『Devil May Cry』
あの後。
オルペウスとシーザーが事務所を後にしたあと、ダンテはふと一つの疑問を抱いていた。
それは、この世界に現れる悪魔についてだった。
自分がこの世界へ流れ着いた理由は、未だに分からない。だが、もし自分以外にも別の世界から何かが流れ込んでいるのであれば――悪魔たちがこの世界に出現している理由も、そこから辿れるのではないか。
そう考えたダンテは、アグニとルドラに尋ねてみることにした。
「なあ、お前ら」
「なんだ、ダンテ!」
「どうしたのだ?」
「お前らって、どうやってこの世界に来たんだ?」
ダンテが尋ねると、二本の魔具はしばらく黙り込んだ。
「……。」
「……。」
「どうした?」
「いや……我らも、それを考えていたのだが」
アグニが困ったように答える。
「気づいたら、そこにいた」
「……は?」
「気づいたら、知らぬ場所に立っていたのだ」
ルドラも続けた。
「我ら自身にも、なぜそうなったのかは分からん」
「誰かに呼ばれたとか、そういうのは?」
「分からん!」
「……。」
ダンテは額を押さえた。
「役に立たねぇな、お前ら」
「なにぃ!?」
「我らなりに必死に思い出しているのだぞ!」
「だったらもう少し頑張れ」
「無茶を言うな!」
結局、アグニとルドラから得られた情報は「気づいたらこの世界にいた」ということだけだった。
悪魔がこの世界へ現れる理由については、何一つ分からないままだった。
そして――数日後。
ダンテはいつものように事務所で暇を持て余していた。
「……暇だ」
ソファに寝転がりながら、天井を眺める。
仕事がない。
依頼もない。
金もない。
しかも、以前「懐が寂しいから」という理由で武器を質屋に売ろうとした結果、シーザーやオルペウス、鬼火、さらにはアグニとルドラにまで猛烈な反対を受けていた。
「……やっぱり何か売るか」
そんなことを呟いた、その時だった。
――ジリリリリリリリリ!!
「……。」
事務所に置かれた黒電話が、けたたましく鳴り響いた。
「電話か」
ダンテはソファから起き上がり、受話器を取る。
「デビルメイクライ」
『あ、ダンテ?』
聞き慣れた少女の声が返ってきた。
「リンか」
『うん。今、大丈夫?』
「暇してたところだ」
『それならちょうどよかった。ちょっと頼みたいことがあるの』
「なんだ?」
電話の向こうで、リンの声が少しだけ真剣になる。
『郊外で保護されてたパールマンが、ようやく目を覚ましたみたい』
「パールマンが?」
『そう。それで、目を覚ましたあとに色々と話してくれたんだって』
「何を?」
『自分はお飾りのCEOに過ぎなかったって。ヴィジョン・コーポレーションの一件は、全部サラが計画していたらしいの』
「……サラか」
ダンテの表情から、僅かに笑みが消える。
『それだけじゃないよ。ヤヌス区の治安局副総監――ブリンガーが、サラの後ろ盾になっていることも分かった』
「治安局の上層部まで絡んでるってわけか」
『うん。だから、かなり面倒なことになってる』
リンは一度言葉を切った。
『それでね。今からニコの車に乗って、郊外へ行くことになったの』
「アキラもか?」
『うん』
「……なるほど」
ダンテは少し考える。
『それで、念には念を入れて……アキラの護衛をお願いしたいの』
「俺に?」
『そう』
「別に構わねぇよ」
『本当!?』
「ああ。ちょうど暇だったところだしな」
『助かるよ!』
リンの声が、少し明るくなった。
だが、ダンテはそこで一つ思い出した。
「それに、俺も無関係ってわけじゃない」
『え?』
「デビルメイクライを開業する前に、サラから仕事を受けてたんだよ」
『サラから?』
「ああ。バレエツインズへの侵入者を妨害してほしいってな。それなりに多額の報酬で雇われてた」
