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「(あー、あー、聞こえてるかな?)」
「(聞こえてるけどその変にテンションの高い声は何なのくー君……?)」
「(僕のほうもちゃんと聞こえています)」
ん? 主任の声マネは気に入らなかったか? まぁ、どうでもいいか。
昨日の出来事から一晩明けて次の日、俺となのはは教室で授業を受けながらユーノと『念話』というものを使って会話していた。声も出せずに遠くの人とやり取りできる、こんなことができるなんて魔法って本当に便利だな。
「(それじゃあ、ユーノ。説明を頼む)」
「(はい。まず、二人とも、昨日は助けてくださって本当にありがとうございました)」
姿こそ見えないがペコリと頭を下げているフェレットの姿が簡単に想像できる声色だ。
「(ううん、気にしないで!)」
「(あぁ、なのはの言う通り気にする必要なんてない)」
正確に言えば少し違うがこの世界に来てまたACを駆り、戦場を
「(信じてもらえるかわからないけど……僕はこの世界の外、別の世界から来ました)」
いや、信じるだろ。あんな訳の分からん技術が地球生まれだとは到底思えない。あと30年ぐらいたって仮想世界が娯楽として実用化されて、その中だけでの出来事とかだったらまだわかるがあれはどう見ても現実に存在していた。
「(昨日あなたたちが使ったのは『魔法』……僕の世界で使用されている技術です。あなたたちが戦ってくれたのは僕たちの世界の危険な古代遺産、ロストロギア『ジュエルシード』。ちょっとしたきっかけで昨日みたいな暴走を引き起こす可能性のある危険なエネルギーの結晶体です)」
まぁ、あれか。コジマ粒子とかコーラルとかそういうもんってことだろ。なんだACのいつものことじゃないか。 ん? 『僕たちの世界の』?
「(なぁ、ユーノ。そのジュエルシードはどうして海鳴にあるんだ? ユーノの話を聞いてる限りもともと海鳴に在ったものじゃなさそうだけど……)」
「(それは、僕のせいなんだ)」
俺のなんとなくした発言にユーノの声色は一気に深く沈んだ。
「(僕は故郷で遺跡発掘の仕事をしていて古い遺跡の中でジュエルシードを発見したんだ。それですぐに管理局に依頼して保管してもらおうとしたんだけど、その管理局に届ける途中で事故に遭っちゃって……21個のジュエルシードはこの世界に散らばってしまったんです)」
……ほー、 つまりAC6で例えるなら現地のルビコニアンが新しいコーラル物質を見つけたから封鎖機構に届けようとしたら事故ってコーラル物質がが色々な星系にばらまかれて増殖を始めた……みたいな感じか? まずくね? なんか思ったより話の規模が大きいな。
「(回収できたのは二人が協力してくれたものを合わせてまだたったの二つです)」
残り19個。ふぅん……つまり最多であと19回は戦う必要があるってことか。
「(あと、さっきから妙に気になっていたんだが敬語とか使わなくていいぞ)」
「(ついでに"さん"付けもしなくて大丈夫なの! 私のことは名前で呼んでね、ユーノ君!)」
「(分かり――うん、わかった。……なのは、九朗)」
よし、大分砕けた感じになってきたな。
「(その、二人は昨日巻き込んじゃって助けてもらって本当に申し訳なかったけどこの後、僕の魔力が回復しきるまでの間ほんの少し休ませてもらいたいんだ。一週間……いや5日もあれば魔力が戻るからそれまで……)」
「(回復しきったらユーノ君はどうするの?)」
「(また一人でジュエルシードを探しに出るよ)」
は?
