「さて……どうしたものか……」
これは……面倒なことになった。夜中の学校の屋上、バリアジャケット姿の俺は左手にあるものを眺めながら反対の手で頭をポリポリと掻きながらそう呟く。俺は左手の中にあるジュエルシードを眺めながら事態の始まりの数十分前の出来事を思い出す。
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プールでのジュエルシード騒ぎはユーノが手早くアリサとすずかの二人を眠らせたことにより二人には夢の中の出来事だったと信じ込ませることに成功した。言い方は悪いが水の触手に襲われて水着を脱がされて好意を寄せてる男子にそれを見られるなんてどう考えてもアレの夢だからな。恥ずかしくて周りの奴らに言えないから魔法のことが露見することはないだろう。
にしてもアリサがじっと俺の首元のほう見ていたが一体どうしたんだろうか。視線を感じすぎてなんかヒリヒリしている気さえした。
「ん? この感覚……」
そんなことがあった日の夜。自室で読書中だった俺はジュエルシードが起動したときの悪寒のようなものを感じ取って教科書をパタリと閉じた。仕方がないとはいえ時間を選ばないな。
「(なのは、聞こえるか? ……なのは?)」
急いでなのはに念話を飛ばすが返事がない。
「……(ユーノ)
……ユーノにも念話を飛ばすがこちらも同様に返事が返ってこない。かくなる上は……。
「(レイジングハート)」
≪如何しましたか?≫
「(なのはとユーノはもしかして……)」
≪お二人とも夢を見ていらっしゃいます≫
夢を見ている……寝てるってことね。まぁ仕方がないか、なにせ今日はすでにプール施設でジュエルシードの化け物と戦闘になったからなぁ。
行く先々で戦闘になって、なんとまぁついているんだかついていないんだか。そしてプールに出た化け物は分裂するタイプですべての分裂体の動きを止めるためになのはは無意識に高等な魔術を使い、ユーノの方もまだ完全復帰していないのに、プールに来ていた一般人を守るために結界魔法というものを使用して魔力を大量に消費。二人そろって疲労がたまり夢の中、というわけか。
ちなみに俺は相も変わらず封印できないので適当にかく乱しただけでそれほど疲労はしていない。
≪起こしましょうか?≫
「(あー、いや、起こさなくていい。なのはもユーノも疲れがたまってる、それなら俺一人で何とかしてみるさ)」
≪どうか楽しいパーティーを≫
「(……楽しんでなんか、いないさ……多分な)」
俺は部屋の窓を開けてデバイスを展開。夜空に向かって一歩踏み出した。まずは一気に急上昇、一目につかない高度まで一気に上がる。俺の魔力を動力としているせいかEN切れを気にしないでいいの助かるわぁ。基本的な使用感はレギュ1.40だけど
「おぉ……」
雲を突き抜けてある程度の高さまで上昇すると目の前に星空が広がる。その綺麗な景色に思わず声が漏れる。なのはが危なっかしいから手伝うだけのつもりだったけど、こういう景色を見るとやっぱり魔法を使えるようになって良かったって思う。ちなみに空が無人兵器で覆われていたりは……しないか。
「っと、いつまでも見とれてる場合じゃないな」
俺は頭を振って気分を入れ替え、悪寒の発生源に向かって飛翔する。そうして到着したのはまさかの俺やなのはが通う私立聖祥大附属小学校の校舎だった。
「カロカロカロカロ……」
「あれは……骨格標本?」
校庭に降り立って周囲を観察していると校内の方から足音が聞こえてきた。そちらに視線を向けると理科室にあったはずの骨格標本が音を立てながらこちらに歩いてきた。
「カカカカカカ!」
「ちっ、そういう感じか!」
俺のほうに目を向けると(眼球がないからそんな感じがするだけだが)骨格標本は勢いよく走りだして俺を捕まえようと両手を突き出してくる。明らかに、こいつが今回の敵だよな!