『……』
「だから今回の件に関して言えば、俺も一応関係者ってわけだ」
『そっか……』
リンが納得したように息を吐く。
『じゃあ、よろしくね』
「任せろ」
『それじゃあ、今から駐車場に行くね』
「分かった」
電話が切れる。
ダンテは受話器を置くと、ソファから立ち上がった。
「さて……」
赤いコートを羽織り、腰に武器を携える。
「仕事と行きますか」
――そして。
ダンテは新エリー都のビデオ屋、その裏手にある駐車場へと向かった。
そこには、ニコの車がすでに停まっていた。
「ニコったらもー……こんなタイミングで郊外に行けだなんて……」
リンが困ったように頬を膨らませている。
その隣では、アキラが車の準備をしていた。
「彼らも安全を確保したいんだろう」
アキラが答える。
「何しろ、ヴィジョン・コーポレーションの件に治安局の上層部が関わっているときた。きっと一筋縄ではいかない裏がある」
「そうは言っても……今はどこもかしこも治安局の検問だらけで、もしぶつかったらホロウに入って迂回しなきゃならないし……ほんとに危ないんだから」
リンは心配そうにアキラを見る。
「お兄ちゃん、もし困ったことがあったら、すぐ連絡してね!」
「うん、任せて!」
リンはH.D.Dシステムの最終確認を行う。
「H.D.Dシステムもしっかり調整して、バッチリお兄ちゃんをサポートするよ」
そして、念を押すように続けた。
「安全には気を付けてね! トラブルが起きても、絶対に無理しないこと!」
「分かってるよ」
そんな二人のやり取りを聞いていたニコが、運転席から声をかける。
「プロキシ、準備はいい? 出発するわよ!」
「もう少し待ってくれ」
アキラが答えた。
「あと一人、連れがいるんだ」
「連れ?」
ニコが眉をひそめる。
「私は聞かされてないんだけど、一体誰よ?」
その直後だった。
駐車場の奥にあるフェンスが、ゆっくりと開いた。
――ガシャァァン。
その向こうから、一人の男が歩いてくる。
赤いコート。
白い髪。
そして、その背中には巨大な大剣が背負われている。
「ようやく来たんだね、ダンテ」
アキラが声をかける。
「待たせたな」
ダンテは軽く手を上げながら歩いてくる。
「ダンテ……」
ニコは目を細める。
そして、少しだけ口元を上げた。
「へぇ。噂はビリーから聞いてるわよ」
「そうかい」
「よろしくね」
「こちらこそ。よろしく頼むぜ」
二人は短く握手を交わした。
その様子を見ていたリンが、少しだけ驚いたようにダンテを見る。
「本当に来てくれたんだね」
「ああ。護衛の仕事なんだろ?」
「うん。お兄ちゃんをお願いね」
「任せな」
ダンテがアキラへ視線を向ける。
「ただし、俺が護衛するからって無茶するなよ」
「それはこっちの台詞だよ」
「ははっ。違いねぇな」
ニコが運転席からため息を吐く。
「はいはい、話はその辺にして。そろそろ本当に出発するわよ」
「これで準備は整ったな」
アキラが車へ乗り込む。
「ええ」
ニコも運転席へ戻った。
ダンテは後部座席へ乗り込むと、窓の外を見る。
「さて……郊外か」
今回の目的は、パールマンから話を聞くこと。
そして、ヴィジョン・コーポレーションとサラ、さらには治安局副総監ブリンガーへと繋がる事件の真相を追うことだった。
ダンテにとって、それは単なる護衛任務ではない。
自分をこの世界へ呼び寄せたもの。
そして、この世界に現れる悪魔たち。
その謎へ繋がる何かが見つかる可能性もある。
「……面白くなってきたな」
ダンテが小さく呟く。
「何か言った?」
アキラが振り返る。
「いや、何でもねぇよ」
「そうか?」
「ああ」
ニコがアクセルを踏み込む。
エンジン音が駐車場に響き渡った。
