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「(というわけで、謎の魔導士が現れたんだが……ユーノが別口で雇ったやつらとかじゃないよな?)」
「(うん。僕が協力をお願いできたのはなのはと九郎の二人だけ。……この管理外世界に魔導士が……。それもジュエルシードのことを知っているなんて)」
「(ユーノとジュエルシードが乗っていた次元船の事故はただの事故じゃなくて、誰かに起こされた事件だった……)」
「(その可能性は高くなってきたね)」
俺はサッカーコート脇のベンチに座りながらユーノとの念話をしていた。コートの内側ではなのはのお父さん、高町士郎さんが監督兼オーナーをしているサッカーチーム『翠屋JFC』の試合の日。なのはの父親がオーナーをしていることもあり俺、なのは、アリサ、すずかの四人で応援に来ていた。
というか士郎さん、サッカーチームのオーナーもやってるんだ。手広いなー……。
「頑張ってー!」
「ファイトー!」
「そこよ! ぶっ飛ばしなさい!」
すずか、なのは、アリサも盛り上がって大きな声で応援している。が、アリサよ。サッカーは決して相手チームのメンバーをぶっ飛ばす競技ではないから。そのシャドーボクシングをやめろ。お前には何が見えているんだ。
「(この世界のスポーツって暴力アリなのかい?)」
「(いや、ダメだが?)」
「(え、じゃあ、アリサはなんで……)」
「(……本人が熱くなりやすいんだ。ユーノの世界にはいなかったか? 応援で盛り上がりすぎていろいろ過激になるやつ)」
「(え? あー……。アハハ……)」
どうやらいるらしい。どこの世界も同じらしい。
「(んで、悪いが俺じゃジュエルシードの封印はできなかったし、あの場で戦闘始めるのは不味いから一個向こうに渡しちまった。悪いな)」
「(それはなのはも僕も寝ていたから仕方がないよ。もともと危険な回収をお願いしている身でこういうのも変だけど君たち二人には自分の身を第一に考えてほしい。だから僕は九朗の判断を責めたりなんてしないよ)」
「(ありがとな。また会ったら取り返しておいてやるからさ)」
「(うん、その時はお願いするよ)」
そんな感じでユーノと話している間に試合は終了。2-1で『翠屋JFC』の勝利だ。……おー、なかなかの接戦で見ていて面白かった。選手たちグラウンドで抱き合ったりしてるし、なのは達もハイタッチして喜んでいる。
ふとマネージャーの女子がキーパーであり、キャプテンである男子に向かってこっそりグッドマークを送り、男子の方もそれに笑顔で答えていた。
「あの二人……へー、ほーん……」
おもろ。今度クラスで聞いてやろ。
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祝勝会は翠屋で行われた。しかし監督が店主だからとはいえ駅前の人気喫茶店を貸し切っての祝勝会とはなかなか贅沢なサッカーチームだよなぁ。店内は腹をすかしたサッカー男児たちがパスタやらなんやらをモリモリ食べている。その光景を横目に俺となのは達は外のテラス席でケーキを食べていた。
「ん、おいしい」
「九朗……滅茶苦茶食べるわね。もしかして私が見つけられなかっただけで試合出てたりしたわけ?」
「んなわけないだろう」
まだケーキも3つ目だが?
「そういえば九朗くんはチームに入らないの?」
「そうよ! あんた結構運動神経良いんだから入ればいいのに!」
すずかとアリサにそう言われる。
「……まず、俺の運動神経は"結構"じゃない。クラス全体で見てもいい方だ。アリサの比較対象がすずかだからそれなりに見えてしまうんだろうがな……」
そう、実はすずかはびっくりするぐらい運動神経が良い。そのか弱そうなお嬢様のような見た目からは想像がつかないほどに。確か小学二年生のころ、体格の良さでイキっていた男子がいたのだがそいつは体育のドッジボールになると相手が男女問わず思いっきりボールを投げてみんなを恐れさせていた。ある日そいつが放ったボールを俺は取り損なって転び、手足に擦り傷を負ったことがある。結構がっつり言って血が出ていた。すぐにすずかが寄ってきてくれてハンカチで血を拭いてくれたのを覚えてる。
俺の血を拭いた後すずかはコート内に落ちていたボールを拾いその男子の腹に向かってえぐい剛速球をぶん投げていた。コート内に響いたバチィィン! というボールと腹がぶつかったときになる音とは思えない音を響かせていた。男子は腹を押さえながらヨタヨタと外野に向かっていきそれ以降まったくイキらなくなったのだ。
「くー君? 遠い目をしてどうしたの?」
「去年のドッジボール事件を思い出してた」
「あー……あれね……」
「く、九朗くん! あれはもう、恥ずかしいから忘れて!」
俺の呟きにアリサも遠い目になり、すすがが真っ赤になって俯く。
「いや、あの時のすずかは凄かった。あまりの気迫に
「!!?? も、もう! そ、そこまで私怖くないよ!」
「わーってる、わーってる」
勢いよく否定した来たすずかをなだめつつ。4つ目のケーキに手を付ける。……そういやあの時の血の付いたハンカチ『洗って返す』と言ったんだけどど『いいの、全然気にしないで』って言われてすずかがそのまま持ち帰ったわけだけど大丈夫だったのかな? 結構血がついてたし、色とか匂いとか色々心配だ。
そんなことを考えているとどうやら祝勝会が終わったらしく翠屋の中からゾロゾロとサッカー男児たちが出てくる。
「ま、もう昔の話か」
祝勝会が終われば俺たちも解散。昔の思い出を振り返るのを辞めて一気にケーキを片づける。うん、桃子さんのケーキは今日もおいしい!
