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「ちょっ、ちょっと絶対手離すんじゃないわよ!」
「あぁ。離さないから安心しろ」
滝行もどきで頭を冷やした後アリサから声をかけられて泳ぎを教えているのだが……ふぅん、中々どうしてやるじゃないか。アリサはここでも天才性を遺憾なく発揮していた。もう俺が手を引かなくても泳げると思うんだけどぜっんぜん手を離してくれないんだよね。最終目標は一人で泳げるようになることなんだし手を離した方が良いと思うんだけど……。
「(なのは、九朗! せっかく楽しんでいるところごめん。ジュエルシードだ! すぐに戦闘になる!)」
「ほう……」
「く、九朗? いきなりどうしたのよ」
こんなところにもジュエルシード。ほんと場所を選ばないな。
「(大丈夫だよユーノくん! いつでもOKだよ! あ、でもみんなを巻き込んじゃうかも……)」
「(それなら心配しないで! どこまでできるかはわからないけど僕の結界魔法で僕たちとジュエルシードをいわば別の空間に隔離するから)」
「(こちらもいつでも大丈夫だ)アリサ、すまない一度トイレに行ってきてもいいか? アリサもその間休憩しててくれ」
「わかったわ」
そうして俺とアリサがプールから上がると同時に一瞬世界の色が変わる。おそらくユーノの言っていた結界に取り込まれたときの現象だろう。
「な、なにこれ?」
「なっ!?」
隣から声がしてそちらに急いで顔を向けるとそこにはアリサがいた。
「(ユーノ! 俺たちとジュエルシードだけ隔離するんじゃなかったのか!? となりにアリサがいるんだけど!?)」
「(嘘!? アリサちゃん!?)」
「(ごめん二人とも! なんとか結界は展開できたんだけど切り取り範囲が広くて何人か巻き込んじゃったみたいで……)」
「マジかよ」
ユーノの言葉に思わず顔がゆがむ。これじゃあ思いっきり戦えな―――違う、アリサが巻き込まれて怪我するかもしれない。まずはアリサとここから離れるのが一番か? いや、ジュエルシードのバケモンがどこにいるかわからない以上結界内のどこが安全かわからない。バケモンが見つかるまでは一緒に行動していた方が……。
あれ? アリサは?
「「きゃあああああ!!」」
「この声、アリサとすずか!?」
くっそ、いつの間にか接近してたのか、というかすずかも巻き込まれてたんだね! 俺は声のした方に顔を向ける。
―――って、えぇ……。
「な、なに? 何なのよこれ!?」
「ぬ、脱がされちゃうぅ……」
「いやらしい動きしてんじゃないわよ、このっ!」
プールの水が巨大な怪物となっており水流の触手でアリサとすずかに絡んでおり水着を脱がそうとしていた。……んー、今までの化け物たちと違って命の危険はなさそうだけど……。ほぼほぼ半脱げで色々見えちゃってるなぁ。
「って!! く、九朗! 何こっち見てんのよ!? 目ェ逸らしなさいよ! あと助けなさい!」
「えぇ!? 九朗くんいるの! あっ、ま、待って九朗くん見ないでぇ……」
「見ないで助けるとか無理をおっしゃる」
こちらに気が付いたアリサの抵抗がより激しくなる。あーあー、そんなに動くと余計に……あー。そしてアリサの声で俺の存在に気が付いたすずかは顔を真っ赤にして縮こまってしまう。もともと激しい抵抗をしていなかったすずかの動きが止まったことで水流の触手はより激しくすずかの水着を責め立てる。
「うわぁ、大きい! 水のお化け! ってアリサちゃん!? すずかちゃん!?」
「お、なのは漸く到着か」
「く、くー君!? まってくー君は今二人を見ちゃダメ!」
なのはが俺の目を両手でふさぐ。いや、もう色々ばっちり見ちゃってるし、隙間から見えてるから意味ないと思うんだけど……。