「それじゃあ――郊外へ向かうわよ!」
車が走り出す。
新エリー都の街並みが、少しずつ後方へ流れていく。
――――
郊外。
そこにはアキラたちだけではなく、邪兎屋の面々も勢ぞろいしていた。
そして、その中央では――保護されたパールマンが、まるで堰を切ったように喋り続けている。
「……と、とにかくだ! 私は名義上こそヴィジョンのCEOだったが、実際にはお飾りに過ぎんかったのだ! 会社の長期的な事業計画はみな、サラのやつが仕切っとった! 例の旧地下鉄改修プロジェクトも含めてな!」
パールマンは額に汗を浮かべながら、必死に身振り手振りを交えて説明していた。
ニコは腕を組みながら話を聞き、アンビーは淡々と要点を記録している。
ビリーは時折「なるほど」と相槌を打ち、猫又は少し離れた場所から、いまだに胡散臭そうな目でパールマンを眺めていた。
そして――。
ダンテは一言も口を挟まず、その光景を無言で見つめていた。
しばらくして、パールマンはさらに声を張り上げる。
「そして、あの女があれほど危険な橋を渡ることができたのは、治安局のブリンガーが後ろ盾になっていたからなのだ!」
「ほう……」
ダンテの眉が、僅かに動いた。
「連中、計画のプロセスにはいっさい私を関与させず、最後の最後で『あれをしろ』『これをしろ』と指示してくるだけだった。挙句に食事すら、『お前は社食で済ませろ』だぞ! 信じられるか!」
「……」
その発言に、何人かが微妙な顔をした。
どうやら本人にとっては、かなり重要な問題らしい。
だが、アキラは冷静だった。
「口だけなら何とでも言える。確かな証拠があるのかい?」
「おお、あるとも!」
待ってましたと言わんばかりに、パールマンが身を乗り出す。
「奴らの計画がどんどん過激になっていると感じた私は、その動きに目を光らせていた。なにせ名ばかりのCEOとはいえ、対外的な書類のほとんどには私のサインがいるからな!」
「なるほど」
「そこで、旧地下鉄改修プロジェクトが始まる前に、サラから送られてきた計画書やメールはすべて、バックアップの名目で印刷しておいたのだ!」
パールマンは得意げに胸を張った。
「社員食堂に追いやられるたびに、隙を見てはせっせと!」
「……そこはそんなに重要なの?」
アンビーが淡々と尋ねる。
「重要だとも!」
「そう」
アンビーは、それ以上何も言わなかった。
パールマンは気にせず話を続ける。
「バックアップはすべて他の工事の書類に混ぜておいた。それを探し出すことができれば、あの女とブリンガーが繋がっている動かぬ証拠……とまではいかないかもしれんが、金や情報のやり取りに使っていたアカウントは特定できるかもしれん!」
「ふうん?」
ニコが顎に手を当てる。
「本当にそんな証拠があるって言うなら、確かに説得力あるけど……」
アキラも考え込む。
「なるほど。スキャンダルの発覚後、すぐに工事を落札したのはクレタ率いる白祇重工だ」
「なんだ?」
パールマンが首を傾げる。
「あの人よりクマが、クマより機械が多い会社は、お前らの知り合いなのか?」
「……まあ、そんなところだね」
「それなら話が早いではないか!」
パールマンが勢いよく指を突きつける。
「お前が白祇と知り合いなら、連中に引継ぎ書類を調べろと言えばいい。私が紛れ込ませた証拠が見つかるだろう!」
「なるほど。腐ってもCEOというわけか」
アキラは納得したように頷くと、端末を取り出した。
「リン、僕のほうで直ちにクレタたちへ協力を仰いでみる」
『分かった。こっちでも調べてみるよ』
通信の向こうからリンの声が返ってくる。
アキラは通信を切ると、改めてパールマンへ視線を向けた。
「もし本当に証拠が残っているなら、ここから先はそれを探す必要がある」
