアースラ内も静かなものだ。時間もそうだが、今は緊急時に出港できるように最低限の人間しか艦内にはいない。長期の任務が終わり、アースラのスタッフたちも順番にそれぞれの家、家族の元に向かっている。
「おや? 九朗くん?」
「ランディさん。……早起きではなく当直勤務ですか?」
「あぁ、今は飲み物を取りに行くところさ。九朗くんは?」
「目が覚めちゃったので散歩がてら地上に降りてみようかと」
「なるほどね。準備は?」
「事前に準備していたクラナガンの地図とクロノ執務官に貰った本局内と地上本部の案内図、本局で発行された身分証と今回の事件の報奨金があります」
俺がランディさんに鞄の中身を見せる。ランディさんは『失礼』と一言言って俺が出した荷物を一つ一つ確認して頷く。
「うん、全部問題なし。これなら迷わないだろうし、仮に迷ってもタクシーで地上本部まで戻ってこれるね」
「やった」
局員のお墨付きも頂いたことだし。
「それじゃあ、行ってきます」
「いってらっしゃい。気を付けるだよ」
「はーい」
そうして俺は転送ポートを使いまずは地上本部へ。そこから地上本部の人に身分証を見せて本部内から市内へ出かけたのだった。
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「……迷子になった」
俺がクラナガンに降り立ったのは午前4時ごろ。当たり前っちゃ当たり前だが人通りはなく、店も開いてない。開いているのと言えばコンビニと24時間営業のファーストフードチェーンぐらいだ。つまり、つまらなかった。
なので俺はなにか面白いもの、この世界独自のものはないのかとひたすら歩き続けた。そして気が付けばいつの間にかクラナガンを出ていたようで地図が使い物にならなくなっていた。
「いや、一応北を目指して歩き続けてたし、南に向かえば地図の範囲内には戻れると思うんだけど……」
どこの世界も首都の賑やかな部分を離れれば同じような景色、と言うことなのだろうか、あたりには自然の緑が多くみられ、近未来的な首都と違い穏やかな空気が流れていた。……というか若干道路も含めた建造物の感じも違う? 自然が多いからそれに合わせたと言えばそこまでだけど、なんか文化が違うっていうか空気が違うんだよなぁ。なんか中世的と言えばいいのか、ファンタジーっぽいと言えばいいのか……。綺麗に手入れされた森林に朝の静けさもあって小道にそれれば教会でも出てきそうな雰囲気だ。
ん? 教会と言えば、クロノ執務官が何か言ってたような……。
「――ンーッ!」
「チッ、静かにしやがれ!」
「ほらさっさと入れろ!」
静けさに似合わない声がどこからか聞こえてきた。身体強化の魔法を使い少し高めにジャンプ。すると少し離れた位置の路地裏で口を抑えられたシスターっぽい女性が男たちに黒い車に連れ込まれているのが見えた。
「えぇ……マジかぁ」
魔法の世界でも人さらいってあるんだぁ。まずはアースラに連絡か? いやでも俺ここがどこだか分からんし……そもそも『海』所属のアースラに連絡したところでここって『陸』の管轄だよな多分。だとしたら地上本部の方に……あ、連絡先聞いてねぇや。110番? 911番? いや、どっちも地球の話だよな。うーん、ミッドの緊急通報って何番なんやろ。
「……俺がやるしかないかぁ」
どうせ残り少ない人生だ、明日も生きれる人の将来の為に使った方が気分は良いよな。
俺はデバイスを握りしめバリアジャケットを身に纏い、走り出した黒い車を上空から追跡を始める。
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「(不味いことになったわね……)」
いつもいつも、教会の中で勉強やお稽古ばかり。そんな日々に嫌気がさしてクラナガンに遊びに行きたくて、朝早いうちからこっそりと教会から抜け出した。だけどまさか丁度、聖王教会関係者の誘拐を考えていた犯罪者達の下見に出くわしちゃうなんて……。
「へ、へへへ、下見のつもりが上手くいっちまいましたね、ボス!」
「あぁ、予想外のアクシデントだが見られた以上黙らせるほかねぇ。このままアジトに引きこもって聖王協会の連中に身代金を要求すんぞ」
「その金で俺たちはこんな世界おさらばして別の世界でまたのし上がるんだ!」
「んだんだ!」
「んー……」
「……」
車の中には6人の男たち。どうやら身代金目的の誘拐みたいだけど、よりによって攫われたのが『古代ベルカ式魔法』の継承者である私。このことが発覚したら聖王教会は大慌てでしょう。仮に無事帰れたとしても後しばらくは監視付きで外になんか出れなさそうね……。
「な、なぁボス。せっかくだから少しこいつで"愉しんで"も良いですかね?」
「あぁ? お前年下好きかよ?」
は?
