悪魔も泣き出す新エリー都   作:オムライスα

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Wanna know the name?

『Devil May Cry』


第十三話 凶悪狂人

 

 

 

あの後。

 

ダンテは、胸を貫いたアストラルをなんとか引き抜いていた。

 

「……ったく。」

 

ダンテは胸元を確認しながら、ため息を吐く。だが、そこに残っていた傷はすでになく、半人半魔である彼にとって、この程度の傷は致命傷どころか、少し厄介な出来事でしかない。

 

「毎回、派手な歓迎をしてくれるもんだぜ。」

 

そうぼやきながらも、ダンテの視線は目の前に向けられていた。

 

魔具――キャバリエーレ。

 

「さて。」

 

ダンテはキャバリエーレへ跨がると、ハンドルを握った。

 

アクセルを捻る。

 

――グォォォォォォォン!!

 

凄まじいエンジン音とともに、キャバリエーレがホロウの奥へと走り出した。

 

その巨体からは想像もつかないほどの速度で、瓦礫を飛び越え、崩れた道路を駆け抜けていく。

 

「ははっ!」

 

楽しそうな笑い声が、誰もいないホロウへ響いた。

 

――

 

その頃。

 

別の場所では、アキラとビリーがホロウから脱出するために歩き続けていた。

 

アキラが疲労した身体を引きずるように歩いていると、突然、近くの瓦礫が大きく揺れた。

 

――ズズズズズ……。

 

「……?」

 

ビリーが振り返る。

 

次の瞬間。

 

「グォォォォォォォォォッ!!」

 

瓦礫の山から、巨大なエーテリアスが姿を現した。

 

異常なほど発達した四肢。膨れ上がった筋肉。鋭く伸びた爪。そして、エーテルによって変質した巨大な身体。

 

エーテリアス――凶悪狂人。

 

かつては人間だった存在。

 

ホロウで烈性エーテル物質に侵蝕されながらも、完全なエーテル転換を起こさなかったことで、その肉体は異常な形へと変異していた。

 

その圧倒的な戦闘力。

 

生前はホロウへ押し入り、強盗を働いていた凶悪なギャングの幹部、あるいはその用心棒だったのだろう。

 

そして今、その凶悪性だけがエーテルによって増幅されている。

 

「……。」

 

アキラが息を呑む。

 

凶悪狂人が腕を振り上げた。

 

「グォォォォォッ!!」

 

――ドゴォン!!

 

巨大な拳が地面へ叩きつけられ、瓦礫が吹き飛ぶ。

 

「やっべ! デカブツだ!」

 

ビリーが叫ぶ。

 

「車に戻って、ここを出よう!」

 

二人は一気に走り出した。

 

「店長、もうちょいだ!」

 

「僕はそろそろ限界だ……!」

 

だが、その背後から地面を踏み砕くような音が迫ってくる。

 

――ドスン。

 

――ドスン。

 

――ドスン。

 

「……嘘だろ!?」

 

アキラが振り返る。

 

凶悪狂人は、あの巨体からは想像もつかない速度で二人へ迫っていた。

 

「グォォォォォッ!!」

 

「店長!」

 

「――!」

 

次の瞬間、凶悪狂人の頭が振り抜かれる。

 

――ドゴォン!!

 

「うわぁぁぁっ!」

 

二人の身体がまとめて吹き飛ばされた。

 

地面を転がったアキラとビリーが顔を上げる。

 

その目の前には、巨大な足があった。

 

「グォォォォォォッ!!」

 

凶悪狂人が腕を振り上げる。

 

「……。」

 

アキラの顔から血の気が引いた。

 

その時だった。

 

――ゴォォォォォォン!!

 

遠くから、エンジン音が響いてきた。

 

「……?」

 

凶悪狂人が振り返る。

 

次の瞬間。

 

――ドォォォォォォン!!

 

巨大なバイクが、もの凄い速度でこちらへ突っ込んできた。

 

「え?」

 

アキラが目を見開く。

 

バイクはそのまま凶悪狂人へ突っ込み――その巨体を踏み台にして跳ね上がった。

 

「うおおおっ!?」

 

ビリーが叫ぶ。

 

バイクは凶悪狂人の身体を乗り越え、そのまま二人の前へ着地した。

 

――キキィィィィッ!!

 

タイヤが地面を削りながら停止する。

 

「……。」

 

アキラとビリーが呆然とする。

 

そして、バイクから降りてきた人物を見て、ビリーが叫んだ。

 

「アネゴぉ!」

 

そこにいたのは、シーザーだった。

 

「久しいな、ビリの字!」

 

「シーザーのアネゴ!」

 

シーザーは豪快に笑いながら、アキラへ視線を向ける。

 

「で――こいつが伝説のプロキシか!」

 

「……。」

 

アキラは戸惑いながらも頷いた。

 

その時、ビリーが周囲を見回す。

 

少し離れた場所に、自分の銃が落ちている。

 

ビリーが慌てて駆け寄り、銃を拾おうとした。

 

その瞬間。

 

――ダッ!!

 

誰かが、ビリーの頭上を駆け抜けた。

 

「パイセン。」

 

聞き覚えのある声。

 

「なまったっすね。」

 

――ドゴォン!!