「当然だ!」
パールマンは大きく頷いた。
その一方で、猫又がニコへ近づいた。
「ニコ。だるまのオッサンがホントのことを言ってるとして……これからどうするの? にゃんとかして、こいつを治安局まで連れてく?」
猫又はパールマンをちらりと見る。
「あー、でも、治安局には悪いやつもいるから……」
「おまけに今は選挙期間中で、新エリー都は治安官だらけ」
アンビーも続けた。
「誰が敵で、どこで敵と繋がってしまうかを判断することはできないわ」
「そうなんだよな……」
アキラも難しい顔をする。
治安局そのものを疑っているわけではない。
だが、今回の事件には治安局のブリンガーが関与している。
下手にパールマンを引き渡せば、証拠が消される可能性もある。
そんな空気の中――。
「ふっふーん!」
突然、ニコが不敵な笑みを浮かべた。
全員の視線が集まる。
「みんな安心しなさい。だるまのオッサンと違って、このニコは名実ともに邪兎屋のCEOなのよ!」
アタッシュケースを肩に担ぎ、胸を張る。
「ちゃーんと対策を考えてるっての!」
「本当に?」
猫又が疑わしそうに目を細める。
「本当よ!」
ニコは胸を張ったまま続けた。
「闘獣棋ってやったことがあるかしら?」
「闘獣棋?」
ビリーが首を傾げる。
「鼠は兎に、兎は狼に、狼は虎に、虎は象に……の順番で食べられるんだけど、一周まわって、鼠は象を食べられるってヤツ!」
「……つまり?」
アンビーが尋ねる。
「つまり、世の中なんにでも天敵がいるってことよ!」
ニコは人差し指を立てる。
「虎の威を借りて、狼を食らうのが兎の知恵……。そんで、虎を懲らしめたかったら、象にお出まし願えばいいんだわ!」
アキラは少し考えたあと、ハッとする。
「象にお出まし願うと言ってもな……新エリー都で、治安局と対等に渡り合える組織なんて数えるほどしかない」
指を折りながら名前を挙げていく。
「防衛軍にホワイトスター学会、それから……」
そこでアキラの動きが止まった。
「……ん?」
顔を上げる。
「まさか……?」
「ふふん!」
ニコは待っていたと言わんばかりに笑った。
「そのまさかよ!」
そして――ビシッと遠くを指差す。
「あたしが呼んできたのはね、今の新エリー都でいっちばんフレッシュかつ、いっちばん大きな象さんなんだから!」
「……象さん?」
ビリーが首を傾げる。
その直後だった。
――プップ――!
遠くからクラクションが響いた。
「ん?」
アキラが振り返る。
砂埃を巻き上げながら、数台のトラックがこちらへ近づいてきた。
先頭車両の側面には、大きく――。
『猪突猛進』
――というロゴが描かれている。
トラックはそのまま空き地へ入り、勢いを落としながら停車した。
そして、運転席から小柄な女性が顔を覗かせる。
「おうおう、時間ぴったりだなあ」
眠そうな目を擦りながら、彼女は大きく欠伸をした。
「本日は猪突猛進・特別便をご利用くださり、まことにありがとだぜい」
パイパーは運転席から降りると、大きく手を振った。
「ほーら降りた降りた~」
続いて、後部の扉が開く。
そこから次々と人影が降りてきた。
「うわぁ~!」
真っ先に飛び出してきたのは、青い肌と大きな角を持つ少女――蒼角だった。
「ここが郊外なの!? すごいねぇ~!」
辺りを見回しながら、楽しそうに声を上げる。
「お空がくるくる、地面はゆらゆら、空気のにおいでゲーしちゃいそう!」
「それは車酔いですよ、蒼角」
すぐ隣から、月城柳が眼鏡を押し上げながら答えた。
「しばらく私の手を取って休んでいてください」
「うぅ……」
蒼角が素直に柳の手を握る。
柳はそのまま彼女を支えながら、別の人物へ視線を向けた。
「浅羽隊員、貴方は大丈夫ですね?」