「(おいおいおい、ここまで乗り掛かった舟なんだ。最後まで付き合うぞ)」
「(そうだよ、ユーノ君! 学校と塾の時間は無理だけどそれ以外の時間なら私も手伝えるから)」
何一人で解決しようとしてんだ。それが出来なかったから昨日俺たちを呼んだんだろうに。それに、この世界にないはずのレイレナードとオーメルのネックレスが存在する以上、俺をこの世界に転生させた奴は俺をこの戦いに巻き込みたくて仕方がないんだろう。変に関わらずにいて不意打ちされるよりかは自分である程度関わっていた方が気が楽だ。
「(だけど……昨日みたいに危ないことだってあるんだよ……?)」
「(猶更だ。そんな危険なものがあって放置なんてして親や友人が巻き込まれたりしたら目覚めが悪いどころじゃない)」
そう、これは知り合いや家族を守るために戦うんだ。他意はない……はず。
「(……くー君?)」
ん? 何故かなのはの声色がかなり困惑したものになってるし……げっ、授業中なのに目でもこっちを困惑したような目で見てるし……前向け、前を。……とりあえず笑っといてやるか。おい、なんでもっと困惑するんだ。
「(えっと……ともかくこうして知り合っちゃったし、話も聞いたんだもん。放っておけないよ。ユーノ君一人ぼっちで助けてくれる人いないんでしょ? そういう時、一人でも助けてくれる人が出来たらすっごい心強くなれるし、うれしいもん。だから私とくー君にお手伝いさせて。困っている人がいて助けてあげられる力が自分にあるならその時は迷っちゃいけないって……。これ、うちのお父さんの教え)」
以前聞いたことがあったが改めて聞くとすごい立派な大人だよな、士郎さんって。
「(私はユーノ君を、助けてあげられるんだよね……? 魔法の力で?)」
「(俺だって戦える、そうだろ?)」
「(うん。多分二人とも僕なんかよりずっと才能があるよ)」
うっし。
「(だからいろいろ教えて魔法のこと。私、頑張るから)」
「(うん、ありがとう。なのは)」
「(俺にも色々教えてくれよ?)」
「(……九朗に教えること、あるかなぁ……)」
おい、なんか色々あるだろ。こちとら昨日、回避と単純な射撃程度しかやってないぞ。一先ずユーノに魔法にはどんな種類があるのかを聞いたりして放課後まで過ごした。
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そして下校時、アリサとすずかのダブルお嬢様はお稽古があるということで今日の下校はなのはと二人っきりだ。……いや、お稽古って。前世はそこまで裕福というわけではない所謂中流家族というやつだったが、まあ、なんだ……やっぱり『お金持ち』とかいうやつにあこがれたことは何度かあった。しかしこうしてドのつきそうな一流家族の友人が出来ていろいろ知ることができたが、金持ちは金持ちで苦労するんだな。
……九朗、苦労を知って苦悩する。なんちって。
「なのは、今日は『翠屋』によって行くのか?」
「うん。こうしてくー君と二人で帰るのって久々だし、ちょっとおやつ食べていこうよ!」
「……そうだな、了解した」
正直なことを言うならすぐに家に帰って荷物を置いてユーノに魔法を習いに行きたいんだが……。まぁ、別にそれくらいならいいか。
なのはの提案に賛成してなのはの両親が経営している駅前で人気の喫茶店『翠屋』へと歩き出した―――その瞬間、全身を包み込む強烈な寒気。
「今のは……」
「くー君も感じた?」
「あぁ……(ユーノ! 今のお前も感じたか?)」
「(うん! 新しいジュエルシードが発動してる! すぐ近くだ!)」
「なのは、行くぞ!(ユーノ、現地で合流できるか!)」
「……行こう、くー君! やっぱりくー君、笑ってる……。けど……」
「(できるよ! 任せて!)」
さて、今度は一体どんな敵が出てくるんだ? また昨日みたいな不定形か? 人型か? はたまた
そうして寒気の感じる方に走っていくと神社へと続く長い階段が姿を現した。なるほどこの上野神社でジュエルシードが起動したらしい。後ろに視線を向けると運動神経が良くないせいか肩で息をしているなのはといつの間にかユーノが足元にいた。