「いやぁ、コイツ顔立ちは良いし、前からシスターってお高く留まってる奴を犯してみたくって、へへっ」
「俺たちを何年も閉じ込めやがった管理局の奴らへの思い知らせてやるんだ! 『なにも守れなかったな』って!」
「ヤんべ、ヤんベ」
「んー、勃!」
「……下種が」
部下の一人が言い出した言葉にボスと一人の男以外全員が同意し始めた。"愉しむ"って……嫌! そんなの、こんな奴らに私の……嫌! 絶対いやよ!
「ンーッ! ンーンー!」
「お? 急に暴れ出しやがって。自分が今からなにされるのか理解しちまったみたいですぜ、へへへ」
「はぁ……あくまでそいつは人質。あんま傷つけんじゃねぇぞ」
「了解しやした! へ、へへへっ。不運だったなァ、嬢ちゃん。安心しなぁたっくさん気持ちよくしてやっから」
ニタニタときもち悪い笑みを浮かべながら近付いてきて私の服に手をかけようとする男。しかも今!? さっき言ってたアジトについてからとかじゃなくてこの車内でなの!? 私は必死にもがくが車内に連れ込まれてつけられた手枷と口枷は一向に外れない。嫌! 嫌! いや! 誰か、誰か助けて!
私は迫りくる男の手から逃れようと首を横に向けた。その時ふと窓の外が目に入る。
私は
真っ黒い鳥がまるで得物を狙う猛禽のように翼を広げ、両脚をこちらに向けていた。今までカラスと言うとゴミ袋をあさったり、カァカァと煩かったりとあまりいい印象はなかったのだけれど……。
「(この子は綺麗で、かわいく思えるわね)」
次の瞬間車の窓が割れ、その子が車内に突っ込んできた。
「初めて、こんにちは、犯罪者。そしてさよなら、する」
「はぁ? なんだぁこのガキ? 邪魔すんじゃ―――げはぁ!?」
鴉に見えたのは一人の男の子。その子は両手にデバイスをもっていて片方のデバイスで私の服に手をかけようとしていた男を打ち抜いた。一応非殺傷設定はされてるみたいだけど容赦ないわね……。
私が容赦のなさに驚いていると男の子は私を肩に担いで車の扉を吹き飛ばし車外へ飛び出した。それと同時に別の魔力弾を車へ打ち込んで車を横転させた。
「ん、外した。怪我無い? 大丈夫する?」
「えぇ、ありがとう。怪我はないわ」
私を抱えた男の子はキレイに地面に着地すると私を肩からおろして手枷、口枷を外して私に怪我がないか確認してきた。
……この子、最近ミッドに来たばかりなのかしら? 意味は何となく分かるけど言葉がぎこちない……たどたどしいわね。
「危険、あぶない!」
「キャッ!?」
突然男の子が私の腕を引っ張ってしゃがみこませ、プロテクションを発動させる。するとバァンと何かが弾ける音とプロテクションに何かが衝突する音が聞こえる。
「チィッ、魔導師のガキがァ! そいつを返しやがれ!」
「鉄砲!? 魔法、つかわない!?」
「質量兵器ね」
プロテクションの向こうを見れば私を攫ったグループのボスと呼ばれていた男が車から這い出てきて、質量兵器を手に私たちに向かって攻撃していた。
「無駄、諦める」
「うっせぇ、黙れってんだよ!」
「お話、失敗」
「ん、ふふふっそうね。失敗ね」
真剣な顔つきなのに言葉がかわいらしくて私はこんな状況にも関わらず笑みをこぼしてしまう。急に私が笑い出したことに男の子は首をかしげて不思議そうに私を見る。本当に、可愛い子。
「そこまでだ!」
「なにか、きた」
「管理局の局員ね」
私たちに向かって射撃していた男の身体にいくつもの光の鎖が絡みつき、その動きを止めた。上空を見るとデバイスを持った管理局の局員が一人飛んでいた。
「お二人とも無事ですか!?」
犯罪者達を手早く拘束した局員が私たちの方へやってくる。
「えぇ、大丈夫です。ありがとう局員さん。お名前を伺っても?」
「はっ! 私は首都航空隊所属、ティーダ・ランスター三等空尉です。今は私だけですがすぐに応援も駆けつけますのでもうしばらく―――」
「……ダメ」
「あら?」
ランスター空尉の言葉に男の子が焦り始める。
「全部終わった。俺、帰る。バイバイ」
「っと待った! 君が聖王教会のシスターを助けたのは状況から理解できるが、一般人の指定範囲外の魔法使用と飛行は禁じられてるんだ。君もお説教の対象だよ」
「ダメ、騒ぎダメ! 俺、ここに居なかった、最初から。お願い! ランスター空尉、一人で片づけた!」
「そういう訳にはいかないんだよ、坊や」
逃げ出そうとした男の子の首根っこをランスター空尉は捕まえて逃げれないようにする。