クイックターンで旋回しつつ骨格標本の突撃を避けてがら空きになった背中にモーターコブラを打ち込む。骨格標本は粉々に砕け散り、空中に霧散して消えた。
「は?」
霧散? ジュエルシードも出てきてないし……これも日中に遭遇した分裂型と同タイプか? となるとどこかに本体がいるは―――ず―――?
「ん?」
視界の端、昇降口の近くで何かが動いたのを確認した俺はそちらに視線を向ける。
「「「「カロカロカロカロ、カカカカカカ!」」」」
「うげっ、マジか!?」
校内から大量の骨格標本たちが湧いて出てきやがった! ああ、もうこれは確実に分裂型で確定だ! たしか、ジュエルシードをもった本体を倒さないと意味ないんだったっけか!?
「このっ!」
一先ず、この骨格標本ども蹴散らしてからだ! 幸い場所は広い校庭! 地上旋回戦開始! モーターコブラを敵の多いところに向かって連射しつつ、オーメル突撃ライフルで確実に一体一体削っていく。
「うじゃうじゃと数だけ揃えやがって!」
途中、突撃してきた骨格標本達をクイックブーストで回避しつつ蹴散らしていく。
――バコン――
「ん? ってああ!?」
回避している最中妙な音が聞こえて視線を向ける。するとそこにいたのはさっき突撃してきたところを回避した骨格標本達が立ち上がっていた。ただその姿は先ほどまでのものとは異なっており、俺の危険信号をバリバリに刺激してきた。
突撃を回避された骨格標本たちは校庭に遊具として設置されていたタイヤたちに衝突。タイヤの真ん中の穴にずっぼりと体が嵌り、タイヤを斜め掛けバッグのように身に着けながら立ち上がったのだ。骨格標本、つまり骸骨に車輪がくっついたのだ。
「……しゃ、車輪骸骨ゥゥゥゥゥ!? ってうわぁぁぁぁ! こ、転がってくるんじゃねぇぇぇええ!」
しかもなぜか体にはまったタイヤに適応して車輪骸骨と全く同じ動きでこっに向かって転がってきやがった!
「ハァハァハァハァ!?」
かつてのトラウマと懐かしいフロムの思い出が同時に襲い掛かってきて幸福感と絶望に挟まれて頭がおかしくなりそうだ! というか実際かなりキマッた状態なんだが!?
かぁーーーッ! この精神ギリギリ感! たまんねぇな!
「と、まあ思ってたんだけど……今の俺はネクストっぽい魔導士なんで……」
一定高度まで上昇したら全く、怖くないんだよなぁ……。まぁね、着地すれば物凄い怖いわけなんだけど、流石に車輪骸骨相手に舐めプできるわけもないし、そもそもこいつらがヘリアンサスみたいに遠距離攻撃できないのが悪いのだ……。
「けど、降りられなくなったなぁ……」
視線を下に向ければそこにはガチャガチャと下を転がりまくる車輪骸骨たち。一体一体撃ってくのもほんと手間だし範囲攻撃で吹き飛ばしたいけど……。
―――ガチャン―――
「え? おわ!?」
オーメル突撃ライフルから変な音がしたから何事かと思ったら下の棘部分が変形してトラバースの銃身になっていた。
「なるほど、こう来るかァ~」
そういえばレイジングハートも変形してたし、デバイスは変形するものなのか。けど、多分この形態だと近接攻撃は蹴りしかなさそうだな。……格納武器はやっぱりパージしないと使えないのだろうか?