「それじゃあ、またな(ユーノ、家でさっき話した魔導士のことなのはに説明しといてくれ)」
「またね~!」
「また学校で」
「う、うん! またね!」
「きゅー(分かったよ、九朗)」
そうして俺たちも解散してそれぞれ帰り道を歩き出す。家が隣だしなのはといっしょに帰ってもよかったんだがなのはは士郎さんを待つらしい。
それなら俺は少し寄り道して帰ろうと思い。なのはと別れ一人町の中心の方へ。向かう先ははやてと出会ったバス停だ。今日はもう予定はないし、はやてに会えたならさっさとお礼とやらを受け取ってしまおうと思ったわけだ。
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「……ま、そう簡単に会えるわけないか」
バス停の付近やあの時はやてが持っていたレジ袋のスーパーなどを歩き回ってみたがはやての姿はなかった。車椅子なんざ目立つから見落としてる可能性はなし。まー、あの日たまたまこの辺りのスーパに来ていただけかもしれないししょうがないか。
「……そういうこともある」
俺は近くの自販機でジュースを買ってバス停のベンチに腰掛ける。……時間的にはまだバスは来ないし座っていても迷惑にはならないだろう。あー、本格的に予定がなくなったしさっさと家に帰って明日の学校の準備でもするかね。
「っし、じゃあ帰る―――ん?」
ジュースを飲み終えてベンチから立ち上がり歩き出そうとした瞬間、地面が揺れる。地震か? 結構大きいし、ベンチの下にでも潜り込んで……。
そう思った瞬間、アスファルトの道路が割れて木の根が俺に向かって勢い良く伸びてくる。
「え!? しまっ―――」
とっさにデバイスを手に取ろうとしたが俺の手にはカラになったジュースのペットボトルがあり、それを手放すために一瞬動作が遅れた。そして木の根は俺がデバイスを手にするよりも早く俺の頭に直撃したのだった。頭が勢いよく揺れて視界がグワングワンと動き、手足に力が入らなくなる。
き、起動前に一気に叩かれた、という……わ――け、か―――。
「―――て。――きて」
誰かが呼んでいる。っう……頭がガンガンする。痛みに耐えながら目を開けると逆光で目がくらむ。ぼやける視界にツインテールのシルエットが移りこむ。
「ぁ? ぁー……なのは?」
「違う。私はその子じゃない」
なのはと呼ぶと否定の声が返ってきた。じゃあ誰だ? と思っていると徐々に目が光に慣れて話しかけてきた人物が誰か判明した。
「あぁ、フェイトだったか」
「うん。……頭、大丈夫?」
「は? 喧嘩売ってる?」
いきなり随分な物言いだな。喧嘩売ってるならすぐに買ってやるが?
「あ、えっと、そうじゃなくて。その……貴方の頭から血が出てるの……」
俺の言葉にフェイトは焦りだし、俺の状態を説明してくれる。頭から血?