「俺が先に上に行ってくる。転ばないように気を付けながら上がってこい。ただ昨日みたいなやつだと止めができないから焦らず急いで。ユーノ、なのはについていてやってくれ」
「うん!」
「わかったよ」
「メインシステム、戦闘モード起動」
二人の返事を聞いた後俺はデバイスを起動して変身し、一気に飛翔して神社へ向かう。
「GUoooooo」
「ほう、今度は犬か」
神社に到達すると黒く巨大な犬のような姿の化け物と気絶して倒れている女性がいた。ま、精々巻き込まれないことを祈っておくんだな。
「……気絶してたらそれも無理な話か!」
俺は両手のデバイスを構えて黒い犬に向かって射撃を開始する。射線上に倒れた女性もいるが起き上がらない限りは当たらないだろ。
「GuGyau!?」
「お? 自分からあたりに来るとは殊勝な羊だ。犬だけど」
不思議なことに黒い犬は女性を飛び越えて接近してきて攻撃に自らあたりに来た。しかもあんな風に身をかがめて股下を抜けて女性のほうに魔力弾がいかないようにしてる……。
ふぅむ……まさか? だが、試してみるか。俺は狙いを黒い犬から女性に移して女性を中心に円軌道で旋回を始め、射撃を開始する。
「ふ、ふふふ予想通りだ。なんだ、化け物、その女が好みなのか?」
「Wauuu……Gyan!」
すると面白いことに黒い犬は女性への攻撃をその身を盾として防いで回る。よっぽど自分の獲物に手を出されるのが嫌なのか、なにか魔法的な儀式をしようとしていて、儀式のために生きている女性が必要なのか? 狙いはわからないが自ら攻撃に当たりに来てくれるなら楽で助かる。
「とは言え、これは一方的過ぎてつまらないな……」
こちらが得に狙いを定める必要もなく女性のほうに向かって適当にトリガーを引けば相手が勝手にあたりに行ってくれるのだ。まぁ、それももう限界みたいだがな。
一度射撃の手を止めればモーターコブラとオーメル突撃ライフルの射撃でボロボロになった黒い犬がパタリと倒れこむ。それでも視線をこちらに向けて警戒を怠らないのは何の意地だろうか。
「着いたよ、なのは!!」
「う、うん……ちょ、ちょっと……」
「おぅ、お疲れー」
ユーノの声が聞こえてそちらに視線を向ければ神社の階段を登りきったところにフェレットとすでに疲労困憊のなのは。うーむ、なのはの家族は基本的に運動神経はすごい方だと思ったんだが……どうしてああなった。
「Guruaaaaaaa!」
「お?」
「なのは、レイジングハートを!」
「え、きゃあッ!」
俺が目を離した一瞬で黒い犬は一気に体を再生してなのはの方に飛び掛かる。それに気が付いたユーノが素早くなのはに指示を出すが間に合わない。
≪set up≫
しかしなのはの持つデバイス、確かレイジングハート、だったか? そいつだけが素早く反応してなのはの身を守っていた。昨日見たプロテクションという魔法を発動した後、衝撃を反転させて黒い犬を弾き飛ばしていた。……へぇ、やるじゃん。
「パスワードなしでレイジングハートを起動させた!?」
「いや、どっちかと言うとレイジングハートが勝手に起動しただろ、さっきの」
ユーノの言葉に思わず突っ込みを入れてしまう。
「レイジングハート、ありがとう」
≪you're welcome≫
「GWaaaaaaa!」
弾き飛ばされた黒い犬が再び立ち上がり大きく咆哮する。その足を撃ち抜いて行動を制限する。
「なのは、封印を!」
「うん! リリカルマジカル! ジュエルシード封印!!」
≪sealing≫
そしてなのはの呪文と共に黒い犬は昨日の思念態同様封印されたのだった。ふぅ、これで終わりか。やはり大したことなかったな。
・AC世界で暴走の危険性なんていつものこと。
・しかし事の大きさを理解した九朗くん思ったよりヤバメな状況に頬がひきつる。
・本当に戦う理由はそれだけなのか? 自分でもあいまいな九朗くん。
・九朗くん、少し心に余裕ができて冗談も口にできるように。
・なのはちゃん、九朗くんの変化に何か気が付き始める。