「少しは自分から目をそらしてるユーノくんを見習ってほしいの!」
「ああああああ、見てはいけない見てはいけない……!」
あぁ、ユーノがやけに静かだと思ったらそういうことか。
「なに? なんであんなことになってるの!?」
「多分あれだろ。更衣室荒らしとか水着の女性が大好きな奴の願いとかに反応したんじゃない?」
「ヴォオオオオオオオ!」
「「きゃあああああ!!」
あ、完全に二人が脱がされた。なるほど、シミ一つない玉体ってああいうことなんだろうな。
「な、なんてことを!」
「ひどい……! 水着だけ脱がさせて放り投げるなんて……。しかも九朗くんに見られちゃった……」
「返せ! 水着だけじゃなくてなんかもう尊厳とか色々を!」
「あ、アリサちゃん!」
おおー、すごいなアリサ。水着を取り返そうと裸のままずんずんと化け物に向かって歩いていきやがった。
「けどそれは―――」
近寄ってくるアリサに化け物は大きな波を発生させて叩きつけようとする。
「ヴォアアアアア!」
「わぁっ!?」
「きゃああ!」
「メインシステム、戦闘モード起動―――危険すぎるだろ」
俺はなのはの手から抜け出してデバイスを起動、アリサとすずかの前に飛び出してプライマルアーマーと教えてもらったプロテクションの魔法の二重バリアで波を受け止める。
「九朗?」
「その恰好は……?」
「今はそれよりも……!」
俺は混乱している二人を化け物から引き剥がすため二人の胴体に腕を回し脇に抱える。普段なら絶対できないけど魔法のお陰で身体能力が上がっているらしい。そのままプールサイドに向かって移動する。
「ちょ、ちょっとどこ触ってるのよ!?」
「腹では?」
「胸よ! いや、ちょっと曖昧な境目だけど! ほぼ胸よ!」
「我慢しろ」
「ッッ!」
アリサが抗議の声を上げて騒ぐ。あっ、こら、ジタバタすんな! って顔を引っ掻こうとするな! っあ! イッて! 爪が当たったじゃん!
「あッ、ぅんッ……」
ほら見ろアリサ! すずかだって怖いだろうに口元に手を当ててこらえてるじゃないか!
化け物から距離を取りプールサイドに着地する。すぐになのはとユーノが寄ってくる。
「九朗、あんたのその恰好と言い、変態お化けと言いなにが起きてる――」
「ごめん、二人ともちょっとだけ眠ってて!」
「え? ユーノ君がしゃべっ―――」
二人に向かってユーノが何かの魔法を使ったらしく二人ともすぐに寝息を立て始めた。
「サンキュ、ユーノ」
「良いんだ。元々僕のミスのせいだし」
それじゃあ、二人も救出したし……。
「なのは!」
「うん! 行こう、レイジングハート!」
≪バリアジャケット≫
なのはが変身して魔法少女へと姿を変える。
「よしいつも通り俺がかく乱するからなのはは封印魔法を」
「任せて!」
「ユーノ! ぶっ放して大丈夫なんだな?」
「うん、ここでの建物の破損とかは現実のほうに影響ないから安心して!」
ならよし! 俺は空へと飛びあがりモーターコブラとオーメル突撃ライフルのトリガーを引きっぱなしにする。本来サテライト戦法は向かないがプールサイドで封印魔法の準備をしているなのはに視線を向けさせないようには仕方がない。
「……ってまた不定形かよ!」
まぁもとはプールの水だしな、いくら撃っても手ごたえがまったくない。なら……!
「叩いて飛沫にするのみ!」
クイックブーストで一気に接近勢いそのままに蹴り飛ばす。バッシャァァアアン! という大きな音と共に水しぶきが飛び散りわずかに化け物の体積が減った……気がする。
「趣味や興味は人それぞれだけど……他人に迷惑かけるのは……良くないの!」
≪シーリングモード≫
「リリカルマジカル! ジュエルシード封印!!」
レイジングハートの先からいくつものリボンが飛び出して化け物を周辺の水度一緒に囲い込む。そして一気に圧縮して封印……あれ?