「うわぁ……」
俺は自分の頭に触れると手にべったりと赤い血が付いていた。それと同時に色々な記憶がよみがえる。
そうだ、確かいきなり木の根に襲われて……。あれからどうなったんだ? あたりを見回すと木の根はさらに巨大化しており、俺の身体は木の根に絡みつかれてかろうじて胸から上が動かせるレベルだった。
「これもジュエルシードが原因。封印に向かおうとしたんだけどここで絡まってるあなたを見つけたの」
フェイトの手には光刃を発しているデバイスが握られていて俺の周りの木の根にはところどころ切断されたような跡がある。近接用の魔法? めっちゃカッコいいな……。
「助けてくれたのか。……ありがとな。そのデバイス、インテリジェント?」
「え? そうだけど……」
「そっか。そんじゃデバイスさんもありがとな」
≪……気にせずに≫
声しっぶ。いやでもカッコいいなぁ。
「フェイト! 多分例の魔導士だ! 物凄い魔力砲の反応が―――うわーーー! あのいけ好かないガキ!」
「うるさっ」
俺がフェイトのデバイスに感動しているとフェイトといっしょにいた長身の女性がどこからともなく表れた。
「魔力砲……非殺傷設定だと思うけど万が一もある。脱出を急ごう、アルフ手伝って」
「え、えぇ!? そいつ助けるのかい? いや、フェイトの頼みなら聞くけどさぁ!」
そういってフェイトはさらに周りの木の根を切り始め、アルフと呼ばれた女性も手で根をちぎり始めた。……その太さの根を手でちぎるとかどんだけパワーあるんだよ。
「いいのかフェイト、ジュエルシードを取りに行かなくて」
俺はふとそんなことをフェイトに聞いてみる。
「確かにジュエルシードは大事。でもあなたにはジュエルシードを譲ってもらった借りがある。それに、大怪我している人を見捨てたりはできない」
「……フェイトは優しいんだな」
「そうなんだよ! フェイトは物凄く良い子でさぁ!」
「……そんなこと、ない」
俺とアルフが交互にフェイトを褒めるとフェイトは少しだけ苦しそうな表情を浮かべてそう呟く。……なんか訳ありか?
二人のおかげで俺に絡みついていた木の根はすべて壊れた。って空中だったのかここ!? 建物の4階ぐらいの高さあるぞ! ってやべ―――
「っと……大丈夫?」
「あー、こうみると結構がっつり傷ついてるね。しゃーないアタシが抱えるよ。フェイト代わるよ」
「お願いアルフ」
急いでデバイスを展開しようとするも体がうまく動かせず地面に向かって落下していく。ここで終わりかと思ったとき、フェイトが俺を抱きしめて落下を阻止してくれた。すぐにアルフも寄ってきてフェイトが抱えている俺の傷の具合を見て抱き上げるのを代わる。
「この魔力反応……すぐに魔力砲が来る。離脱しよう」
「あいよ!」
「……すまない、頼む」
俺はフェイトたちに連れられて魔力砲の範囲外にある人気のすくない公園に連れてこられた。移動している最中、桃色の光の奔流が見えた。恐らくなのはの魔力砲だろう。
「っとこれでよし。と言ってもアタシも専門じゃないから安静にしてるんだよ」
「すまないな、何から何まで。ジュエルシードも結局取れなかったし」
「ううん、大丈夫。次、頑張ればいいから」
公園で俺はアルフに治癒魔術をかけてもらっていた。傷も塞がってるし十分だと思うんだがこれで専門じゃないとは……。専門の奴がやったらもはや再生とかそこら辺まで行くんじゃないか?
「次……そうだな、次に会ったときは何かお礼をするよ」
「なんならフェイトのジュエルシード集めを手伝ってくれても良いんだよ?」
「アルフ……」
「いいじゃないか、フェイト! 味方が増えればフェイトの負担だって消えるんだし!」
フェイトの味方ねぇ。となると必然的にユーノやなのはと敵対することになるわけだ。……なのはと敵対。……
「……っ、落ち着け……落ち着くんだ」
なんでなのはと敵対する必要がある。俺の目的はこの海鳴市からジュエルシードを消すこと。相手はジュエルシードであってユーノには悪いが、極論なのはともフェイトとも敵対する必要はないんだ。どっちかに封印してもらえればいいわけだし。
「まあ、あれだ。考えておくってことで」
「そうかい? 無理にとは言わないけど、そっち側につくんなら次会ったときは以前あんたが言った通り、ジュエルシードは奪い合いだからね! 行っとくけどフェイトは強いんだからな!」
「ほう!」
それはそれは……。
「楽しみだ」
「え?」
「……なんでもない。それじゃあ今日はありがとな。またな、フェイト、アルフ」
「気を付けて帰るんだぞー!」
「……またね」
俺二人に手を振りながらその場を後にした。……今日はもう散々だった。だから家に着いたらさっさと休もう。それが良い、そうに決まってる。だから……
「さっき俺は何も言ってない。さっきのは疲れからくるただの幻聴なんだ……」
・九朗くんの相談によって早めに別の魔導士の存在を認識するユーノとなのは。
・アリサはスポーツ観戦ですごく盛り上がっちゃうタイプ。
・九朗くんも身体能力高めなのだが相手が悪い……。なにせすずかは―――
・すずかの部屋の一番奥の鍵付きの引き出しの中には血の付いたハンカチが厳重に保管されていたりする。
・やはりネクストの一番楽な撃破方法は起動前に一気に叩くこと。
・この日、改めて日本語の難しさを思い知ったフェイト。
・後日、この日の出来事をなのはに話したら滅茶苦茶心配された九朗くんであった。