 

拳が凶悪狂人の顔面へ叩き込まれた。

 

「グォォォォォッ!!」

 

凶悪狂人の巨体が大きくよろめく。

 

「ライト!」

 

ビリーが叫ぶ。

 

ライトは拳を構え、シーザーも武器を構えた。

 

「いくぜ! 目にもの見せてやっからよぉ!」

 

その瞬間。

 

周囲から、異様な気配が次々と湧き上がった。

 

瓦礫の陰。

 

崩れた建物の奥。

 

道路の向こう。

 

次々とエーテリアスが姿を現していく。

 

「……!」

 

アキラが周囲を見回す。

 

「増えてる……!」

 

「こりゃ、派手にやれそうっすね!」

 

ライトが構える。

 

シーザーも不敵な笑みを浮かべた。

 

凶悪狂人が再び咆哮する。

 

「グォォォォォォォッ!!」

 

戦闘が始まろうとした。

 

――その時。

 

遠くから、また別の音が聞こえてきた。

 

「……?」

 

シーザーが振り返る。

 

「何だ?」

 

――ゴォォォォォォォォォン!!

 

地面まで震えるほどのエンジン音。

 

「……。」

 

アキラが目を見開く。

 

「まさか……。」

 

道路の向こうから、一台のバイクが凄まじい速度で突っ込んでくる。

 

「何だありゃ!?」

 

ビリーが叫ぶ。

 

赤いコート。

 

白い髪。

 

そして、巨大なバイク。

 

「ダンテだ!」

 

アキラが声を上げる。

 

「よぉ!」

 

ダンテが片手を上げる。

 

「悪いな!」

 

「ちょっと通るぜ!」

 

「え?」

 

ビリーが固まる。

 

「ちょ、待――。」

 

ダンテはアクセルを全開にした。

 

――グォォォォォォォン!!

 

キャバリエーレが一気に加速する。

 

そのままダンテごと宙へ飛び上がった。

 

「うおおおおおっ!?」

 

ビリーが叫ぶ。

 

ダンテは空中で車体を傾ける。

 

「そらっ!」

 

――ドォン!!

 

着地と同時にキャバリエーレを横滑りさせた。

 

ギャリギャリギャリギャリッ!!

 

刃へ変化したタイヤが高速回転する。

 

「グォッ!?」

 

エーテリアスの身体が刃へ巻き込まれた。

 

「ギィィッ!」

 

さらに別のエーテリアスが吹き飛ぶ。

 

ダンテはアクセルを回しながら、その場で大きく旋回する。

 

「まだまだ!」

 

――ギャリギャリギャリッ!!

 

巨大な車輪が地面を削りながら回転し、周囲のエーテリアスを次々と巻き込んでいく。

 

刃の先端へエーテリアスが突き刺さる。

 

そのままダンテは車体を跳ね上げた。

 

「――よっと!」

 

キャバリエーレが再び宙へ舞う。

 

「なっ!?」

 

シーザーが目を見開く。

 

ダンテは空中で車体を一回転させた。

 

そして――。

 

――ガキィン!!

 

巨大な車体が中央から二つに分離した。

 

「……!?」

 

アキラが絶句する。

 

二つに分かれたキャバリエーレを、ダンテが左右の手で掴む。

 

巨大な刃を振り上げ――。

 

――ズガァァァン!!

 

空中から振り下ろされた二つの刃が、エーテリアスをまとめて粉砕する。

 

「グォォォッ!!」

 

「ギィィィィッ!!」

 

「グガァァァッ!!」

 

ダンテは止まらない。

 

右。

 

左。

 

さらに右。

 

二つのキャバリエーレが巨大な双剣のように振り回され、エーテリアスの群れを次々と薙ぎ払っていく。

 

やがてダンテは、片方のキャバリエーレを地面へ突き立てた。

 

――ギャリギャリギャリギャリッ!!

 

刃となったタイヤが高速回転する。

 

ビリーが首を傾げた。

 

次の瞬間。

 

回転する刃が地面を噛んだ。

 

凄まじい勢いでダンテの身体が引っ張られる。

 

そのまま身体が宙へ浮いた。

 

ダンテはその勢いを利用して身体を回転させる。

 

「おらぁっ!」

 

――ズバァン!!

 

キャバリエーレがエーテリアスを切り裂く。

 

「もう一丁!」

 

――ズガァン!!

 

さらに一体。

 

「まだまだ!」

 

――ザシュッ!!

 

次々とエーテリアスが吹き飛んでいく。

 

ダンテは空中で身体を翻し、二つのキャバリエーレを振り回しながら周囲の敵を一掃していく。

 

その姿は、まるで巨大な刃を操る暴風そのものだった。

 

やがて、最後のエーテリアスが吹き飛ぶ。

 

――ドォン!!

 

ダンテは地面へ着地した。

 

周囲には、大量のエーテリアスの残骸が散らばっていた。

 

「……。」

 

アキラ。

 

ビリー。

 

シーザー。

 

ライト。

 

そして、凶悪狂人。

 

全員が呆然とダンテを見つめている。

 

ダンテは周囲を見回す。

 

そして、ニヤリと笑った。

 

「渋滞してるな!」

 

「…………。」

 

誰も言葉を返せない。

 

そんな中、ビリーだけが目を輝かせていた。

 

そしてダンテはまだ残っているエーテリアス――凶悪狂人へ視線を向けた。

 

「さて。」

 

ダンテが笑う。

 

「もう一周するか?」

 

凶悪狂人が咆哮する。

 

「グォォォォォォォォォッ!!」

 

シーザーは武器を構える。

 

ライトも拳を握る。

 

ビリーは銃を構え直し、アキラは後ろへ下がりながら目の前の光景を見つめていた。

 

ホロウの中。

 

戦場は、さらに激しさを増していく。

 

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