「と、飛ばしすぎだってぇ……」
浅羽悠真は青ざめた顔でトラックの側面に手をついていた。
「信じらんないな、あのドライバー……!」
その言葉を聞いたパイパーが、運転席のほうを指差す。
「ん? あたしか?」
「あなた以外に誰がいるんですか……」
悠真はげんなりした顔で呟く。
「……あ、やばい」
突然、悠真が懐を探り始める。
「アレどこですか、アレ……」
「何を探している?」
星見雅が問いかける。
「いや、ちょっと……」
次の瞬間。
「――おろろろ!」
悠真がその場で盛大に吐き気を催した。
「浅羽隊員……」
柳が呆れたように彼を見る。
「……後ほど反省文を書いていただきますからね」
「それ、今言う……?」
悠真は涙目になりながら呟いた。
一方――。
雅は静かに周囲を見渡していた。
郊外。
人気の少ない場所。
そして、そこに集められた邪兎屋とパエトーン。
やがて、雅の視線がニコへ向く。
「このような特別な日に、人目を忍んで郊外まで連れ出すとは……」
腰の妖刀へ手を添える。
「我らを謀っているのなら、容赦しないぞ。邪兎屋のニコ」
「ちょ、ちょっと! いきなり物騒なこと言わないでよ!」
ニコが慌てて両手を振る。
「ちゃんと理由があるんだから!」
「……ならば聞こう」
雅の視線は鋭い。
そのやり取りを見ながら、アキラは改めて目の前の四人を見つめていた。
見覚えがある。
いや――。
新エリー都で彼らを知らない者など、ほとんどいない。
対ホロウ特別行動部第六課。
H.A.N.D.直属。
超級と呼ばれるエーテリアスの討伐から、危険度の高いホロウ事件まで担当する、まさに新エリー都屈指の精鋭部隊。
その四人が――今、ここにいる。
「……まさか」
アキラが呟いた。
「援軍って言ってたのが、対ホロウ六課だったとは……」
隣にいたビリーも目を丸くする。
「おお~! これはすごいメンバーだぜ!」
アンビーも六課の面々を観察する。
確かに、これならばパールマンを治安局へ渡さず、なおかつ公的組織の力を借りることができる。
ただし――。
それは同時に、非常に危険な綱渡りでもあった。
ダンテも少し離れたところから、その一行を眺めていた。
「へぇ……」
赤いコートの男は、口元に薄い笑みを浮かべる。
「ずいぶんと物騒な連中を呼んだもんだな」
「物騒とは失礼ですね」
柳がダンテへ視線を向ける。
「ずいぶん腕の立ちそうなのが揃ってるもんでね」
「……」
その横で――。
雅がダンテをじっと見つめていた。
「……」
「……」
しばしの沈黙。
周囲の空気が、ほんの僅かに張り詰める。
雅の鋭い視線と、ダンテの飄々とした視線が交差した。
「……面白い」
雅が小さく呟く。
「お前からは、奇妙な気配がする」
「よく言われるよ」
ダンテは笑った。
「初対面でそこまで見抜くとは、なかなかやるじゃねぇか」
「当然だ」
雅は妖刀から手を離す。
「我が務めゆえ」
「なるほどな」
ダンテは口元を僅かに吊り上げた。
「そっちも、ただの役人ってわけじゃなさそうだ」
「……役人か」
雅は一瞬だけ目を細める。
「その言葉、訂正してもらおう」
「おっと」
ダンテが両手を上げる。
「悪かったよ」
「ならばよい」
それだけ言うと、雅は視線をニコへ戻した。
しかし――。
ダンテは笑みを消さなかった。
星見雅。
月城柳。
浅羽悠真。
蒼角。
それぞれが持つ気配は違う。
だが、共通している。
――強い。
しかも、ただ力があるだけではない。
何かを守るために、その力を振るってきた者たちの目をしている。
「……なるほど」
ダンテは小さく呟いた。
「こいつらなら、退屈はしなさそうだ」
「……さて」
赤いコートが、風に揺れる。
「面白くなってきたじゃねぇか」
書き貯めはシーズン2まであります。