「騒ぎ大きくなる。俺ここいる。クロノ執務官、お腹痛くなる。ダメ」
「クロノ……?」
「執務官?」
目の前の男の子から義弟の友人の名前が出てきたことに驚く私。お腹が痛くなる……胃痛枠ってやつかしら? そんなことを考えていると男の子のデバイスに通信が入ってくる。
『あ、やっと繋がった! おい、九朗! アンタ、今どこにいるんだい!? 朝起きたらアンタがいないってフェイトが滅茶苦茶騒いでるんだよ! 朝早くにアンタの下船記録だけ残ってて……まさか自棄になって自殺しに行ったわけじゃないんだろ!? 悪いけどすぐに戻ってきてくおくれよ!』
「ん! アースラもすぐ戻る。フェイト大丈夫、伝えて」
『あいよ!』
……クロノ執務官、アースラ、フェイト、クロウ。いくつかの情報がこれで手に入ったわね。この子のことはこれでいつでも知れる。そしたら助けてもらったお礼に、こちらからも助け船を出してあげましょう。
「ランスター空尉、どうにかその子を離してあげられませんか?」
「いえ、シスター。いくら何でもそれは……」
「今の通信、あなたもお聞きになったでしょう? この子の帰りを待ち望んでいる子がいるようなのです。私のことはランスター空尉が助けてくださった。それで良いではありませんか」
「しかし……」
「これでも聖王教会でもパイプは多い方なのでその男の子の事でしたら私が調べられます。それで後日、ランスター空尉から個別にお説教をしてあげてください。あなたもそれで良い?」
「良い。説教、受ける。後で!」
私の言葉にぶんぶんと首を縦に振るう男の子。
「はぁ、聖王教会のシスターにそう言われては仕方がないですね。ほら、今日は行って良いぞ。帰りは飛ぶんじゃないぞ」
「分かった! ……地上本部、どっち?」
「この道を真っすぐいったら一本目の大通りを左に曲がって真っすぐ行くんだ。しばらくあるけば着くが結構距離あるぞ?」
「でしたら、こちらを。今、返せる私からのお礼です。
私は街で使うはずだったお金からある程度を男の子に持たせた。
「大通りにでたらこれでタクシーを使いなさい」
「ありがと!」
ランスター空尉が手を離すと男の子は私たちに頭を下げた後、まっすぐ教えられた道を走っていった。
「……こういうのは今回だけですよシスターさん」
「分かりました、ランスター空尉。それと一つだけ訂正を」
「はい?」
「私はシスターではなく、騎士です。と言っても戦闘向きの魔法ではないので今回のようなお恥ずかしいことになってしまいましたが」
「騎士? ベルカ式の魔導師ですか?」
「はい。『古代ベルカ式魔法』の継承者、カリム・グラシアと申します」
・起きて一番に目に入る光景がパジャマフェイトの胸元とかいう絶景の九朗くん。
・九朗くん、置手紙でも書いておけば良かったものを……。
・夜中の町のコンビニはそれはそれで楽しいけどね、九朗くんが見たかった景色ではない。
・暇すぎて、クラナガン市内からベルカ自治領まで行ってしまった九朗くん。
・実は九朗くん、ミッド語が少し苦手。Stsとかアニメだから日本語に聞こえてるけど実際はミッド語で喋ってるらしい。そのためカリム視点だとあんな感じに聞こえてます。さらにアースラでは九朗くん勉強のためにミッド語で頑張って喋ってますので、他人(九朗以外のアースラスタッフやフェイト、アルフ)から見ると大体カリム視点みたいに聞こえてます。
そしてさらに子供って小学生高学年~中学生ぐらいまでは女子の方が成長が早いんですよ。九朗くん、現段階だとフェイトよりも背がちょっと低いです。つまり何が起きるかと言うと……。
「俺はフェイトのこと好きだよ」←本人視点。こういうことを言ったつもり。
「俺、フェイト好きー」←フェイト視点。自分より背が小っちゃい、舌足らずな言葉遣い、コジマ汚染で体が弱ってる、余命少ない。
となります。
・騎士カリム登場。クロノの友人の義姉なのでこの時、17、18ぐらい? sts時には三十代説もあるし……。
・そしてティアナの兄、ティーダさん登場。
・今回の功績は全てティーダさんの手柄に。
・ティーダさんの活躍を聞いた上司のワッカ一等空尉。
「ティーダの活躍、すごすぎだろ!」
・フェイトちゃんは若干依存気質。
・朝起きて置手紙もなしに九朗くんが消えたときのフェイトちゃんの気持ちを想像すると笑顔になりますね?
一応両方やるつもりだけどどっちが先読みたいですか?
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