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「まさか……学校のあとそのまま行くとは……」
俺は一人、愚痴りながら目的地への道を歩いていく。
今日の学校は午前授業のみ。そのためなのは、アリサ、すずかの三人といっしょに最近できたという大型のプール施設に行く約束をしていたのだ。俺としては午前授業が終了後、一度家に帰り、荷物を持ってプール施設前集合のつもりだったのだが女子三人組は学校から直でプール施設に向かうつもりだったようで学校に水着やタオルの入った一式セットを持ち込んでいた。しかもすずかのところのファリンさんとノエルさんのメイドコンビが学校まで迎えに来てた。
しかしそうなると荷物を持ってこなかった俺がプール施設に直で行っても意味はないため、こうして一人で家に帰った後荷物を持ってプールまで向かっている。
『今日の午後みんなでプール行くって言ったじゃない! ちゃんと話聞いてなさいよ!』
なんてアリサに言われたが、話は聞いているんだ。ただ俺は放課後制服着たまま行動するのがどうも苦手で、一度家に帰って着替えてから出かけたい人間なんだ。
「さてと……バス停まであと少し……んぁ?」
視界の隅、もっというと道路の脇に変なものが映る。
「あっ、す……ぅ」
車椅子に乗った少女が行きかう人に声をかけようとしては物怖じして失敗してる姿だ。膝の上には崩れかけの買い物袋、車椅子の後輪タイヤが道路と歩道の間の溝に落ちてる。んー……買い物帰りに崩れそうな買い物袋の方ばかりに注目していたら溝にタイヤが嵌って動けなくなったとかか? そんで周りの人に助けてもらおうと声を上げようとしたが行き交う人間は彼女に目もくれず、か。そんで次第に声を上げるのが怖くなってあんな風にしどろもどろになったわけか……。
「……はぁ」
周りのやつも女の子が困ってるんだから助けてやればいいのに……。
「おい」
「へ?」
「タイヤ、持ち上げるから荷物押さえとけ」
「う、うん!」
車椅子の子がしっかりと買い物袋を持ったのを確認したあと、俺はタイヤをつかんで力を入れる。あっ、車椅子自体の重さと女の子の体重で結構重いッ。
「ッッし! ……ふぅ」
よし、何とかタイヤを持ち上げて溝から抜け出させることに成功した。そのまま車椅子を押して歩道の真ん中まで押してやる。
「……これで十分か?」
「うん! ありがとうな!」
やれることはやったしここで別れても良いんだが。……んー。
「俺はこの後予定があってな、申し訳ないがお前を最後まで助けることはできない」
「そんなん! もう十分助けてくれたで!」
……関西弁?
「俺はあそこのバス停から〇〇ってところまで行くんだが、もしお前も同じ方向であるならそこまでは助けてやれる」
「……ほんまに? 私も同じバス使うてその先まで行くで。 迷惑ちゃうんなら、ぜひお願いしたいわ」
「それじゃあ途中までだが一緒に行こうか」
俺はそういって女の子の乗った車椅子を押し始めた。
「あ、私は八神はやて。はやてちゃんって呼んでや」
「烏丸九朗」
「九朗くんか。ほんまにありがとうな」
「どういたしまして」
俺たちは一緒にバスに乗ってそれぞれの目的地に向かう。
「九朗くん、今日はどこ行くん?」
「最近○○の近くに大型プールの施設が出来てな。友達とそこで遊ぶ約束をしてたんだ」
「へぇー、プールかぁ……。私行ったことないなぁ」
「ま、その足じゃ無理だろうな」
「九朗くん、思てたよりストレートにもの言うんやな」
「なんだ? 気を使った方が良かったか?」
「いいや。それくらいの方が私好みやで。でもほかの女の子にはもうちょっと気使うた方がええかもしれんね」
「そういうもんか」
「そういうもんやで」
そうなのか。
そんな会話をしつつ俺の降りる停留所が近づいてきて俺ははやての車椅子から手を放す。
「それじゃあ、俺はここだから。気を付けて帰ろよ」
「うん。今日はほんまにおおきに。今日は予定があるみたいやからまた今度会うたときに今日のお礼さしてな」
「お礼なんて別に―――」
「ダーメ、ほなら私の気が収まりまへん。せやから、ちゃんとお礼さして」
「……そうか。じゃあ、その時はちゃんと受け取るよ」
バスが停留所に泊まる。俺は荷物を背負いバスから降りていく。最後にはやてのほうに振り向いててを軽く上げて挨拶する。
「それじゃあ、またな。はやて」
「……! うん、また!」
はやてはバスが動き出した後も窓辺に張り付いて俺に手を振っていた。さて、少しばかり遅れたがなのは達が機嫌を損ねていないことを祈ろう。特にアリサ。
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「おそい!」
「悪かったよ」
ロッカーで着替えて施設内を進むと水着姿で腕組みをして仁王立ちしているアリサにそう怒られる。まぁ遅れたことは事実なので直に謝っておく。
「九朗くん大丈夫だった? ファリンかノエルを迎えに行かせようとしたんだけど……」