……ま、今回みたいにいつか使えるようになるでしょ。
「まずは下に纏まっているこいつらを……喰らえ!」
一応巻き込まれるのが怖いので再びちょっと上昇して距離を話してから真下にいる車輪骸骨どもに向かってトラバースをぶっ放す。直後オレンジ色の魔力塊が射出されて車輪骸骨たちに直撃、爆発した。
「おっ……とと。んー、土煙は派手に上がったけど音も光も少し控えめか? やっぱ爆薬じゃなくて魔力だからだろうか? さて、残敵はー?」
ゆっくりと降下してあたりを確認する。
「ん? あ」
すると地面に見覚えのある青い宝石が転がっているのが見えた。ジュエルシードだ。あの大群の中に本体が紛れ込んでいたのか……。
「よし、じゃなのは、あと頼ん……だ……」
あ、そういや俺一人だったじゃん。封印ってどうすればできるんだ? なのははレイジングハートでジュエルシードに触れてたけど……。
俺はそっとモーターコブラとオーメル突撃ライフルの二つをジュエルシードに近づけて触れてみる。……反応なし。
「今度は手で……」
数回つついたが何も反応がなかったため、今度は自分の手で触れてみることにする。恐る恐る近づいて左手でゆっくりと拾い上げる。気分は爆弾処理班だ。
「っと~。これも特に反応なし、と」
俺は拾い上げたジュエルシードを月明りに透かして見たりして観察してみる。
「んー……拾ったはいいけど処理に困るな……」
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とりあえず校庭でいつまでもうなっていても仕方がないので物珍しさから俺は屋上まで飛翔、ベンチに座りつつ悩んでいるわけだが……。
「これ、あんたならうまく処理できるか?」
俺は首を横に向けていつの間にかそこに居た黒レオタードに黒マントの金髪ツインテールの少女に声をかける。手にはこれまた黒い斧のようなものを持っているがあれはおそらくデバイス。
「できます。だからそれを渡してください」
しかし驚いた。この世界になのはや俺、ユーノ以外に魔導士がいるなんて。
「渡さないっていうなら痛い目に遭ってもらうよ!」
金髪少女の後ろには長身でオレンジ色の髪となぜかケモミミを生やした女性もいる。
「痛い目、ねぇ……。あんた達は強いのか?」
「……変なことは考えないでジュエルシードを渡してください」
「あんたなんかフェイトと私にかかりゃコテンパンよ!」
俺の言葉に不信感を覚えたのか手にした斧を構える少女にまるで犬の威嚇のような声を上げる女性。
「ほいっと」
「え! キャッ……と」
そんな二人に俺はジュエルシードを投げ渡す。急に投げ渡されたことに少女は一瞬驚いたがすぐにキャッチして見せる。
「俺、あの化け物たちを倒せてもジュエルシードの封印ができないみたいでさ、助かったよ。それの処理、任せる」
「……はい、ありがとうございます」
手元のジュエルシードを確認してこちらに頭を下げる少女。……真面目だねぇ。頭を下げた一瞬にクイックブーストで接近して顔を近づける。
「今回は俺の方に封印できる人がいなかったから渡しただけ。次は奪い合いかもしれないから、その時はまたよろしくね」
「ッッ!? 早い!?」
「フェイトから離れろ!」
頭を下げた一瞬で距離を詰められたことに驚いたのか少女が距離を取ろうとして、女性の方が殴り掛かってくるがそれらを再びクイックブーストで回避。一気に空へ飛び上がる。
「俺は烏丸九朗だ! じゃあな、フェイト!」
俺は手を振りながらそう言い放ってその場を離脱する。俺の言葉にフェイトと呼ばれていた少女は唖然としながらおそらく無意識で手を振り返してくれていた。 は? 可愛いかよ? 頭を下げたりなんだりと根が良い子なんだろうな。
しっかし、フェイトか。ジュエルシードを集める別勢力の登場……これはユーノに相談しないとな。
・アリサ「……」
夢の中で引っ搔いたときの傷がなぜか現実の九郎にもあることに気が付いた。つまり……。
・夜空でアサルトセルを探す九朗くん。
・みんなのトラウマ、車輪骸骨。ソウルシリーズだけかと思ってたのに……。ヘリアンサスの衝撃はでかかった。
・トラバースはアンダーバレルグレネードへ。
・そして運命の少女の登場。