「なんだろう、違和感が……」
リボンが解けると中から大量の水と女性物の水着に下着が出てくる。うわぁ……ずいぶんため込んでたんだなぁ。何人分だよこれ。
≪マスター、先ほどの個体にはジュエルシードの反応がありませんでした≫
「けどジュエルシードの反応自体は消えてない……。まさか分裂してる?」
レイジングハートの報告にユーノがそう推理する。不定形おまけに分裂かぁ。……これは手間取りそうだ。
「じゃぁ急いで反応のほうに向かわなくちゃ! そしたら……」
なのはそう言うとユーノの身体を抱き上げて自身の肩に乗せた。
「ユーノくんは怪我が治ったばかりだし、今も魔力を使って疲れてるでしょ? だから無理はしないで。私の肩は今日からユーノくんの指定席なの! いくよ、ユーノくん、くー君!」
「ありがとう、なのは」
「おうよ」
そうしてユーノを肩に乗せたなのはと共にジュエルシードをもった化け物の反応がある方に向かった。
「……で、あれか」
「たくさんいるね……」
施設を巡りようやく反応のある場所までやってきたのだがそこには先ほどの化け物と同タイプのが6匹もいた。
「分裂して増殖してる! まとめて封印しないとまた増えちゃうんだ」
「……うげぇ」
無限沸きの相手とかソウル稼ぎでもなければ相手してらんねぇよ。
「どうすればいい?」
「大型の魔力放射砲で強制停止……なんてまだなのはには無理だし、複数用のロックオン系魔法なんて用意していない」
砲撃……たしかまだ使ったことはないけどなのはにはそっちの才能があるんだっけか。けど複数用か……。雑魚散らし用にトラバースあるけど使えないし、そもそも一対一想定なんだよなぁ、おれのアリーヤ。そこに一応中距離での攻撃手段にトラバースとAFとか固定目標の相手用に3連ロケ積んだだけで。固定目標ない任務ならロケ外してアンテナつけてたぐらいだし。
「よし、僕があいつらの動きを止めてなんとかひとまとめにするから、そこを―――」
「ダメだよユーノくん、無茶したら。動きを止めて一纏めにするんだよね。ちょうど今朝練習してた魔法の応用編だし。私、砲撃魔法の才能はあるんだよね。やってみるよ! レイジングハート、力を貸して!」
≪分かりました、マスター。―――キャノンモード≫
なのはの声と共にレイジングハートが変形する。かっけぇ。
「イメージを魔力に乗せて……」
「九朗! あいつらがなのはに気が付いた、時間稼ぎを!」
「わかった!」
俺が飛び出そうとするとそれをなのはが手で止める。
「大丈夫!」
「なのは? これは……魔力が一気に収束して……」
「捕獲の魔法……そして、固定の魔法……!」
なのはが何をしようとしているのかはわからないがユーノが驚愕するようなことをしているのは分かった。なら多分大丈夫だろう。俺は飛び出そうとしていた体勢を解いて、静観の姿勢に移る。
≪リストリクト ロック≫
「攻撃対象の完全固定……収束系の上位魔法!」
「なんかすごいってことしか分からん」
「そこでそのまま固まって! いくよレイジングハート!」
≪OK!≫
「今度こそ……! シュート!」
レイジングハートから放たれた桃色の極光は化け物たちを一気に飲み込み、消滅させた。その威力、音、風、振動。どれもが衝撃的だった。魔法に詳しくない俺でもわかる。あれは並みの一撃なんかじゃない。
なのはが見つけたジュエルシードを笑顔で封印しているのを眺めつつ。俺は上がりっぱなしで押さえられない口角を隠すのに必死だった。
「
・もう一人で泳げるレベルにはなったけどなぜか手を離さないアリサさん。因みに水の中で引っ張ってもらってる関係上視線の先は九郎の胸元、首回りに集中する。
・アリサとすすがのすべてを見た九朗くん。
・不定形相手は苦手な九郎君。彼が得意なのは人型相手ですから……。
・なのは初めての砲撃魔法。そして規格外認定。