「それは最悪入れ違いになってたかもしれないししなくて正解。しんぱいしてくれたことには感謝しておくよ」
すずかは心配そうにこちらの様子を伺ってきたので感謝を伝えつつ頭をなでる。
「水着似合ってる」
「えへへ、ホント?」
「あぁ。髪型も合わせて変えてるんだな」
「うん!」
各所にリボンが飾り付けられた白いワンピースタイプの水着はすずからしいチョイスだが、いつもと違い、髪をまとめてポニーテールにして活発さが感じられる。ギャップってやつか。
「……むぅ」
「……」
「どうした二人とも?」
俺がすずかと喋っているとなのはとアリサの二人が頬を膨らましながらこちらを睨んでいた。一体どうし……あぁ、そういうこと。
「悪かったよ。アリサもなのはも水着似合ってる。とてもかわいいと思う」
「にゃははは~」
「ふ、ふん。別にそんな風に言っても私の機嫌は直らないわよ!」
二人とも自分の水着が褒められていないことが気に喰わなかったんだろう。そう思って褒めてみれば案の定だ。なのはは照れて頭を掻いて、アリサは顔を赤くしたままそっぽを向く。なのはは取り合えずオーケー。アリサはもう少しだな。
「すずか」
「うん。大丈夫だよ」
すずかに声をかけると俺が何を言いたいのかすずかは理解していたようで笑ってくれる。最後にすずかを一撫でして、アリサの前まで歩いていく。
「アリサ」
「な、なによ!?」
「遅れて本当に申し訳ないと思ってる。ただこれ以上時間は無駄にできないしせっかくみんなで来てるんだ。楽しく過ごしたい。どうすればアリサは期限を直してくれる?」
「ひゃっ!」
俺は組まれたアリサの腕をほどいて手を握る。急に手をつかまれたことにアリサは動揺して声を上げるが構わない。ジッ、とアリサの目を見つめて離さない。
「お……」
「お?」
「泳ぎ……教えなさい。それで許してあげるわ」
「仰せのままに、お嬢様」
「むむむぅ……」
「なのはも順番でな」
「! わかったなの!」
よし、これでそれぞれの機嫌は問題ないな。最初はみんなで遊ぼうということで流れるプールや波の出るプールに入って遊び始める。泳ぎが苦手ななのはやアリサは浮き輪装備だ。水流に身を任せ流れていく彼女たちを少し後ろで眺めていると隣になのはのお兄さん、高町恭也さんがやってくる。
「さっきの対応、相変わらず見事だな」
「どうも。ったくどうして俺なんでしょうね。なのは達ならもっと高望みしても良い人見つけられるだろうに」
なんだか自惚れっぽくなってしまうがあの三人が好意を寄せてくれているのは何となくわかる。それに気が付きながらも俺は三人の間をぶらぶらと行ったり来たり。……いや、大分最低なムーヴしてるな俺。
「で、実際三人の中だったら誰が一番なんだ?」
「おぉう、大分ブッこんできますね恭也さん」
「なに、女性陣は先の方ではしゃいでこちらに意識を割いてないからな。男同士の会話ってやつだ。で、どうなんだ? なのはとかおすすめだぞ」
「身内びいきですか?」
「身内びいきだが?」
ハッ、隠す気なしかよ。なのは、なのはねぇ……。一体なのははどんな風になるんだろう。なのは自身の性格と師事しているユーノがもともと防御や転送に優れた魔導士ということもあって防御力は非常に高い。おまけにまだ砲撃は見たことないがなのはにはそちらの才能があるらしく。高い防御力と遠距離からの高火力砲撃タイプになっていくのではユーノは予想を立てていた。つまり、高火力キャノンを装備したガチタンというわけだ。しかもなのはの俺以上に無尽蔵な魔力のせいで弾数も豊富。弾数が60近くあるHLC09-ACRUXかOIGAMIというわけだ。……怖くない? いや、近づければどうとでもなるか? 確かに高防御だが無敵というわけではないはずだし、いつかは削れるはず。それにいくら防御が固くても心は関係ないはず。視覚的に、恐ろしい攻撃をすればなのはは目を瞑るし、精神に揺さぶりをかければ魔法も揺らぐ。……まだどうとでもできる。なら―――
「――くん、――朗くん! 九朗くん!」
「んぇ? あれ恭也さん? どうかしたんですか?」
「それはこちらのセリフだ。急に考え込んだと思ったら急に笑顔になったりと……何かあったのか?」
マジか。そこまで外に出てたのか。というか笑ってたってヤバいな。
「少し、一人で頭冷やしてきます。確か滝もどきがあったはずなのでそこに居ます」
「あぁ、わかった」
そういって俺は流れるプールから上がった。
「九朗くんの浮かべたあの笑み……。なのはにそれとなく何かあったか聞いてみるか」
私は関西人ではございませんので関西弁おかしな所があったら遠慮なく誤字報告で受け付けます!
・案外遠慮がない九朗くん。
・はじめて同世代の子とはなせて若干上機嫌はやてちゃん。
・すずかちゃんはちゃかりしてる。そして九朗くんがすべてを言わなくてもある程度理解できる。
・そして実は九朗くん三人からの好意に気が付いている。でも自分から思いを告げる気はなく、相手側も声に出していないので好意を受け入れも拒絶もしていない。
・戦闘民族高町家の恭也さん、九朗の変質にわずかな会話で気が付く。